2015/08/20 のログ
■奥野清明 銀貨 > 「今だって先生は『王子様』で通じますよ。色男に立派な『馬』にも乗っていらっしゃる」
皮肉ではなく、素直な賞賛である。秋尾のそのミステリアスな言動、全てを吹き飛ばすような人を魅了する走り。
どんな美女だって、彼に口説かれればきっとその気になる。
自分のような優男の王子ではなく、彼のような明け方にひと時の夢を魅せるような王子の方が女性は好むような気がした。
曖昧な答えにいぶかしげな顔でもされるかと思ったが、この男には通じた。
『踏まれる』アクセル、その速度に合わせて彼が駆け抜ける周囲の『風』が変わる。
そう、自分は待っていたのだ。この『風』を、それを吹かせてくれる走りを――!
ドドッドドッと四頭が固いコンクリートをひづめで削り、片やその隣で秋尾のカートが尾を引くような美しい走りを見せる。
コーナー内側をすべる様に四頭とカートがすり抜けて行く。まるで夢のような出来事。
それでも互いのスピードは落ちない。まるでかみ合った歯車のような、あるいはダンスを踊るペアのような動き。
さすが【悪魔のL】――。
声には出さず、銀貨は胸中でつぶやく。この走り、伝説と呼ばれた彼にしか出来ぬ『風』。
吹き散らかされたそれに、少年は何かを見る。
いつもは平静な自分も秋尾の走りにつられるようにこの『風』に感情を揺さぶられ始めた。
秋尾がアクセルを『踏めば』それに応えるように馬上の上で前傾姿勢をとる。本気の走り。まるで名ジョッキーのような風貌。
■秋尾 鬨堂 > 「嬉しいネ…じゃあ、少し胸を借りるつもりで」
直列2気筒エンジンが、信じられないパワーを絞り出す。
一切の無駄を取り払った、骨と心臓、そして脚だけの軽いボディに伝わるそれは、何よりもダイレクト。
このサーキットの中で、遠慮なく踏める最高のライトウェイトスポーツカー。
男の愛馬とは色々違うけれど、確かにそれは評価に値する競走馬。
優美な走りの中に、凶暴なエンジンの鼓動を秘めた走るためのマシーン。
バンクを超えて、ホームストレートへ。
その頃には、外周コースだけでなく。サーキット上の皆、異変に気づく。
『競馬か?!』『違う、4頭立てだ!大昔の騎馬兵みたいに』『どんな名ジョッキーでも出来るこっちゃねえ…それをあの速度でかよ…』
ギャラリーのどよめきは、だが見世物ではないことを感じ取りすぐに歓声へと変わる。
内側リンク三周、誰が決めるでもなく互いに理解する『ルール』。
エキゾーストと嘶きが交錯する!
無茶な加速に、タイヤを限界まですり減らしながらも、
ここまでの二周は互角。
インとアウトを熾烈に取り合い、しかしその綾模様は舞踏会を思わせて。
「さあ…ラストステップだ、お手を拝借!」
最後のコーナーをドリフト気味に抜ける!
悲鳴を上げるタイヤ。
刺さる横風を更に突き抜けるような、ラストストレート!
