2016/08/13 のログ
ご案内:「常世学園没者墓苑」に佐伯貴子さんが現れました。
佐伯貴子 > (本土で言う「盆の入り」に当たる日。
 まだ太陽が南に登り切っていない午前中。
 花束を4つ抱え、木々の間の道を歩いて行く風紀委員が一人。
 まばらだが人通りがないわけではない。
 佐伯貴子はゆっくりと進んでいく)

ご案内:「常世学園没者墓苑」に寄月 秋輝さんが現れました。
寄月 秋輝 >  
「……あ」

遠めに、佐伯貴子を見つける。

「……あなたも墓参りですか?」

声をかけながら近付く。

花束が一つと、線香とライター。
非常に持ち物が少なく、衣服もまたゆったりした和服。

佐伯貴子 > 寄月か…

(振り向いて姿を見ると、
 再び前に向き直る)

この道の先には墓しかない。
まあ、墓参りであっているだろうな。

(言いながら進んでいく。
 昨年のこの日は暑さに苦しんだものだった。
 今年は霊符のおかげで汗一つかいていない。
 しばらく進むと、
 寺と教会を合わせたような建物が見えてくる。
 合同慰霊碑のある建物である。
 佐伯貴子はそれをなんと呼ぶのか知らない)

寄月 秋輝 >  
「もしかしたら、お墓の管理をしているかもしれないですから」

そんなことを呟きながら、同じように進んでいく。
どうも目的地は同じらしい。

「……お知り合いでも眠っておられるのでしょうか」

肯定を聞きたくはないが、聞かずにはいられない。
歩を進めながら、一応尋ねてみる。

佐伯貴子 > あいにく風紀委員会の仕事には含まれていないな。
生活委員会の仕事かもしれない。

(歩調を合わせて距離を保ちつつ進んでいく)

それはな。
風紀委員を2年以上やっていれば一人や二人は、いる。
一人ひとりに拝む予定はないが…

(言いながら建物に入っていく。
 そこだけ気温が下がったように感じる。
 奥には大きな墓碑が一つ。
 学生として亡くなった、
 一般生徒を弔う慰霊碑であった。
 佐伯貴子は献花台に花束を一つ置き、
 目を閉じて両手を合わせる)

寄月 秋輝 >  
「僕もそんな仕事は聞いたことがないですね」

静かに歩き続ける。
貴子が目的地にたどり着いたならば、持ってきた花を脇に置いて、同じく手を合わせる。

それなりの歴史のある学園だ。
悪事に巻き込まれた以外にも、不幸な死を遂げた者が多かったのだろう。
大変容から日が浅い頃は特に。

もう少し早くにここに来ていれば、何か変わったのだろうか。
そんなことを考えてしまう。

佐伯貴子 > (眠っている死者たちは、
 病死や事故死もいるが、
 やはり犯罪被害者の割合も大きいと聞く。
 目を閉じながら祈る。
 自分の力が足りなかった、
 などという傲慢な考えはない。
 せめて安らかに、と)

…終わったら、次だ。

(3つの花束を持ち建物の奥の出口に向かう。
 出口を出れば太陽が光を取り戻す。
 続く一本道の両脇には多くの墓石。
 十字架、盛り土など、多種の墓があった。
 その道を進んでいく)

寄月 秋輝 >  
「わかりました」

再び自分の花束を持ち、それに従う。

多くの命がここを訪れ、多くの命がここで終わりを告げている。
この島は世界の縮図なのだろう。

墓地をめぐり、目を細める。
超常の存在が多いこの世界、この島。
そこでこれだけの死者が居ながら、霊による大きな事件は起きていない。
安らかに眠っているのだろう、そう思える。

佐伯貴子 > 別に私に従う義務はないんだがな。
君にとっても次の場所は大切だろう。

(強い日差しの中をいくらか歩けば、
 大きな慰霊碑が見える。
 毎日磨かれているのではないかと錯覚するそれは、
 委員会の委員、いわゆる殉職者のもの。
 一部の部活動の部員も含まれている。
 割合的に風紀委員は当然多くなる。
 献花台に花束を置くと、
 佐伯貴子は再び目を閉じ両手を合わせる)

