2016/02/20 のログ
ご案内:「未開拓地区:天然温泉」に東雲七生さんが現れました。
■東雲七生 > 青垣山の麓の温泉に、今日も七生は浮かんでいた。
今日は衣服に乱れはないが、代わりに疲労の色が顔に濃い。
巨熊の攻撃を回避に徹し、捌き続けること4時間半。すっかり日も落ちた頃に互いにスタミナが尽きての痛み分けだった。
「攻撃しようとすると隙が出来んのかな……」
すっかり星が瞬いている夜空を眺めながら、ぽつりと独り言を漏らす。
どうせこの温泉の存在自体が人に知られているわけでもなさそうだから、と高を括っての独り言だった。
ご案内:「未開拓地区:天然温泉」にセシルさんが現れました。
■東雲七生 > 「そろそろ帰んねえとな~……あ~
でもあんだけ動き回ってたんだし、もう暫く指一本動かしたくねえなあ~……」
あ~、と意味も無く気の抜けた呻き声の様なものを上げながら、
ふらりふらりと水面を浮草の様に漂う。
小柄な上に筋肉の比重が大きい七生でも難なく浮いて居られることからも、
この温泉がありきたりなものとは一線を画している事が窺えるだろう。
「あ~……腹減った。」
思い付くままに、頭に浮かんだ言葉そのままが口から零れ落ちる。
■セシル > 良い年した女性の趣味の1つが「冒険」だったら、あなたはどう思うだろうか。
はしたない、と思うだろうか。
あるいは、万が一何かあったらどうするのか、と思うだろうか。
そして今、「冒険を趣味にする良い年した女性」が青垣山周辺の探索を楽しんでいた。
…もっとも、「彼女」の「性別」をどう扱うかは議論の余地があるかもしれない。
「………む、何だ、この湯気は?」
そんな事を言いながら茂みをかき分け…そして、七生が天然温泉に浮かび上がる場面に出くわす事になる。
「………着替えはあるのか?」
拍子抜けしたように、目を大きく2回ほど瞬かせ。
真顔の第一声がそれだった。
■東雲七生 > 「あ~……走って帰れば多少は乾くから心配ご無よ……う?」
ぷかぷかと漂いながら掛けられた声に応じる。
しかし、はたと我に返り、僅かに残っていた気力を使って声の主へと顔を向けた。
服を着たままの入浴故に見られて困るような事もなかったのだが、
やはり誰も居ないと思っていたところで声を掛けられると驚きが勝るもの。
見遣れば、確かに人影がある。
「ぇ、あ。……ええと、まあ!うん、大丈夫!」
疲労感と湯気との二重のフィルターによって視界が不鮮明極まりないが、それでも人影へと力強く肯いた。
■セシル > 「…多少ではまずいだろう。
こちらの冬の寒さは私の故郷ほど厳しくないが、それでも冬は冬だ」
「走って帰れば」の旨の回答に、呆れたような溜息を吐いてから七生の方に近づいていく。
やがて湯気のフィルターは薄くなり、細身のシルエットくらいは判別出来るようになるだろうか。
「わざわざこんなところまで足を運んでいるんだ、タオルくらいはあるのだろうな?」
鼻筋の通った中性的な顔立ちが、少年を見下ろしている事だろう。
■東雲七生 > 「それにほら、走ってたらどのみち暖まるし。」
だいじょぶだいじょぶ、と気楽に返しながらふわぁ、と欠伸を一つ。
少し気を緩めすぎたかと反省して少し気合を入れてみると、
思いの外疲労困憊の身体には気力が戻っていた。
「いやあ、スポーツタオルくらいなら持ち歩いてんだけどさ。
温泉入るのは成り行きというか、事のついでというか、
入浴が目的じゃないから、バスタオルなんかは持って来てねえんだよなあ……。」
近くの岩の上にぽつんと置かれたデイパックを示しながら答える。
ようやく仔細が明らかになってきた相手に、へにゃり、と子供じみた笑みを向けた。
■セシル > 中性的な顔立ちのその人物は細身で…そして、少年より幾分長身のようだった。
「………走ってかく汗が引く時が余計危険なのだぞ………」
能天気な返事に、こめかみに指を当て溜息を吐く。
「ここまで足を伸ばすほど活動的な割には、身体の働きについての認識が随分いい加減なようだな。
…身体を適切に管理するのも、身体を動かす者の嗜みだぞ」
そう言って自分が背負っていた鞄から、スポーツタオルを取り出して。
「自分が持ってきたもので足りんようなら、使って構わん。
風邪を引かれてもきまりが悪いからな」
そう言って、岩の上の、少年が持ってきていたと思しきデイパックの上に置いた。
「………何なら、下着の替えも貸すか?
