2017/04/29 のログ
■イチゴウ > 「おお。いつぞやの猫耳!」
目の前の少女は別件で共闘した人物だ。
非常に卓越した剣の技術とそれを生かしきる
スピードを持っている。これは心強い。
「あまり気乗りはしないが
一旦上陸させた方がいいかもしれないな
本体が見えないと手のだしようがない。
最もその場合少なくともコンテナ地帯までで
進撃を押さえないとゲームオーバーだが・・・」
イチゴウは次々と海面を突き破って
現れる触手を前に分析しながら
そう淡々とステーシーに告げる。
■ステーシー >
「今日は怪異対策室三課として参戦よ」
「…確かに気乗りはしないわね、漁船もコンテナの中身も資源だもの」
でもここで触腕と無限に戦えるわけではない。
海の中の、恐らく巨体に一撃を浴びせる技があるわけでもない。
イチゴウの作戦は残念ながら合理的だ。
「それじゃ一旦下がるわよ、『遊び』が終わったらいよいよ上陸してくるでしょう!」
黒刀を握ったまま下がっていく。
釣り人が残した自転車が後方で拉げて潰れる音がした。
自分を攻撃していた存在が下がったのを感知したのか、怪異が海を割って姿を現す。
それはクラゲのような、なだらかなモスグリーンの頭部を持つ。
それは怪獣映画に出てくるモンスターのような、無数の触腕を持つ。
それは――――濁った虚無とも形容できる、黒の瞳を持つ。
姿を見せただけで大波が立つほどの巨体。
瘴気染みた腐敗臭が、あたりに漂った。
「うえ、見ただけでサニティポイントがなくなりそう」
「イチゴウさん、ひきつけて倒すわ! 現場でのプランは以上ッ!!」
走りながら追いすがる触腕を切り払っていく。
■イチゴウ > 大量の水が打ち上げられたかと思えば
そこに現れたのはまさに巨大な怪物。
まるでヘドロのような異臭が一面を支配する。
「・・・!」
素早く次の手を打ったのは怪物の方。
巨大な触手をしならせてイチゴウに向けて
叩きつける。それも2本。
触手は凄まじい音をたて
アスファルトの路面をイチゴウごと叩き潰す。
一見もうダメかと思われた光景ではあったが
良く見ればイチゴウは
潰されたアスファルトの下で
叩きつけられた触手を受け止めていた。
「どうにかして隙を作れないか?
触手が次々と飛んできて背中の武装が使えん。」
大きめの声量で触手を切り伏せている
少女に向けそうリクエストする。
この触手自体、近距離用のカッターで
容易に切断できるがそれはこの巨大な怪物を
仕留める決定打とはなりにくいだろう。
■ステーシー >
「任されたッ!!」
イチゴウの言葉に前に出る。
そしてイチゴウを押さえつけている触手を斬り飛ばし、跳躍した。
「バントライン一刀流………」
頭から地面に落ちながら精神統一。
そして一気呵成に抜刀一閃、剣気を風の刃として放つ。
「神刀(じんとう)ッ!!」
怪異の目と目の間に切れ目が走り、黒い血潮が吹き上がる。
すぐに猫の身のこなしで反転着地、刀を小さく振る。
「今よ、イチゴウさんッ!!」
彼の火砲ならばあるいは、有効打を怪異に与えられるのではないだろうか。
希望はまだ、ある。
■イチゴウ > ステーシーによって押さえつけられていた
触手が切り払われるとイチゴウはすぐさま跳躍し
やや後方へと距離をとる。
「助かったぞ!猫耳!」
そうして背部に眩しい光と共に
イチゴウのボディには
不釣り合いな大きさの筒が現れる。
これはTOW 対戦車ミサイル。
現代戦車を吹き飛ばすこのミサイルを持って
彼女が切りさばいた部位を撃ち抜けば
少なくとも何らかのダメージはあるはずだ。