寄月 秋輝 >  
「いえ、急がねばならないわけでもないので。
 ゆっくり、手を合わせて行こうと思います」

そうして次は委員会の墓碑。
風紀委員の死者もおそらくは多く出ているのだろう。

明日は我が身と思い、手を合わせる。
しかしここに花は供えない。

「……もうこの島に来て五年目ですが……
 ちゃんとこの共同墓地を回ったのは初めてです」

ご案内:「常世学園没者墓苑」に龍宮 鋼さんが現れました。
佐伯貴子 > (祈っていると、
 喪われた同僚たちの顔と声が蘇る。
 一人や二人ではないのだ。
 怒りや悲しみはない。
 ただ安らかにと、祈るのみ)

それは私にとって幸運かもしれないな。
こういう儀式は一人でやると気が滅入りがちなものでな。

(目を開けるとそんなことを言った)

五年目!?
それは初耳だ…

私も去年ここに来たのが初めてだ。
眠木虚先輩という方がいてな。
飛び級で卒業したとも噂で聞いたが…

墓地がここ一つとも聞かないし、
まあ普通なんじゃないか。

(そう言うと、小さな道に入っていく。
 抱えている花束は2つ)

龍宮 鋼 > (手ぶらで小道を歩く。
 それと反対の手はポケットに突っ込み、道を曲がった彼らの正面から歩いてくるだろう。
 顔を下へ向けて歩いていたが、彼らに気付いて顔を上げた。
 ばつの悪そうな顔になり、足を止める。
 威嚇するように、目付きの悪い視線を向けて。)

佐伯貴子 > …!?

(どこかで見たような顔だと思った。
 後輩にこんな人物がいたような…
 しかし雰囲気があまりにも違うので、
 龍宮銀と繋がることはなかった)

…。

(無言で会釈する。
 墓を参るという行為は意外と軽視されがちである。
 ゆえに、それをするものに警戒する必要はないと感じた)

>龍宮

寄月 秋輝 >  
「三年間研究所で拘束されていたので……実際に外を出歩けたのはここ二年だけですね。
 なので……残念ながら、先輩方の名も知らないのです」

着物の裾を軽くはたき、花を取る。

その合間、別の女性とすれ違う。
ぺこり、頭を下げた。
目つきの悪さなど、秋輝にとっては些末なもの。
同じ志で墓地を歩く者に、悪意があるはずもない。

龍宮 鋼 > (会釈をされても険しい顔は変わらない。
 それどころか小さく舌打ちをし、彼女らを無視して再び歩き出す。
 そのまますれ違ってその場を後にしようとしたが、)

……なぁ。
しろ――龍宮っつー奴、風紀委員に居るだろ。

(振り返って、声を掛ける。)

佐伯貴子 > 5年以上昔にこっちに来たって…
昔の恋人とは何歳で…まあいい。

(そんな下世話な話をする場ではない)

>寄月


(すれ違った女性から声をかけられ、振り返る)

…ああ、いるな。
なるほど…と、早合点してはいけないか。
龍宮銀に何か伝言か。

(ゆっくり落ち着いた口調で聞く)

>龍宮

寄月 秋輝 >  
「14の時です。
 あとのことはまた後日、機会があれば」

さらりと答え、流す。
それ以上はまた次回、と流して。


ぴたりと足を止める。
首飾りがちゃらんと鳴る。
貴子を少しだけ追い越し、その場で背を向けたまま止まる。
話をさえぎってはいけない。

龍宮 鋼 > (何かを察した女性の表情に、またも舌打ち。
 そのまましばらく悩んでいたが、)

元気で、やってんのか。

(眉尻を下げ、しかし眼光は鋭いまま。
 弱々しい声でそう尋ねる。)

佐伯貴子 > …。
ああ、少なくとも私より仕事熱心だな。
元気だよ。

(あまり余計なことを言わないように、
 短く返す。
 寄月は蚊帳の外に追い出した。
 今は)

龍宮 鋼 > そうか。

(その答えにホッとしたような声でそう口にした。
 一方で眉間のシワはより深くなる。
 何かを後悔するように。)

――デートの邪魔して悪かったな。
あいつには余計なこと言うなよ。

(軽口を残し、再び歩き出す。
 すぐに彼らが曲がってきた角の向こうへと姿を消すだろう。)

