2016/08/24 のログ
ご案内:「転移荒野・凍湖の底」に蕎麦屋さんが現れました。
■蕎麦屋 > 八つ当たりに付き合って早――ええと、多分四日くらい。
広がった空洞は大体10畳くらいの広さ、――何かをやるには困らない。
早々にソシャゲにも飽き、蕎麦を作ろうにも材料がないので何をやってたかと言えば。
「――ふーふふーん♪」
広いはずの空間に溶接機だ旋盤だ、湖の底と思えない工場の如く並べ立て。
その中心の大きめの作業台に、壊れた人形を載せて。
鼻歌なんぞ歌いながら、その内部構造を継ぎ接ぎ継ぎ接ぎ。――
最終的には部品ごと入れ替えるにしても、今は仕入れに行けないので。
そんなわけでの応急処置としての修理。壊れた部品は完全に元通り、と行かないのが難点ではあるけれど。
いつまでも寝かせておくのも忍びない、というか早く起こして反応みたい。
構造を接ぎ、応急処置した駆動系と神経系を接続しなおして。
外殻――皮膚はどうしようもないので包帯でぐるぐると巻いておく。
「はい、終わり。――えーと。」
屋台から延長コード引っ張ってー、どうも充電用コードらしいものと接続。
――あ、充電しただけで起きるのだろうか、これ。
ご案内:「転移荒野・凍湖の底」にRK207さんが現れました。
■RK207 > 高電圧を描けたとき特有の頭に直接響く重低音が聞こえる
体をつぎはぎされた少女はゆっくりと目を開く
見た目それは低血圧で起きられない女子高生か何かのようである
「Checking files system...
CHKNET is not verify connection...
rot1:No device detected ERROR..
rot2:No device detected ERROR..
rot3:No device detected ERROR..
rot4:No device detected ERROR..
Fatal Error
Inconsistencies in the quantum............
接続を確認できませんでした
内部データに致命的な損傷が見られます
セーフモードでの再起動を試みます...」
しかし口からもれる言葉は人間とは思いがたい
目を開けてはいるがなにも見てはいない
死んだような目とは言い得て妙だ
重低音が響く中そんな目にスッと光が宿る
「・・・・・・?」
しばらくぶりに意識を取り戻したかのように顔を傾け蕎麦屋を見る
言葉を忘れたかのように口を開くばかりで音は出ない
■蕎麦屋 > 「おおう――」
氷のドームに響く重低音。思いのほか響くのです。
――予想の範囲内とはいえ、かなりの大食らい、らしい。
目に光が灯るが――どうにも無機質。
続けて、沈黙を保っていた口から洩れる単語に若干の不安がよぎる。
自立型だろう、と目星をつけての修理だが。遠隔操作する型だったら徒労となるわけで。
この子を『お姉様』と呼んでいた子を見る限りだとそういう方向ではないはずだが――
と。
無機質だった光に揺れが見えた。意識がこちらに向けば――
「はい、毎度。おはようございます。
――何処が逝かれてるのか分りませんでしたので、ハード的な応急処置だけですけれど。
気分はどうです?喋れます?――というか、言語は分かります?」
見えるのは氷の天井と、工場のような器具の数々と、水着に両手両足と首に鎖が巻き付いた女とかいう意味わからない状況。
■RK207 >
きょろきょろと周りを見渡せばしゃべり方を思い出すようにゆっくりと口を開く
「おはようございます
現在スタンドアローンモードで活動中です
あなたはなにでしょうか
状況説明を求めます」
やはり継いだだけではうまくいかないのかからだの動きはぎこちない
だがその状態で体を起こして見せた
服の胸より下がみあたらずおなかが大胆に見えている
なかなかにアバンギャルドである
「・・・・・・?」
自分の姿を見て疑問を浮かべる
状況がわかっていないらしい
■蕎麦屋 > 「はい。――スタンドアロン?