■奥野清明 銀貨 > ぐん、と再び秋尾のカートが加速を始める。先ほど『踏んだ』ばかりなのにまだスピードの先へと進むというのか。
それでいて彼のハンドリングはまったくブレがない。ただただ最適なコース取りを美しく走り抜ける。
だがその中に確かにマシンの唸り声、その凶悪なエンジンの鼓動を聞く。風切り音の中に混じる確かな響き。
四頭の馬も彼の走りに食らいつく。これで中世の馬車さえついていればまるで本当の御伽噺のようなものだ。
周囲の歓声が遠い。もはや二人の走りには音さえ遅い。ただただ彼の走りが渦巻く『風』の音だけが銀貨の耳を打つ。
ラストストレート、その残りの直線での事だった。
熾烈な争いの中で、ふいに一瞬世界がスローモーションのようにゆっくりと流れるのを銀貨は視た。
ふたりの周囲の空気の流れ、風の形すらまるで水あめのようにゆがみ、流れてゆく。ただただ世界は無音だ。
美しい、限界の走りをせねばここまでの境地には到底たどり着けなかった。
その光景を二つの眼でしっかりと焼付ける。
だが、銀貨が出来る走りはここまでだ。
所詮自分の異能は《軍勢》を操る事。四頭の馬の能力を限界まで引き出す事は出来る。
学校の科目ですら成績は常に上位を修めてきた。努力と才能によって。
ただ、きっと秋尾 鬨堂――この男こそ『走り』の才能と努力を積み重ねた天才だから
所詮その分野では秀才どまりの自分では、ここまでなのだ。
けれどすがすがしい気分だ。彼は自分に『風』の向こう側を見せてくれた。
勝負によってもたらされるその至高の境地、走り屋がみな目指すスピードの向こう側。
そこに自分も至れたという事。それがひどく心地よかった。
ゴールを通過するその一瞬、ほぼ同時にたどり着くかと思われたその刹那。
銀貨の操る黒馬たちよりもほんのわずか、秋尾のカートがリードした。
逆巻く風を吹き散らかしながら、ゴールフラッグが派手に振られた――。
■秋尾 鬨堂 > ゴールラインを超えて、数メートルも行かないうちにタイヤがバーストする。
加熱限界を超えたタイヤは、最期の仕事を終え、破裂したのだ。
グリップを失い急激にスピンする車体を片腕と荷重移動で操り、どうにか制動…減速をかけ。
コース壁際、タイヤが積まれたクッションに軽くめり込む程度で止まる。
「ドゥーェッ」再び、今度はハンドルから手を離した空中後転。
明らかに過剰なアクション!
役目を終えたマシンに労いの一瞥をくれると、
パドック―コース脇。レースを終えたマシンとドライバーが、通常通される―
へと歩く。
「やあ。やっちゃったヨ、『王子様』。やっぱり、現役じゃないとしまらないな」
タイヤを潰して、自走は不可…まあ、やっちゃっている。
暴風はもう、おさまっていた。
わずか一瞬、ゴールラインを割ったその瞬間には。
馬上の彼も、見えたものは同じはず。そう問いかける
■奥野清明 銀貨 > あわや直撃かと思いかけた秋尾のカートは秋尾自身の見事な判断とマシン裁きで事故を防いだ。
一方、黒馬たちは速度を緩めるためにコースをオーバーラン、結構な距離を稼いでからだんだんとその走りが緩やかなものへと落ち、
ならすように四頭が過ぎたゴール地点へとゆっくり戻ってくる。
馬上の銀貨の姿勢も前傾から元のまたがり方へ。
カッポカッポとそのひづめを鳴らしながら四頭は一糸乱れぬ動きでコース脇へと歩み、秋尾の傍へとやってきた。
するりと銀貨がその背を降りる。四頭は全力の走りの興奮をいまだ抑えきれぬ様子で荒々しげにいななく。
その首筋を片手で叩いてなだめながら秋尾を、カートをみた。
派手なバースト、あの走りだ。仕方ない、マシンも限界だったのだろう。
「やっちゃいましたね。でも一瞬あなたが現役の頃に戻ったような気がしました」
ふ、と銀貨の口元がゆるく笑む。創ったような笑いではない、心の底からの微笑。
彼が暴風のさなか、ゴールの瞬間に見せてくれたものへの返答はそれで充分だった。
この秋尾 鬨堂という男は、3度も奥野清明 銀貨という少年の表情を、感情を動かしたのだ。
それだけでこの男と、最高の走りが出来た事が喜ばしかった。
■秋尾 鬨堂 > 「ううん…君は年上をノセるのが上手いネ」
ちょーいちょーいと馬たちの鼻先を右手であやしながら、苦笑気味に照れる。