ご案内:「常世学園没者墓苑」から龍宮 鋼さんが去りました。
佐伯貴子 > そうだ。

(相手について詮索するのは、今はしない)

墓場でデートするものがいるか。
言われなくても何も言わない。

(女性を見送る。
 姿が見えなくなると、寄月に目配せする)

聞いたとおりだ。
さて、次は、教員慰霊碑。

(龍宮銀という後輩に会っても何も言うなということだ。
 教師は犯罪被害の割合が少ない。
 花束はおかずに、祈るだけで通り過ぎる。
 何本か花束か捧げてあったが、先の女性との関係は不明である)

次だ。

(異邦人としてこの世界に来た者達の慰霊碑。
 公式から非公式になったかのように、
 慰霊碑の手入れが先の3つとはまるで違っている。
 戸籍があるものとないものの差であるかに思える。
 異邦人はもとより身内がいないもの。
 単に参るものが少ないだけかもしれない。
 花束を置いて祈る)

寄月 秋輝 >  
教員の慰霊碑に静かに手を合わせ、離れる。
異邦人の慰霊碑の下までたどり着き。

「……失礼します」

そこで初めて動く。
端のほう、目立たないように花束を置き。

ちゃらんと音を鳴らし、肌身離さずに下げている首飾りを首から外す。
それを数珠のように手に通し。

静かに、目を閉じて祈り始めた。

佐伯貴子 > (寄月の様子をじっと眺める。
 異邦人として思うところがあるのだろう。
 到底理解できる感情だとは思えない。
 理解してはいけないのかもしれない。
 その答えを佐伯貴子は知らない。
 だからじっと待った)

寄月 秋輝 >  
手を下ろし、目を開き。
再びその首飾りを首に通す。

「……勝手ながら、こちらで母に祈らせていただいています。
 別の世界であっても、祈りだけは届くと信じて」

立ち上がる。
きっとその顔は、複雑に歪んでいるだろう。

「……お時間取らせてすみませんでした。
 帰りましょう」

その場から離れる。
ただ名残惜し気に、ゆっくりと。

佐伯貴子 > 母…

(こちらも複雑そうな表情をした)

世界が違っても、次元が違っても、
祈る気持ちが本物なら届く…
きっと…

(そう言って、最後の花束を抱え、
 奥まった道に進む)

ああ、先に帰るなら帰ってくれ。
私は最後に寄るところがある。

(もし相手がついてくれば、
 辿り着くのはボロボロの石碑の前。
 落第街で死んだ、二級生徒の慰霊碑。
 これは完全に非公式なのだろう。
 最後の花束を置き、祈る。
 誰に見せるわけでもない。
 祈るためだけに祈るのだ)

寄月 秋輝 >  
「僕もそう信じています」

離れようとしたところで、最後に寄る場所と聞いて足を止める。
再び貴子の背を追うように歩き。

二級生徒の慰霊碑を目の当たりにする。

(……そうか、ここに……)

目を細め、再び手を合わせて祈る。
死んでいった、哀れな運命の持ち主たちに。
この手に殺された、報われぬ魂たちに。

(恨むなら恨んでくれ。
 いずれは僕もそこへ行く)

咎人の祈りはそこへ届くだろうか。

佐伯貴子 > (しばらくして。
 目を開け、振り向く)

ついてきていたのか。
私はこれが最後だ。
では、帰ろう。

(祈りはもとより何かを変えるために行うのではない。
 だからここで祈ったから誰かの何かが救われるとは思わない。
 だがしかし、祈ること自体が重要なのだ、
 と、佐伯貴子は考える。
 祈るということはつまり。


 『わすれていない』ということだ)
 
 
 

ご案内:「常世学園没者墓苑」から佐伯貴子さんが去りました。
寄月 秋輝 >  
「……えぇ、一応。
 ですがついてきてよかった」

その場で踵を返し。

再び、慰霊碑に目を向ける。

「……オレは……」

誰かを救えたのだろうか。

そう呟くことなく、漏れそうになった言葉を飲み込む。

悲しい表情のまま、その場を立ち去った。
自分の罪も、居なくなった人も、この胸の内に。

ご案内:「常世学園没者墓苑」から寄月 秋輝さんが去りました。