2016/06/30 のログ
ご案内:「異邦人街安アパートの一室」に五代 基一郎さんが現れました。
ご案内:「異邦人街安アパートの一室」にレイチェルさんが現れました。
■五代 基一郎 > 転移荒野の出来事から数日。
話があるとレイチェルを自宅に招き、今の応接用テーブルの席に着かせ
茶を出し、また焼き菓子を出してから少し。
何かどう切り出すか考えるように少し間が開いて……
さらにそれから少ししてから。
「レイチェルはその……吸血行為が生態に備わっているようだけど
その行為によって血がどういうものかとかわかるのかな」
いや、聞いているだけだから今からというわけではないことを
前提として補足するように付け加え
■レイチェル > あの、地獄の亡者達を相手取った日から数日。
レイチェルは五代の部屋の応接用テーブルの席につき、お茶と焼き菓子をちまちまと食べていた。
目の前の男が何か切り出そうとしているような雰囲気を感じながら、
特に自分から切り出すような話はないので、じっと待つ。
幸い、手元には焼き菓子が結構あるので、手持ち無沙汰にはならない。
「……いや、オレは半端者だからな。純粋な吸血鬼だったら、血を吸うことで
そいつが持つ記憶全てだって奪えるような奴や、そいつが命を終えるまでのビジョンすら
視る奴も居るだろうが。オレは半吸血鬼だから、そういうことも出来ねーしな」
首を振って、彼の疑問に答える。
高位の吸血鬼にはそういう輩も存在する。実際に彼女のかつての知り合いにも、
そういった力を持った吸血鬼が居たのだ。
しかし彼女は違う。彼女の身体に流れている吸血鬼の血は半分に過ぎない。
残り半分は、ハーフエルフ《エルフと人間》の血だ。
と、レイチェルはそのように説明する。
■五代 基一郎 > 「そう……いや、そうだな……」
レイチェルの話をきいての答えがそれである。
もちろんレイチェル自身の生い立ちについて聞くわけではないが、また複雑そうなのは言うまでもなく
聞くまでもなくなのだろうが……
そしてそれから何か考えている姿は普段の、レイチェルへの姿や雰囲気とも
また何か違う。そこからまた、少し黙りまた口を開いて出るのは
「……以前俺には大した力はないようなことを言ったが正確には違う。
本来俺には力があった。あったが三年前に失うことになった。
だから今は違うという意味で言ったんだ。
ただ力の影響で変化した俺の体……血については別だった。
これ自身異能といっても差し支えないんだが……俺の血を生物に与えると
傷を癒す……所謂活性化や治癒の効果がある。元々血を吸うことで
傷を癒したりする吸血鬼からすれば常人の血よりも効く。」
最もレイチェル自身が言うようにハーフであるその身には
どの程度効くのか、どういう風に効果を発揮するのかはわからないがとも
補足し、またこれをレイチェル自身に与えるという時があるならば
ただの戦闘などではなく、本当にそれ以外に方法がないような窮地の時ぐらいだろうとも。
そして、自身が元々どんな力を持っていたかは伏せた。
話の要点がそこではないというのもあったが、ないものを言っても仕方がないことが大きい。
「そしてもう一つ。もう一つは……この世界の、この世界で過去より続く生まれた人類
人間に血を与えることでその人間という種の可能性を拡張させ戻す……
つまり、この世界の人間が本来持ちえるはずだったが現在は眠っている力に目覚めさせること。
異能の覚醒がある。」
レイチェルや異邦人とは生物の種族的根源が違うからそういう心配はないんだが、とも補足しつつ
またここまではよいだろうかとも、何か質問はないかとレイチェルへ伺う。
■レイチェル > 「そういうこった」
当人には別に重い話をしているつもりはないらしく。
自分の血のことを説明すれば、けろりとした顔で焼き菓子に口をつけるのであった。
「成程な。転移荒野で、オレの傷を見た時に『血は必要はなさそうだ』って言ったのは
そういうことだったか。確かに、常人の血で傷を癒やすタイプの吸血鬼に、
