2017/09/26 のログ
■藤巳 陽菜 > 「ええ、この薬さえあればとりあえず人間の足に戻る事が出来るわ。
いくらか制限はついてるけど元に戻るための第一歩って感じね。」
元の身体に戻る。それが陽菜のこの島に来た目標。
その為の第一歩がこの薬だ、異種族が身体を人に変じさせる薬。
様々な童話なんかにも出て来た由緒正しき一品である。
「ありがとう、でもこれで切れるの?」
ノコギリでも難しかったその根に受け取ったナイフを当てて軽く引く。
するとそれは引いた線に沿ってストンと落ちた。
「…切れ味良さすぎない?」
何の為に持ち歩いてるんだろうという事を考えないようしつつ…。
おっかなびっくりそれで根っこを切ってしまえば
全部の材料を大きめの釜に突っ込む。鍋とかで無くて釜に…。
…そして火を点ける。
「あとは適当に混ぜてれば完成…らしいわ。」
レシピを写したルーズリーフを見ながら言う。
■柊 真白 >
ふうん。
(人間の脚にまだ拘っているらしい。
気持ちはわからなくもないし、彼女から聞いた生い立ちを考えれば当然ではあるのだけれど。
切れるの、との問いには無言の肯定。
いいから使ってみろ、と目で訴えて。)
切れないナイフなんて何の役にも立たない。
ナイフと頭は切れれば切れるほど良い。
(ほんの僅かなドヤ顔。
彼女が釜へ材料を入れている間に、こちらはナイフを回収。
ハンカチで小さなゴミを拭い、スカートの下にしまう。
長いスカートを大胆にたくし上げて。)
適当で良いの?
(適当すぎやしないか。)
■藤巳 陽菜 > 「まあ、その通りなんだけど…
でも、よく切れるナイフが役に経つ機会なんて少ない方が良いじゃない。」
…今、少しってドヤってなった。上手い事言ったと自分でも思ったんだろう…可愛い。
確かに切れないよりは切れた方が良いと思う、頭もナイフも…
それはそうだが、例えば木を切るならノコギリが食べ物を切るなら包丁がある状況の方が良い。
例え自衛のためのものだとしてもその長い刀も鋭いナイフも使わないで済むほうが良いと思う。
「…適当らしいわ。量さえ正しければいけるって。
…後はピンクの煙が上がってきたら完成よ。」
5釜に砂糖以外の具材を突っ込む。この際に好きな呪文を唱えながらかき混ぜると良い。
注)笑い声も工夫すると尚良い。
そんな事が書いてあるがまあ、気にする必要はないと思う。
そうしてるうちに部屋に青臭い匂いが充満しはじめた。
■柊 真白 >
そうだね。
使わないならそれに越した事は無い。
(全く彼女の言うとおりだ。
ナイフもそうだし、この刀だって。
使わないなら使わないのが一番だが、そう言うわけにも行かないのがこの世界なのだ。)
ふうん。
――砂糖は?
(そんなものか。
そう思いながら釜とルーズリーフを交互に見つめていたが、ふと気になった。
さっき彼女は材料を全て釜の中に突っ込んでいなかったか。
ルーズリーフには砂糖以外と書いてある。
聞いてみた。)
■藤巳 陽菜 > …確かに少ない方が良いと思う。
でも、きっと彼女が振るうのは自分を守るためだろうから…。
それなら刃は鋭い方が良い。身を守れなければ刃の意味はないのだから。
「…えっ?砂糖?砂糖は味の調整用に出来た後で入れ…。」
砂糖があるはずの場所にない、入れてしまったな…
モクモクと昇ってくるのはピンクというか紫っぽい色の煙。
これは…。
「…成功してると思う?」
初めて作る薬なのだ、そもそも成功したものが分からない。
色から見れば失敗してるような気はするけど…でも成分は変わらないかもしれないし…。
■柊 真白 >
……。
さあ。
(ピンクといえばピンクだし、紫に見えるといえば見える。
どちらにせよそういったことに詳しくない自分には判断が付かない。
わかるのは、最後に入れるべき砂糖が机の上に無いということだけ。)
――飲んでみたら?
効果はあるかもしれない。
(無責任な言葉。
飲んでなにか起こるのは自分じゃない。
ふい、と思いっきり明後日の方を向きながら。)
■藤巳 陽菜 > 「流石にこれは飲まないわよ!?
