2016/07/01 のログ
ご案内:「寄月家」に寄月 秋輝さんが現れました。
■寄月 秋輝 >
「……うーん……」
ベッドに横になった状態で唸る。
とにかく体がだるい。
知り合いの女性を、高熱時に抱いてからこっち、ずっと微熱が続いている。
(やはり気の流れを整えただけでは、体調は完璧にはならないか……)
季節の変わり目の体調不良をある程度乗り越えたものの、まるで完治しない。
そのためずっと微熱に悩まされる有様。
結局、しばらく休んで体調を治すことにしたのだ。
■寄月 秋輝 >
「……ヒマだ……」
ぶっ倒れている間は死んだように眠るものの、起きている間に何もしないのはヒマ以上の何物でもない。
勉強の息抜きに運動、運動の息抜きに勉強をしてきた面白みのない人間には、寝て過ごすという選択肢そのものが酷である。
「……仕事……」
携帯端末を手に取ろうとして、鉄の意志で手を引っ込める。
ここで働いては、何のために休みを取ったのやらわからない。
眠ることも出来ず、ごろごろベッドの上で小さく転がっている。
ご案内:「寄月家」にアイリスさんが現れました。
■アイリス > がちゃりとドアが開く。
部屋に入ってきたのはメイドであった
どうやってドアを開けたのか両手には小さな鍋とおわんを持っている
端末を手に取ろうとしたのをめざとく見つけると
もっていた鍋を机に置き
「いけません、ご主人様」
と端末を手を伸ばすには少しおっくうな距離までつつっと離してしまった
■寄月 秋輝 >
「うぐ……」
メイドの手で端末を離され、ようやく諦めた。
手元にない方がマシなのは確かだ。
「……ありがとう、アイリス……
正直手元にあると、どうしてもデータ整理や検索がしたくなってしまいます……」
感謝を述べつつ、大人しく仰向けに。
なったところで、鍋に気が付いた。
「……それは?」
■アイリス >
「いいえ、どんでもございません」
そういうとベットの横に座り鍋の蓋をあける
「はい。おかゆを作って参りました
少しでもおなかに入れた方が良いかと思いまして
食べられそうでしょうか?」
気付けばご飯時である
もあッとした湯気とともにおかゆの匂いがふわりと広がる
入っているのは大根おろしに大根の葉を刻んだものだろうか
それをおわんに少し取り分ける
■寄月 秋輝 >
「おかゆ……ありがたい。
是非いただきます……」
空腹もそうだが、何よりエネルギー不足だ。
とにかく起きよう、とゆっくり体を起こす。
まだ少し体が重いが、ため息一つと共になんとか姿勢を維持できる。
「いい香りですね……
大根おろしかな……こっちの葉は何でしょう」
お椀の中身を見ながら、メイドの顔を見て聞いてみる。
■アイリス > 体を起こそうとすれば作業を中断しそっと抱き起こそうとするだろうか
「はい。大根の葉を刻んだものです
八百屋さんで切り落とさずに一緒にもらって参りました」
なかなか家庭的であった
大根の葉は栄養の宝庫である
スーパーなどでは葉を切り落として販売していることの方が多いが
新鮮で葉がついたままのものもたまにある
できるなら積極的に活用したい一品だ
体調に合わせて消化にも大変良い
塩気には軽く塩昆布が散りばめられているのがみてとれる
そしてお椀からスプーンでおかゆをひとすくいするとふーふーとさまそうとするだろう
■寄月 秋輝 >
「大根の葉まで……」
貧乏性の秋輝としても、嬉しさで涙が出そうになる。
普段なら使わないであろうものまで、積極的に使って節約してくれるメイドの姿勢に感激していた。
昆布まで入っているということは、塩気も風味も十分だろう。
さらに美少女のふーふーまで。
なんというか、男の夢がここに詰まっている。
あ、秋輝君ちょっと涙ぐんでる。
■アイリス >
「どういたしましたか?
