2016/06/24 のログ
ご案内:「地下クラブ」に紫刃来十さんが現れました。
■紫刃来十 > 「ふぁ…あ~…」
とある地下クラブ、派手な服に身を包んだ者達がひしめくその中で
一人黒い拳法着の男の地味な服装は一際目立つ。
いつかの仕事で縁のできた違反部活、そこが経営する地下クラブの警備を任されたのだが
「まあ、こんなとこで何か騒ぎ起こすような奴そうそういねえよなあ」
特に何事もないため、男は警備とは名ばかりの人間観察で暇をつぶしていた。
■紫刃来十 > 忙しすぎるのも辛いが暇すぎるのもそれはそれで辛い。
流石に仕事中に居眠りや酒を飲み始めたりはできないが
これぐらいの暇つぶしでもしていなければだるいとしか言いようのない平穏振りであった。
奥に目をやれば、明らかに怪しげな連中が何やら商談らしき会話をしている。
手でチョキだのパーだのをしているのは、おそらくじゃんけんをしている
わけではないだろう事は一目見てわかった。
次に右を見れば、男と女が熱い抱擁をして、女の方が出口へ向かっていく。
男のほうはといえば、直後に別の女に先程していたような…いや、それ以上に
熱烈なハグをし、そのまま口づけを行う。
■紫刃来十 > 「お盛んなことで…」
その節操のなさに、思わず言葉が漏れる。
入り口で帰る間際に男に振り返った先程の女が、般若の如き形相をしているのが見えた。
近いうちに殺傷沙汰になるだろうなと、ぼんやりと、感想を心で述べる。
左では自分と同じく暇であろう者が、酒を飲んで同僚らしき者達と愚痴を零している。
ばれれば大目玉は間違いないだろうが、そんな事は構わないとばかり
バーの男達の愚痴と、酒のペースは加速していく。
■紫刃来十 > 何かしらあるかもしれないということで、警備を引き受けたがこうまで暇だと
何らかの拷問を受けてる気分になる。
「世界が平和な時の勇者様ってのもこんな感じなのかね…」
必死に世界の危機を天に祈る罰当たりな勇者という、滑稽な妄想をしながら
何事もないクラブを見回す。
先程の男達は相変わらず酒をかっくらっては愚痴話に花を咲かせている。
聞こえてくる限りではどうやらここは相当部下の扱いが荒いらしい。
■紫刃来十 > ふと、病院にいる弟の事を思う。
病気のためにこのような場所に来た事等ないが、つれて来たら喜ぶだろうかと。
「…ないか、あいつはどっちかというとインドア派だし。」
と、先程の愚痴で盛り上がっていた男達が青い顔で
一際体格のいい男に詫びを入れている。
恐らく彼等の上に当たる人物だろう。
「あーあ、ご愁傷様」
微塵も気持ちの篭っていない言葉を二人にかけながら、少し気を持ち直して
クラブの見回りという名の徘徊に戻る。
ご案内:「地下クラブ」に虞淵さんが現れました。
■虞淵 > 騒ぎは突然に
軽やかに宙を舞った男性客が酒瓶の並ぶ棚へ突っ込んだ派手な音と共に始まった
「なんだよ、軽ィやつらだな。ちゃんと飯食ってンのかァ?」
大きなため息と共に首をゴキリと鳴らす巨躯の漢は、
既に気絶して動かない男性客を悠々と見下ろしている
「ま、異能者なんだろうが、喧嘩は相手を見て売りな」
男性客の仲間らしき男が携帯を手に何処かへ連絡しようとしている
それを脇目に、バーカウンターの席にどっかりと座り直し巨躯の男は酒の続きを飲み始めた
このまま放置しておけばちょっとした騒ぎにもなるだろうか
■紫刃来十 > 「ん?」
俄かに、クラブがざわめく。
人ごみで見えないが、誰かが入ってきたようだ。
「ようやく体動かせそうな感じか…?」
遠くにいた柴刃が、騒ぎの方向へ。
「おい、あんた、ここで騒がれると迷惑だ、暴れるなら他所言ってくれ」
「うちで騒ぎ起こすってんなら、俺らの上も黙っちゃいねえぞ!」
先程までのだらけぶりが噓のように、酒を飲んでいた者達と
その上に当たる男が
虞淵の方へ向かい、そう告げる。
こちらは近くにいた分、柴刃より早く寄ってきたようだ。
