2015/08/11 のログ
■奇神萱 > 「ところが俺の墓だ。怒ってくれてありがとう」
「いいやつだよ。あかり。お前はいいやつだ」
至極まっとうな叱責だ。心地いいくらいに。だから素直に従った。
「不死鳥は死んだ。あの夜からこのかた、灰になったまんまだ。ピクリとも動きやしない」
「梧桐律に親はいない。叔父貴が遠くにいるだけだ。はじめから一人で、また一人になっただけだ」
「見かけは違ってるが、だからって音楽の悪魔に見放されたわけでもない」
「何かが変わったわけじゃない。俺の本質はまだここにある」
しゃんと胸を張って、背筋を伸ばして、少し真面目な顔をする。
「教えてくれたのはお前だ。お前たちだ」
『七色』の大女優の台詞回しを思い返しながら声音を変える。
俺の演技はあいからわず残念だが、即興のカデンツァは『伴奏者』だけの専売特許だ。
奏者は浮かんだものを気の向くままに奏でるだけだ。
「不思議なる国をさまよい」
In a Wonderland they lie,
「長き日を夢見て暮らす」
Dreaming as the days go by,
「つかの間の夏は果てるまで」
Dreaming as the summers die:
「金色の夕映えのなか―――」
Ever drifting down the stream—
「どこまでも揺蕩い行かん」
Lingering in the golden gleam—
「人の世は夢にあらずや?」
Life, what is it but a dream?
アリスなんて柄じゃないけどな。
「―――いや。違うね。人の世は、さにあらず」
「夢にあらず。現実だ。ここに生きてる。お前と同じだ」
もう一歩だけ近づいて、目を覗く。
「劇場は潰れた。もうなくなった。『伴奏者』は刺されて死んで、舞台を降りてった」
「俺はお前に音楽をつけたい。普通でいいんだよ。音楽はフツーに生きてる人間のためのものだ」
「さて、もう一度聞くぞ。あかり。お前の目で見て考えろ。俺は何だ? どう見えてる?」
■三枝あかり > 「不死鳥……幻想の演劇団、フェニーチェ…」
墓石は本当に彼女の、いや、彼のものだった。
本質とはなんだろう。彼の本質。私の本質。
最近、何となくわかってきた。
私は異能を発動している時、視界の中に収まっていないものまで。
移動しているものなら視れるようになった。
じゃあ、私の……そして、私の異能『星空の観測者』の本質とは?
彼の、彼女のカデンツァを聴きながら考える。
奏者の本質を。
「……フェニーチェは全ての演者を失ったそうですね」
「噂話ですが、そう聞いています」
「私にとって、あなたは………」
微笑んだ。私だけの笑顔。
「先輩ですよ、梧桐先輩?」
生きていても、死んでいても、そこに存在する物語を誰も否定はできない。
人の世は夢ではない。その通り。
私の異能が私をどんな場所に導いても。
彼の異能が彼をどんな場所に導いても。
この世界ははっきりと存在しているものだから。
■奇神萱 > 「奇神でいい。梧桐はこっちだ」
墓の下を指差す。ひどいブラックジョークだ。
長い長い髪の毛先まで、いつの間にやら黒髪に戻っている。
「俺のことをバイアス抜きで見れる奴はそう滅多といない」
「悪党で死人で、おまけにそこそこ綺麗どこだからな」
真顔で言う。自分を磨くために手間隙も苦労もかかってる。
それだけの自負はある。奏者としての自覚であって、たしなみだ。
「それはともかく。俺は見えづらいんだよ。こんなにも大っぴらにしてるってのに」
「俺がどんな人間なのか、自分の目で見て知ってる奴が必要だ」
「それがおそらく鍵になる。こちら側になるべく多くのとっかかりが要る」
「ある日突然フワっと成仏しないために、この世に打ち込む楔だ」
「とりあえずお前にぶっ刺しとこうと思う」
亜麻色の髪の乙女の手をとって、その甲に口付けを。拒まれなければの話だ。
「がんばって引っぱっといてくれ。地味に命がかかってるんだ」