苦しいのでしょうか?」
涙ぐんでる姿に心配しているような声をかける
だがどうも顔は苦しいよりなにかを噛みしめているだとかこらえている風である
とりあえず大丈夫そうなので膝立ちになりスプーンを差し出す
「どうぞ」
ただしそれは柄の方ではなく
おかゆをのせたまま先を向けて
いわゆる あーん である
なかなかうごかなければ首を傾げてのぞき込むように見つめることだろう
■寄月 秋輝 >
「……あぁ、いえ……
僕の方針をしっかり尊重してもらえて、少し嬉しくて」
軽く目じりを指先で拭い、心配は要らないと返す。
そして前におかゆの乗ったスプーン。
昔感じた、頬の奥がじーんと染みるような、とても幸せな感覚。
「……いただきます」
覗きこまれて少し迷いながらも、口を開けてそのスプーンに食いついた。
ちゅる、と吸い込むように口に入れ、もくもくと咀嚼。
「……あぁ、とても安心する味です……」
実に好評。
■アイリス >
「はい。メイドとして当然でございます」
もぐもぐと食べ、ほころぶ顔を見れば
「お褒めいただきありがとうございます
お口にあったようで安心いたしました」
こちらもうれしそうな顔を返す
よろこんでいるようならば同じようにさましながらおかゆを口へ運ぶことだろう
そうしている内にはやく食べやすい温度までさめるよう取り分けたこともあって
冷まさずともちょうど良い具合になるだろうか
■寄月 秋輝 >
「えぇ、とても……
実に美味しいおかゆです」
次の一口もぱくりといただき、また次、次。
食べやすい温度、食べやすい薄めの塩味。
自分の手で食べているわけではないが、それでも夢中になって食べ進める。
「……アイリス、おかゆの用意までしてもらって申し訳ないですが……
しばらく僕のやっている家事も全てお願いしていいですか。
僕の体調が戻るまででいいので」
おかゆを運ぶ手が止まる瞬間に、そう頼む。
ちょっとした心境の変化か、回復に努めようというつもりらしい。
■アイリス >
「はい、問題ございません」
むしろ今まで手持ち無沙汰で時間が余っていたほどである
それこそ24時間働けるメイドにとって朝飯前である
役に立つことこそが彼女たちの存在意義
それはおいて置いてもたよられて不快になど思いようもない
「ご主人様はもっと私にたよってもいいのです」
もっと甘えても良いのだと
そう告げた
■寄月 秋輝 >
「……本当に、助かります……」
その返事に安心した。
心も体も、あまりに張りつめすぎていた。
特にこの世界に来てから。
ここでの出会いの多くは、少しずつ秋輝を人間らしくさせていた。
機械的に生きてきた彼が、ようやく誰かを頼れるようになってきた。
「では、しばらくお願いします。
この調子からすると二、三日は完治までかかりますが……
いえ、アイリスに任せて休めば、もう少し早く治るかもしれませんね」
ふぅ、と小さく息を吐いた。
肩の荷が下りたかのように、ずいぶん安らいだ顔でメイドを見上げている。
■アイリス >
「はい。じっくり療養してくださいませ」
そういっていつのまにか平らげていた鍋に食器をかちゃりとかさね置く
そこに先に置いてあった水差しから少し水を張った
それからすっと指を秋輝の頬に伸ばす
視線は秋輝をみつめたまま
そっと指先が耳に触れる
■寄月 秋輝 >
「頼みますよ、アイリス……」
ゆっくり体を倒して、横になる。
家事の心配も無く、今後の憂いも無い。
頬に触れられて、なんとなく目を閉じる。
途端に意識が微睡んでくる。
体温は三十七度から半ばほど、平熱より少々高く、気分は良くなかった。
耳に触れられた手に、自分の手を伸ばす。
指先を重ねる程度に触れて。
意識を手放し、無防備に眠りに落ちていく。
■アイリス >
「『ぴぴっ』37.6℃です
安静にしていればすぐに良くなるかと思います
……あら」
アイリスの指先は各種センサーを内蔵しており成分分析などが可能となっている
もちろん温度をはかることも朝飯前だ
だが気付けば秋輝は手を重ねたまま眠りに落ちてしまったようだ
「……」
気持ちよさそうに眠るのに手を払うのもはばかられる
「ジュネレーター出力を巡航から待機へ」
アイリスの体からスーッと熱が消えていく
もはや彼女はごく最低限の運動、演算機能と感覚器しか動いていない
すこしひんやりとしてくる彼女の手が秋輝の熱をじんわりと奪うことだろう
子の方がきっと気持ちいいにちがいない
■寄月 秋輝 >
静かな寝息を立て、完全に眠りに落ちた。
この幸せな時間の中。
いい夢を見られたことだろう。
ご案内:「寄月家」から寄月 秋輝さんが去りました。
■アイリス > 家事はおきてからでも十分に間に合う
だからきっとアイリスはそのまま秋輝がおきるまでそうしていることだろう
それまではゆっくりと氷嚢の代わりになろうじゃないか
起きたらご主人様はどんな顔をするだろうか
そんなことを考えながらゆったりとした時間を過ごすのだった
ご案内:「寄月家」からアイリスさんが去りました。