2015/06/15 のログ
ご案内:「常世神社お面屋台」に芒さんが現れました。
■芒 > 毎度の事ながら祭典は素晴らしいものだった。
屋台に自分が作った面を並べる。
流行の化け猫の面、女学生月光の面、お多福の面、鬼を模した能面。
どれも私の自信作だ。
中には異能を使って作った面もあるが、力があるものにしかその光は見えないだろう。
ご案内:「常世神社お面屋台」にクラスカさんが現れました。
■芒 > やはり今時、面など流行らないのだろう……。
大勢の人が私の屋台には目もくれず通り過ぎていく。
それでも毎回ここに来て屋台を出すのは、この世界の人間と私のような異世界人が入り混じった不思議な光景が好きだからだろう。
■芒 > 「やぁ、お兄さん。良かったら面を見ていかないかい?」
目についた学生に声をかける。
■クラスカ > (普段は鎮んだ神社も、祭りとなれば様相を変える)
(一通りの取り行いは終わり、祭り客が自由に歩けるようになり、そこに混ざってみる)
(視線は右に左に。金魚すくい、林檎飴、綿菓子)
(祭事自体の荘厳さはともかく、並ぶ店は、日本の一般的な屋台と相違ない)
(そんな中、他の店と同じく、当たり前に並ぶ、当たり前の店舗を目に捉える)
(おたふくの化粧が水で流れたような醜女、酒で顔を紅潮させた鬼……)
(ごく当たり前の面に混じって、いくつか歪な形の面が自己主張をしていた)
あ、いいんですか?
(遠巻きに眺めていたが、声がかかると、物珍しそうに並んだ面に姿を寄せる)
■芒 > 「これは私の個展も兼ねているんだ。
見ていってくれるだけでも有り難い」
今回並んでいる面のうち、異能を使って作ったものは、女学生月光(額に三日月の紋章を宿した黒髪お団子の少女)の面と目立たない白く薄い能面だけだ。
ちなみにこの女学生月光は10年以上前に放送されていたアニメだ。
そして今リメイクされ放送されている。
■クラスカ > 個展ときましたか。店主さん芸術家肌なんだなあ。
すいません、少し触りますね。
(店主に許可を取り、何の変哲もなさそうな、白く目立たない能面を手に取り、表面を撫でる)
(厚い木に似た質感は、プラスチックとも紙とも異なる)
(多少力を込めても圧力に屈さず硬度を主張するところからすると、どれも店主の相当な「拘り」が注入された特注品だ)
(触っていた面を戻すと、改めて尋ねてみる)
お面の受注制作とかって、やってるんですか?
■芒 > 「あぁ、被らなければ触っても構わないよ」
異能の面は使い切りの一度しか使えないので条件をつける。
どうやらこの学生は私の異能入りの面に気づいたようだ。
「その面は被る者を目立たなくする力を持つんだ。
効果は30分で一度きりだから注意が必要だよ」
「受注制作はやっているよ。
ただし、納期は1ヶ月ほどかかる。お代は現物を見てくれてからで構わない」
もしかして受注製作くるか?来るなら嬉しいが。
■クラスカ > (言った手前でも、実のところ面の力が何を意味するかはまでは理解に至っていない)
(店主の面造りにかける情熱の一端を、実物に触れて多少感じただけに留まっている)
(オーダーメイドをやる気らしい店主に、さらに興に乗ってもらうため)
うーん。じゃあ……。
(少し考え込む素振りを見せて、呟く)
お願いしますね。
で、お面はピエロがいいな。
たくさんの人が芸を見て、楽しんで、笑顔になってくれる、喜劇の主役
そう言う風に生きていくのは、とても難しいと思うので、理想だけでもと。
(銀色の前髪から、隠されていた青い瞳が零れる)
(瞳は濃いブルー。吸い込まれそうな、深淵の海の底)
■芒 > ドキドキしながら考え込む学生の次の言葉を待つ。
よし、受注来た!これで勝つる!!
