2016/07/10 のログ
■五代 基一郎 > 「今なら、とは。元より死を恐れていたわけではないだろう。」
何かに依存しなければ生きられず、他者により生かされていた
生かされることが当然と思っていたのならそもそも自身の生殺与奪など
最初から自分の中に存在していなかったことなど明白だ。
いつ生きても死んでもいいとしているなら、そこに意味などなかったのだろう。
「ならここで幕を引こうか。人でも何でもないお前の時間を終わらせる……
自分すら定まらずにいた者が、何も成せなかった……してきたことに何の意味もなかった証明になる。
自分に意味を見出そうとも、考えもしない者が他者の意味を知ることも考えもなかったというだけの話だ。
多少手間だがお前自身とあれらの片付けぐらいはしてやろう。残念な話ではあるが。」
微笑むそれの後ろに立ち、右手を首元に触れるか触れないかの位置にかざす。
それが何がしかの意味を持つことは言わずもがなであり。
「お前は”奪われたまま”だったな。残念だよ、本当に。
お前ならわかってくれると思っていたんだけどさ。
お前はずっと世界の外だったな」
そしてそのまま右手で首ではなく肩に手を置いて、一度置いて
「余計な手間を掛けさせて悪かった。都合はつけておくから元のままに
元の生活に戻るといい。ここで何かを見出すことができなかったのは俺の落ち度だ。
悪かった。俺の身勝手に突き合わせた結果だ。恨んでくれて構わない。」
そうして手をどけて。
寮なり公的なところに住むのであれば手を貸すが、そうでもないだろうと。
ここを出るなら早い方がいいとか、自分のことは自分で出来るから気にしないでいいと言うだけは言い
居間を離れて行った。書類上はさておいてもう二度と会うことはない相手に別れの言葉もなくその時間は終わった。
ご案内:「異邦人街安アパートの一室」から五代 基一郎さんが去りました。
■六道 凛 >
「ううん、怖れてたよ。怖かった。最初はね」
生きていて、泣きわめいて。どうしたらいいかをさまよって。
その時間は確かに、彼の言う通り、人、だったような気がしていた。
でも――結局のところ、それは擬態で、なったつもりになっただけで。
自分は、何も変わりない。ただただ、あの不滅の炎にあこがれた、なにか、だったのだ。
「ねぇ、ボクの”主人公”。ボクの選んだ、終幕者
キミが望んだ、ボクはすごく。すごく、難しかったよ」
魔術は、起動しなかった。したのならばこんなことにはなっていない。
なにせ、五代が求めたものは、奪われたのならばなにか奪い返す、もしくはその穴を埋めるために成長してほしい。
美術屋、いいや、六道凛が求めたものは。なくしたものを埋めてほしい、無くなったのならもういっそのこと誰かに――
なんていう、まったく別方向の”未来”。
”六道凛”として生まれ変わってほしかったのか、それとも、”美術屋”を内包したうえで”六道凛”となってほしかった?
いいや――それは、まだ無理な話だ。
だって結局――
「そんな風に答えをくれるなら――どうしてもっと……」
――早くくれなかったのさ。
もう、自分は六道凛という名前に意味を見いだせないし。
そこに価値を見いだせないし、そこに――
「――悪かったね。”主人公”。ボクはこんなでも、結構子供なんだよ」
恨みはしない、恨んだところで何か”物語”ができるわけもない。
「……都合のいい、情報屋あたりだと思って使ってよ。適当に”背景”どっかで書いてるくらいだからさ」
終わりを、告げられれば。
するりと抜けて――頬に口付け。
「ばいばい、綺麗な終幕ができるよう祈ってるよ」
ばたんっと扉を閉めて――
もとより、役者など、重荷過ぎた
卵はゆっくりと、冷めていく
ご案内:「異邦人街安アパートの一室」から六道 凛さんが去りました。