馬たちの興奮もまた、伝わる。
知っているのだ、走ることの意味を。
人馬一体、彼の心は、確かに彼らとともにあった。
勝ち負けとは違う、到達すべき領域をともに見た。
敬意を持って接するべきものたち。
「彼らに労いを」
ぱちん。大げさに指を鳴らさずとも、整備員も作業員も理解する。
大急ぎで水と飼葉、ついでに少しの生野菜。
あくまで休憩、帰りの途も走れる程度に。
「君とは、語らいを」
パドックの向こう、本来であればレーサー、チーム関係者、その他VIPなどの特別席。
今日は、このサーキットでの走行会に集まった人々がくつろげるカフェへと装いを変えたそこに誘う。
「単位は出ないが、女の子は結構いるヨ」
恭しく頭を垂れて、それこそ女の子の下馬を助けるように。
冗談めいてはいるが、茶化しはしない。
敬意を持って、手を出した。
■奥野清明 銀貨 > 鼻先に差し出された手に馬たちはそれぞれ秋尾をとりかこんで検分する。
共に走ったこの男を傍で感じ、異能で作られた生命だというのにそれらは親しげに鼻先を秋尾にすりつけ、その髪をやわく噛んだ。
大急ぎで用意された水と飼葉、生野菜に馬たちがいななき作業員たちに促されるように歩いてゆく。
まるで整備されるマシンのように、優美に……。
「素敵なお誘いですね。僕こそ『王子様』に語らいのひと時を誘われた娘のようです」
カフェと秋尾を見て、笑みを濃くする。このサーキットにおいて真の意味で『王子』なのは彼であろう。
その差し出された手を恭しくとると、リードを任せるように秋尾に歩調を合わせる。
男とも女ともつかぬその容貌が今だけ、女性としての面を強くするようにしなやかに。
「単位はまた、改めて先生の授業できっと取りますよ」
くすりと笑って、その導きに任せるままにカフェへと歩んでゆく。
馬たちがのんびりとふたりの背中を見送った。
そして、そのカフェでの語らい、ひと時は銀貨にとって走りと同じく実に有意義な時間となったのだ――。
ご案内:「◆速度Free(合法)3」から奥野清明 銀貨さんが去りました。
ご案内:「◆速度Free(合法)3」から秋尾 鬨堂さんが去りました。
ご案内:「面会室」にアスティアさんが現れました。
■アスティア > 「――」
腕を組んで椅子に座り、
足を組んで目を閉じて、
面会相手が現れるのを今か今かと待ちわびている。
――面会相手にさほど多くの面識が有る訳ではないが、
ちょっとした聞きたい事があった為、
こうして待っている。
「さて、会えるかな?」
一応正式な手順は踏んだので、
問題はないはずだが――
ご案内:「面会室」にシインさんが現れました。
■シイン > 警備員から面会者が現れたと聞いたので、私服に着替えさせられながら面会室に足を運ぶ。
相も変わらず、前と後ろに警備の者が見張りながらの警備体勢だ。
向かいながら、はて誰が面会に現れるのかと考えてみる。
候補は複数上がる。
娘か姉か。
それとも静歌かエルピスか。
やなぎの可能性は全く無いだろう、彼は裏切られたと認識してであろうからだ。
そんな奴の元に現れることはない。そも疑いすら掛けられてるはずだ。
考えを巡らせてる間に何時の間にか面会室前に到着してたようだ。警備員に声を掛けられて、それに気付いた。
面会室に入る前に、手錠を外されてからドアを警備員が開き、中に誘導される。
ソコで見たのは
「いや、コレは予想外だったな。」
面会室に入り、第一声がそれであった。
一度だけ会って会話を交わした程度の相手だ。
確か"剣"について教えて貰ったが、特にそれ以降は交流はなかった。
そんな者がわざわざ面会しに来るとは思わない。
だから口に出してしまったのだ。
■アスティア > 予想外、の言葉にニヤリと笑う。
予想外結構ではないか。
「ハッハー、期待を外して悪かったな。」
流石に堪えようと思った笑いも堪えきれず、
笑いながらそういうだろう。
「まぁ、普通こういうのは縁が深いものが来るのが相場だ。
縁がないわけではないが、あまりにも薄いからな、
妾は!」
してやったり、
という訳だとばんばんと自分の足を叩いて笑う。
「ま、笑ってばっかりもいられんか。
さて。」
ふむ、と笑いが収まらぬままに、
顎をつるりとなでて――
「実は疑問があってな。
質問にきたのだよ。