タンクトップくらいなら、多少寸法が違っても問題は無いと思うが」
性別を意識しているのかいないのか、かなり踏み込んだ提案を投げかけた。
■東雲七生 > 目測で年齢や性別を推し測るだけの気力も湧かず、ぼんやりとその姿を眺める。
自分より高い背丈に少しだけ悔しさも覚えたが、
それを言っては周りの同性は大抵自分より高身長だったりするので、悔しがってはキリが無い。
「帰ったらすぐ風呂入るしさ、へーきへーき。」
一応自分の身体については、言われるほど把握を怠っているわけではなく。
実際に何度か実行した結果、大丈夫という結論に至ってるのである。
それ故か妙な自信に満ちた言い振りだった。
「へーきだって。
それより、君は何でまたこんな所に?
……別に湯治客って感じでもなさそうだし……?」
下着に関してはふるふると首を振るのみで。
本当に必要ないのだ、と態度でも示しておきつつ、疑問を投げかける。
■セシル > 少年の覚える悔しさはまるで知る由もなく。
相手を年少だと思っているので、気にする事ではないと思っているようだった。
「………貴殿がそうまで言うなら、そう思うこととしよう。
風邪を引くなよ」
そう言って、とりあえず鞄の口を閉じる。
それでもスポーツタオルはしまわないあたり結構強情かもしれない。
…そして、ここに来た理由を尋ねられれば、
「…私か?
何のことは無い、勉強の気晴らしに、野外散策に来ただけだ。
ここには、湯気の正体が気になって足を向けたに過ぎん。
…まさか、堂々と湯に浸かる者に出くわすとは思わなかったがな」
そう言って、に、と口を横に広げて笑った。
どちらかといえば、男性的な印象の強い笑顔である。
■東雲七生 > はふ、と溜息の様な物を零した直後、ゆっくりと手足を動かす。
湯に浸かる直前まで、指一本すら動かすことが億劫だったのだが今はそれほどでもなくなっている。
それを確認すると、七生はおもむろに大きく伸びをした。
「んん~っ!
よぉし、気力も回復する事が分かったのが収穫かなあ。」
そのまま体を左右に傾けて軽いストレッチめいた事を始める。
「ふうん、野外散策かあ。
まあ、確かに試験も近いからって勉強ばっかりじゃ気も滅入るよなぁ。」
わかるわかる、と頷きつつ。
それじゃあ此処に温泉があることすら知らなかったのか、と納得したように頷いた。
そしてこちらへと向けられた笑みに応じる様に、にぃ、とやはり子供じみた満面の笑みを浮かべる。
■セシル > 七生の様子と、その言葉を聞いて。
「…なるほど、効能に即効性のある秘湯だったのか。
ここに来るまでが楽ではないだろうが…面白いな。水着の持ち合わせが無いのが惜しい」
納得したように軽く頷いてから、わずかに笑い声を零した。
「ああ…厄介な科目に何とかめどがついたのでな。
それで丁度良いと思って、気晴らしだ。
…元々剣術専攻だったのでな…こうも机に縛られてばかりいると、少々うんざりする」
そう言って、苦笑いを漏らす。
■東雲七生 > 「前に来た時は怪我が治ったけど、特に怪我してない時は疲労回復とかあるみてえなんだよ。
今日はひたすら疲れたから、一休みしようと思ってた弾だけどさ。思ったより早く回復したなあ。」
ゆっくりと体の節々を慣らす様に動かすと、みるみる気力の回復が実感となっていく。
次第に締まりの無かった表情も快活そうな物へと変わっていった。
「へえ、そりゃあ良かった。
俺の方も、一応試験の一環で転移荒野まで出張ってんだけど……」
見ての通り、と軽く肩を竦める。
座学に関しては割と何とかなりそう、という根拠のない自信に満ちていたので
ひとまず一番手のかかりそうな物を片付けに来たのだった、が。
「へえ、剣術かあ。
多いよなあ、ここ。剣とか刀とか使う奴さー。」
感心したように溜息を漏らし、そして少しだけ興味深そうにセシルの姿を眺めた。、
■セシル > 「怪我も治るのか…どのような力があるのだろうな?
