2016/06/07 のログ
ご案内:「落第街、スラム某所地下施設」に”マネキン”さんが現れました。
”マネキン” > 【落第街のスラムに位置する、地表は多少目印になる程度の廃墟。
その地下には一定の手順で入れる薄暗い明かりに照らされた地下室があった。
その場所でアクリルの床を革靴が叩く音がする。】

さて…例の写真の話題も取り混ぜて誘い込んだが、くるか?

実際にデータがあるわけじゃないが。
復旧をしてみてもよかったが、実際にあるかどうかは重要じゃない。

【懐から烏丸に渡された、あの学生たちのスマホがばらばらと床に投げ捨てられる。
その中身のデータは削除されていた。
革靴で床を何度か、待つように鳴らす音がする。】

ご案内:「落第街、スラム某所地下施設」に高峰 司さんが現れました。
高峰 司 > 「……クソが、テメェだったか」

視線だけで殺せる。
それくらいの殺気を込めた視線を送りながら、入室する。
そして、そのまま指を突き付けた。

「用件は聞いてやる。遺言くらいはな」

ルーンガンド。ルーンは既に刻み終わっており、いついつでも発射可能。
……あのスマホ、その中のデータが万一残っていたら。それは許容できるものではない。
気付くかは分からないが、後ろに水の精霊、ヴォジャノーイを控えさせながら威圧的に声を投げかける。

”マネキン” > 遺言とはひどい。
神社で会った時にも言っただろう、中立だと。

【地下への階段を降りてきた相手に対して振り返る。
いつもどおりのフードを目深に被った、男子学生服姿だった。】

別に興味があるわけじゃない。
こういうものがあったと忠告してあげただけだ。

それに、これで全てだとは限らない。
彼女のあの件の処理については、任せた相手が任せた相手なのだろう?

【掲げた指を鳴らす。
入室のタイミングとほぼ同時、下手をすれば彼女を挟む込みかねないタイミングで、分厚い金属の扉が落ちてくる。
鉛と鉄の、精霊と魔力遮断にはよく効くだろう人工物の産物だ。】

高峰 司 > 「で、それをアタシに知らせてどーしようってんだ?ああ?」

と、言い放っている間に、降ってくる金属の扉。

「! ヴォジャノーイ!」

即座に声を張り上げ、ヴォジャノーイを隠す事を諦めつつ扉に対処させる。
ヴォジャノーイは水の精霊で、元々はカエルだと言われている。
柔軟な体を持ち、扉の衝撃を逃がしながら主と共に内部に滑り込む、位の事は容易く出来るのであった。

「……テメェも中々にご挨拶じゃねーか。確かに任せた相手は、うさんくせぇ。だがな、テメェも同じようにうさんくせぇんだ。
……アイツに手ェ出すってんなら、容赦しねぇぞ」

護ると決めた。
あの日常を。あの笑顔を。あの時間を。
護りとおすのだと決めた。なら……
手段は、択ばない。

”マネキン” > やはり何か連れてきていたか、ルーンの魔術師。
しかしヴォジャノーイと呼んだそれ、精霊のようだが…鉛と鉄に触れたその身は焼けてはいないか?

【足を一度踏み鳴らす。
薄暗い明かりが少しだけ光量をあげた。
アクリルの分厚い透明な床が鏡になっていることが分かる。】

魔術には詳しく無くてな。
世間一般の対魔術…つまり、この部屋はこれで厚さ1200mmの鉛に覆われたことになる。
ああ、スカートだと下着が見えてしまうな。

さて本題に入ろうか。
話をしたいのだよ。あの姉妹についての話を。

【足元におちていた3つのスマホ、そのうちの一つを相手に向けて蹴り飛ばす。
軽い音を立てて滑っていき、ちょうど相手の足元で止まった。何の変哲も無く、そこに罠は無いようだ。】

高峰 司 > 「あ”?ヴォジャノーイが、んな扉如き、で……!?」

ヴォジャノーイは、そもそも研究施設で囚われていた精霊。
多少の鉛、鉄だので弱るはずはない。
と、思っていたのに。

「テメェ……何か仕込んだか?」

ヴォジャノーイは弱っていた。想定していたよりもはるかに、だ。
即座に戦闘不能ではないが、数度何かさせた後で、即座に送り返す必要があるだろう。
言いつつ、蹴り飛ばされたスマホを手に取る。
……これ自体に、罠はなさそうだ。

