2016/05/19 のログ
ご案内:「寄月家」に寄月 秋輝さんが現れました。
寄月 秋輝 >  
「……んーむ」

手持ちの端末を接続して、風紀委員会のデータを洗う。
光の糸で指と端末を繋ぎ、ゆらゆらと計算していく。

苦い緑茶を一口飲み、小さく息を吐く。

(……このデータ量では不足だろうか)

思い過ごしの線を考える。
元々、確率位相をずらすなど、恐ろしいレベルの魔法使いでなければ不可能なことだ。
そうそう起こることでもないか。

行き詰った様子で大きなため息。
その合間も手と頭は動いている。

ご案内:「寄月家」にRK-1115さんが現れました。
RK-1115 > ピンポーン
家に備え付けられたチャイムが来訪者を告げる。

外からは「お届け物です」との声。
抑揚のあまりない女性の声だった。

寄月 秋輝 >  
チャイム音に耳をぴくりと動かす。
何か研究所から届いただろうか。

「はい、お待たせしました」

判子を片手にドアを開けて迎える。

RK-1115 > ドアの先で待っていたのはメイド服姿の少女が一人。
お届け物といったのに特に荷物のようなものは持っていない。

少女は

「おめでとうございます」

とだけ告げると懐から筒状のものを取り出し

『パンッ』

とそれを放った。

寄月 秋輝 >  
パン、の音にも動じない。
なんかもう、すごい間の抜けた顔をしているかもしれない。
無表情だが。

「はぁ」

間の抜けた声を上げた。

「……あなたは?」

とりあえず聞いてみる。

RK-1115 > クラッカーから飛び出たリボンや紙吹雪がぱらぱらと肩に舞い落ちる。

それからクラッカーを撃った状態のままぺこりと頭を下げて

「モニター登録ありがとうございます。
 ご主人様の当選をお知らせいたします。」

と事務的に告げる。
それから顔を上げ

「私はご主人様を担当いたします、RK-1115です」

と名乗った。

言動がなにやらきびきびしている。機械的と言っていいほどに。
視線も外さずに目をじっと見つめている。見つめ返せばその顔は一応美少女といった風である。
口だけ笑って目が笑っていないのであるが。

寄月 秋輝 >  
「あ」

紙吹雪を浴びながら思い出した。
確かに家事が楽になるかな、程度のつもりで応募したような気がする。
宝くじを買うのと同じくらいに、当たる可能性を考えていなかった。
なるほど、当たりか。と小さく頷いた。

「はい、よろしくお願いします。
 寄月秋輝です」

ぺこりと礼を一つ。
無表情。
ある意味とんでもない光景かもしれない。

RK-1115 > 「虹彩認証を完了いたしました
 以後よろしくお願いいたします。」

そういったまま直立不動である。

玄関先で見つめ合う無表情二人。
一軒家で良かったと言うほかない。

寄月 秋輝 >  
「えーと、個体識別番号はRK-1115……でしたね。
 個体としての名前はありますか?」

しかし対応が早い。
すぐに玄関から居間まで招いていく。

殺風景な部屋にぽつんとあるこたつ。
四方には腰を下ろすクッション。
というわけで、そのクッションの一つに座るよう促した。

RK-1115 > うながされば後に続くだろう。
その際クラッカーの残骸の回収も忘れない。
そつなくミス無く抜かりなく。
メイドの鑑である。

クッションを差し出されればそこに腰を下ろす。
全円スカートがふわりと広がった。

「名前はRK-1115です」

名前を聞かれたことにはきょとんとしているようである。
なぜなら彼女たちにとってその番号こそ名前であるのだから。

寄月 秋輝 >  
「では人間としての個体名を考えないといけませんね。
 一応家事を任せるつもりで登録したので、外で名乗るのは個体名のほうがいい」

ふむ、と口元に指を当てて考える。
しかし自分が名前を決めてよいものか。
正座したまま熟考する。

「では便宜上、他人からこう呼ばれていた、という名はありますか。
 それさえも無ければ、僕が外で名乗る名を決めます」

口を開き、尋ねながらの提案。

RK-1115 > 「??」

人間としての

このご主人様の言うことはよくわからない。
なんとなく外で数字の名前を呼ぶのがはばかられると言うことは理解した。

だが今まで自分をそれ以外の名前で呼ぶ者などいなかった。
必要なかったからである。

「1115 もしくは お姉様 が質問の答えに該当するとおもわれます」

彼女にはそう答えるしかなかった。

寄月 秋輝 >  
わずかに目を細めて思考を並列で走らせる。
本当に個体としての識別名しか存在しないようだ。
『1』や『2』の意味を持つ言葉すらなく、『1115』という数字しか与えられていないのだ。