■虞淵 > 「ほォ、お前らの上ってなァ誰だ?連れてこいよ。話くらいなら聞いてやらんでもないぜ」
巨躯の男は、憮然とした態度でまるで男達を相手にしない
力ずくで来るならば、そこで倒れている男のようになるだけだと、視線で示す
「お前らが無駄に騒がなきゃ大人しく酒飲んで帰るだけなんだよ、クク」
■紫刃来十 > 「舐めやがって…あ、お前確か…虞淵か?」
一人が虞淵のことを知っていたのか、その名を口にする。
「虞淵ってあの虞淵か?、まずいんじゃ…」
「ここ最近は隠居してたし、最近じゃ来たばっかりの新人に互角の勝負させられてるんだ
もうたいしたことねえよこんな旬の過ぎた奴よぉ!」
風の噂を鵜呑みにした3人が、一斉に虞淵を叩き出そうと寄ってくる。
3人はただの身体強化の異能の持ち主、これといって脅威はない。
が、その後ろから、敵意を飛ばす
何かが貴方の隙を伺ってるのを、感じ取れるだろう。
■虞淵 > 口元が狂気に歪む
そうそれでいい
別に強いヤツと殴りあうのが好きなだけじゃない
弱いやつを殴ったって別に悪いことはないんだ
憤る雑魚達に振り返ったその時に、突き刺すような敵意を察知する
こんな食いでのない連中よりも、もっと活きのいいのがいるじゃないか
「退けよ、お前らの相手してる暇はなくなったぜ」
椅子から立ち上がればそれだけで圧倒する巨躯
見据える先には───
■紫刃来十 > 虞淵の言葉が言い切るより早く、先程の3人が殴りかかるのに合わせる様に
人ごみから何かが一瞬で虞淵の元へ
「ばれてた、か!!」
雷光を纏う紫刃の拳が、虞淵の正中線、人中、喉仏、鳩尾へ殆ど同時に放たれる。
無論先程の男達の攻撃も迫ってきてる。どちらかを避けるか防げば
どちらかをもろに受けることになる。
それを狙っての急所攻撃だ。
■虞淵 > 「相手を見誤っちゃ……」
ゆったりとした動作で、口に煙草をくわえて火を付ける
フゥッ、と白い煙を吐き出す、と同時───
ココ
「落第街じゃ長生きできねェぜ!?」
放たれた雷光が如き連撃、それよりも、疾く
その場で建物全体を激震させる震脚を男は繰り出す
まるでミサイルが着弾したような轟音と衝撃波が男を中心に放たれ、
地下クラブの様子は一変する
哀れ殴りかかった男達は衝撃により昏倒、ドリンクバーはなぎ倒され、雷光が如き連撃を阻む
周囲の人間が事態に気づき、慌ただしく避難を始める
「全弾急所狙いの真っ直ぐな攻撃、嫌いじゃないぜ。
お前は、コイツラとは違うよな?」
衝撃波だけで昏倒した男達を見下ろして、
その言葉と共に雷光の主へと視線を向ける
■紫刃来十 > 余りの衝撃に体格で劣る紫刃は吹き飛ばされるが、その勢いを利用し軽業師の様に
着地し、構えを取り直す。
「へえ、手を抜いたわけじゃねえが…そんな雑な防がれ方するとは思わなかったぜ。」
こちらも、攻撃を防がれたにもかかわらず動揺は微塵も見えない。
「さっきの話チラッと聞こえたが、成程、あんたが虞淵って奴か。
ちょいちょい噂は
聞いてたが、実物見るのは初めてだな。」
まるで珍獣を発見したかのような言い草の男、だが軽口とは裏腹にその目は
相手の隙を見つけんと観察を怠らない。
「ま、あんたが本物か偽者かはどうでもいい」
瞬間、紫刃の体に電流が奔った課に見えた直後、先程以上の速度で近づき
「俺はあんたを倒して、追加料金もらって帰るだけだからな!」
狙いは同じく正中線、だが先程とは速度は比べ物にならない…が、それらはフェイク。
真正面の攻撃を対応しようとすれば、直後に脇腹狙いの電流を纏った蹴りが繰り出されるだろう。
■虞淵 > 「オウ、手を抜いた攻撃だったらもうちょい遊んだんだがよ」
ケラケラと嗤う
「ココ最近留守にしてたせいか、ちぃと名前が落ちたな。
まァ昔みたく帝王だなんだって持て囃されるトシでもねェしイイんだが…ん」
せっかちなやつだ
こちらへの接近を確認し、笑みが深まる
「俺を倒して?