つまり普段はネットワークに接続している、ということですか。」
単独でも稼働するようで、とりあえずは一安心。
「で、状況――演習場で妹さんと切った張ったの大暴れしてたの、覚えてませんか?」
死ぬ直前の記憶とか飛ぶのかなぁ、などと考えつつ。
「で、泣き別れた胴体を、なんとなく私が攫って修理――したのですけど。
御免なさいね、現状そのくらいが限界で。」
修理中は全く気にしてなかったけど。視線を下に向ければかなりすごい格好だろう。
なんせ私とか水着だし。
それはともかく、このままだと危ない人なので。畳んであった布を手渡す。
■RK207 >
「肯定です
...妹?」
何のことかわからないといった顔
自身の体を見れば修理された状態だというのはわかる
が、直前の記憶と言わず一切合切
スキルや記憶、そういった蓄積データが無かった
正確にはないと言うよりもそれらのデータを自分のものとして扱うことが出来ない
彼女にとってこれらはジャンクデータとしか認識できない
不整合によるエラー
そしてなにとも繋がっていない彼女にはその不整合をただす術がなかった
彼女が取っているのは所定の行動にすぎないのだろう
布を受け取るがどうすれば良いのかわからないと言った風である
ただ
「ありがとうございます」
とだけ告げるのだった
■蕎麦屋 > 「そう、妹。多分、後継型だと思うのですけどね。」
後継機だ、というのは、外見と装備のささやかな差異からの推測だが。大体あたっている気はする。
そして、それを聞いても、何を言っているんだお前は、みたいな顔にふむ、と唸る。
どうやら、データが破損しているらしい。
切断時の衝撃か、今しがた肯定したネットワーク周りのエラーか、ハード的な不整合が原因か。
単一でも面倒だが、複合だともっと面倒だ。顎に手を当てて――じゃらりと鎖が鳴った。
トんだかなぁ。
「丸見えの下半身を隠せばよろしいと思いますよ。
――じゃあ、えー。」
布を受け取って固まる。
人間的な所作を記録しているならそのあとの反応まで繋がりそうだが。
その動作がない所を見れば――
「……何か、覚えていることあります?」
こう聞いた方が早そうだった。
■RK207 >
「隠す...」
いそいそと布を腰に巻き付ける
蕎麦屋や首からぶら下がる上衣もあいまって見ようによってはパレオに見えなくもない
「覚えていることですか・・・・・・」
すこし間を置けば
自身の仕様や能力についてぺらぺらとしゃべり出す
「プロジェクトアルヒャイver1.012―――」
修理の最中にわかったことからその先まで
理解の出来ない素材や技術からあきらかな極秘事項なども混ざっていたかも知れない
だが、わからずともはるか未来に実現するだろう技術だと言うことはわかるだろう
しゃべってる最中のものは未だ氷山の一角に過ぎず
止めなければえんえんとしゃべり続けるに違いない
■蕎麦屋 > 「ああ、そうそう、そういうので。」
とりあえず隠れたのでよしとする。
とはいえ、出たらまず服を何かしら用立てたほうがよさそう。
腰回りの切断面は本当の意味で間に合わせだ。その補修も含めて――
「ふむ、ぷろじぇくとあるひゃい……?」
いきなり怪しい単語だ。
慌ててスマホを取り出し――ボイスレコーダーON。
現在進行形の開発計画があるのだろう、くらいは推察できたが。
先日のアニメの如き武器群といい、内部構造といい――
理解の埒外の単語は語感から判断するにしても。
中々に『碌でもない』計画ではあるようだ。
特に止めることもなく――なんせ暇だし。長そうなのでパイプ椅子を引き寄せて座りなどしながら。
……一通り語り終えたと見えるタイミングで。
「――はい、成程。概要は理解しましたけれど。
今度は貴方の事について、覚えてること、分かること。教えてもらえません?」
■RK207 >
何時間語り続けたのか
疲れを知らない機械の体は一休みもすることなく自身の【説明書】をよみあげた
本にすれば百科事典くらいの厚みになりそうである
「私のことですか」
やはり少し間を置けば
「プロジェクトアルヒャイver1.012―――」
そう聞かずとも先ほどと一言一句同じだと気付くだろう
要するに自身の仕様以外のことがわからないのだろう
■蕎麦屋 > 「あー……はい、ありがとう。」
長いといっても1、2時間かと思えば。
数時間ぶっ通しとは――ただ、おかげでどういう構造かを含めて大まかには理解できた。
――スマホの容量大丈夫だろうか。
そして聞いたとたん再び始まる二回目――
「うん、ストップ。貴方の性能諸元が聞きたいのではなくて。
――現在の破損状況と、稼働に支障は?貴方の個体識別名称は?そういうのは、わかる?」
止めないとプラス数時間はちょっと。
更に言えば現在の状態を聞きたかったのだが――
『兵器』として生まれているのなら自己診断系の一つや二つはありそうな気がする。
■RK207 >