ならば数字をベースに名を付けよう、と。

しいこ、アイリス、イリス、とじか、etc...

目の前の少女を見る。
銀髪に赤い瞳。日本人名では少し妙だろう。
人間と同じように生活してもらいたいのだ、名前はそれに合わせたほうがいい。

機械でありながら人としての幸せをつかんだ、あの人たちのように。

「……では、アイリス。
 これからは『アイリス』と名乗ってください」

たっぷり10秒ほど無言で考えた末に、そう言い放った。

RK-1115 > 「アイリス…アイリス……」

もごもごと唱えている。

「かしこまりました。ご主人様」

頭を深く下げる。
座ったままの礼なので三つ指である。

顔を上げれば少し微笑んでいる気がする。
気がするだけかもしれないが。

とりあえずつけられた名前を気に入ったとみていいだろう。

その際、同期を取っていた個体が一斉にざわついたことは秋輝のあずかり知らぬことである。

寄月 秋輝 >  
「では改めてよろしくお願いします、アイリス」

同じように、ではないが。
自分の両の太ももに手を乗せたまま、深く礼をした。

「……で、家事全般は大丈夫ですね。
 出来れば買い出し、書類の届け出なども頼めるといいのですが……どこまで出来ますか、アイリス?」

次は現実的な話だ。
家事手伝いを頼める可能性を考えて呼んだため、能力の幅を知っておきたい。

ご案内:「寄月家」からRK-1115さんが去りました。
ご案内:「寄月家」にアイリス(1115)さんが現れました。
アイリス(1115) > 「よろしくお願いいたします」

ぺこぺこ頭を下げあう姿は何とも日本人である。

「必要であれば家事全般から各種事務、技能に至るまでダウンロードが可能です」

ここは特に遮蔽物もなくネット環境も良好のようである。
特に問題は見られない。
一般的な技能であれば十全に遂行が可能である。

「要望がありましたら何か披露いたしましょうか?」

寄月 秋輝 >  
思った以上に有能である回答が受けられ、少しだけ目を見開いた。
どうもうまくいけば、自分の負担が大きく軽減されそうだ。

「いえ、それは実際にお願いするときに披露していただきます。
 次に、エネルギーの補給について。
 人と同じ食事で賄えますか?その場合の量は?」

メイドを信頼しきっている言葉が出てきた。
次の問題は、食費などの圧迫に関しての質問だ。
どちらかというと心配はエネルギー面の方が大きいのか、質問が細かい。

アイリス(1115) > なんだかしめしめといった顔をしているような?
首を傾げる。

しかしこのご主人様、質問攻めである。
自分のスペックを詳細に知っておきたいと言うのもわかるのだが。
特に禁則事項にも触れないので素直に答える。

「人間と同じ食事は必要ありません。
 エネルギー源は電気。太陽光発電と充電によるハイブリット式になっています。
 ですので日当たりの良い場所をいただければ大変ありがたいです」

それからスカートの中から指で輪を作ったときくらいの太さのケーブルがにょろりと顔を出す。
秋輝に見せるように出しているのでスカートの後ろがまくれ上がっているが
後ろが壁なので問題は無いだろう。たぶん。