シイン先生。」
■シイン > 「期待などは得にしてなかったが、そうだな。
君とは縁があまりにも薄い。」
何故そんなに堂々と言えるのか不思議になりながら、席に座り、彼女が言う言葉には頷きを見せた。
それもそうだ、縁があまりにも薄い。
どんなに記憶を洗って掘り出しても、一度しか会話を交わしておらず。
深い仲ですらない。
交流関係で言うなら最底辺クラスだろう。
えらく笑いを見せてる彼女の質問とやらに首を傾げさせつつ。
「先生呼びは止めるといい。
私はもう先生と呼ばれるのに合わないからな、で。
質問とは?」
■アスティア > 「そうか。じゃあ、シインと呼ぼう。
うん。
まぁ、教えを請う立場にはかわりないからな、
先生のままでもいいといえばいいのだが。」
ま、一先ずおいておこうと頷いて。
「ま、色々あるんだが、
最初に本題をぶつけるとしようか。
瑣末な事など後でかまわん。」
笑いを収めて真剣な眼でシインを射抜く。
「『何故仕留めそこなった。』」
■シイン > 「――それは誰に対して、どういう意味で言ってる?」
静歌の事か。
流布堂の事か。
エルピスの事か。
嶋野の事か。
浮かぶのは四人。
おおよそ静歌に事なのは違いないが。
仕留めるというのも"殺す"という事だろう。
だが、それが正答かどうかはわからず。
言葉の意図がまだ全て読めないのだ、だから今は直ぐに答えず。
まずはどういう意味なのかと茶を濁しながら、真意を探ろうと。
■アスティア > 「ふむ。気づいていないのか、
気づいていてぼかしているのか。
まぁ、いってしまえば分かる事か。
おっと。
『私の言葉を否定するな。』」
そういって目を覗き込む。
今からいう事に関して、否定をすれば、
私でもなく、シインでもなく、
仕留めそこなったものの不利益になるぞ、
とでもいうかのように。
「――色々話を聞いたりしていたのだがな。
全ての発端は、
シインが無能力者の女生徒を撃った事と聞いている。
普通ならば、仕留めそこなわんだろう。
普通ならばな。
撃ったその時、殺す気はあったのかなかったのか。
其処を知りたい。」
■シイン > 「…否定など最初からするつもりはないよ。特に
素直に真っ直ぐに会話をしてくれる人相手に対してはな。」
「それで、なるほど無能力の女生徒。
確かに撃った相手は無能力の女生徒だ。」
そのように偽造されているのか、はたまた伝えてないので広まってないのか。
あれを無能力と呼ぶには些か無理があるが、端から見れば"そう"見えるのも不思議でもない。
「私はな、殺す気はなかったよ。死体には興味が無いからな。
ネクロフィリアや屍体愛好者でもない。」
言葉の通りに否定をせずに、素直に答える。
真紅の眼が、真剣な瞳が嘘ではないと答えるだろう。
■アスティア > 「なるほど、それで晴れて逃げれたという訳か。
ま、逃げれただけでも凄い物だが。」
ふむ。と一つ頷いて。
「殺す気がなかったのではさもありなんだな。」
と笑うだろう。
「素人相手では、予想外の行動に面くらう事もあるから、
尚更だ、
なぁ?」
と、ゆっくりと首をかしげ同意を求め――
「いや、これだけは確認しておきたくてな。
何か問題はあったか?」
とたずねるだろう
■シイン > 追おうと思えば追えただろう。
近場の病院の位置と地理は把握していたのだから。
追わずに、生きてることを願ったのは死体には興味が無い、それに尽きる。
「ま、素人相手は逆にな。
突拍子な行動は正しく読みにくい。」
頷き同意を見せて
「いや、特に問題はない。
ただそんなことを聞きたいとはな、それだけの為にわざわざ面会かね。」
もしそうだとすれば、相当な物好きだろう。
なんせ相手は生徒を撃った犯罪者なのだから。
■アスティア > 「だけ、ではないがな。」
うむ、と頷いて。
「そんな事といわれても、
妾にとっては凄く興味があるし、
大切な事だ。
犯罪者である前に、
先生である前に、
――プロだからな。シインは。」
――戦の。
「いかに冷静さを失っても、
いかに判断力を失っても、
まぎれもなくそうだろう。
だからこそ、だ。」
だからこそ興味があり、聞いておきたかった。
「後は、ついでに聞けたら聞いておけたら嬉しい話だな。
例えば、
どんな相手が一番やりづらい?
