2016/02/13 のログ
ご案内:「未開拓地区:天然温泉」に東雲七生さんが現れました。
東雲七生 > 未開拓地区の青垣山の麓。
木々が生い茂る中に、温泉がある。
人の手が入っていないその温泉を七生が発見したのは偶然が幾つか重なった結果だった。

秋と冬の境のある日、授業の課題で転移荒野を訪れた七生は、運悪く巨大な熊に似た魔物に出くわしてしまう。
巨獣相手には持ち前の俊敏性も効果は薄く、防戦一方だった七生は一瞬の隙を突かれ脇腹に重い一撃を受けてしまった。

激痛に意識が飛びそうになる中、辛うじて異能を発動、巨熊の不意を突いて戦線から離脱をした七生を次なる不幸が襲った。
ハリケーンも斯くやと謂わんばかりの突風がその身を襲ったのである。
もはや何かにしがみついて風をやり過ごす気力も残されていなかった七生は、その矮躯を軽々と吹き飛ばされ、
幸か不幸か、この温泉へと落されたのだった。

自分の身体が宙を舞った際に朦朧としていた意識を手離していた七生が目を覚ました時、その身体は傷一つ残っていなかった。
ただ、派手に脇腹の破けた制服が先の負傷は幻ではない事を物語っていた。


──それから数ヶ月。
七生は再び、この温泉にて服を着たまま気を失っていた。

東雲七生 > 今日この時までの経緯もこの温泉を見つけた時と同じく。
課題で転移荒野を訪れ、巨熊と遭遇し、見事にワンパン貰って敗走した末である。
当時と違うのは、致命傷と呼べるほどの傷は負わなかった事と、自らの足でこの温泉まで辿り着いた事だろうか。

それでも服を脱ぐ気力までは無く、倒れ込む様に湯の中に身を投げた後は無我夢中で近くの岩にしがみつき、
そのままゆっくり気を失ったのだった。
巨熊との戦闘による負傷は、既に完治している。

東雲七生 > 「うぅ……」

小さな呻き声一つ、静かな岩場に湧く温泉に木霊する。
意識を取り戻した七生は、小さく頭を振ると掴まっていた岩を這うようにして登り始めた。
此処に来るまで感じていた、傷を受けた背の痛みは消えている。しかし、七生の着ている服の背には、爪痕と思しき三本の破損があった。

「んん……体も怠くねえし、ちょっと頭ぼーっとしてんのは逆上せたかな……。」

時折吹いてくる夜風が心地良く思えるほどには七生の身体は熱を帯び過ぎていた。
この場所に着いてからどれくらいの時間が経ったのだろう、と湯の中に入る前に岸へ投げて置いた端末を探す。

東雲七生 > 「あ、あったあった。」

無事に端末を見つけ、傷が無いかを確認する。
投げた先が岩場なので少々心配だったが、それも杞憂に済んだことを確認すると、ほっ、と溜息を吐いた。
時間を確認すれば、幸いまだ30分も経っていないようで重ねて安堵すると、端末を岩の上に置き、おもむろに上着を脱ぎ始めた。
そしてそのまま、濡れて肌に張り付くシャツも脱いでしまう。

「うへ、寒い……でも少しは乾かしておかないとだしな……」

流石に未だ冬が抜けきらない時期。野外で半裸になると寒さが身に沁みた。

東雲七生 > 「……うわー、ざっくり。」

脱いだ服の背中を確認して眉根を寄せる。
これは服屋に持って行って修繕を頼んだ方が良さそうだ、と考えたところで七生は大きく溜息を吐いた。
やっぱりあの巨熊に挑むのは時期尚早か、と独りごちて服と端末を岩の上に置いておくと、再び温泉へと飛び込んだ。

「もうちょっと暖まったら帰ろうっと。
 ……でもこれ、帰るまでに湯冷めするよな……。」

欠伸混じりに呟きながら、見上げる空は濃紺。
ちらほら星も瞬き始めているから、そろそろもっと冷え込んでくるだろう。

「ま、全力ダッシュすればすぐに体も暖まるか。」

東雲七生 > 「問題はずぶ濡れな事をどう深雪から隠し通すかって事か……」

上は脱いだものの、下はそのままでお湯の中に居る。
きっと走って返ってもズボンと下着が乾くという事はまず有り得ないだろう
川に落ちた、とでも言い訳すれば良いか、と雑に考えながら大きく伸びをして。

「……ま、もーちょいのんびりしてからでいっか……。」

はぁ~、と心から気持ちの良さげな吐息と共にゆっくりと目を閉じたのだった。

ご案内:「未開拓地区:天然温泉」から東雲七生さんが去りました。