あぁ、いけない、いけない……平常心平常心。
心を落ち着かせ出来るだけ平常心を装って私は話しかける。
「ピエロだな。了解した」
道化の面か。面白い。
道化はどんな時でもその役割を演じなければいけない。
辛い時も悲しい時も。一番難しい役割だ。
学生の青い瞳がとても美しい。
あぁ、これだこの青だ。
道化の涙の色はこの色にしよう。
「私の名前は芒(すすき)だ。
君の名前も聞いてもいいかい?」
■クラスカ > はい、クラスカと言います。
男子寮に住んでいますので、もし完成したらそちらまで来ていただければ。
(ぺこり、笑顔で頭を下げる)
(用事が終わると立ち上がり、次の店を回ろうとして、ふと忘れ物をしたかのように、戻ってくる)
……自分の本心を面で隠し続けて、偽りを演じていると、外れなくて、永遠にそのまま。
泣くことも笑うこともできず、感情の機微にも気付かれない。
やがて孤独の中で発狂死する。
そんな恐ろしい昔話もありましたっけ。
でも。仮面の自分を保ち続けないと砕けてしまいそうな、弱い心の人間もいるんですよね。
ねえ、芒さん。
僕の顔は、どんなふうに見えますか?
(髪を掻き上げたその下の顔は)
(眉も鼻も口もない、全てをどこかに置き忘れた色白ののっぺらぼう)
(―ではなく、ただの顔)
なーんて。ありがとうございました。
ご案内:「常世神社お面屋台」からクラスカさんが去りました。
■芒 > 「クラスカ君、よろしく頼む。
仮面は出来次第そこに持っていくよ。
あぁ、またな」
男子寮か。懐かしい。
ん?戻ってきた?
「……そんな昔話もあったかな。
残念ながら私の作る面にはそこまでの力はないよ」
私は彼に苦笑しながら答える。
ただし、曾祖父ならばそのような面も作れただろう。
呪いの面を打ち続けた曾祖父ならば。
「さぁ?
私には君が普通の学生に見えるよ……って驚かせないでくれよ!」
そう、表面上は。中身は分からない。
何か得体の知れないものを感じる。
けれどそれは口に出すべきことではないし、彼が求めている答えでもないだろう。
少しおどけてみせたが、あれは……。
出来るだけ平常心で学生を見送る。
私には異能と戦う力などない。
■芒 > さて、そろそろ早いがそろそろ店終いだ。
早速帰って頼まれた面を作らねば。
面と荷を葛篭に収め、私はその場を後にした。
ご案内:「常世神社お面屋台」から芒さんが去りました。
ご案内:「流派・俺流道場」に楓森焔さんが現れました。
■楓森焔 > 学園島のどこか。寂れた家屋の中から、大きな破裂音が響いてくる。
吹きさらしの屋内を覗けば、道着を着込んだ少女が手ぬぐいを片手に振り回していた。
「うーん、こうじゃないなあ……」
彼女がそれを振り回すとまるで鞭のようにしなった布が空気を叩き、乾いた音を響かせる。
見事なまでの鞭術にも思えたが、残念ながら彼女にとってそれは得たい成果とは違うようだった。
■楓森焔 > 考えているのは、そもそも人間のための技術ではない。
くらげのような少女と出会い、彼女のように人ならざる身でも扱えるような技を考えていた。
出会った彼女には筋肉があるかは分からないし、そうなると鍛えることも難しい。
やわらかで力が入るかも分からない身体。まったくもって糸口が見えてこない。
「むむ、むむむむむ……!」
あぐらをかいて座り込んで、改めて考えてみる。
流派・俺流は全方位型必殺格闘術。それをこの学園で広めようと思ったら、少なからず人ならざる者に教えることにもなるだろう。
門下生を募集しておきながら、君には教えることはできません、なんてことは彼女のプライドが許せなかった。
「なにか、なにかいんすぴれーしょんがあれば……」
呟きながら、横にごろりと転がった。
まるでだるまのように左右にごろごろと身体を揺らす。
■楓森焔 > 徐々にだるまの揺れは大きくなっていき、とうとう半回転。
頭だけで倒立しながら腕を組んで、
「うむむむむ……」
と唸っている。やわらかいもの、軽いもの。力の入らぬもの。
もう少しで何かを得られそうな気がするのだが。
悩めど悩めど結論は出ず、天地が逆のまま、ゆっくりと目を開いた。
眼下に広がる空を眺めながら、
「だめだー! やはり俺自身がくらげになるしかないのか……!」
などと、トンチキな言葉を漏らした。