2016/07/31 のログ
ご案内:「ファミレス「ニルヤカナヤ」」にライガさんが現れました。
ご案内:「ファミレス「ニルヤカナヤ」」にレイチェルさんが現れました。
ライガ > テーブル席の一つに、沈黙する青年が一人。
この夏は苦手なものをできるだけなくそうと、果敢にもアイスに挑んだのである。

さて、目の前には、陶器に盛られた白いジェラート。結構な量がある。
その傍に、中身の違う2つ3つの容器。
それらの上を視線が行ったり来たりしていたが、やがて困ったように頭をかいた。

「うーん、流石に紅茶と珈琲と抹茶は、同時に頼むべきじゃなかったか……。
どれか1つにすべきだったな、これは」

よし、と一言呟くと。意を決して、スプーンを右手で持ちあげた。

レイチェル > 「悪ぃ、風紀の仕事が、思ってたよりもかかっちまった」
ライガがアイスを前に頭をかいている間に、店に待ち合わせをしていたレイチェルが
到着する。
よ、と小さく手を挙げた後、ライガの目の前の椅子に座って、ふぅ、と彼女は一息ついた。
彼女の身に着けている制服は真新しいものであるようだった。

「……お前それ全部食うつもりか? 腹壊すぜ」
目の前に三つ置かれているジェラートを目にして、呆れた表情を浮かべる金髪の少女。
適当に店員を呼び止めて、彼女もまた紅茶のジェラートを注文した。

ライガ > 「や、お疲れ様。悪いね、忙しい中呼出しちゃって」

青年は顔を上げ、近づいてくる制服の少女に挨拶を返した。

「いや、治安のためならしょうがないよ、夏期休暇中はやっぱイロイロあるしね。
制服、新品みたいだけど、また荒事でもやったの?
……あ、これかい?
アイスは一つだけで、他の中身は全部飲料だよ。確かにちょっと量が多いような気もするけど」

所謂アフォガートである。もちろん、デザートの方の。
3種類も頼んじゃったから、アイスの方が足りないと思われたのだろうか。
スプーンで試しにアイスの方をちょっとだけ掬い、口へ運ぶ。

「んー、やっぱ甘すぎるなこれ」

顔をしかめると左手で珈琲……濃い目のエスプレッソが入った容器を左手に持ち、アイスの上から少しずつかけ始めた。
盛り上がった白い雪山の一部が、みるみるうちに茶色く染まっていく。

レイチェル > 「この時期になると、まぁやっぱり色々起きてくるのは確かだぜ。
 なるべく頑張ってこの学園を守らねーとな……」

夏の暑い季節、そして時間の有り余っている夏季休暇中ともなれば、良からぬことを
考える輩もまたあちこちで出没するのである。
夏休みといえど、レイチェルの風紀委員の仕事は続いていく。
勿論、夏の間はしっかり休みもとる。とはいえ、仕事が全くなくなる訳ではない。

「ああ、これか? ちょいと荒めの修行をしててな。そこで結構破れちまったから、
 新しいやつを買った。まぁ、慣れたもんだぜ。使い物にならなくなっちまった
 制服が何着あったか、数えたくもねぇ程だ」

やれやれ、と肩を竦めて両腕を頭の後ろへやり、枕代わりにするレイチェル。
先ほどまで、暑い中歩き回っていたのだ。
涼しげな店内で、結構リラックスしている様子である。

「へー、そういう食べ方もあるんだな。結構美味そうじゃねぇか」
スイーツキングダムのバイキングは大好きだが、
こういった物を見るのは初めてである。
興味津々といった表情で、目の前に並ぶ容器を見やるレイチェル。
何を隠そうこの少女、ぱっと見の性格とは裏腹に、甘いモノが大好きなのだ。


「さて、と。本題に入るか? 前回の悪魔祓いについて、話すのが今回集まった
目的だろ?」
と、確認するようにライガに向けて問いかけるレイチェル。
店員が置いていった冷たい水を喉に流し込めば、小首を傾げてみせる。

ライガ > 「委員の人数も増えてはいるみたいだけど、やらかす人たちの数が減るわけじゃないしね。
ま、僕もそれなりに貢献してみるとするさ。
前線はあんまり得意じゃない、射撃に対して障壁張るくらいしか能ないけど」