私は魔術などの分析は出来んが…そういった能力のある者が調べてみたら面白そうだ」
「湯治」のイメージを超えるような効能に、ふむ、と思案がちな顔をし。
真面目な顔をすると、中性的な端正さがより強く表に現れる。
「試験でこの辺りか…随分高度な実習科目だな?
監督者も無いのはどうかと思うが…もし問題無いのであれば、治療の心得がある者を伴った方が良いだろう。いつもここに辿り着けるとは限らんだろうし」
話を聞けば、少年の軽く肩をすくめる様子とは裏腹に、怪訝そうに片眉を上げて。
セシルが元いた士官学校の卒業に必要な野外演習だって複数人だったし、何よりここまで危険な獣はうろついていなかった。
…軍人は人間を相手にするものなので、当然といえば当然なのだが。
そして、七生が「剣とか刀を使うやつが多い」と言えば、こちらは不思議そうに首をひねり。
「そうか?生徒の割合としては微々たるものだろう。
…まあ、士官学校と比べるものでもないのだろうが」
セシルは、軍服を思わせる丈夫そうな厚手の紺色の上下を身につけて、腰には形状の違う二振りの剣を携えている。そして、頑丈そうな靴。
…すらりと背が高いが、男にしては腰が細い。剣を扱うという割には、掌も薄く感じられるかもしれない。
■東雲七生 > 「いやー、俺は怪我が治せてラッキーとしか思わなかったなあ。
確かに、調べてみたら色々と面白い発見とかもありそうだけど……」
そうしたら、ここは穴場として扱えなくなってしまう。
それは七生としてはあまり美味しくない状況とも言えた。
溜息と共に苦笑を浮かべ、軽く頭を掻く。
「まあ、高度っちゃ高度だけど……」
確かにセシルの言うとおりである。
監督も付けず、単独で行うにはあまりにも危険な実習。内容は転移荒野に出現する魔物の討伐。
七生の単独行動が許されていたのは、偏に七生の強い要望からと、
既に何体か魔物の討伐を果たしているという実績からだった。
「まあ、確かに他にも色々使う奴はいるけどさ。
やっぱり多いと思うんだよなあ、扱い易さに関しては納得いくけど。」
半年近く前に毎日の様に眺めた生徒同士の模擬戦を思い出しながら、七生はセシルから己の掌へと視線を移した。
そういえば、自分は剣を振るった事が無かったな、等と思い返す。
■セシル > 「…魔術的な要素も無くそれだけの効能があるとしたら、とんでもないことだぞ?」
苦笑しながら少年に諭す。
セシルは学術肌の人間では間違っても無いが、士官学校の看護科の寮友などの話を聞いて、治癒魔術がどのようなものなのかの知識を、非常にざっくりながら持っていた。
自然現象で傷が治せるのは、半ば「奇跡」なのだという認識も。
「………貴殿は、少しは自分を大事にすることを覚えた方が良いな」
言葉を濁す七生の様子に、溜息をつきながら。
「扱いやすさというか…携帯の容易さだろうな。私の元いた士官学校でも、武術の主流は剣術だったから。
………どうした?」
相手の視線が自分の手に向かっているのに気付くと、右手を軽く持ち上げて握ったり開いたりしてみる。剣術を嗜む割には指の節が目立たない。
全体的に、ごつさとは無縁の手だった。
■東雲七生 > 「う、ん……そういうもんなのか?
