2017/01/14 のログ
ご案内:「浜辺上空【スカイファイトエリア】」に八雲 咲雪さんが現れました。
八雲 咲雪 > 小さな機械を虚空に投げる。
機械は慣性に従い、弧を描きながら海に落ちそうになるも、途中で止まる。
数秒間、ふわりふわりと浮き続けると光を放ちながら回りだす。
規則のない回転を行いながら光をまき散らしているそれは、少し経てば上空に大きな球体のラインを作り上げ――そして消えた。

少女――咲雪は満足げにうなずく。

八雲 咲雪 > この球体のラインは、スカイファイトと呼ばれる専用エリア。
エアースイムではいくつか種目があるが、そのうちの一つ。
純粋なドッグファイトを楽しむ、競うもので、ファイターと呼ばれるスカイスイマーが有利と言われている。

スカイファイトでは特に必要な技能などはない。
相手に近づき、叩くように、もしくは蹴るように、相手に触れれば魔道具が有効打撃かどうかを判断し、アラームを鳴らす。
この有効打撃は本人の打撃の強さや速さが関係してくるため、加速力がものをいうといわれている。

八雲 咲雪 > さて、咲雪のスタイルはファイター……ではなくスピーダーと呼ばれる、最高速度を重視したスタイルだ。
このスカイファイトでは不向きなスタイルとされているが――。

(不向き、苦手なんて言ってられないよね。
今年は何が種目になるかわからないし。
苦手なものは普通、ぐらいにしとかないと)

空中でふわふわ浮いている咲雪が、むん、と気合を入れる。

ご案内:「浜辺上空【スカイファイトエリア】」に寄月 秋輝さんが現れました。
寄月 秋輝 >  
ぐっぐっと体を伸ばす。
これは年末、大会明けの彼女がどれだけ頑張ったかを確かめるテストでもある。

「咲雪、調子はいいですか?」

10センチほど浮いた状態で静止したまま尋ねる。

八雲 咲雪 > 「問題ありません、体のほうは温まってますし、S-Wingの調子も万全です」

ポニーテールがS-Wingに引っかかっているのを直しつつ、普段と変わらない声で答える。
冷静な声で返しつつも、内心は早く飛びたがっている。

寄月 秋輝 >  
「よろしい、では行きましょう」

ふわりと高めに飛び、周囲を見る。
スカイファイト用で広めのエリア。
以前の彼女は苦手であり、これが正式種目にならなければ勝てる、という反応であったのだが。

(自分から練習したいと言い出すとは)

彼女の成長……能力よりも、精神的な成長が嬉しかった。
同時に、それならばこちらも甘えさせてはいけないと考える。

「では軍隊仕込みの空戦技能を教えながら行きましょう。
 あまり優しくは出来ませんからね」

バキキ、と指を鳴らして微笑んだ。

八雲 咲雪 > サイバーグラスと飛行用アンテナを付け、飛び出す。
このグラスにマップや相手の位置などが表示されるが、このスカイファイトではほとんど使用しない。
ただ見た目の問題と、慣れの問題だ。

「はい、お願いします。
私が壊れなけない程度にはお願いします」

それは咲雪なりの冗談だったのかもしれないが、声色は真剣そのものだった。

寄月からは少し離れた位置に浮かぶ。
スカイファイトではお互い100m離れたところで相対し、カウント後、試合開始となる。

「こちら準備できました。
寄月さん、そちらはいいですか?」

無線を通して、状態を聞く。

寄月 秋輝 >  
少しだけ息を整え、魔力を尖らせる。
戦場の、空中戦の感覚に頭を置き換える。

少し離れたところに教え子が居る。
目を閉じていてもそれがわかるほどに鋭敏に。

≪ええ、どうぞ。
 スタートの合図は咲雪が≫

魔力による思念通話で返事を返す。

スタートの合図が来るまで、足元に魔力を溜めておく。

八雲 咲雪 > 「それでは、カウントダウンします。
5――。4――。3――。2――。1――」

0とともに、咲雪の試合開始の合図。
同時に咲雪は寄月から距離をとるため、一目散に逃げだす。
速度のないスピーダーはカモでしかないため、できるだけ長く、そして速くなるまで逃げ続け、速度を得たら戦うという手段だ。

寄月 秋輝 >  
こちらから離れるように飛ぶ咲雪を捉えに、真っすぐに飛ぶ。
魔法射撃を回避するクセで、バレルロールも伴う。

しかし、途中で気付いた。

(……まずい、速い)

