2016/05/07 のログ
ご案内:「24時間フィットネスジム『ヴァルハラ』」にリビドーさんが現れました。
■リビドー > 不夜の園。
歓楽区にそびえたつ汚れていてもそびえたつフィットネス施設と入浴施設を併合した大型ビル。
月額8000円を支払えば24時間誰でも施設を利用できる施設であり、歓楽区に夜はないと痛感させる。
夜通しサイボーグなどを含む機械、サーバーの整備を行った果てに電車を逃し寝床替わりにしているであろうくたびれた技師やエンジニア、あるいは課題と研究か、何かに追われていたであろう教師らしい、まだ身なりの整った成人の姿も伺える。深夜に駆動する機械の音と微かな水気、軽装で泥のように眠る人々や時間を持て余し身体を鍛える人々の姿は、ある種の末法さを醸し出している。我々に休息はない。24時間戦うしかなかった、と。
――リビドーもその内の一人であり、時間を持て余してプールに励んでいた所だ。
水着一丁のままタオルで身体を拭き、丁寧に水気を取っている。
「結局終電を逃したか、ま、仕方あるまい。」
■リビドー > 彼自身は比較的、と言うよりは大分マシな方であり、
精々研究者と教師の仕事がいやらしい形で被らない限りは徹夜や終電を逃す程の仕事をする事はない。
とはいえそれでも、たまにはあるのだ。
水着を脱いでジャージに着替え、休憩室とされる一角へ足を運ぶ。
カップ飲料の自販機まで足を延ばして、見たこともないようなブランドのコーヒーを買う。
無地のカップに黒色の液体が注がれる様を見届けて、それを取った。
「とは言え、することもないか。
これ以上のプールもトレーニングも気が乗らんな。もう十分だ。」
どうするか、と、粗末な椅子に背を預けて寛ぎながらとりとめもなく言葉を吐く。
粗末な椅子は粗末ではあるが、軋みながらも十分にリビドーを支えている。
■リビドー > 微かな歓楽区の喧噪を耳にしつつ、スマートフォンを弄る。
アマチュアの投稿小説の月間ランキングを斜め読みしながら、それと決めたものを選んで読み進める。
よくある"異世界転生"もので、才気ある女子高生の一団が門に引き込まれた先の異世界で四苦八苦しながら奮闘する――
――そんな、ライトな冒険ものを描いたアマチュアの小説だ。
文章としては稚拙な所も多く、粗削りな設定がストーリーや展開の矛盾を孕む事もしばしばもあるが、
それでもそれなりに支持を得ている――当然、それを好む層の偏りもある。
「ふむ……」
リビドーからすれば読むに堪えないものではなっかったのだろう。
時間は余っていると言わんばかり、夜を使い物語を読む。
■リビドー > 偉大な作家と呼べるものではないのだろう。
それでも、読むには値する。
もしかすれば将来大物になるかもしれないな。
そう思いを馳せながら、読み耽って夜を明かす。
……ページをめくる、めくる。
指先で画面を叩き、御話をむさぼるように読み進める――。
ご案内:「24時間フィットネスジム『ヴァルハラ』」からリビドーさんが去りました。