とかな。」
はっはーと笑う。
■シイン > 「なるほどな。
戦いに徹するプロがたかだが女生徒一人を殺せずに重傷を負わせた程度で仕留め損ねた。
そこにどんな理由があるのか、それが気になったということか。」
元々は集団戦が前提の戦争が主な現場だが、対個人に対しても通用する部分は幾つかある。
其れ等を考えてみれば、確かにプロというのは呼ばれてもおかしくはない。
――そういえば、今までプロと呼ばれたことがなかったな、と。
「ふむ…どんな相手がやりづらい、か。
それは戦闘という形での答えでいいのか?」
■アスティア > 「――妾も傭兵をやっていたからな。
だからこそ、かもしれないな。」
うむ、と大きく頷いて。
「勿論、戦闘においてだな。
戦闘以外においてなど、
口がうまい奴には勝てないだとか、
惚れた女には勝てないだとか、
それこそ野暮みたいな話が出てきそうだから、
あくまでも戦闘においてにしておこう。
で、どうだ?
ちなみに妾はやりづらいのはやはり近寄ってこない相手だな。
対策はあっても、遠距離戦が出来るような装備ではない。」
で、どうなんだ?
とじっと真っ直ぐ見つめるだろう
■シイン > 「…傭兵か。」
ならば彼女も同様に戦争等の経験をしているのだろうか。
そんな話は又の機会へと回そう。
「あぁ、正しくそれを言う所だった。
口論なども含めてしまうとキリがない。」
惚れた女などもっての外、そして彼女の問いへの答えは直ぐに出せた。
「私はな、遠距離戦も近距離戦もどちらも得意ではある。
遠距離のが得意ではあるが、それでもだ。
それでも、やりづらい相手というのは居てな…。」
少しの間を置き、真っ直ぐに見つめ直し。
■シイン > 「――人間だよ。」
■シイン > 「戦術など関係無しに人間相手がやりづらい
何故なら人間は、機械・人外など、そんな相手に引けを取らぬほどの力を持っているからだ。」
冗談で話しているのでない、全てが本心。
「私はな、全ての人間が恐ろしいよ、そして同時に憧れているのさ。
その隠された強さに、潜在能力に、時に全てを凌駕する力に。」
■アスティア > 「うむ。元傭兵だとも。」
大きく頷いて――
「先に釘刺しておいてよかったな。
妾も口論などを含めてしまうときりがないほど、
嫌な相手は多いからな。
それにしても、」
人間、と来たか。と顎をなで――
「また面白い答えがきたものだな。
――いうなれば不確定要素ほど怖いものはない。
といった所か。
なるほど、確かに未知は怖く、
やりづらい相手ではあるな。
――ふ、む。
そうだな――」
とんとんと自分の米神を人さし指でたたき――
「ない、とは思うが逆に聞いてみるか。
……何か聞いてみたいことはあるか?」
■シイン > 「私も同じくだな。
口論となると嫌な相手が多いという点。
それと私自身が口論を苦手としているからな。」
人と好意的に接することを目的とした機械が、口論など想定しているはずもなく。
だからこそ苦手であり、避けたい事柄なのだ。
「ま、コレを言うと大体は人間など怖くない。
脆く弱い生き物と結論付ける者は多いのだが、珍しい部類だろうな。
君の言う通りで、未知の事象が起こり得る可能性。
何が起きるか予測しづらい、特に生きたいと思う力が強い者ほど。」
恐ろしく、強い。
逆に聞きたいこと、聞かれて丁度良かったな、と。
折角だから次回に回そうとした問いをしてみよう。
「ならば一つだけ、場合によっては二つになるが聞くとしよう。
まずは一つ。
傭兵をしていたと言っていたが戦争は経験したことはあるかな。」
■アスティア > 「はっはっはー!