「ようし。照準完了。」
イチゴウがそう呟けば凄まじい空気音と共に
背部の筒から煙を引きながらミサイルが
発射される。ミサイルは小刻みに揺れながら
怪物の目の切れ目へと一直線に飛んでゆき
次の瞬間怪物の頭部が爆炎に包まれる。
「命中確認。」
100メートルあるかないかの距離での弾着、
凄まじい音と空気が揺れるのを感じられるだろう。
■ステーシー >
「どういたしまして……!」
ミサイルが発射される。
現代科学の火は、異世界からの来訪者に通じるか。
弾着、爆炎が舞いあがり、音と衝撃に身を震わせた。
「うあー、耳キーンだー」
クラクラしながらもしっかりと怪異を見据える。
その時、足元に伸びてきていた触手が足首を捕まえた。
「!?」
間に合うか。
刀を振るう瞬間、左足首の骨が砕かれた。
「いっ……!!」
即座に触手を斬るも、重傷だ。その場に伏せてしまう。
怪異はミサイルの直撃に体のあちこちを灼き焦がしながらも。
体色をモスグリーンから薄い赤に変化させながらこちらに迫ってきていた。
怒っているのか。ならば確実に効いている、しかし。
「あ、ぐ………!!」
■イチゴウ > 「まだ歩けるか・・・!」
700mmの軍用装甲を撃ち抜くミサイルを
傷口に喰らってなお進むとは。
やはり怪物といった所か。
「次で決める。」
背部の発射機に重々しく音を立てながら
次のミサイルを装填しようとするが
ここで一つの問題が発生した。
触手が彼女の足を掴みそのまま地面へと
伏せさせる。恐らく骨をやられたか。
このままのんびり再装填していれば
彼女の身が危ない。
「仕方がない!強襲モード!」
背部の発射機を発光と共に消失させ
倒れている彼女のもとへと突っ込む。
彼女を叩き潰さんとする触手を数本
カッターで切り裁き横へと距離を取れば
怪物の全触手がイチゴウへと向けられる。
前両足のカッターで切り、ある時は自らのパワーで
強引に叩き潰し、迫りくる触手を
ありとあらゆる手で潰していく。
そしてそこはカッターのけたたましい金属音と
アスファルトが破裂する音が支配する。
■ステーシー >
ああ、私はイチゴウの負担になっている。
恐らくミサイルは効く。
なのに、私が足を引っ張っている。
諦めたまま俯いていて。
戦場に立つ覚悟があるとはいえない。
諦めを超えた場所にこそ、ハッピーエンドはあるのだから。
ゆっくりともう一本の刀、『旋空』を抜く。
次の瞬間、目の前に貌のないネズミのような醜悪な幻影が現れた。
それは、旋空に宿る神。夢を司る神、アルテミドロス。
『あれは違う世界の神であるな』
「違う世界の……神?」
『神格低く、動物並に堕落した存在であるが』
目の前でイチゴウは全ての触腕をひきつけてくれている。
立ち上がりたい。
立って、戦いたい。
『我が贄よ、善き夢を見るか。悪しき夢を見るか』
「決まってるでしょう……私はハッピーエンドしか夢見ないの」
『よろしい、ならば叫べ。我と接続するための言霊を』
白の極光が周囲に満ちていく。
足首の骨折が癒えて、自然と立ち上がれた。
「……プログレスッ!!」
http://guest-land.sakura.ne.jp/cgi-bin/uploda/src/aca1084.jpg
剣の聖女。神との約束を果たし、順わぬ神へと挑む。
黒刀と旋空の二刀流、でも今の姿なら。
「奥義………」
走りながらイチゴウを追う触手を全て切り払い、そのままの勢いで切っ先から出る波動がさらに加速させていく。