そのケーブルの先にはコンセントプラグほか各種端子が備え付けられているのがわかるだろう。

寄月 秋輝 >  
「……太陽光と充電……なるほど。
 では一般家庭での充電時、どれくらいの電気料金が必要となるほどの充電か教えてください」

また無表情に戻った。
家計は研究所からの支給でかなり余裕があるが、それでも元貧乏人の性である。

「一番日当たりがいいのは……この居間か、僕の部屋ですね。
 アイリスはどちらの方が都合がいいと思いますか」

アイリス(1115) > 「一般家庭用電源ですと充電完了までおよそ144時間。
 全てを給電によりまかなった場合、かかる料金は現在の料金体系で概算2.5万円です。
 給電のみでの活動も可能ですがその場合はセーフモードのみの活動となります。」

どこかからかデータを集めていたのか少々の間を置いて答える。
さらりと言ってのけた数字におそらく『うっ』と引いた顔をするだろう。

それに先回りするように答える。

「ですがご安心ください。雲量5オクタ以下の場合において必要電力の90%以上を発電可能です」

心なしか胸を張っているようにも見える。

「待機場所は屋内であれば有効度は無視できる範囲とおもわれます」

つまりどちらでも良いと答えた。

寄月 秋輝 >  
最後まで説明を聞いて、納得。というか安心した。
無表情はなんとか保った。
値段だけ聞いて、若干眉が動いたかもしれないが。

「わかりました。
 僕の異能で太陽光を集められるので、僕が自由な時にアイリスを待機させられる場合は、それで発電も加速させましょう」

節電のために異能を使う男が言い放った。
どちらでもいい、という答えにはわずかに逡巡し。

「……では僕の部屋に待機してもらいます。
 普段は午前六時に自動で起動して家事をしてもらいますが、僕の起床がそれより早ければ、手動で起動させます。
 それでいかがですか」

そんな提案。
この性能ならばオートでの起動も可能だろうという判断だ。

アイリス(1115) > 演算器が導き出した予測の通りだったようである。

そして提案には素直に応じる。

「かしこまりました。

 ですが私に電源のオフという機能はありません。
 従って起動の必要性は皆無です」

完全自立型で手間がかからない
しかしそれはつまるところ寝顔だとか寝言だとかそういった諸々をばっちりウォッチングである。
スリープモードにも出来るが基本的に感覚器は生きているのだ。

彼のプライバシーは大丈夫なのだろうか……

寄月 秋輝 >  
「なんだ、そうでしたか」

それなら居間でもよかったな、とも考えたが、結局どちらでもいいならば変える必要はないだろう。
結果としてプライバシーは吹っ飛ぶだろうが。

「では動き出すのはその時間で。
 スリープモードに入るのは電力状況を鑑みて、アイリスが決めてください。
 家事は洗濯と掃除、炊事に関しては一週間ほど様子を見て決めます。
 買い出し等も予算を組みますので、それに従ってください」

随分細かいが、こういう設定は最初に決めておかねばいけないものだ。と、思っていた。
どこまで柔軟性があるかは今後次第だ。

アイリス(1115) > 「かしこまりました。ご主人様」

まだ融通がきく方ではないので彼女の【使い方】としては
細々と決めていくというのは正しいのかもしれない。

「本日はどういたしましょう?」

現状待機モードである。

寄月 秋輝 >  
「今日は、か」

ふむ、と考える。
ほとんどの家事は終えてしまったので、夕飯の準備とその片付けくらいのものだ。
どうしようか、と考えて。

「……今日はひとまず休んで……十分に充電してください。
 その間に僕の家事や料理の様子を見て、明日以降の仕事にフィードバックしてください」

とりあえず今日は動かさないことに決めて。

初めて、微笑む程度の笑顔を見せた。
おそらく常世島に来てから、数えるほどしか見せていないその表情を、アイリスに向けて。

「……僕の家にようこそ、いらっしゃい。
 今日からよろしくお願いします、アイリス」

改めてその来訪を喜び、迎えた。

アイリス(1115) > 「かしこまりました。よろしくお願いいたします」

何度目かの言葉をつげるとてくてくと部屋を横切り窓の前を陣取る。

窓から差し込む光が彼女の髪に反射してきらきらと輝く。

それから秋輝が夕食の準備する姿を日が暮れるまで眺めるのだった。

ご案内:「寄月家」から寄月 秋輝さんが去りました。
ご案内:「寄月家」からアイリス(1115)さんが去りました。