失敗した料理とかならともかくこれはちょっと…。」
流石にこんな分からない薬を飲むわけにはいかない。
あまりにもリスクが高すぎる…でも、もしも成功していたら。
そう思うと無下にも出来の無い…。
クルクルとかき混ぜて、かき混ぜて…。
やっぱりドロッてしてるな…。
「…取っておいて他の誰かで試してみましょう。」
出したのはかなり悪い選択肢だった。
■柊 真白 >
自分の作ったものにはちゃんと責任を持つべき。
(人事だからと好き勝手に言う。
横を向いたまま。)
仮にも魔術に携わるものならば、まずは自分の身を持って成果物を確認するのが筋と言うもの。
ましてや他の誰かで実験するなんて、それをあなたの師匠が知ったらなんて言うか。
(本当にもう好き勝手に言っている。
魔術に携わるものとか言っているけどそもそも自身は魔術的なことに関わりはないし、彼女の師匠とやらにもあったことはない。
ただそれを飲むとどうなるのかと言う興味があるだけだ。
ただただ純粋な興味だけ。
顔は見せない。)
■藤巳 陽菜 > 「…確かに手伝ってもらったりしたのが無駄になるのは嫌だけど。」
転移荒野に付いて行ってもらったり。
本を探すのを手伝ってもらったり。
色々な事を手伝ってもらったのが無駄になるのは辛い。
「…ぐうの音も出ない意見だけど。」
確かに他人で実験したとか知られたら怒られるだろうし
そもそも、変身魔法は駄目って言われている…。
「ねえ、ちょっと柊さんこっち向いてみて?
何で顔逸らしてるの!?もう!!
あーもう!いいわ!飲んでやるわよ!飲めばいいんでしょう!?飲めば!!」
そう言うとコップを釜に入れてその液体を掬い上げる。
…粘度が高いそれを一気に飲み干した。
「…甘っ!!」
始めの感想はそれだった。
■柊 真白 >
別に。
特に理由があるわけじゃない。
なんとなく。
(適当な理由を付けて頑なに拒否。
決して愉悦顔をしているからじゃない。
じゃない。)
あ。
(しかし彼女がその薬に口を付ければそちらを見る。
彼女の口の中に消えていくそれを眺めて、)
――大丈夫?
(一応、心配はする。
身体に異常がありそうなら保健室まで走るつもりではいるが。)
■藤巳 陽菜 > 「絶対、ニヤニヤしてるでしょ!もう!」
彼女はこの状況を楽しんでいる!
まあ、一人でやっていてもどうせ失敗していたし…。
笑い話になる分まだましかな…。
「ええ特に…あ、熱い!熱い!熱い!」
下半身からの激しい熱感。
次いでギチギチと音を立てて筋肉痛のような痛み。
その蛇の下半身は見る見るうちに短く短くなっていき
そして、足が、足が生える。
…その姿は何というか…その…蜥蜴の様だった。
ほどほどに短くなった身体に四本生えた足。
種族名を付けるとするならばリザードタウロスといったところだろうか?
「はぁ…はぁ。これは…失敗ね。
…普通に失敗だわ。」
息を切れさせて、机に上半身を倒れ伏しながらいう。
■柊 真白 >
――足、生えたね。
(確かに脚は生えた。
若干意図しない形ではあるだろうが。
ともかく脚は生えたのだ。)
なんていうか。
――しゅーる。
(精一杯の慰めである。
彼女の肩に置こうかどうか迷っているように、右手を空中でふらふらさせて。)
とりあえず、一緒に砂糖を混ぜるとどんな失敗になるかがわかったわけだし。
それも収穫。
同じ失敗をしなければ良い。
(失敗は成功の母と言う。
無駄な失敗じゃない。
そういえば、自分がコレを飲んだらどうなるのだろう。
脚がもう一対生えるのだろうか。)
■藤巳 陽菜 > 「…確かに生えたけど…。
新種の魔物って感じよねこれじゃあ…。」
まだラミアの方が安定感はあった。
なんだろう…このがっかりする感じの変身は…。
「ホント、そんな感じよね…。」
ああ、しゅーる。
…どうでもいいけどこれ足の指のところが吸盤になってる…。
壁とかも登れるかもしれない。
「多分砂糖が入ったせいで材料が混ざり切らなかったから反応が起こらずに成分が弱くなったのが原因だと思うの。
だからこんな中途半端な感じに…。」
ちなみに普通の人間が成功した薬を飲んだ場合も足が人の足に変わる。
いや、見た目としては変わらないけど…。
失敗作を飲むとどうなるかは分からない…恐らく足が四本になると思う四脚歩行だ。
「まあ、でも月の光浴びたら元に戻るらしいから問題はないと思うけど…。」
失敗作でも恐らく同じ材料を使っているから問題なく戻れると思う。そう信じたい。
■柊 真白 >
吸盤……トカゲじゃないんだ。
ヤモリとも違う。
(トカゲは吸盤がない。
ヤモリは壁を上れるが、やはり吸盤ではない。
謎の生命体だ。)
ふうん。
でもこれはこれで便利そうだけど。
(壁とか登るのに。
そんなことが便利だと思う機会があるかどうかは疑問だが。)
月の光で戻るんだ。
妙にめるへん。
(魔術と月――と言うか天体は色々と密接に関わっているらしいが。
月光を浴びると戻るという言葉だけ捕らえれば、かなりメルヘンチックである。)
■藤巳 陽菜 > 「何なのかしら…タコ?」
どう見てもタコではないが…。
分からないキメラ的な生物なのかもしれない。
「確かに蛇よりは便利かもしれないわね…。
バランスも安定してるし。」
試しに歩いてみる。
久しぶりに足を動かしている感じがする…歩く度ペタペタというのは変な感じだが。
何でこんな自然に四本足を動かせるんだろう?