その血を与えたらそりゃあ……な。普通に傷が癒えてはい終わり、じゃ済まねぇ
可能性もあるな。そいつはオレ自身、実際にやってみねぇと何とも言えないところだが……」
そこまで喋って、お茶に口をつける。
焼き菓子だけでは喉が渇いてしまう。こくこく、とお茶を飲めばコップをテーブルに置く。
「……成程。把握したぜ。いや、特に質問はねぇな。続けてくれ」
力の内容については敢えて触れなかった。本人が語らぬのであれば、それなりの理由があるの
だろうと。それは彼女なりの配慮であった。故に特に問わぬままに流し。
■五代 基一郎 > 「そう、だからね。通常の傷よりもとなる場合であったり傷が残るようであればとね」
やってることは公的機関の活動……風紀の活動や、それ以外のことである。
余り公にならない方が、しないならそれでいいことをしている。
痕跡が残らないようにとしていたが、その必要はなかったという意味だったのが
転移荒野での話。
そして、これが本題とばかりにそれらが前置きのようであると
ひと息ついてその拍子で区切ってから、切り出す。
「話、というのは頼みたいことであって。
この血によって新しく異能を得た人間を鍛えて一人前に手伝いをしてほしい。
精神面の素質は十分にあるが、元々戦いとは無縁だったのもあって肉体や技術の面で難儀しているんだ。
加減せずやらせることができて、事情もあるし秘匿できる人間は他にいなくてさ。
いや
……本来こうすることは望ましくないが、事情があってね。
どうしてもする他がないと判断し、分け与えた。」
分け与えたことを除けば、目的を同じくする人間だろうか。
志を同じくする人間を先立つ者として鍛えて欲しいと言うものであり
形はどうあれこういった活動をしているのならば、どこにでもありそうな話であるが……
レイチェルがその頼みに返事を、という所でまた一つ。その直前か。
口を開き、そのレイチェルに頼む相手の名前を伝えた。
「その相手の名前は、綾瀬音音」
レイチェルも知る、知っている人間の名前が出た。
最もそれを知った切っ掛けはとうの昔になりつつあるが……
忘れることも難しい事柄に関わっていた、一人の少女の名前が
今ここで出た。
■レイチェル > 「成程、力を分け与えた、と。わざわざ力を持たない人間に力を与えたんだから、それなりの
理由があってのことなんだろう……オレに対しても秘匿、って訳じゃねぇだろ?
その理由、ってのは。引き受けるのは構わねぇが、それだけは聞いておきたくってな。
事情も知らないまま、無責任に頷くようなことは出来ねぇからな」
彼がその人物に対して力を与えた理由について、純粋な疑問の形で問い質す。
一体どのような経緯が、事情があってそのような事態となったのか。
レイチェルはそのことについて聞かずにはいられなかった。
「綾瀬音音、っていやぁ……」
過去の記憶が蘇る。例の事件で関わってからというもの顔も合わせておらず、
久々に聞いた名前であった。
まさかこの場でその名前を聞くとは、思いもしなかったのだが。
■五代 基一郎 > 「人には……生きるものにはそうある姿がある。」
レイチェルの口からその名前が返されれば、そのレイチェルからの
問いかけへの答えが始まる。
「魚が水を泳ぐように。鳥が空を飛ぶように……
人の場合、世界を生きる姿でもある。生まれた時から環境で形づくられる姿。
レイチェルで言えば魔であり、魔と戦う姿がそれにあたる。
それは代えられないものであって逃れられないものだ。
宿命や運命とか易い言葉ではなく。根源でったり、根源に付随し根源となったもの。
綾瀬音音はそれがズレてしまった。例の事件以降、穏やかな世界で生きていたものから
踏み外してしまった。一度見てしまってズレたものは、どんなに姿を戻しても
戻すことはできない。知ってしまった以上、完全に戻すことはできない。
生きる姿がズレたまま生きていことは困難だ。
例えばレイチェルが戦うこと、戦う術や魔を狩る事を放棄して生きていくということは……
今レイチェルがこの言葉で想像するよりずっと難しいものだろうと思う。