まぁ、人間というのは、
強い生き物からすると弱点が多すぎる上に、
不確定要素程度で覆るなんて予想だにしてないからな。」
いうなれば奢りであり――
油断でもあるなと、頷いて。
「もちろん、大なり小なり戦争は何度も参加してきたぞ。
生きる為であり、生きる実感が欲しかったからな。
――平穏無事が嫌いではないが……」
ふむ、と顎をなで――
「――妾は根っからの剣士だからな。」
と、したり顔でいうだろう。
■シイン > 「だからこそ、私は決して油断をしないよ。
戦いで人間が相手となれば、本気の力を持って正面から潰す。
例えそれが、無能力者で力も無い。ただの一般人だとしても。
勇敢に無謀と呼ばれながら立ち向かうものであっても、決して。」
人間に対しての強い執着から、生まれたある意味で歪んだ考え。
それでも決して自分が間違ってるとは考えもせず、それが正しいと。
「剣士というのを把握してはないが、根っからの戦い好きというものだろうか?
ま、それは置いておくか。最後の問いだが聞かないことにしよう。
君には、アスティアには聞くのが不要な事だからな。」
■アスティア > 「うむ。
立派な心がけだな。」
と一つ頷き――
「ま、最後の問いについては聞くべきものに聞くといい。
どちらかといえば私は異端の部類だ。
少なくともこの世界ではな。
ルールには従っているつもりでも。」
さて、と。と立ち上がり――
顔を近づけ――
「ああ、そうだ。
一つだけだな、告げることがある。
気をつけろよ。
正面から来るものは――“まだ怖くない”」
■シイン > 「そんな大層な問いではないさ。
私の単純な疑問だが、君にはそれを聞く必要がなかった。
――戦争経験者には不要な質問なのだよ。」
戦争経験者でなければ問うのだが、そうでないなら不要なのだ。
そのように説明を繰り返す。
時間が来たのか、眼の前の彼女は立ち上がったが。
逆に帰ろうと離れずに、此方に近づいて来た。
それは忠告とも取れる言葉。
だが、それは既に自覚している。
「わかっているとも、私を知っている者であれば、尚更。
正面から来ることは無駄だと知っているはずだからな。」
最も、背後を取られたとしても危ういかと問われれば、首を横に振り否定をするのだが。
■アスティア > ならば、よし、とにっこり笑って。
「ま、なんだな。
ここの牢がどんな所か知らないし、
今後どうなっていくのかは分からないが、
ここからの戦場はきっと、
正面突破ではきっといつか破綻をきたしそうだからな。
話を聞かせてくれたお礼、という奴だ。
もっとも、
それを是としながらもそれでいくならいいが……
ま、そこまでは私の知ったことじゃないな。
有意義な時間だったよ、シイン。」
そういって背を向け――ひらりと手をふる。
「あ、そうそう。
講義を聴きに来るかもしれないが、
その時はよろしく頼む。」
どうせ暇だろう、みたいな言い草で面会室を後にしようとするだろう。
■シイン > 「力任せで済むのは、格下の相手のみだからな。
なに、そんな戦闘なども起きやしないさ。恐らく、多分な。」
不安は抱えているが、それでも起こさないようにするつもりだ。
そして、最後のセリフに溜息を漏らす。
「此処で講義を行なえというのか…まぁ"また来てくれ"」
自分も有意義に過ごせた。
少なくとも最近のろくな会話も出来ない日々と比べて、とても良い時間だった。
ご案内:「面会室」からアスティアさんが去りました。
■シイン > アスティアは去り、面会室には警備の者と自分だけになった。
席から立ち上がって、警備員に従い手錠を掛けられながら、再びいつもの牢獄へと向かう。
今にして考えてみれば、こうして面会者が来るだけでも幸せなのだろう。
今度アスティアが来た時ように講義の内容を考えておこうと、牢獄に戻どってから授業内容を考えるのであった。
暫くは暇が潰せそうだ。
ご案内:「面会室」からシインさんが去りました。