……俺ってば、魔術方面に関しちゃからっきしでさ……。」
けれどまあ、この温泉も立地環境からして異世界からの物である事が否定しきれない分、有りえるのではと思ってしまう。
何せ山の様な大きさの熊が居たくらいなのだから、とんでもない温泉があっても不思議ではないだろう、と七生は肩を竦めた。
「これでも絶対に無理だと思うことはしてねえんだけどなあ。」
出来ると思ったからやってるだけ、なのだ。
むしろ自分の身を大切にする事だけは誰よりも徹底している自負すらあった。その所為で自身の異能を扱えないほどには。
「あ、いや。別に……あんまり武道派って感じじゃないなあって。」
お互いに、と苦笑する。
多少鍛えているとはいえ、七生も服を着ればただの小柄な少年である。
■セシル > 「私も詳しくはないが…こんなものがあちこちにあったら、治癒魔術などそもそも必要とされんだろう?
それだけ、「何かがおかしい」ということだ。…私も、詳しくはないがな」
無論、セシルの出身世界が異世界の全てではないので断言はできないが、少なくともこの世界においてはイレギュラーなのではないだろうかとセシルは思う。
そうでなければ、治癒魔術の講義が開講されていたり、生活委員会保健課などというものが設置されたりはしていないだろうし。
「この辺りでの単独行動ならば、よほどの事情が無い限り「絶対に出来ることしかしない」位の方が丁度良いぞ。助けが期待出来ないことの危うさを甘く見てはいけない」
厳しい目つきで、そう忠告した。
この辺りを「気晴らし」で散策するセシルだって、危険を感じたらすぐに逃げることにしているし。
「………まあ、男からすればそう見えるのも仕方あるまい。
これでも大分鍛えたんだ。手や指だって、昔はもっと細かった」
「武闘派って感じじゃない」と言われれば、そう言って苦笑する。
「貴殿は私よりも若いようだからな…見た目に現れんのも仕方あるまい」
「時間が解決するさ」と、朗らかに笑った。
■東雲七生 > 「まあ、それも確かにそうだな……
って事は、やっぱりこの温泉はあんまり人に知られちゃいけないのかもしれない。」
ぱしゃり。お湯を手ですくって、零れる様を眺める。
きっとノーリスクで回復してるわけではないのだろうが、改めて考えてみると確かに規格外だ。
今後は利用を控えた方が良いのかもしれない、と少し思案する。
「うぅ……そんな怖い顔すんなってば。
一応、本気でヤバい時は絶対逃げるし。」
少しだけしゅんとした様な顔で項垂れると、渋々と言った様子で呟く。
むぅ、とバツの悪そうに口を尖らせたが、すぐに立ち直ってくりくりとした目をセシルへと向けた。
「そう、なのかあ……。
って、え?俺、年下?……というか、あんまり歳離れてるわけじゃ無さそうだけど。」
一応、15なんだけど、と少しだけ緊張した面持ちで自分の歳を申告する。
■セシル > 「私もそういった研究者にはさほど縁がないが…念のため、黙っておいた方が良いか?」
少年の思案がちな表情を見て、そう尋ねた。
「………信じるぞ」
七生がしゅんとしたり、バツの悪そうな顔で口を尖らせたりするのを見れば、そう言って困ったように笑った。
「………15か…確かに、もう少し1つくらい下かと思っていたな。
私は18だ…元の世界の暦に従うなら、もう3ヶ月ほどで19になる」
年齢を申告されれば、こちらも申告しかえす。真顔で。
■東雲七生 > 「う、うん。
もしかしたらさ、ほら、この辺の野生生物たちが使うのかもしれないし。」
それはそれで面倒な事になりそうではあるが、七生は気付きそうもない。
セシルの問いに、こくこく、と繰り返し頷いて返した。
「んまあ、多少の無茶はしても無理はしないつもり。今までだってそうしてきたし。」
軽く頬を掻きながら苦笑を浮かべつつそう告げる。
無茶の線引きは、黙っている事にするのだが。
「えっ、18……って事は、ええともしかして、先輩?