死んでるけどな、と付け加えて笑った。
「墓参りはここまでだ。一人でくる必要もないぞ。生身で話すほうがずっといい」
「花束も上に同じく。生きてる俺の方が有効活用できるからな」
■三枝あかり > 「それじゃ、奇神先輩?」
相手の顔を覗き込む。
もう黒髪の彼女は、どう見ても普段の先輩。
「あはは……悪党だったかどうかはさておき」
「今は生きてて、綺麗どころなのは間違いないです」
手の甲に口付けされると、顔が真っ赤になって。
「な、な、な……!」
いくら女性相手とはいえ、それをされるとさすがに恥ずかしい。
「もう……ちゃんと絆だって言ってくれればいいのに」
「先輩が成仏しない程度に、これからもよろしくお願いしますね!」
いつだって人間と怪物との境界線は。
絆(ロイス)の純度で決まるのだから。
「わかってますよ、奇神先輩はここにいるんですからね」
「さ、帰りましょう先輩」
人差し指を振って。
「この前、ファミレスで新規開拓したらなかなか美味しいパフェを見つけたんですよ!」
私と彼……いや、彼女が女子寮に帰るまで。
いろんなことを話すだろう。
でも、今はそれを語ることはしない。
時間が止まっていない以上。
未来は可能性に満ちているのだから。
ご案内:「外人墓地」から三枝あかりさんが去りました。
ご案内:「外人墓地」から奇神萱さんが去りました。
ご案内:「通信会話」にやなぎさんが現れました。
ご案内:「通信会話」にシインさんが現れました。
■やなぎ > どこか遠くの人気のすくない所。
薄でので長袖ワイシャツ姿の青年は、軍から配布された小型通信機のマイクを袖にしこませ、スピーカー部分を耳に装着して髪でかくす。
はたから見れば日焼けを嫌うような姿。怪しまれないよう細心の注意をはらって。
―これで準備は完了だ。
少佐から頼まれた情報はすでに入った。
あとはこれを伝えて任務を完了すればいい。
迷いはあったが――
わたしがこの島で最も信頼する人物は、まぎれもなくシイン少佐だけなのだ。
通信機のボタンをおし、少佐にかけた―
■シイン > 『――私だ』
通信機にかけられ、直ぐに通話が開始される。
待ち望んでたようで、待ち構えてたかのようで。
ご案内:「通信会話」からシインさんが去りました。
ご案内:「通信会話」にシインさんが現れました。
■やなぎ > 「女の居場所ですが、――病院に入院しているそうです。」
とある美術教師から教わった、学生街にある病院の名を告げる。
少佐なら突き止めることができるだろうと思って短く、簡潔に。
■シイン > 『――そうか。ご苦労だった、協力に感謝する。』
通信内容は非常に短く、それで切られる。
傍受の可能性も考えれば当然。
通信時間が長ければ長いほど、危険性は高まる。
故に通信を終えた。
時刻はまだ昼過ぎ、そんな時間に訪れても無意味だろう。
昨日は連絡がなかったので行動ができなかったが、今日は違う。
「対話の時間だ。」
彼は向かう。
ポッカリと空いた穴を埋める為に。
ご案内:「通信会話」からシインさんが去りました。
■やなぎ > 「――」
通信が切れた。聞きたいことがたくさんあったのに。
通信機をとり、腰のポケットに片手ごとつっこむ。
本当にこれでよかったのだろうか。
何が起きてるのかほぼわからぬ状況に取り残された青年は。
「…少佐、信頼してますから。」
そう口にした。
ご案内:「通信会話」からやなぎさんが去りました。
ご案内:「常世大聖堂」に『アリアンロッド』さんが現れました。
ご案内:「常世大聖堂」にサヤさんが現れました。
ご案内:「常世大聖堂」からサヤさんが去りました。
ご案内:「常世大聖堂」に『スパルトイ08』さんが現れました。
■『アリアンロッド』 > 鐘が鳴っている。
外は闇。
眠らぬ学園都市とはいえ、昼と違って学園地区に人気は少ない。
その中を、一角から鳴り響く鐘の音が通り抜けていく。
それを直下から聞く。
