2016/05/31 のログ
ご案内:「異邦人街安アパートの一室」に五代 基一郎さんが現れました。
ご案内:「異邦人街安アパートの一室」にレイチェルさんが現れました。
五代 基一郎 > 落第街にてレイチェルを呼び出した後日。

それらの、についてかそれについてだが。
理解したこと、させたこと。これから話すべきことを伝えるために
自宅に呼び出した。どこかの食事処でもよかったが、あまり聞かれても面白い話ではなかったことに違いない。

現状まだ幼き、と言っても差し支えがないレイチェルにとって
如何に理解してもらうか。元々先日は身を以って知ってもらうつもりではあったが
いくら荒事を続けていたレイチェルであっても、世界の表層的な事象と
裏側で行われている事柄の質の違いについては
恐らくより強く印象付けられたに違いない。

日々目にわかる範囲で行われていることと、見えない世界というのは
大きな隔たりがある。
それらに対して、さてどうするかについてを知ってもらわなければならないのだが

おそらく……若干、may be、たぶん。
それは中々に難しいことではないのだおるか……と思いつつレイチェルを待ちながら
作りおいた、冷水をボトルごと口にしていた。
そのすぐ近くでは大鳥のサマエルは平然と豆を食っている……

レイチェル > 落第街の例の件が起きてから、レイチェルにも色々思うことがあった。
前向きに構えているつもりでも、あの剣士の背中が時折脳裏に
浮かび上がるこの現状から逃れられないことに変わりはない。

呼びだされた五代の住居まで、レイチェルはつかつかと歩いて行く。
普段のツーサイドアップとは違い、髪を下ろしている。
変装――のつもりではないが、前回五代から言われたことを
覚えていたレイチェルは、今日過ごす髪型をこのストレートロングに
決めたのだった。

その手には紙袋を持って。今日は特に絡まれるようなこともなく。
《右眼》に表示される時刻は、集合時刻の六分前。

「入るぜ」
扉を軽く数度叩きながら、そう口にしつつ来訪者は現れた。

五代 基一郎 > 「どうぞ」

聞きなれた声が聞こえれば、それが入室の許可を求めるものであれば
許しを出して招き入れる。吸血鬼が人の家に入るには家人の許しが必要だと言われているが
それは異邦人であるレイチェルに関係あるのだろうか……と、些細な疑問が浮かんだ。

浮かんだがそもそも人の家に入るのにノックも声もかけない、呼び鈴も慣らさない人などいるだろうか。
それはその時点で吸血鬼であろうがなかろうが不審者に違いはなかった。

「それじゃまぁ、適当にかけてよ。どっちかといえば今日は座学に近いし」

そうしてガラガラと一枚布で埃を避けていた黒板を引っ張り出してきて
応接用のテーブルから遠すぎず、かつ近すぎない目に見える位置に持ってくる。

■サマエル>「座学の成績は悪くないらしいが、これから必要なイメージから外れた事をする素質はあるらしいぞ」

しわがれた声がレイチェルの姿を確認すれば開口一番その生徒を嗤い
羽根を揺らす。髪形を見ればまたそれについて物言いたげな嗤い方をするのも、この悪い鳥であった。

レイチェル > 「邪魔するぜ」
と。いつもの調子で部屋にあがるレイチェル。
促されるまま座るかと思われたが、椅子を前にして思いとどまるように
立ち止まった彼女はまず、五代の方にくるりと向き直って
ぺこりと頭を下げた。その角度はきっちり45度。
少したどたどしいが、第三者から見ても及第点であろうか。

「前はその……悪かった。オレのやり方のせいで、先輩を危険な目に
 遭わせちまって……それで、謝ってなかったから、一応な。
 で、これ……お詫びと、改めて普段世話になってる感謝。
 どうすりゃいいか分かんなかったから、とりあえず作れるもん
 作って、渡すことにした」
たどたどしい礼に合わせてそれだけ口にしたと思えば、
ゆっくりと顔を上げて手に持っていた紙袋を突き出した。
紙袋からは焼き菓子の香りがする。


「……さて、と。じゃあ気を取り直して話を聞くとするぜ」
そう口にしてようやく椅子に座り、黒板の方へ顔を向ける。

うるせー焼き鳥にすんぞ、と。
サマエルに対しては相変わらずつけんとした口調のレイチェルであった。

五代 基一郎 > 「意外……とは言わないよ」

その謝罪のことか、焼き菓子の香りのことか……
どちらにせよその二つを受け取るように突きだされた紙袋を受け取り、懐に抱えた。

「まぁ最初の一回なんてそんなものだよ。今後に活かせればいいさ。
 正直に言えばあの時までというか、まだ”子供”なんだ。そんなもんだよ。
 それに俺もそう簡単には死なない死ねないのは先方も把握済みだし……」

良い匂いだ、と思いつつ袋を開けて香りをかぐ。
他の家人にバレる前に腹に納めたいところだがはてさて。

■サマエル>「ハハハ、最も話すのはラムレイからだが。」

「そういうわけだ。レイチェル、まず先の反省点を聞こう。
 自分から見てでいい。どのような問題点から、あのような事態になったか。
 要素があればそれを挙げて、説明できるか」

名前に君はつけずに、レイチェルを呼ぶ。同等の存在とみなした……というわけではなく。
今までの関係とはまた違う場所に来ているのだと、暗にそれら言葉の端々から出るニュアンスに含めつつ
レイチェルの言葉を待った。