茶色に染まった斜面を掬い、口の中へ。

「うん、これくらいの甘さなら食べられるな。
甘いものは苦手意識あったんだけど、せっかくだしそれなりに食えるようにするつもりでさ。
そうそう、依頼の話だったね。とりあえず、これ」

ライガは服のどこにしまっていたのか分厚い封筒を取り出し、レイチェルに手渡した。
表には『依頼料(諸経費含む)』と書いてある。もう二度目なので言わずともわかるだろう。

「今回が三分の二だから、たぶん次で終わると思う。
それまで、まだ迷惑かけるだろうけど、よろしく頼むよ」

話を切り出しながら、周囲をちらりと確認する。
それほど混んでもいない店内だ、知り合いがいたとしても委員会関係が多いだろう。

「で、まぁ。アレなんだけど。
僕が最初に捕獲しようとした時にはわからなかった情報がありそうなんで、
思い出せるだけでいいから、どんな戦い方だったか、言ってみてくれないか?」

そういうと、胸ポケットからペンとメモ用紙を取り出し、テーブルの濡れていない方へ置いた。
メモには

『・3mくらい
 ・中~近距離の攻撃範囲
 ・半霊体(身体の一部が物質として実体化している、その部分だけは物理干渉を受けやすい)
 ・飛行可能
 ・特定の物を引き寄せる能力』

とだけ書いてある。

「飛行というか、あれは跳んでるのかな?」

青年は呟くと、『・飛行可能』の部分に横線を引いた。

レイチェル > 「まぁ、信頼出来る風紀委員が沢山居るのは確かだ。
 お互いに得意分野を任せ合いながら、最善を尽くすさ」

店員がジェラートを持ってくれば、冷えた山にスプーンを差し込みながら。
レイチェルはそう口にした。

「おう、確かに受け取ったぜ」

悪魔祓い――魔を狩ることに関しては、レイチェルがこなす本来の『仕事』
である。その仕事の報酬を受け取ると、レイチェルはその封筒をクロークの内
へと仕舞いこんだ。

「迷惑なんかじゃねぇさ。報酬も貰ってるし、こいつは立派な『仕事』だ
 からな。金をきちんと払ってるお前が気にすることなんて、何もねぇよ。
 だから安心しときな、ライガ」
彼の言う『迷惑』について、レイチェルは全く気にしていなかった。
寧ろ、魔狩人としての腕が錆びつかない程度に振るえるこの仕事に対して、ありがたいとさえ思っているのだ。

「まぁ、そうだな――基本的にここに書かれていることは正しかったぜ。
 ライガの言う通り、飛行……というよりは跳びかかる感じだったな」
こくりと頷いて、レイチェルはライガが情報を訂正する様を見つめた。
そうして戦いの記憶を思い起こして、語を継いでいく。

「戦い方は、獣のそれだったな。跳びかかる様なんて、まさに獣といった
 感じだった。最初にテーブルを蹴りつけてみたが、一瞬の内にバラバラに
 されちまったし、かなりの反射神経だったぜ。物を引き寄せる能力に対して
 は、こっちの異能を使って何とか対応出来たが……ありゃ、普通に対応して
 たんじゃ、下手すりゃ全身穴だらけだな。ありゃ結構危なかったぜ……だ
 が、奴はそれ以上にやべぇもん隠し持ってやがったんだ」

そうして、レイチェルは件の獣が隠し持っていた遠距離攻撃について、見た限り
のことを全て説明した。

ライガ > 依頼の度に考える。
きちんと仕事をこなし、それでいて必要以上のことをあれこれ聞いてこない、
この相手を、ライガは少しずつ信用し始めていた。
もしものときは、……もしものときは、“後始末”を頼んでもいいかもしれない。もっとも、相手はそれを望まないだろうが。