カカッ、追加料金どころか此処で一生安泰で暮らせるぜ?」
並以上程度の動体視力なら、まずこの初弾は見えないだろう
完全に生物を凌駕した男の動体視力で以ってしてようやく、巧妙に隠された第二の刃に気づける程度だ
こんな奴がまだこの落第街にいたとは───
「───なんてェ名だ? ガキ」
本命の蹴りを肘と膝で挟み込んでの迎撃、多少の電流は流れるがその程度では怯みもしない
■紫刃来十 > 「ちっ…」
先程とは違う、驚愕と苛立ちの混じった顔、今の蹴りを防がれるとは思っていなかったのだろう。
蹴りを挟まれたまま飛び上がり、残った足で虞淵の挟んだ方の腕を蹴りつつ、無理やり引き抜く。
「あ?柴刃だよ、筋肉達磨のおっさんに覚えられても嬉しくもねえがな。」
相当苛立ったのか、先程までと違い軽口に返しもせず虞淵の質問に短く答える。
「そうかい、なら…とっとと倒れて俺に金よこしなあ!!」
全身に雷光を纏い構える…が、そこから紫刃が思わぬ行動に出る。
「しっ!」
明らかに届かない位置からの虞淵へ向けた拳の一撃…が、届かない筈のそれは
纏った雷光が弾丸のように飛ばされ、雷の弾丸と化す。
そして本人はそれを追うように虞淵の元へ、だが恐らく、それだけではない。
先程までの攻撃をみれば、何かしら企みがあるのに、気づけるかもしれない。
■虞淵 > 「紫刃、ねェ。ま、そりゃあそうだろう」
覚えられても嬉しくないと言われれば当然だろとばかりに頷く
とはいえ男にとっては意味がある
「ま、名前もしらねェとまた遊びたくなった時に探すのが面倒じゃアねェか」
咥えていた煙草を吐き捨てる
遠距離からの急襲
蹴りを受け止めた腕と脚に僅かなシビれ
あの電荷が異能か魔術かは知ったことじゃないが、単なる格闘術に収まらないことは織り込み済みだ
「(なら、こうしてみるか)」
雷の弾丸を受けようとも、避けようともせず
その場、先ほど震脚を叩き込んだコンクリートに向けて鋭い蹴りを叩き込む
そのまま、突き刺した脚を大きく蹴り上げれば
即席のコンクリートの盾が完成というわけだ
所詮コンクリートではあるものの、まぁ弾丸を防ぎ、相手の視界を一瞬奪うには十分だろう
さあどう出る、何かしら仕掛けてくるのは感づいている
男は愉しみに口元を歪めた
■紫刃来十 > 「マジかよ…!」
先の一撃を見てパワーがあるのはわかっていたが、よもやここまでとは。
が、想定外とはいえ柴刃の狙いから見て、相手から見えない事はむしろ好都合であった。
虞淵の視界がコンクリートで塞がれた直後、紫刃の体が纏う雷光と一体化するように
その色を単一の色へ変化させる。
己そのものを雷と化した紫刃にとって、もはやコンクリートは意味を成さず
一直線にすり抜け、そのまま虞淵の眼前へ…が、これだけでは終わらない。
その体から放たれた雷光は虞淵に電流を浴びせつつ背後へ回ると、もう一人の紫刃となる。
そして…
「「死ねやこの筋肉達磨!!」」
前後から響く掛け声とともに、前方と後方から同時に両手による掌打で
虞淵を挟むように攻撃する!