「魔女の魔法だからそれはもうメルヘンよ。
何で解けるのかは詳しくは知らないんだけど。」
…入っている根の作用が大きいらしい。
詳しくは知らないけど!
「まあ、勿体ないし残りも瓶に詰めておきましょう。
もしかしたら何かに使えるも知れないし。
柊さんも持って帰る?」
そう言うと…空き瓶に粘度の高い液体を詰め始める。
■柊 真白 >
軟体動物じゃないと思う。
どう見ても骨格あるし。
――地に足付けてる方がやっぱり便利だと思う。
(ちゃんと脚があるから蛸じゃないだろう。
蛇の身体は接地面は広いが体の中心になる。
脚なら外側になるので、やはり安定度ではそちらの方が上だろう。)
魔女……。
――「人間」に戻るのは、諦めたの。
(以前あったときに感じていた魔力の変化。
魔女と言うのなら納得だが。
――魔女と契約したのなら、それは。)
いらない。
脚が増えても仕方ないし。
(自分は二本足が良い。
下手に増やして速度を落としたり身体の操作が狂うのも嫌だ。
ふるふると首を振る。)
■藤巳 陽菜 > 「じゃあ、何なのかしら…?
ヤモリ、イモリ?どっちがどっち…。」
ヤモリじゃないとするならばイモリなのだろうか…。
…タコでない事は確かだ。
「…まずは身体よ。身体を元に戻すの…その為なら手段は選べない。
蛇の身体に、あの怪物の身体に、精神の方が引きずられないとも限らないじゃない。」
魔女であるという事。この島ならきっと易く生きていける。
本土であっても蛇の身体よりは生きやすい。
陽菜は魔女になったという事を正しく理解できてはいないのかもしれない。
「そうよね、そうそう足が足りなくなる事とかもなさそうだし…。」
空になった釜を洗い始める。
粘つく薬品がなかなか落ちない。
■柊 真白 >
(イモリかヤモリかはどちらでも良い。
どちらでもないだろうし。)
仮に。
私が今の私とは違う身体になっても、私は私だと思う。
大事なのは見た目じゃなくて、自分の心。
――貴方は、そうじゃないように思えたから。
(吸血種だろうが人間だろうが、大事なのは自分が自分であることだと。
自分をしっかり持っていれば、見た目に拘る必要は無いと。
長く生きているからわかったことだ。)
何が大切かは一人ひとり違うけれど。
バケモノの身体から人間の身体に戻るために人間じゃないモノになるなら。
ちゃんと覚悟をしておいた方が良いと思う。
(彼女にはきつい言葉かもしれない。
人間に戻りたがっている彼女に、貴方はもう人間ではないと告げるのは、酷なことなのだろう。
それでも、事実は事実として受け入れるべきだ。
まっすぐ、感情の無い視線を彼女に向けて。)
■藤巳 陽菜 > 「実際になった事がないからそんな風に言えるのよ!
…こんな身体になって心を変わらずに持つなんてそんなの無理よ!」
髪型一つで、服装一つで気分が変わる。心が動く。
一キロにも満たない体重の増減に一喜一憂する。
そんな少女に突きつけられた変化は余りにも大きく唐突で非現実的だった。
生活環境は一変し、人間関係は白紙に戻って、見知らぬ土地に投げ出された。
そこで出会ったそれに縋った。縋らずにはいられなかった。
それに希望を見出した、伸ばされたその魔女の手を掴まずにはいられないほど弱かった。
「もし、元の身体に戻れても人間じゃないモノになるって言いたいの?