足元のアスファルトを削りながらブレーキを踏み、強い溜めと共に二刀を振りぬいた。
「亜神・星薙ッ!!」
二条のエネルギーの波が、巨大に膨れ上がりながら怪異に直撃した。
それでも、怪異は怯んだだけだ。圧倒的タフネス。
■イチゴウ > 触手の相手をしていれば
骨折していはずの少女が再び立ち上がる。
それは前に共闘した時に見た
神聖な光・・・それは覚悟か。
そして少女が放った強烈な一撃を受けても
この怪物は怯みはするが消えてはいない。
しかし襲い掛かる触手が全て切り払われた。
これは彼女が与えてくれた最大の攻撃のチャンスだ。
ミサイルは威力は高いが発射に準備がかかる、
ならば別の方法だ。
ーーパワーの上限を解除。
イチゴウの駆動部からまるで故障したのかと
思うほどモーターが唸り声をあげる。
「さあ、行かせてもらうぞ怪物。」
そう宣言するように吐き捨てれば
コンテナを次々と踏み台にしていき
最後にジャンプを決めて
怪物の頭部の真ん前まで距離を詰める。
そうすれば空中で背部に重機関銃を出現させ
「つぉぉりゃぁぁぁーーッッ!!」
ノイズがかった声と金属がこすれあうような
耳を貫く音を辺りに響き渡らせながら
HMT-15は前右足を怪物の頭部へと叩きつける。
叩きつけられた前右足は頭部を陥没、
さらに抉りこむように貫通させ
まるでダムに穴をあけたかのように
黒い血が激しく噴き出している。
「最後のダメ押しといかせてもらおう。」
突っ込んだ前右足からカッターを再出現させ
勢いよく下へと切り裂くとその大きく開いた切り口に
重機関銃の銃身を突っ込みそのまま
60秒間に1100発という暴力的なレートのフルオートで
大口径弾を全弾叩き込む。
そうすればとてつもない量の血が噴き出し
イチゴウの姿はおろか辺りのコンテナまで
その醜い血で浸される。
■ステーシー >
「決まったッ!」
イチゴウの攻撃は圧倒的だ。
重機関銃の火砲には一切の矛盾がない。
純粋なる死の衝撃。
体から色が抜け落ちていき、白くなった体表、大きく揺らいで怪異は倒れた。
「順わぬ神よ」
轟音と共に砕けたアスファルトの粉塵が舞いあがる中。
ゆっくりと歩きながら、異界の神へと近づく。
「この地にあなたの祠を作ろう、どうか…安らかに」
そう呟くと、頭頂部に旋空の切っ先を突き刺した。
命が存在する確率をゼロにする奇蹟の刃。
最終能力、終焉を退けし者の聖剣(エンドブレイカー)。
命そのものを葬ると、元の蒼黒の髪に戻り、二刀を鞘に納めて手を合わせた。
「イチゴウ……助かったわ…」
はぁぁ、と深く重い溜息をつきながらようやく来た風紀・怪異対策のプロたちに向かって歩き始める。
「……報告書、長くなりそうね」
そう言って、笑顔を作った。
■イチゴウ > 「いやいや、キミの一撃が無ければ
きっとコンテナ地帯を抜けられて
多大な被害が出ただろうよ。
MVPはボクじゃなくてキミの方だ。」
怪物の黒い血で染まったイチゴウは
軽くうなずきながらステーシーに
そう言葉を投げかける。
「ハハ、確かに報告書はとんでもない
長さになるだろうね。
それにボクの場合はメンテナンスもメンドイなあ。」
イチゴウは気怠そうにそう呟く。
メンテ関連の話をしているがあれだけの質量の
触手に叩きつけられてもなお装甲に傷が無い所を
見れば戦車の正面装甲並みの硬さは
伊達では無いだろう。
そうして一連の怪異の終息に一つの貢献をした
戦闘ロボットは風紀本部へと帰還していくのであった。
ご案内:「常世港」からステーシーさんが去りました。
ご案内:「常世港」からイチゴウさんが去りました。