「……あの姉妹に、何のようだ?」

殺意と警戒をそのままに告げる。
……事と次第によっては、切り札を切るつもりでいた。

”マネキン” > 手当たり次第に、対精霊の手段を。
当たってくれてよかった。水銀だの呪札だの電磁パルスだの適当に組み込んだからな。

【先ほどから部屋壁には電子ジャミングもかかっている。
ブレインインターフェースをベースにした脳波かく乱システムは対魔術にも一定の効果を認められていた。
と、”マネキン”のもつ資料には記述してあった。】

あの姉妹のありように君は疑問を持つことは無いか。
姉妹の割りにあまりにも違いすぎる。共通点が、まったく無い。

それとも…疑問を持たされないようにしてきたのかな。
たしか姉のほうの能力はサイコメトリーだったか。

【2つめのスマホを足元に蹴りやる。
少しだけそれには古びた血痕が残っていた。】

高峰 司 > 「は、アタシ対策は完璧ってか?」

言いながら歯噛みする。ヴォジャノーイは直接攻撃力と言うよりは、捕縛等に優れた精霊だ。
つまり、司はこの男を捕縛し、拷問する気でいたのである。
が……裏目。それなら、もっと存在強度の高い精霊か、もしくは人間を連れてくるべきだった。

「……答える義理はねぇよ。アタシは別に、妹の方には興味ねーしな」

歪だ、と思ったことは、ある。
仲良く連れ添っているようで、どこまでも噛み合わない。向いている方向が違いすぎるというのだろうか。もしくは、同じ方向を見ているのに、視線の高さやモノの見方が違いすぎるというのだろうか。
そう言う違和感は、人間の暗い部分を見続けてきた司には幾度となく感じられた。
ただ、あの姉は妹を間違いなく溺愛している。故に、余計な口を挟むのはためらわれていたわけだが……。

「で、こりゃあなんのつもりだ?」

言いつつ、血痕のついたスマホに視線を向ける。
これを見せて、実際の所何がしたいんだ……?

”マネキン” > 手紙にも書いて置いただろう。
彼女を脅していた…まあ、屑どもの持ち物だそうだ。

あの男からもらっただけだから真偽まではしらないがな。
破壊することで一つのケリにはなるんじゃないか。

【飄々とした軟派な男の名を匂わせる。
3つ目の最後のスマホを踏みつけた。すぐには蹴らない。】

家庭環境が歪なわけでもない。
姉妹仲が悪いわけでもない。
もらい子でも…これについてはゲノム配列検査までは行っていないから確証はないが、遺伝子的にも姉妹なのは確かだろう。

異常だよ、あの姉妹の在り様は。
前提をどう計算しても、ああなるはずはないんだ。
ではなぜ、ああなってしまったのか。何が彼女らをああしてしまったのか。

私はその未知が知りたいだけだ。
そしてそれに対する協力を君に求めている。

【懐に手を入れる。
警戒也対処なりしても構わないが、ゆっくりと取り出したその手には名刺が握られていた。】

高峰 司 > 「……意味ねーな。そんな形式上の事で気が晴れる程、こちとら素直じゃねーんでな」

警戒は怠らず、ヴォジャノーイも待機させて。
話を聞いて居たが……はぁ、と溜息を吐く。

「知るかボケ、アタシの知ったこっちゃねーよ。
ああ、確かにあの姉妹はどっか歪だ。違和感はアタシも感じてる。
……だがな。そりゃあアイツらがどうにかすべきもんだ。アタシにだって、何かできるわけじゃねー。
ましてや……興味本位で他人が覗き見ていいモンじゃねぇ!消え失せろ、クソ野郎!」

言いながら、名刺を無視し、即座に照準を定める。

「ヴォジャノーイ!水出せ!」

そして、ヴォジャノーイに命令。
ヴォジャノーイは弱りながらも、それなりの量の水を吐き出しマネキンを水で飲みこもうとする。
更に、それに合わせて……

「イス!」

『イス』のルーンガンド。
イスのルーンは停滞を意味し、『氷』の象徴でもある。ルーンガンドとして打ち込めば凍結効果と動きを止める効果が発揮される。
マネキンに当たれば動きを止め、外れても周囲の水を凍らせることでやはり動きを止める。
拘束に特化した連携攻撃で速攻で片を付けようとする。

”マネキン” > 形式だけではないさ。今後の憂いは絶てる。

なるほど、理解できないのか。
例えそれが外的要因によるものだったとしても、君はそれを見過ごすのか?