落第街、奇襲を受けた事、そして……恐らくレイチェル自身に染みついていた事等
伝え、気づかせなければならないことは大きいと感じていた。

レイチェル > 「まだオレがガキなのは否定できねーな……」
彼女は未だ16歳の少女であり、成人もしていない。
ただ殺し殺されかけの日常に慣れきっていたせいで
擦れている所もあるが、年齢相応の部分も未だ多分にある。

「そりゃあ……第一に集合場所に到着するまでに絡まれたことだよな。
 これからやること考えんだったら、配慮が足りなかった。
 いつもの見回りと同じ調子で居たから、そいつが良くなかった。
 あの落第街で、『染みの一滴』になっちまってた事は、確かだ」
あの時は、落第街外の見回りを終えた後であったと。
そうして到着場所に至るまでに、少し見回りをしようと思い立って
普段通りの行動をとっていたのだ、と。
そう付け加えて。やれやれだな、と自嘲気味に呟くと、
頬杖をつくレイチェルであった。

「第二に、ビルの屋上なんていう周囲を観察しやすい場所で、敵の接近を発見出来なかったことだな。
《右眼》で注視していれば、もう少しとれる行動に選択の幅があった筈だ。ここに関しても注意力が足りなかった。
あとちょいと大きな声も出しちまったかな。
察知に関しては、そうだな……学生生活、なんていう甘いものに浸かり過ぎた。
それが抜けきってなかったんだろうな、とも思うぜ。要するに意識の問題だよな」
袋を開けて香りをかぐ五代に対し、一緒に住んでる奴らと食えば?
と口にしながら適当に手を振って見せ。

「細かいことを挙げたらキリがねぇが、要するに。
 オレに染み付いてた習慣、癖、認識の甘さ。そう言ったもんが
 あの事態を招いた……と、そこまでは考えてたとこだ」
そう返しながら、五代の顔を見据え。

五代 基一郎 > 「半分あってるし、半分間違ってるかな。」

いやそれはそれで面倒な問題が待ってるんだけど、熱いうちに食いたいんだよ
と適当に理由を付けて一人食い始めた。

「まずいつもの調子というのがそもそも問題があったという所だな。
 学生生活なんて甘いもの……というのは間違い。学生でもあるんだからそこは切り放してはいけない部分だと思う。
 それこそ島の外の相手だが、それは島の外の人間と意識は変わらないな。
 いくら島の外の連中と事を構えるから……と言ってもね。
 察知に関しては単純に目立っていたからだと思うよ。
 相手がどこにいるか、どう言う状態かわかっているならそれなりの手段さえあれば……
 より隠密性が高い手段を持つ相手、今回で言えばそういう相手だと言うのはわかっていたんだから
 相手からすればやりやすい対象になっていたはずだ。
 あと≪右目≫があるから≪右目≫”ハードウェア”に頼りすぎては、自身の経験は身につかないよ。
 風紀の仕事以外はしばらく使わない方が為じゃないの」

使えるものと、使え過ぎて頼ってしまうものというのはまた大きく違う。
実際それに頼り切っていたり……また、方々についた精神的な贅肉……というより老廃物が原因だろうと察する。
そもそもで言えば、オールドタイプな……アナログな武器を何がしかの理由があって使っているんだろうが
最新的なそのデバイスには頼るという便利さが基盤だろう理由のちぐはぐさが
意識の油断を産むのだろうか……とも思う。
これからの明らかな各上との戦いとなると、その辺りは諌めないといけないと思っていたところである。

「あと一番は……そうだな。君は正義の味方とか、英雄を避けているというか
 嫌っているんだろうけど実際はそれに最も近い行動をしている。
 その病気のように併発したそれだな、問題なのは。
 現実的に対応したい一方で、とても理想に殉じた行動をしている矛盾……みたいな。
 とてもわかりやすいのが、問題かな」

■サマエル>「わかりやすい人間というのは大変使いやすい。そしてラムレイのそれは、静かに……そして周囲を大きく腐らせる。
       落第街の外も、内も……”君”が見回りする必要はあったのかな……?レイチェル・ラムレイ」

紙袋はテーブルに、焼き菓子を口に存在に食いながら
黒板にレイチェルの名前や周囲の……関わった組織の名前を書いていく。
何かしらの意図を含ませながら。

レイチェル > 「この《右眼》な。武器に関しちゃ主に師匠のお古を、まぁ
 ハッキング避けで使ってるが、こいつだけは使い続けてんだよな。
 おかしな話と思うかもしれねぇが、まぁちと、訳アリでね」
昔を思い出すように、視線を少し落として語を継ぐレイチェル。

「こいつは元々、オレの片割れって言っても差し支えねぇ技師が
 造ってくれた特別なもんだ。オレと同じくらいの歳だったが、
 技術はまさに天才のそれだった。オレも心の底から信頼してた」

レイチェルの言葉が止まる。
彼女が次の言葉を放つまでは数秒を要した。

 「詳しいことまで話す気はねぇが、まぁ……そいつの形見でな。
 人の死なんざ引きずってもしかたねーのは百も承知だが、
 この《右眼》で物を見ると、今でもそいつにサポートして
 貰ってるような気分になってな……。だが、便利さに酔っちまってた
 のはまぁ、確かだ。言われて改めて気づいたぜ、その通りだった」

と、ここまで語って再び視線を戻すレイチェル。
少しばかり何処となく、しゅんとした雰囲気ではあったがその表情に影はない。

「……病気、ね」
続く言葉は無かった。喩えであると分かっていても、複雑な気持ちにならざるを得なかった。
少し眉を潜めながら、レイチェルは黒板に書かれていく様々な名前を目に映してゆく。