2016/08/26 のログ
ご案内:「病院」に水月エニィさんが現れました。
水月エニィ >  水月エニィおぼろげながらも夢を見る。
 本やお話でしか聞かないような化け物に蹂躙された故郷の夢。
 圧倒的で、理不尽で、どうやったって勝てなかった。

 瞬く間に制圧されて、大多数は言われるがままに降伏した。
 恭順した。魂を売った。そうした。
 
 私はそれが気に喰わなかった。
 だから独りで戦った。最初は誰かがいた気がするけど、直ぐに独りになった。


 余計な事をしてくれるな。

 もういい加減諦めろ。

 お前以外は誰も望んちゃいない。
 
 お前は一体何なんだ。


 侵略者以上に見知った顔が罵った。
 媚びを売ったのかもしれないし、
 私たちの道徳とかけ離れた暴君だろうが勝ち馬に付く事を合理的に思ったのかもしれない。

 ……勝てなかったのに生き延びた事は幸運に思う。
 特に慣れるまではそうだった。慣れてからは、死ぬ前には退けるようになっていた。

 

水月エニィ >   
 余計な事をしてくれるな。

 もういい加減諦めろ。

 お前以外は誰も望んちゃいない。
 
 お前は一体何なんだ。

 さっさと何処かで死んでくれ。

 侵略者以上に見知った顔が石を投げて罵った。
 媚びを売ったのかもしれないし、
 私たちの道徳では測れない様な侵略者だとしても勝ち馬は勝ち馬。
 そちらに付く事を合理的に思ったのかもしれない。

 だけどそれも生きる為だし、どうしようもない。
 だから彼らを責められない。

 ……勝てなかったのに生き延びた事は幸運に思う。
 特に慣れるまではそうだった。慣れてからは、死ぬ前には退けるようになっていた。

 唐突に終わって、唐突にこうなって。
 唐突に鏡花ハルナの生きざまと死にざまが流れてきて。
 打ち切りと言わんばかりに私は鏡花ハルナに置き換わった。
 

 あやふやだし、覚えている限りを拾ってみれば都合が良いようにも思える。
 だけどこれは妄想でも空想であってたまるものか。
 

水月エニィ >  
 ――私の歴史が偽物だなんて、

「認める、ものか!」

 飛び起きて我に返る。
 多分、病院の大部屋だと思う。
 
 やたらと点滴と包帯と良く分からない留め具がくっついている。
 どうにも痛むのは麻酔が切れたからか、治っていないからか。 
  

水月エニィ >  
「ああ、そう言えば大怪我したのよね。」

 独りになってみれば、我ながら馬鹿らしい激昂だとは思う。
 だけどとにかく腹が立った。
 冷静になって考えてもその選択以外はしなかった。

「……はぁ。」
 
 頭を抱えて周囲を見渡す。
 財布とスマートフォンが置かれていた。痛んでいるのは戦闘によるものか。
 確認された形跡がある。身元の確認と連絡に使われたのだろうか。

 スマートフォンを引っ手繰る。
 何処かに行く訳にも行かないので適当にメールやネットで時間を潰す。
 そうしていれば数時間位経過して、その途中に医師や看護婦に色々訊かれた気がする。
 体質やら異能やらなにやら、聞かれた気がする。治りが速いとか、なんとか。
   
 

ご案内:「病院」に龍宮 鋼さんが現れました。
龍宮 鋼 >  
病院内ではお静かにィ。

(叫び声を聞いて、窓際からやる気のない声を上げた。
 窓を開け、そこにより掛かって煙草など吸っている。
 あのあと近くの病院まで行って、そこで気絶して。
 起きたらこうなっていて、昨日の少女と同じ部屋を当てられていることに気が付くのに、そう時間は掛からなかった。)

よう水月エニィ。
ひでーもんだな。

(彼女より先に起きていた自身は、ベッドに付けられているネームプレートで彼女の名を知った。
 そこまでボコボコにしたのは自身だと言うのに、そんなことは棚に上げて、眉間に皺を寄せたまま笑いかける。)

水月エニィ > 「誰のせいよ。」

 ――時は少し遡る。
 寝言に水を差されれば睨み返して短く告げる。
 誰のせいだと、そして茶化させるかと。

 プレートを見るに同じ部屋に割り当てられたらしい。
 怪我の具合も知るより酷い。
 結末は見ていないが、やられたか。

「……。」

 それに言及することはなく、自身の感情をあざむようにスマートフォンを弄っている。 
 

龍宮 鋼 >  
そりゃケンカしたオマエのせいだろ。

(自分のせいではない、と言う。
 ボコボコにしたのは確かに自分だが、そもそもケンカを吹っかけてきたのは彼女だ。
 怪我をしたくないならケンカはしない方が良い。
 あっけらかんとそう告げる。)

……っ、ゲッホ、ガハ、――――!