【一度顎に手を当てて考え込む。】

だが君に興味があるのは姉だけか。
この件の主体はおそらく妹にある。これ以上の説得は無意味…んっ!?

【二度強く床面を革靴で打ち鳴らした。
四角い部屋の暗い壁面が光りを放つ。
一面に鏡文字上下反転のルーン文字が意味を為すもの為さないもの混じってLED光源で形作られていた。】

ルーンの魔術師。
ルーンには確かに意味がある。
軽く調べればその程度のことはよくわかる。

だが単純に過ぎる。
ルーンを刻む、その前提となる大地が反転していればその意味は変わるものだ。
鏡の床面を見てみたまえ。そこに映る君自身の姿を。

この部屋自体がルーンへの撹乱を前提に設計してある。
君の刻んだそのルーンの意味は何処かへずれるだろう。

そして…エオローの逆位置は”孤立無援”、”裏切り”らしいな。

【命令を出したヴォジャノーイに目を向けた。イスのルーンは歪みねじれて意味を失い立ち消える。
そして彼女の背後、部屋の四隅の2箇所から、そこに潜んでいたもう二人の”マネキン”が彼女の両足を狙って亜音速の消音拳銃を撃つ。】

高峰 司 > 「なっ……!」

対策済み。
そのことを、もっと深く考えるべきだったのだ。
ルーンは文字の意味を効果として発揮する魔術。世界に言葉を刻み、世界にその意味を顕現させる術だ。
その意味を、この室内限定で撹乱されている。ピンポイント且つ大掛かりな、ルーン殺し。
……実は、ルーン魔術はそこまで強力な魔術ではない。
所詮は一工程の魔術、単発ではそこまで威力が出ないのだ。
そんな魔術に対し、よくもまあここまで対策したものだ……と、焦りつつ妙な関心をしてしまう。
が、問題はそれだけに留まらなかった。

「ヴォジャノーイ!?」

エオローの反転。
だが、ヴォジャノーイは抵抗し、裏切り行為だけは拒否していた。
……そもそも、司はその自覚はないが、ヴォジャノーイは司に多大なる恩義を感じている。
研究施設に縛り付けられ、自然から切り離された哀れな精霊。それを見つけ出し、助け出したのが司だ。
だから、ルーンの反転による『裏切りの命令』も、それを是とせず抗っていたのである。
しかし、それだけ。ただでさえ弱っていた精霊は、それ以上の事が出来ない。

「が、あっ……!?」

足に、被弾。片方は、力を振り絞ってヴォジャノーイがその身で受けてカバーした。
だが、もう片方。右足を狙った射撃は防ぎきれず、その場に膝を付く。

「う、あ……!」

ルーンを使おうとしても意味がない。そもそもルーンがこの場では機能しない。
ガンドを使っても、司のガンドは『フィンの一撃』レベルではなく、ちょっと気分を悪くさせる程度。
豊富な手札を持つルーン魔術師、高峰司は……その手札の根幹を握り潰される事で、あらゆる手を潰し尽くされてしまっていた。

”マネキン” > なるほど。
ただひとつ用意して連れてくる程度には”信頼”の置ける仲間だったか。

では一つ手を切るとしよう。

【腰に手をやり、その後ろのホルスターからデザートイーグルと言う有名な大型拳銃を緩慢とした動きで抜く。】

こちらの弾丸も入り口の扉同様、いや、扉の余りで作ったもので恐縮だが。
九九九。なけなしのプレゼントだ。せっかくだしたらふく喰らっていきたまえ。

【片方の弾丸をカバーして、その弾丸から漏れる黒い何かに侵食されつつあるヴォジャノーイに対して引き金を何度か引く。
無力化を確認するか、弾装が空になるまでそれは続いた。】