もう閉門した聖堂の中は、しかし蝋燭が灯り、少女の顔を浮かび上がらせている。
シスターのような。
シスターでない者。
動きやすいようスリットが入った黒い裾をバサリと揺らして、堂の真ん中に立つ。
来訪する人が普段出入りする門は閉まっているから、それを背に祭壇側を向いていた。
祭壇の裏手側、裏口を入ってやってくる相手を待っている。
■『スパルトイ08』 > 退院の際に渡された公安との連絡用端末、今まで沈黙を保っていたそれに届いた突然の呼び出し。
指定場所は学園地区の教会、裏口から入るようにとの指示。ご丁寧に地図付きで、到着と同時に自動でメールは消えるそうだ。
恐る恐る、といった様子で裏口の扉を押す。軽く軋みながらも扉は開いた。
後ろ手に扉を閉め、蝋燭の光に照らされた空間へと足を踏み入れる。
その目は少々険しく、前触れもない呼び出しに怒っているようにも見えた。
「なんの、御用ですか。」まず口を開いたのはこちら、何の用件も伝えられていないことへの苛立ちか、口調にトゲがある。
■『アリアンロッド』 > 「まずはご退院おめでとうございます」
不機嫌そうに現れた“委員会の協力者”に腰を折った。
普段『第九教室』公安委員として行動する時には、額から左右に下ろした普通のヴェールの他、前面から顔を覆う薄いものをかぶっているが、今はそれもない。
上げた顔から、オレンジ色の瞳が相手を見る。
浅く半眼。だが微笑。
「そしてようやく動けるようになられたのですから、そろそろ先のお話をさせていただこう思いまして」
■『スパルトイ08』 > 「それは、どうも。」目を閉じ、嬉しくもなさそうに、つぶやいた。
スパルトイ08、それがサヤに与えられた名前。蒔かれし者、いくらでも生えてくる使い捨てということだ。ご丁寧に通し番号らしきものまで振ってある、どこまでも人を物として扱う名前。
ため息とともに目を開く、茶色の瞳が、視線を受け止めた。微かに眉間にシワ。
「先の話、ですか。私をどのように使うつもりなんですか?如何様にもどうぞ、私に拒否権はないでしょうからね。」両手を下げたまま、指の先を合わせる。目は決して逸らさず、相手を見つめ続ける。反骨の現れだろうか?
■『アリアンロッド』 > 「そうですね――」
いらだちをぶつけるような視線を、真っ直ぐ見つめ返したまま、軽く首を傾げた。
微笑は変わらない。
「私達の教室の目的は『門』の調査ですわ。
といっても『門』自体は、この世界のどこかで今もひっきりなしに開いています。
確か貴女も『門』を通りこちらにやってきた方……でよろしかったですね?
島内に限れども、そう言った全ての『門』の開閉を把握することは現実問題として不可能……
とはいえ、『門』を越えて何が来るかは常に未知数です。
極端なことを言えば、今日の夜が開けるまでに学園の中心部に半径50kmを焼き焦がす火球生命体、が現れないという保証はどこにもございません」
そこまで言って軽く眉を上げた。
「だから、備える。
その為に私達がいる。
危険な『門』の発生を予知・予測し、出来うるならば予防・対策する。
そしてあるいは――――」
相手の瞳の奥を、覗きこむように、
「こちらから門を開き危険を呼びこむ人物を阻止する。
クロノスや、恐らくグランドマスター、
そして“腐条理(アクトオブゴッド)”鳴鳴のような」
■『スパルトイ08』 > 相手の問いには「ええ、突然別世界に放り込まれ、自分を失い、挙句に怪しげな組織の走狗となった。言葉にすら苦労する哀れな異邦人ですよ。」目を閉じて自嘲気味に笑う。
「なるほど、『門』への対処が、主な活動というわけですか。」印を組むかのように、合わせた手の指がせわしなく動く、まるで何かを我慢するかのようだ。
鳴鳴の名前が出れば、一瞬だけ、視線を宙に彷徨わせた。
それをごまかすかのように、また目を閉じる。
「生憎私には、そういった能力はありませんから、投入される戦力の1つといったところですかね。」目を閉じたまま答える。