自身の雷化と、雷を使った分身による雷撃及び前後同時攻撃、これこそが柴刃の真の狙いだ。
まともに雷撃を受けていれば、痺れで防御の難しいところへ前後からの強烈な一撃と
それらの衝突による内部からのダメージ、及び流し込まれた電流でひとたまりもない。
■虞淵 > 雷光が如き速度による挟み撃ち───
完全に虚をついたその攻撃は、確実にグエンの肉体を捉えただろう
……そのコンクリートの裏側に男がいれば、の話であったが
「器用な真似しやがるな」
雷光よりも速い動きで男が動いたのかといえばそれは疑わしい
紫刃の思考を読んで事前に対応を変えたのかといえばそれも現実的ではない
ただただ、男の超野性的な勘によって、危機を逃れていた
パワー、スピード、戦闘勘
それら全てが生物のスペックを超える男
かつてロストサインを始めとした、数多の違反組織群の中、
孤高に君臨した帝王の姿であった
「むかし雷を得意にしてる魔術師とやったことがあってな、ありゃあ痛かったぜ。まともに喰らうのは正直ゴメンだね」
声がかかると同時
さりとてこちらもまるで雷光が如し剛脚一閃
並の人間ならそのまま命が消し飛ぶような暴風の一撃
■紫刃来十 > 「…っ!」
完全に技を放ちきり、隙だらけの状態から迫るその一撃は、自身を挽肉に変えるには十分な威力。
直後に響く、爆発を思わせる轟音、あわれ拳法着の少年はバラバラに吹き飛んだかに思われた
が…
「…て…めええええ…!!」
男は無事だった、咄嗟に分身に庇わせ、自身は雷化による回避が間に合わないと悟ったのか
雷光で瞬時に防御体制のまま、筋肉を硬直させつつさらに防御魔術を使ってその一撃を受けきった。
最も、まともに受けた側の腕は尋常ではない腫れ上がりを見せ、まともに動かせそうには見えない。
だがその目には些かも闘志の衰えはなく、むしろ怒りでより燃え盛っているようにも見える…が
「おい、この建物揺れてないか…?」
「も、もしかして崩れるんじゃ…!?」
先程の闘いで、建物にガタがきはじめたのか、或いは地震か、建物がぐらぐらと揺れる。
だがそれだけでその場で声一つ出せなかったギャラリーたちはパニックに陥り、我先にと出口へ殺到する。
こうなっては闘いどころではないだろう。それに、騒ぎを聞き公安や自警団の者達も集まり始めてる頃合だ。
■虞淵 > 「……へェ」
素直に驚いた表情を見せる
ダンプカーを正面から蹴り飛ばせるぐらいの威力で蹴ったつもりだったが
咄嗟の機転は場数によるものだろうか
見るにまだ若い、今後が………
「(…っと、こういうのが嬉しくなるのはいけねェな、俺もトシか?)」
パラパラと落ちてくる土埃、わずかに聞こえる、風紀車両の音
まぁ震脚をぶっ放した時点でよくない予感はしてたが
「ったく、違法部活の連中は建物に金かけやがらねェな…。
おい、紫刃とか言ったなオマエ。最初の攻撃が一番良かったぜ。また戦ろうや」
ニィ、と笑って、まるでミサイルのようにその場から天井をブチ抜いて男はその場から姿を消すのだった
ご案内:「地下クラブ」から虞淵さんが去りました。
■紫刃来十 > 「…クソがぁ!!」
苛立ち紛れにその場に転がったテーブルを蹴り砕くと
自身もその場を去っていった。
後日報酬は頂いたものの、治療費と損害分の差し引きで利益は殆どなかったそうだ。
ご案内:「地下クラブ」から紫刃来十さんが去りました。