先ほどの説明書の中で自己診断プログラムについてもしゃべっていたはずだが
この蕎麦屋、途中で飽きて聞いていなかったに違いない
「自己診断プログラムを開始します
システムプログラ・・・エラー
クラッシュダンプを作製します
駆動系、両膝、腰部に重度の損傷。戦闘機動は不可能です
リペアを行ってください
電気系に軽度の損傷。パスが正しく接続されていません
発電系を停止します
バッテリー15/100
現在のモードはセーフモードです
・・・・・・
極端な機動は現在不可能です
また電気系統にエラーが存在します
給電を止めた場合ののこり稼働時間は3845秒です」
自己診断した上でわかりやすくまとめてくれたようだ
しかし
「名称・・・わかりません」
と困ったような顔をした
首元には207と言う文字が刻印されている
髪をばっさりと切られショートになっているため簡単に見ることが出来る
それに修理の際にもそれは見えたことだろう
彼女自身はそれすらも覚えていないようだ
■蕎麦屋 > 録音してるからいいか、と2時間目くらいから聞いてませんでした。
「で、えー。
腰と膝と駆動系の物理的損傷。追加で内部発電系も不調と。」
あんな爆速単分子刀で真っ二つにされた割に、思ったよりも損傷は軽微のようだ。
「発電系は流石に修理効きそうにないですし。
内臓バッテリーは生きてるみたいですから、暫くはそちらでなんとかですかね。
名称もわからない、と――」
この記憶の混濁がセーフモードの所為ならともかく。
セーフモードで修復が効いていない時点で望み薄だろうか。
「えー……多分ですけれど。207番さんなのですね、貴方。
名前がないと不便ですし――というか。」
名付けてしまっていいものだろうか、とその前に。
「『生まれたて』みたいな貴方に聞くのも変ですけれど。
繋がらなかったネットワークに復帰したいですか?それとも他にしてみたいことはあります?」
なんとなく、聞いてみた。
■RK207 >
「肯定です
・・・・・・
バッテリー消耗を抑えるために待機モードへ移行します
エラー
エラー
給電を止めた場合の残り稼働時間は37665秒です」
単分子刀は分子と分子の間を通り抜け切断する
それはソニックブームを発生させないほど鋭利
そして切断面はとてつもなく鋭く、綺麗で、そのほかの場所への損害を一切と言って良いほど与えていなかった
「のぞみ・・・・・・
わかりません
ですが私は存在意義《命令》を求めます」
だれか(なにか)のため
それが彼女たちの存在意義
したいことが欲しい
それが彼女のしたいことだった
■蕎麦屋 > 「……んー。」
予想通りの答え。
妹さんも同じようなこと言ってましたし。
「私の命令でよいのです?
ネットワークとやらが上位命令者のようですけれど。」
「さて、どうしましょう。そのうち妹さんが迎えに来ると思いますけれど。
――それまで私についてきます?――ついて来い、って言った方がいいかしら。」
首をかしげつつ。確認してみる。
明確な判断基準が≪命令≫しかないのだろうか。
それならば、その基準をいくつか増やすくらいの努力はしてみてもいいかもしれない。
■RK207 > どこまでいっても機械は何かのためにある
自我を持とうと人に似ていようとそこはやはり変わらなかった
だが、生きる意味を、自身の存在意義を求める人間とそれのなにが違うと言えるだろうか
「現在上位権限者は空位となっています
暫定的にあなたをマスターとして登録いたします
名前を登録してください
マスター」
事務的だが肯定と取れる返事
彼女の中には今、なにもない
これから積み上げるしかないのだろう
■蕎麦屋 > 「――ん、なるほど。」
通常なら絶対権限など消えるはずがないのだが。
何もかもが、ない。そういうことなのだろう。
「では、そうですね――。
……」
はたと止まる。
さて、普段名乗るのは蕎麦屋であるし、役割といえば戦乙女である。
名乗らずともヘルヴォルなどと呼ばれることもあるし、その方が都合もいい部分もある。
だが。この子にその手の嘘は教えるべきではないだろう。そんな気がする。
暫くの逡巡の後――
「名前は――『黄昏』ですよ。
あ。でも普段呼ぶ時はマスターか蕎麦屋でお願いしますね。
……あと、貴方の名前も考えないといけないですね?」
■RK207 >
「《黄昏様》
・・・・・・
身体データスキャン......完了
声紋データ 完了
光彩データ 完了
身体データー 完了
登録いたしました
以後よろしくお願いいたします。マスター」
ぺこりとお辞儀をしてみせる
「名前?ですか?」
本人はこれ、でもそこのでも問題は無い
だが呼ぶ方が嫌だろう
あまり関節がうまく動かないのだろう
正座できずに女の子座りのような格好で向き直る
■蕎麦屋 > 「はい、此方こそよろしくお願いします。」
緩い姿勢から、居住まいを正して頭を下げた。
「そう、名前です。
いや、アレ、とかコレ、でも困りはしませんけどね?