「そう言ってくれると、こちらとしてもいくらか気が楽だよ。
毎回手助けできなくて苦しいところだけど」

とはいえ、最近は体の調子もよくなってきた。このままいけば復帰も近いだろう。

「僕は最初ね、見えない空気のカベで“檻”をつくって、誘い込もうとしたんだけどさ。
アイツ、結構速いんだよね。君が対応できてたなら、幸いってやつだ。

で、話聞く限りだと、移動速度。モノを引き寄せる力。
特定の金属だけを引きつけるなら磁力の可能性もあるんだけど、それじゃ鉛弾はくっつかないよね」

そして、気になるのが。

「魔眼、か。
バエルといえば、猫と蛙と人面、蜘蛛脚の悪魔だ。零落以前までたどるなら、電気は分かるんだけど。
伝承に、魔眼なんて記述あったかな……?」

ふうむ、と唸り、メモ用紙に新たな文章を書き込む。

「さっき言った、銃弾を引き寄せて操る事と、斬撃を放つ眼。
この二つが際立って浮いてるね。それ以外なら、電気及び電磁力による能力って纏められるんだけれど」

首をひねり、ペンの代わりにスプーンを動かした。
冷えた感触を楽しみながら、疑問を言葉にしてみる。

「悪魔ってさ、だいたいは伝承通りの能力・性格だと思うんだ。だからこそ対処もできるわけだし。
でも、それ以外の、全然関係ない特徴が出てきた場合は、どうなんだろ」

目の前の少女へ、どう思う?と意見を求めてみた。

レイチェル > 「経費だけでもバックアップとしちゃ十分さ」
そう言って、レイチェルは微笑んでみせた。

「そういえば、お前はそういう戦い方だったよな……」
いつぞやに路地裏で見た彼の戦いぶりを思い出す。
あの時には本当に助けられたものだ。

「……オレの世界の悪魔と、この世界の悪魔が全く同じ存在なのかと言えば、
 ちょいと首を傾げるところだが……オレの知る限り、同名の悪魔に魔眼を
 どうこう、なんて力は無かったな……」
ぱくぱくとジェラートを平らげて、目を閉じて腕組みすると、うぅむ、
とレイチェルも唸る。

「さて、どうだろうな。本来持ってる力に加えて別の力を行使するっつーんなら
 ……悪魔に何かしら『別の手』が加わってるとか……
 存在自体が螺子曲がってる……つまり、何かしらの要因で純正なそれとは
 違う存在になってる可能性もあるよな。いや、判断材料があまり手元に無い
 から、あんまりどうこう言えねーが……」

ライガ > 「銃弾も聖水等もけっこうかかりそうだからなあ。
公務だ必要経費だといっても、そこまで潤沢に使えるわけでもないだろうし。
……給料から生活費は別として、余暇に使える余裕ある?正直」

まあ、といってもライガにとって、相手の制服姿以外をほとんど見たことがないので、休暇をどうしているかとか知る由もないのだが。

「そ。あんまりガチガチのファイターじゃなくてさ。
役割も地味な方だから、誰かの手助けったって基本書類仕事しかできないけど。
まあ、あのときよりかは、いくらか回復してて。風と同化して移動速度を上げるくらいにまではなってるさ」

完全に回復したら、そのときには、できることも増えているかもしれない。
生きてれば、の話だが。

「やっぱり、レイチェルもそう思う?
僕もね、似たような考えに行きついてるんだ。
この中に居る悪魔、」

と、いいながら親指で自分の胸を指さす。

「伝承通りの純粋なオリジナルじゃなくて、第三者に創造された別物。
もしくは、別の魔的存在がまじりあってる、そんな実態なんじゃないか、とね」

そう仮定しなきゃ、納得できるような説明は難しいよ、と話す。
茶色の斜面はなくなり、溶けかけている山の上から、新たに抹茶を流しいれる。
当初よりも一回り小さくなったような雪山が、あっという間に緑色に染まり、夏山のように変貌した。

レイチェル > 「そうだな。聖水もいちいち作ってたんじゃ手間だから、購入してるしな。
 ……おっと、心配ありがとうな。一応それなりに楽しく過ごしていくだけの
 金はあるさ」
給料に加えて、ライガが持ってきてくれるような、こういった『仕事』の報酬。
そういったものを合わせれば、それなりに好きに暮らしていけるだけの金はある。

「そうか。回復してるなら何よりだが……」
そう口にして、水をこくこくと飲むレイチェル。

「ああ、はっきりと断言出来るような材料はねぇが……それでも、お前の
 悪魔に関しちゃ、ただの悪魔、って風には思えねぇ。何かしらの要因で
 捻じ曲げられた存在……オレにはそう感じられたぜ。だから、だ。
 前回の斬撃もそうだが……思いもよらないような攻撃を仕掛けてくる
 可能性がある。オレも気が抜けねぇってことだな」

相手がただの悪魔でない、となればレイチェルとしてもより気を引き締めて
事に当たる必要がある。真剣な表情で、レイチェルはライガの――悪魔をその
身に宿した男の顔を見つめた。