突貫工事だったが効いてよかった。
単発もその意味が捻じ曲がり何が起こるかわからず、これで複雑なものは刻めまい。

【歪なルーンの明かりに照らされた部屋に、声がいまとなっては三重になって響く。
消音拳銃を構えた二人の”マネキン”はゆっくりと彼女にむかって近づいた。】

高峰 司 > 「こ、の……!」

ヴォジャノーイを完全に失うわけにはいかない。
最後の力を振り絞り、ヴォジャノーイを送り返す。
送り返すのにも魔力を大きく使ってしまったが……

『ぐぎゃ……』

数発の被弾を許してしまったが、送り返す事には成功した。
哀しそうな、案ずるような。そんな声を残してヴォジャノーイは消えていく。

「クソ、が……」

切り札であるイフリートさえ使えれば、この場を脱する事も可能だろう。
だが……そのイフリートを呼ぶためのルーンが、刻めない。刻んでも意味がない。

「アタシを……どうする気だ……」

右足の痛みを堪えつつ、気丈にも問い掛ける。

”マネキン” > 【ヴォジャノーイの送還に首肯し、デザートイーグルを腰にしまう。
二人の”マネキン”がその両手を抱え上げ、最初からいたモノが彼女の顔に顔を近づけた。
無機質な、マネキンの顔が視界に大写しとなるはずだ。】

君には餌になってもらう。
活きのいい餌だ。死んだり弱ったりされては困る。

だからこの部屋を用意した。
必要なものは十分に用意してある。
ぜひヒーローが助けに来るまで、ゆっくりしていってくれたまえ。

……ではお嬢様、御用があれば何なりとお申し付けくださいませ。

【口元を笑みに歪めて、最後だけ芝居がかった様子でホテルマンのような礼をする。
二人の”マネキン”は彼女の足にスプレーで応急手当だけ施してその場を立ち去った。】

高峰 司 > 「く、そ……!」

情けなさで涙が出そうになる。
まんまと釣り出され、監禁され、餌にされている。
その無様な事実に心が拉ぐ。
だが、この場で召喚は出来ない。切り札を呼ぶどころか、何かすることすら叶わない。
しかし。
それであっさり諦める程、高峰司は簡単で素直な女ではなかった。

「…………」

意識を集中。
ルーン殺しの監禁部屋。その唯一の穴。
……ルーンを経由しないパスに関しては、妨害が甘い。
幸い、この学園で彼女は二人と契約した。
……伊都波凛霞が、高峰司を見捨てて逃げる事はあり得ないだろう。アレはそう言う人間だ。
だから、その過程の無駄を、全力で省く悪足掻きを。
そして、それを支える戦力を呼ぶ、悪足掻きを。

『……凛霞。ヘルヴォル。悪い、ドジ踏んだ……捕まった。監禁されてる。場所はスラムの地下、狙いは凛霞、オマエと妹だ。出来ればアタシなんてほっといて逃げてくれ。それが嫌だってんなら……ヘルヴォル。凛霞を助けてやってくれ。頼む……!』

懇願。
高峰司に似つかわしくない無様な懇願。
だが、もうそれしかできない。託し、祈るしかできない。
この念話にも随分な魔力を使った。ある程度回復しないと念話も怪しいし、この場を脱する策を考えるのも厳しいだろう。

「(護るって、決めたのに)」

護りたい。その為なら何だってする。
その覚悟が、裏目。友人を危機に晒す手助けをしてしまった。
それが悔しくて、情けなくて。

「チク、ショウ……!」

何年かぶりに……司の目から、涙がこぼれた。

”マネキン” > 【呼び出したモノは二人の出て行った奥の扉のそばにたたずむ。
特殊な通信機器を取り出して何処かへ連絡をとった。】

作戦は成功。
第二段階へ移行する。

打ち込みには成功した。
予定通りに抑制剤を三日分こちらへ。

【連絡途中で彼女の異常に気付く。
魔力的な何かについては気付かない。】

(…何かしたか?
データ記録 よし。解析は研究区に任せよう。)

【通信機器を閉じて、懐へと片付けた。
ルーン文字以外の照明が落とされる。部屋は薄暗くなった。】

…しばらく眠るといい。

高峰 司 > 「……!うぇっ……」

気持ち悪い。
精神的に参っているのもあるが、それ以上になんだか気分が悪い。
部屋のルーン以外の証明が落とされ、一緒に意識も暗く落ちていく。

「……ごめ、ん」

ぽつ、と口にしてから……高峰司の意識は、闇へと落ちて行った。

ご案内:「落第街、スラム某所地下施設」から”マネキン”さんが去りました。
ご案内:「落第街、スラム某所地下施設」から高峰 司さんが去りました。