年頃の子をそういう風に呼ぶのはちょっと気が引けますし。
名前で呼ぶ、呼ばれる。そういうのは大事なことですよ?」
早速一つ覚えましたね、と言った様子で、指を立てて。
「で、名前――
ロト、というのはどうでしょう?207をひっくり返しただけですけどね。」
■RK207 >
「ロト・・・ロト・・・
ありがとうございます マスター」
そういってにこりと微笑む
二人とも知るよしもないだろうが彼女にとって初めてのプレゼント
全てを忘れてなおその喜びを噛みしめる
■蕎麦屋 > 「気に入ってもらえたなら何より。
これからよろしくお願いしますね、ロト。」
喜怒哀楽はきちんとある――様子。
願わくば、機械的な反射反応ではないことを。
「外に出たらロトちゃん用に服も必要ですし――といっても、暫くは此処で待ちぼうけ、ですけどね。
その間は……本でも読みます?」
その服では外に出せませんし。でも、目下監禁中です。
そういうわけで、座るのにも難儀しているロトの横に、何冊かの本を積み上げた。
児童書やら漫画雑誌やら文学書やら――
「座り辛かったら適当に姿勢は崩して大丈夫ですよ?
寝ててもかまいませんし。」
■RK207 >
「はい。大丈夫ですマスター」
女の子座りのまま勧められた本を読む
スキルにもアクセスできない今これから得た知識がそのまま彼女の武器だ
情報の取得は重要と言える
主に鎖が巻き付いているのを気にしつつも
特に不平を訴えて来るわけでもないのでこちらとしても選択は待機
・・・・・・ファッションであろうか
この主、なかなかにパンクである
■蕎麦屋 > 「大丈夫ならよいですけどね。……あ、そうそう。
疑問に思ったこと、したいと思ったこと。そういうのは遠慮なく言うこと。」
その脚の損傷は私だし、とそっと心の中にしまっておく。
確認ついでに、一つ≪命令≫を追加する。何処まで許可できるかは分らないけれども。
――と、明らかに疑問そうな視線に気づけば。
「――ああ。
服をね、燃やされましてね。替えの服がないだけです。」
これだけ聞くと苛めのようななにか。
好きでやってるわけでもファッションでもありません、念のため。
というわけで、誰か封印を解くか、春にでもなるまではまったり待機でございます。
■RK207 >
読んでいた漫画から顔を上げる
「はい、マスター
その鎖はファッションでしょうか?
服のかわりにしても用をなしていないように思われます」
手を上げて質問
自分の格好を見て言えと言ったところであるが聞き方もストレートである
■蕎麦屋 > のっけから容赦のない一言に若干のけぞった。
「……違います、違います。
替えの服がないだけです。あとこの服は正確には水着というものです。
出れさえすれば着替えもあるのですけど――この鎖、私では外せないのですよね。」
見た目は別段絡んでいるだけの鎖で、解けばよさそうなものではある。
が、そこは強烈な八つ当たりの呪力の籠った一品。八つ当たりの元である私にはどうにもならない類のもの。
■RK207 >
ふむふむとうなずけば
「除去に挑戦してもよろしいですか?」
そういってヨタヨタと立ち上がり近づけば鎖を持ってクイクイと引っ張ってみる
下半身はいろいろとぎこちないが腕まわりに至ってはほとんど問題ないようにみえる
反対側はどこに繋がっているのであろうか
とにかくなにやら主をこの場所に縛っているようである
■蕎麦屋 > 「はい、分かってもらえてなにより。断じてファッションではないのです。
ん?――ええ、構いませんけれど。」
下半身はやはり、動作が危うい様子。
パイプ椅子から立ち上がりかけたが――過保護か。と座り直した。
鎖は、五行でもって練り上げたものを北欧の神器に擬えたもの。反対側は湖の底に埋まるように繋がっている。
腕の一本でも犠牲にすれば自力で外すのも不可能ではないとはいえ、そこまでする必要もない、という判断でそのままにしていたのだが――。
魔術的素養があれば、あるいは魔力を帯びた生物であれば、その危うさも効果を及ぼすかもしれない。
だが、どちらもない者からすればただの絡んだ鎖でしかない。
■RK207 >
許可が得られればくさりを掌ではさみ