であれば、放棄することをやめるかもしくは……
だから綾瀬音音に、そのズレてしまった姿を補うように……補い
あやふやなまま消えないように形を与えるために力を別けた。」
その時は。と続く。
それはその時の思惑と今が全く違っているように言葉を区切り……
「今は確信を持って言えるが、綾瀬音音は最初からズレた先の……
いや本来こちら側の人間だったのではないかと思う。
異能があり、また異能という力を持ち当然でありそれを十二分に使って
それを行使するのが当然であることが本来の姿。
うまく言えないが……俺はズレてしまったままでもと姿形を維持しようとしたはずが
それが結果的に……本来あるべき姿に変えたような……印象を受ける。」
レイチェルは知らない。あの事件の後からおそらく接触はない。
その言葉尻からわかる。思い出そうとしているような雰囲気があった。
だから日常からズレてしまって、そのまま置いて行かれて……
このまま普通の生活を歩いていっても消え入りそうな綾瀬音音という少女を知らないし
だから今現在ものすごい勢いで……スポンジが水を吸収する、というよりも
本来あるべき姿を手に入れ嬉々としているような自分が自分であることを喜んでいるような姿をレイチェルは知らない。
だから、何を言っているのは恐らくわからないかもしれない。
半分ぐらいわかればとも思うが、姿を見なければそれを感じることは難しいだろう。
「だから、レイチェルに頼む。身体能力で既に差がついていれば
どちらにしてもそう事故は起こらない。風紀や公的な場所で行うことはできないし
場所を選ぶことになるが、頼みたい。
……要は、戦闘訓練の相手をしてほしいってだけなんだけどさ。」
■レイチェル > 五代の言葉を全て、真剣な表情で聞いていたレイチェルは、彼の重ねての頼みに、
少しばかり視線を落とした。
そうして小さく浅く息を吐きながら数秒考えた後に、再び前を見据える。
「今の綾瀬音音がどうズレちまってるのかとか、本来こちら側の人間と判断した根拠だとか、
色々疑問は残るが……まぁ、百聞は一見に如かず……ってやつか。
そうだな、じゃあまず一度会ってみるするか、綾瀬音音に」
その返答は、彼女なりの一応の、そして現状可能な最大の了解であるらしかった。
焼き菓子を十分に食べて満足したらしく、お茶の最後の一口を、がばっと飲み干した。
「まぁ……前向きに考えてみるさ」
■五代 基一郎 > 「断ってもいい。」
実際強制させるものでもない……というより断られることは想定していた。
あまり心地のよい……いい頼みではない。
本来頼まれる方としてもいい気分ではないのは知っている。
そういう方向は快くはないことなど、わかっているのだが。
それでもと頼むことをしているとまでは言わない。
そういうのは、そういうことは出来ない。
「ズレ等は例えだから、矯正するとか直すとかそういうことは考えなくていい。
それは理由であって目的ではないからさ。何はともあれ会ってからか。
それから決めるのも遅くない。」
遅くはないのだろうか。速い方がいいのは間違いないのだが
それらを以ってレイチェルに”しなければならない”と思わせるのはよくはない。
してはならないことでもある。どのような手段や言い方をすれば
引き受けるかは大体予想はつくがそれではいけない。
だから”理由”は述べたが目的は一つしか伝えていない。
手習いの指導という一つのみ。
「そうだな。今週末にでも空けられればそこでかな。」
それ以上は、言葉は出さなかった。
出すような言葉はそもそも持ち合わせていなかった。
だがだからと言って何かをと話すことも出来ない。
「すまないな」
それがこれから先のことか。
そもそも頼むことかはそれとも別のことかは出ず
ただそんな言葉が、そこから少ししてから漏れるように出た。
ご案内:「異邦人街安アパートの一室」からレイチェルさんが去りました。
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