だったら、その、タメ口きいてすんません……っ!?」
あわわわ、と慌てふためきながら頭を下げる。
一応一年生。先輩後輩の上下関係は妙に気にするのだ。
■セシル > 「この辺りの野生生物との混浴とは、穏やかではないな。
…まあ良い。黙っておくと約束するよ」
七生の刻々と頷く様子を見て、朗らかに笑い。
それから、七生の顔をしっかりと見て頷いた。
「…「多少の無茶」が「多少の無茶」で済んでいれば、私から言うことはもう無いがな?」
苦笑する七生の様子を見ながらそう釘を刺す。
表情はほぼ真顔だが、声色に少しからかうような表情が混じっているように聞こえるだろう。
「いや、私も1年だ。最近こちらに来たばかりだからな。
学園生活という意味では、貴殿の方が先輩だろう」
「時期が中途半端だし、単位取得数からして恐らく来年も1年生だな」と言って、朗らかに笑った。
■東雲七生 > 「あはは……まあ、その辺は置いといて。
サンキュっ!」
にぱっ、と日輪の様な笑みを浮かべる。
そして続く言葉には、そのまま少しだけ表情を強張らせた。
「ああ、ぅぅ……多分、大丈夫……かな?多分……。」
からかい混じりである事は察せられても、半分図星である事には変わりないので冷や汗が頬を伝う。
「あ、そうなんっす……そうなの、か。ふぅん。
でも、何て言うか、年上には変わりないんす……よ、な?
あーもー!……ややこしいなあ!」
うがー、と自棄になりながらざぶざぶとお湯から出ていく。
そろそろ帰る頃合いだろうと、夜の更け具合から判断したのだ。
「そういえば、名前──俺、東雲七生。
もうそろそろ二年……進級できればの話だけど。
……えっと、キミ、は?」
と、軽く名乗ってからセシルの名を尋ねた。
■セシル > 「さほど縁のない研究者の探究欲よりは、こうやって言葉を交わした者との関係の方が大事だからな」
「大したことではないさ」と、朗らかに笑う。
…と、七生の言葉が強張ることで(図星だな)とは思ったが
「…あまり、助けを求められる存在から離れ過ぎんようにな」
と、やんわり釘を刺す程度に留めておいた。
…と、敬語とため口を混ぜようとして混乱している七生を見て、ぷっと吹き出し
「敬語を使う相手は少ない方が、私としては面倒が無くていい。
どうせ学年の上下が重要な学校でもないし…敬語でなくて構わん。
…学年基準なら、来年から私が貴殿に敬語を使うことになるしな」
「それはそれで不自然に感じるだろう?」と、笑いながら。
そして、少年から名乗られれば
「…ナナミ、だな。私はセシル・ラフフェザーだ。
同じ学園の生徒として、どこかで縁もあることだろう。よろしく頼む」
と言って、ふ、と男性的ながらも柔らかい笑みを浮かべた。
■東雲七生 > 「ふんふん……その気持ちはよーく分かる。」
繰り返し頷きながら、ついでに腕組みなんかもしながら。
実際に話した事のある相手との関係を尊重すると言うのは七生にとっても大事なことだった。
「うっ、あ、はぁい……肝に銘じときます。」
とはいえ助けを求める相手がどうにも規格外揃いなのもまた考え物なわけで、と。
流石にそれを言うのも言い訳がましいと思ったので、そっと心に秘めたままにした。
「えぇっと……じゃあ、まあ、そのうち敬語も取れて来ると思うんすよ。
じゃない、思うんで……そう、次!次会った時はまた、自然に話せると思いますんで!