…柊さんの言う人間ってなんなの?皆と同じような身体なら人間なんじゃないの?」
元の身体に戻って元の生活に戻る。
それが陽菜の望み。陽菜にとって大切な事。
…元の身体にさえ戻れれば元の生活を取り戻せる…陽菜はそう思っているのだ。
■柊 真白 > ――そうかもしれない。
私が処理出来る感情は、あなたにとっては簡単じゃないことなんだと思う。
(彼女の言う通り、自分は生まれてからずっとこの身体だ。
下半身が蛇になったこともないし、そこからトカゲのような脚が生えてきたことも無い。)
でも。
魔女になって形だけ人に戻ったからといって。
受け入れてもらえるものじゃない。
(むしろそれはより遠ざけられる結果になる可能性だってある。
人は――いや、生き物は自分達と違うものを排除するのが自然なのだから。)
お弁当に塗料をぶちまけられる。
私物を捨てられる。
教科書を燃やされる。
――自分と違う生き物というだけで、人は残酷になれる。
(同じ形をしていれば、同じ生き物だと思われることも多いだろう。
だけど、ちょっとした切欠でそんな関係はすぐに崩れるのだ。
最初からわかっていても。
隠していたのなら、尚更。)
私は人間じゃないし、あなたは人間には見えない体をしているけど。
私はあなたを友達だと思ってる。
それでは足りない?
■藤巳 陽菜 > 「受け入れられるかどうかは見た目だけの問題じゃないって事?
でも、第一は見た目だと思う。」
魔女、それこそ迫害の象徴とも言えるかもしれない。
魔女というだけで迫害するには十分だ。
人間だった?いや、死んだからには魔女だった。
迫害は確かにある。魔女が受け入れられるかどうかは分からない。
魔女がどうでもこの蛇の身体は、この身体は絶対に受け入れられない。
何故なら、陽菜が…この身体の持ち主である少女が、受け入れられていないからだ。
自らが受け入れていないものを人に認めさせられるものか。
「……。」
いや、違う。人は自分と同じ生き物であっても残酷になれる。
弱いから、強いから、綺麗だから、不細工だから。
目立つから、地味だから、正しいから、間違ってるから。
…人と違うというだけで矛先を向けられるには十分だ。
「柊さん…あなた人間じゃなかったの…。
…そっか、それなら色々と合点がいくわ。」
確かに色々とおかしいと思うところはあった。
歳の割に大人びてるし…。
肌も透き通るみたいに綺麗だし…。
「足りない訳じゃないのよ。
こんな身体でも友達って言ってくれるのは嬉しい…。
ただ、でもごめんさい。それだけじゃ足りないの。
…私は、私はこの身体が嫌い。
例え人が褒めてくれたとしても、個性だって言ってくれても…。
そのままを受け入れてくれても、全く気にしないでくれても…。
…それでも私はこんな身体いらない。私は元の身体を取り戻したい。」
もし、全てが元に戻らなくてもそれでも…それでもこのままでは自分が自分を受け入れられない。
■柊 真白 >
そう。
なら、これだけ言っておく。
元の身体に戻れても受け入れられなかったとしても、決めたのはあなた。
それを誰かのせいにしたり、あなたに道を示した人を恨んだりはしないこと。
あなたが決めたことの結果を、ちゃんと受け入れること。
(誰にだってコンプレックスはある。
顔だったり体型だったり。
それをどうにかするのは個人の勝手だけれど、それが解消したところで自分の望む結果になるとは限らない。
覚悟を決めるとはそう言うことだ。)
自分がどうあるかを決めるのは自分。
バケモノの身体をしていても自分は人間だと思えばそうだし。
人の身体をしていてもバケモノだと思えばそうなる。
どういう結果になっても、あなたがあなたを人間だと強く思えば、あなたは人間。
忘れないで。
(珍しく――本当に珍しく、長いセリフを彼女に告げて背を向ける。
言いたいことは言い終わったというように教室の入り口まで歩いていき、)
あなたが私を友達だと思っていてくれるなら。
さっき言ったこと、誰にも言わないでくれると嬉しい。
――特に彼には、余計なことで心配をかけたくないから。
(僅かに笑って人差し指を口の前にかざす。
つい、クラスメイトからの扱いについて口を滑らせてしまった。
口止めを頼んで教室を後に。
足音の殆ど聞こえないいつもの歩き方で。)
ご案内:「魔法薬制作室」から柊 真白さんが去りました。
■藤巳 陽菜 > 「自分で決めたことなら人を恨んだりしないわ。
…ええ、自分で選んだ道なら。」
もし、後悔を生む結果になったとしても。
それでも、自分で選んだ道なのだから…。
「分かった。忘れない。」
…きっとこれを言った彼女は自らを人間だと思っていない。
人間であることを説きながら、自らは人間であろうとしていない。
こんなにも、人に近いのに人を想っているのに。人外であると
「…でも。」
その笑顔を前にすれば次の言葉が出てこない。
その彼を思った言葉を受ければ首を縦に振る事しか出来ない。
そして、彼女が過ぎ去った後の教室一人の残されて…。
「友達か…。」
ちいさく消え入りそうなくらいの声で呟いた。
ご案内:「魔法薬制作室」から藤巳 陽菜さんが去りました。