2016/07/09 のログ
ご案内:「異邦人街安アパートの一室」に五代 基一郎さんが現れました。
■五代 基一郎 > いつもの通り。
夕食の時間が終わり、いつもの通り……
夕食をとっていた人間は解散し各々の、という雰囲気が流れる時間の居間。
その、最近はまた近くにいるのに遠くに入ルような
何がしかが離れつつなりつつあるもう一人との食事を終えて……
各々、となるタイミングで声を掛けた。
名前を呼ぶわけでもなく、呼び止めるように一言かけて
食事が片づけられた居間のテーブル席にかけるようにと
だが、そこから続ける言葉を探しているのか言葉らしい言葉は呼び止めてから
出しあぐねているように、中々言葉として出てこなかったのだが……
ご案内:「異邦人街安アパートの一室」に六道 凛さんが現れました。
■六道 凛 > 「……なに?」
静かに、問いかける。
この家にいるときはできるだけ、”あっち”ではないようにしているつもりだ。
仕草も、家事も。できる限り、合わせている。
今日もそうだった。
妙な、ずれ。それがあるのは自分のせいかもしれないと思いつつも。
あえて指摘はしないということは、そこまで目立ってないのだろうと勝手に納得する。していたのに――
「……呼び止めたってことは、用事があるんでしょ?」
仕方なさそうに、話がしやすいように声をかけてやる。
それくらいは、する。なにせ、一応”表”の恩人だ
■五代 基一郎 > 「……」
わかる。それが何かがわかる。
その、それは知恵を付けている。
そういう言い表し方、考え方はどうかと思うがそう表す他ないだろう。
悪い意味でそれは慣れつつある。
もはや今目の前にいるそれは何も変わらないと言っていい。
あの時に出会った、いや元よりあったものがそのまま続いていくような。
美術屋が何でどうあれそのまま時間を重ねればこのようになるだろうというようなものだ。
非常によく適応している。もっと適切な言葉を探すならば擬態していると言えばいい。
動植物のような姿だけでは外の環境に対して生き易いように似せている行為。
この目の前のもまたそれであり、もはや六道凛という名前を被っただけの美術屋でしかない。
根本的なそのズレの根源を見出せぬまま、見いだせなかったか
見出すことに対して手を出しあぐねていた結果だろうか。
そういった結果か、歪みは撓る弦が戻るようにまたその納まるべき位置に戻っている。
何がいけなかったのか、といえば思っていた以上に手がかかることへの気付くことの遅さ。
そも異邦人か赤子のようであったんだと今更ながらに思うがであれば今更でもあるが
今ここでそれを開かなければならないことも確かである。
だがその決定的なものを差し込むには、と思いあぐねていたのだが
囁く声はやはり自分と同じ結論であることはまた間違いない。
「……どうやらまだ自分が何故脚本家の最後を見れなかったのか理解できないようだ。
赤子のようなものだとは理解しているが、ここまで拗ねて拗らせられては招き入れた甲斐もない。
ただ見れなかったことに苛立ちを覚えて目を瞑り表層的には美術屋でありシュージンであった時と何も変わらない時間を続けている。
大方の始まりから来歴を見ればそうもなるとは言えるがそれだけだな。何も成長していない……と言うより
時間が動いていないな、君は」
椅子を引いて、ややゆったりと足を組み手を膝に乗せて話す。
一つ何かを転がすように話す。語り口には咎めるようでも諌めるわけでもなく
ただ落ち着いた、若干呆れたような声色で……目の前の者に直接的に語りかける。
■六道 凛 >
「そうだよ」
すんなり、肯定する。
なきわめく時間も、依存する対象を見つける時間も。
自分に何ができるのかも、自分が何をしたいのかも。
もう、自分はどうでもいい。
いいや、どうでもよくなったというべきか。
「……時間を動かして、またあの特等席に座れるの?」
首をかしげる。女性的なしぐさ。
少し、艶が戻っていると感じるかもしれない。それは間違いない。
もとより、元男娼。抱きたくなる男女はいくらでもいることだろう。
そう、落第街にいたころのように、囁き謡えば。
「それで、ボクにこの一年、メリットがあった?」
■五代 基一郎 > 「これは滑稽。」
その、元男娼が目の前にいるだろう男の顔を覗けば
男の顔は見えるだろうか。見ることができるだろうか。
そこにあるのは誰の顔かはさておき、嗤うようなニュアンスの声があった。
「六道凛という名前の器を与えた意味も感じられなかったと伺える。」
そこにもまだ嘲笑うというような、道化を笑う声が含まれる。
その口はまた、まだ口を開いて子供を笑う。愛しんで笑う。
暗闇の中に彷徨う子供に灯火で照らすように……
「美術屋、シュージン……まぁなんでもいい。そちらの名前は。
お前は脚本家の最後を見れなかった、特等席に座り観賞できなかったことを嘆くが本質はそこではない。
それを理解できなかったからこそ、この一年何も得られるものがなかった。
なかったからこそただ場所と立場を変えただけの生活に戻っている。
そもそもそうだな、お前は見れなかったのではなく
選ばれなかったんだよ観客に。特等席に座るなどもってのほかだ。
そもそも入場の資格すらなかったのに、なぜ席に座れると思っていた?」
そしてゆっくり椅子から立ち上がり、その元男娼の傍へ歩いていく。
家の中でゆっくり歩み寄る足音が鳴る。
「観客の条件なんて簡単なものだ。ただ人間であればいい。
だがお前はその条件を満たせなかった。なぜならばお前の存在理由は簡単。
異能、魔術その機能のみでしかなかったからだ。人間ですらない。
然し周囲からなまじ人のように振舞われたが故に拗らせた。
脚本家の最後がどうのと言おうが所詮あの廃れた劇場で生まれた縁故でしか過ぎない。
それを見たとしても大した違いはなかったろう。
お前は元より時間など動いてはおらず、生を半端に得ていたに過ぎない。
己などなく、男女に求められ己の異能を技術をと求められただけのお前の時間は止まっているままだ。
死んでいるのと大差はない。
しかしその死人に生を与えたというのに意味を考えないというのは、与えた方から言えば悲しいものがあるな。
作劇でも言えば死に生を与えたのならば、意味を考えるぐらい基本ではないか。美術屋に言っても詮無い事だろうが。」
■六道 凛 >
「――それで?」
だから、なんだというのだろう。
意味なんて結局のところ、いまさら得たところで。
考えたところで――
「死人。それもいいかもね。今なら”恐くないかも”」
くすりと、微笑み――