追い付けない。
咲雪に合わせた魔力出力にしてあるため、彼女を圧倒することはできない。
以前までは技術で追い付けたが、もはやそこまでの差ではなくなってしまった。

それが、とても嬉しいのだ。

とはいえ、全力でやることに変わりはない。
追う、追う、追う。相手を安心させないように。

八雲 咲雪 > 距離のおかげか。
それとも――自惚れはよくないが、自らの成長か。
彼が自分の背中を捉えることはない。
しかしこの勝負はスピードバトルではない。

「寄月さん、いきますっ!」

くるんと体を丸めて半回転させる。
そして足のS-Wingから一気に魔力を爆発させて、ダッシュ。

逃げるのを止め、今度は真っ向から、真正面から、最高速度をもって相対する。

寄月 秋輝 >  
「来い……!」

真っ直ぐに突撃し、激突の寸前に体を逸らす。
想定よりも少し早いためか、秋輝が体を逃がすのが早かった。
すれ違いざまに蹴りを放つが、おそらく咲雪の体をかすめることもないだろう。

もう一度宙返りし、咲雪に向かって飛ぶ。
今度は咲雪の攻撃を見るために、こちらからは攻撃せずに。

八雲 咲雪 > 一瞬で寄月のそばを抜ける。
ぶつかる瞬間に伸ばした手は空を切り、有効打撃とはなっていない。
しかし、あちらの攻撃も咲雪には届かずにいた。

(もう一回っ!)

先ほどと同じく半回転し、来る寄月を迎え撃とうと飛び出す。
今度は当てると意気込んで、ぶつけるように手を伸ばす。

寄月 秋輝 >  
「んっ……!」

手が触れるギリギリ、体を逸らしてなんとか回避する。
さすがに攻撃に関しては甘いが、それでも速度も相まって十分な能力だ。
並みの人間なら反応は困難だろう。

「次!」

もう一度宙返り。
今度はバレルロールしながら一気に近付き、額を掌底でド突くように伸ばす。

八雲 咲雪 > 次の攻撃もよけられる。
当然といえば当然だが、それはそれで悔しい。
しかしその思いをすぐに彼方へ放り投げ、次に移る。

「こ、のぉ!」

バレルロールをしながら近づいてくる。
攻撃をはじくことはできない。
ならば、と相打ち覚悟で手を伸ばし、クロスカウンターを決めようとする。

寄月 秋輝 >  
(反撃!?)

少しの驚き。
この速度で、顔面に攻撃が迫っている状態で、衝動的に回避しようとしないのは予想外だった。
無理に回避したり、反射的に目を閉じるようなことがあれば、こちらの有利が取れると思っていたのに。

結果、思い切り咲雪の額をド突くことになるだろうか。
が、クロスカウンターで飛んできた咲雪の手が、こちらの顔面にも刺さった。
運悪く、鼻っ柱に。

「……っつぅ……!」

思わず自分から後ろに飛び、顔を抑える。
防御術式はほとんど組んでいなかったため、もろに激痛が走った。

八雲 咲雪 > 「くぁっ!?」

S-Wingは競技者を保護するために魔力膜が自動的に覆う設定となっている。
そのためにダメージはないものの、衝撃はある程度貫通する。
そのために、まるでひっくりかえるかのように回転する。

(でもっ!)

空中で何度か回転しつつも、すぐに姿勢を直し、寄月を見つけたら追撃を行うために飛び出し

「もう、いちど!」

さらに得点を稼ごうと、打つように手を伸ばす。

寄月 秋輝 >  
鼻から手を離すと、血でべっとり濡れていた。
手を払い、鼻血をぺろりと舐めとって、咲雪から離れるように飛ぶ。
しかし相手のほうが早い。

「く……っ!」

なんとかかわそうとするが、結局背中に打撃を受け。
自分の魔力を意図的にカットし、速度を大きく落とした。

そのままゆらゆらと飛んで、地面へ降りた。

八雲 咲雪 > 「…?」

ゆらゆらと飛んで降りていく寄月を、うしろからゆっくり追いかける。

「寄月さん、どうしたの?
怪我、した?」

まさか防御膜などやっていないとはおもわず、怪訝そうに尋ねる。

寄月 秋輝 >  
「あー、はい。
 咲雪に合わせて飛ばなければならないので、速度を上げられないように防御を落としてあったので」

顔を向けると、鼻血が溢れている。
ぐいっと袖で拭うが、思いっきり血の跡が残る。

「……しかし、成長しましたね。
 いや驚かされました」

微笑んで囁く。
これが正直な気持ちだ。
もう少し仕込めば、同じ条件では彼女に勝てなくなってしまうだろう。

八雲 咲雪 > 鼻から血が出ているのに気づく。
自分の手が空いてのどこにあたったかなんて全然わからないので気にしていなかったが、今回は事故が起こってしまったようだった。

「そう言ってくれるのはうれしいけど……。
とりあえず、鼻の処置したほうがいいかも。
鼻血がタラタラ流れてると……ちょっと笑っちゃう」

くすくすと、小さく笑う。
ほめてくれているのだが、どうしても面白い顔になってしまう。