2016/06/01 のログ
五代 基一郎 > 「人間にとって過去は時に抗い難い鎖にもなる。」

16やそこらの少女に対して、親しい人間の死はまた何にもして
消すことなどはできず。そしてその遺志を感じるものがあればというのは理解はできる。
感傷的という言い方をすればその心細さを和らげるために深層的に求めるのは当然のことだ。
しかしそれらが如何にしても逆に命取りになる世界もある。
甘えと言って切り捨てるものでもないが、目を塞ぐためのものではないはずだ。

「聞くつもりもないよ。その物についてどうこう言うつもりもないしね。
 ただ事実は事実。そこは認めなければならない点だろうさ。」

■サマエル>「人の感情、愛情、友情……それらが人の蓋になることは往々にしてある。
       人はそれらを棄てることができない孤独な生き物だ。」

やれカリカリ、と黒板に名前や何かしらの事件のような事柄、組織を書き終えると
レイチェルに向き直り

「レイチェルはこの島で様々な事柄に首を突っ込んできたはずだ。
 大なり小なり、それこそ見かければすぐに。
 君には何かしらの信念や理想があってのことだろうが……それは本当に他者の為になるのか、と考えたことはあったかな。」

棘と言えば、棘であるかのような物言いであった。
若干の所どこかしらに責めている部分もあるような気配もある。
力を持つ者……その存在全てに対する”何か”の不快感を現すかのような物言いがそこにあった。

レイチェル > 「だろうな。こいつばっかりは、どうしようもねぇ……弱っちまうぜ、
 ほんと……」
時が過ぎても、レイチェルの心の中に遺り続けている物。
それは助けでもあり、鎖でもあるのだと。
彼女自身が改めて認識するきっかけとなったのは他ならぬ五代の言葉であった。
故人のことを引きずってもどうしようもない、百も承知だ、とレイチェルは口にした。
だが。どうしようもないことが分かっていたとしても、
それでも心持つ生き物は感傷的になりやすいものである。

「英雄ならそのことを常に考えるんだろう。それこそたっぷりとな。
 オレは考えたことなんてなかったぜ。オレはオレ自身が許せねぇって思った奴を、
元々はぶっ飛ばす為に……西園寺の件があってからは、
話を聞く為に……動いてただけだ。
だから、オレは英雄でも正義の味方でもねぇ、そう言ってたんだ。
オレはオレの好きなように動いてただけなんだからな」
自嘲気味に肩を落としたレイチェルの口は、そう語る。
一部ではやれ正義の味方だ何だと言われているが、
その言葉にレイチェルが笑みを浮かべたことなど一度たりとて無かった。
レイチェルは、ただ己の為に動いているだけだったのだから。
そのような賞賛を浴びるべき人間は、他にあるのだから。

「他人のことをしっかり考えられる……そんな自信のある人間
 だったなら、オレも正義の味方、名乗ってるだろうぜ」
レイチェルは目の前の男の不快感をその肌で、目で、敏感に感じ取る。
それを真っ向から受けながら、レイチェルは真剣な眼差しを送った。

五代 基一郎 > さて、どう言ったものか。
勿論口に出してきたものではないから、理解してはいないだろう。
様々に言い表す言葉があるが、さてこのレイチェルになんと言おうかと思っていれば
しわがれた嗤い声がその、レイチェルの真剣な眼差しを嗤う。

■サマエル>「幼稚。自己満足。エゴイスト。英雄と正義の味方とは正しくそれであるな。
       英雄はとは文字通り秀でた力の存在。他者からの象徴。己とは関係なく。
       正義の味方とは幼稚なエゴイストに他ならない。
       そも定義の不確かな、何者にも時代にも寄って変わる正義などという概念の味方という存在
       時の傀儡か、または幼稚な自己満足に身を委ねた暴力者でしかない。
       
       だからレイチェル・ラムレイ。
 
       お前は英雄で、正義の味方なのだよ。」

相変わらず嫌なことうぃいうなと、思いつつも否定せずに
空になった焼き菓子の袋をくしゃくしゃに潰す。
御馳走様、という小さな一言と共に。


「レイチェル。他人のことを考えられる人間はね。
 そも英雄でも正義の味方でもないんだよ。まぁ解釈は色々あるけどここでいうのは。
 一人で全部やろうとする、自分がという人間が大体にしてそれなんだ。
 あと自分自身が許せない、自分が気に入らない者がたまたま所謂悪いヤツだったからぶっ飛ばすし
 そういうのに都合がいいから風紀にいるというのならとっととやめた方がいい。
 いい加減他の連中に迷惑だ。組織としても、その組織が守っている人達に対してもだ。」

そして、黒板に書かれた事件と組織とレイチェルの名前を線で結んで
話して行く。
他にも並列して連なるだろう名前はあるのに、レイチェルのみを結んで。

「君がいれば、君がいるからと治安組織は緩む者もいるだろうし
 君がいるから、君が出て来たからと構える違反組織はいる。
 その外にいる人間も君が出て来たからどうにともなるだろうと、君がいるから必要ないだろうと思う者も出てくる。
 君がどう思おうとも……いや、考えずに突出した英雄的行動をとり続けた結果が
 そういったものを作り上げていく。これは一種の英雄化と、正義の味方という存在が出来ていくシステムだな。
 後から何とでも言えるようではあるが、それでも君が他者を……
 自分以外の治安を守ろうとする人間や他の人を考えていればというのは残る。
 一方で君の動機は善意による処が大きい。であるのにその辺りをうやむやにしている。
 暴力を振るう理由を他者に寄らせたいのか、責任を取りたくないのか。
 ハッキリしないというより甘えているというのかな。
 それはそろそろ許されないことを理解しなければならないと思うよ。」

どこまでも厳しい物言いだった。言うなれば、たまたま光の当たる場所にいるだけで
スラムにでも落第街にでもいる無法者となんら変わりがないのではないかという
弾劾にも近い言葉だった。恐らく、この男が最も忌み嫌うものであることを隠そうともせず続けた。

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