……学年基準っても、同じ一年だったら問題ないんじゃないんすか……じゃない、問題ないんじゃねえかなあ。」
ころころと表情と口調を二転三転させつつ、すっかりお湯から上がると服の裾をきつく絞る。
「セシル、か。
そーっすね、また学校で会うかもしんないっすから……
じゃない、ええと、まあ、今度は違う温泉でゆっくり浸かりながら話でも……しようなっ!」
大きく頷くと、満足げに笑みを浮かべる。
最後の発言からすると、セシルが異性である事には気付かなかったようだ。
■セシル > 「分かるも何も、人間は普通そんなものだろう?
世界を越えても、そこまで変わるとも思えん」
やたら感銘を受けたように頷く七生の様子が面白かったのか、くくくといった感じで喉で笑う。
「分かれば良い」
七生の周囲の規格外ぶりを知らないセシルは、詰まりながらも承諾した七生の様子に、納得したように頷いた。
「…まあ、次は頼む」
やっぱりぎこちないままの七生の様子に、苦笑いをしながらもそう答えた。
「温泉か…水着を用意せねばならんな」
セシルの文化圏にも温泉、湯治という文化はなくもないのだが、基本的には裸では入らないものなのである。
…というか、混浴に抵抗が無いのだろうか、この見た目だけ王子様。
「ああ、そのタオルは使ってくれて構わんぞ。
後で洗って女子寮の私宛に届けてくれれば良い」
と、自分が七生のデイパックの上に出したスポーツタオルを指差し。
…以前会話をした青年は「男と比べたら細いだろう」で感づいたが、目の前の少年はそうではなかった可能性があると感じたので、念のため「女子寮」と伝える。
■東雲七生 > 「んまあ、それもそっすね……」
あはは、と乾いた笑いを添えつつ軽く頭を掻く。
それからセシルの示したタオルを見て、「でも、ちょっと申し訳ないな……」と思ったところで、
思わず聞き流しかけた単語に思わずセシルを二度見する。
「女子寮……えっ、女子寮?」
そこで漸く勘違いに気付いたのか、たちどころに顔を赤らめる。
前にも似たような勘違いをしたのだが、全く学んでないことに自分自身が恥ずかしくて堪らないのだ。
「えっ、あ、そ、そーう、分かった。
女子寮のセシルを訪ねれば良いんすね、おっけーおっけー。」
幸い女子寮には何人か知り合いが居るので、彼女らの内の誰かに頼めばいいか、と。
「え、えっと、んじゃあ俺、そろそろ帰るから!
せ、せ、セシルも気を付けて帰れよなッ!」
ほぼ言い逃げに近い形でデイパックとタオルを掴み取ると、
ずぶ濡れのまま、岩場で足を取られる事もなく危な気無くその場を後にしていく。
■セシル > 七生が顔を赤らめるのを見て、苦笑を漏らす。
「…気にしていないだけかとも思ったが…もう少し早く言っておけば良かったな。すまん。
私は、男ではないよ」
頷きながらも動揺を隠せていない七生の様子に、こちらの方もきまりの悪そうな笑みを浮かべて。
「ああ、ナナミも気をつけて。
…くどいようだが、風邪を引かんようにな!」
走り去る七生の背中に、そう、中性的な強い声をかけて見送った。
ご案内:「未開拓地区:天然温泉」から東雲七生さんが去りました。
■セシル > 「………変に引きずらないでくれると良いが」
七生の背中が消えていった方向を見ながら、ぽつりと。
「…さて、私もいい加減戻るとするか。
夕飯を食べたら、勉強の再開だ」
やれやれ、と呟いて。
セシルは、天然温泉をゆったりと後にしたのだった。
ご案内:「未開拓地区:天然温泉」からセシルさんが去りました。