「モードを巡航《アクティブ》から戦闘《ミリタリー》へ
アクティブデバイスを起動
グラビトンを解放します
注意してください
カウント3.2.1」
掌に挟まれた部分が一瞬見えなくなる
重力素子と呼ばれるそれが重力崩壊することで生まれたマイクロブラックホール
空間の穴とも言えるそれに全てが飲み込まれる
丈夫なだけの鎖などひとたまりもない
しかし極小たるそれは自分に接する部分だけを飲み込むと即座に消滅する
エネルギーの放出による発光
パパパッと閃光が四度
鎖には完全な球形、逆に歪な穴が穿たれるだろう
軽く引けばたやすく鎖は引きちぎれる
通常リミッターがかかっていて使うことの出来ない機能
だが今の彼女には関係の無いことだった
■蕎麦屋 > 「……うん?」
あ、何か知らないけどとにかく拙い。と思った時には時すでに遅し。
音などなく、しかし眩い閃光は『何かをした』事だけは理解させる。
閃光の後には綺麗に球形の綻びが生まれていた。
そうなれば自身で引きちぎるのも容易で――
ばらばらと地に落ちた、と同時に物質としての形を、魔術としての組成を崩された鎖はそのまま形を保てず、崩れていく。
『黄昏』では魔狼は引きちぎっているのだからできないことはないのだろうし、実際やってもよかったのだが。
こうも手際よく、安易にやられてしまうと。
――ああ、先刻の『説明書』の中の機能の一つだろうか。。
あると知っていれば理解は早く。
「――えーと、ロトちゃん?
そういうのは安易に使わないように。
自分の身に差し迫った危険があった場合か、私の許可がない限り使わないこと。
危ないから。周囲にとっても貴方にとっても。分かった?」
四日ぶりくらいの自由の身に、軽く首を鳴らしながら、釘をさしておく。
誰かが目撃すれば大騒ぎになるだろう。
■RK207 >
「はい。了解いたしました」
放出された光と熱で少し焦げた掌をパタパタしながらこたえる
たしかに町中でマイクロブラックホールなどおおさわぎになるだろうし
人などに向けた日には必殺になりかねない
だがもちろんデメリットもあり
「残存電力が10%を切りました
モードを休止《スリープ》に移行します」
一瞬で電力を使い切っていた
「申し訳ありません。マスター
電力切れです」
先ほどから電力を供給する屋台が悲鳴を上げていたのは気のせいではきっとない
ぺたんと座り込むと目を閉じて動かなくなってしまった
■蕎麦屋 > 「はい、よろしい――って。ああもう、無茶するから。」
ごく小規模とはいえ現在の科学で行い得ないシロモノを、電気だけで作り出すのだ。
当然の結果といった感じではある。
急激な消費に悲鳴を上げた骨董品は後回しです。
「あまりほめられた行動ではなかったですけど――はい、助かりました。
しばらく寝ているとよいでしょう。」
『落ちる』間際に――頭を撫でたのには、気付いただろうか。
崩れ落ちる前に抱え上げて、、起きた時と同じように、一旦は作業台に寝かしつけて――
■RK207 > スリープモードでも感覚器だけは動いている
「・・・・・・」
とはいえそれを知らせる部分は動かない
きっとこのことは彼女の胸に秘められたままになるのだろう
横になった姿はただ寝ているようにも見えた
■蕎麦屋 > 「さて――それじゃ、帰りますか。」
拘束さえなければ、あとは気楽なもの。
『取り出した』シャツとジーパンを水着の上から着なおして。
工場のような惨状の工具の山をスマートフォンへと次々に放り込んで片づけていく。
屋台も片づけかけて、とまる。
「あ、これはしまえませんね。」
充電コードとつないだまま。流石に外すわけにもいかないので――
「よっこらせ、と。」
両肩に通すように屋台を担ぎ、眠っているロトを両手で抱え上げた。
そういうわけで――
あとは凍った湖を蹴り砕くだけなので他愛もないこと。
淀んだ毒気は湖の底に。
――変なモノの一匹や二匹は生まれるかもしれないが、そこは秩序側の方に頑張っていただく事として。
数日ぶりに帰路についた。
ご案内:「転移荒野・凍湖の底」からRK207さんが去りました。
ご案内:「転移荒野・凍湖の底」から蕎麦屋さんが去りました。