(煙草の煙を口に入れ、吸い込んだ時に脇腹が痛んだ。
 肋骨が折れているのだ、深呼吸のような動作をすれば当然肋骨が動き、痛む。
 むせるように咳き込むその動きで更に痛みが酷くなり、壁際で丸くしゃがみ込んだ。)

水月エニィ >  
「そう言うと思ったわ。」

 横目に咳き込む少女を見る。
 無理に煙草を吸って肺を痛めて、更に痛める。
 
 本当、あの大男にずいぶんとやられたものだ。
 痛む素振りにはそのような感情を抱く。

「随分と手ひどくやられたのね。
 ……病室で吸ってるとお医者さんに睨まれるわよ。蛇や蛙みたいに。」

 うろ覚えな慣用句で忠言する。
 止めても止めないにしろ、止めたポーズぐらいはしておかないと巻き添えを喰らいかねない。
 流石にそれは避けておく。 
 

龍宮 鋼 >  
――おう、一発でこれだ。
アイツホント人間かよ。

(負けたと言うのにさらりとしている。
 悔しくない訳ではないが、目的は勝ち負けではない。
 ケンカそのものが目的なので、ケンカ出来れば割と満足なのだ。)

あー、心配すんな、もう終わる。

(もう一口煙草を吸って、窓から投げ捨てた。
 マナーと共に。)

水月エニィ >  
「良く知らないけど、超人でしょうね。」

 言い切る。
 気配すら察知できぬ接近を除き、強さを目の当たりにした訳ではない。
 とは言え其れでも分かる事は分かる。

 身体が大きい。そして引き締まっている。それだけで強い。
 やりとりにしてもそこらの不良の様には見えなかったし、
 悪態も当然の様に流した上で私に向けて帰るように促した。

 その上で煙草を投げ捨てた少女――龍宮は彼を見て目の色を変えたし、
 私と龍宮がやり合う事に呆れはすれど苛立ちはしなかった。
 他者の行動で気を荒げなかった。冷めれど熱を高めなかった。
 
 他者に振り回されない自己。恐らく実力も高い。
 ……それを見て、あの大男を"強い"と思った。

「……追い出されても知らないわよ。」

 その辺りで医者が来る。幸い龍宮の行為を見てはない。
 ともあれ、医者と看護婦は水月エニィの検診を始める。
  

龍宮 鋼 >  
力っつーモンが実体持ったって言われても納得出来るぜありゃァ。

(実際にやりあった自身はもっと良くわかる。
 地面の質量を借りて思い切りぶん殴っても揺るがないどころか、動きすらしなかった。
 内部破壊も力技で無力化されたし、筋肉がどうとか技術がどうとかいう問題ではない。
 人間の形をした力そのもののようだった。)

ッハ。

(その言葉は聞き流し、検診を始めた医者の様子をなんとなく眺めている。
 そういえば、彼女は自身の魔力で殴った時、体内で魔力の爆発が起こったような手応えを感じた。
 あんな事にはならないはずだが、彼女の異能になにか関係しているのだろうか。)

――オマエさ、なんでケンカしてんの。

(検診が終わって医者が出て行ってから、尋ねる。
 彼女の行動が腑に落ちない。
 彼女を見ない自身に対し、駄々っ子のように癇癪を起こし、見てもらおうとちょっかいを掛けてくる子供のように見えた。
 それがわからないから、直接尋ねる。)

水月エニィ >  
「当ててくれたらご褒美をあげるわよ。
 少しは考えてくれると嬉しいわね。」

 確かに総てを引き剥がせば駄々になる。
 かち合ったなら大人しく退くべきで、退き続けるべきだ。
 ……事実、かつての歴史で私を罵る人間はそのような思考の下に恭順したのだろう。

 だけど、それは厭だ。
 一生否定され続ける人間は人間なのか。
 一生認められず、負け続ける人間は人間なのか。

 勝てないから搾取され続け、
 認められないから振り回され続ける。
 それでようやく最低限の生が認められる。

 それが厭だから抗ったけれど、
 それを善しとしたものは私を罵った。

 何より世界は平和で良いものだと教えられてきたから。
 良い事をするのは良い事で、悪い事をする事は悪い事。

 何より大変容が来るまではそれを信じていたから、
 善意と道徳の世界があっけなく崩れたことをとても認めたくなかった。

 だからそれを背負って、噛み付いて抗っているのだと思う。
 今もきっと、認めていない。信じていない。
 
「ふん……。」
  

龍宮 鋼 >  
(当ててみろ、と言われたので少し考えてみる。)

――俺みたいにケンカがしたいって訳じゃねえな。。
蹂躙してぇ、ってことなら、俺には噛み付いてくるわけねェな。
虐げられんのが嫌――これも違うな。
それならあんなとこにいる理由が無い。

(ケンカがしたいのであれば、ケンカした時点でその目的は達成されている。
 あそこまで必死になる理由が無い。
 いつか見た白い奴のように、弱いものいじめをしたいという風にも見えなかった。
 あの時彼女が叫んだセリフからは、それとは逆のものを感じたように思う。
 強いものから押さえつけられるのが嫌、と言うのも何か違う。
 であるなら強いものが力を振るう落第街に近寄る理由にならない。)

――わっかんねーな。
オマエがやたら勝ち負けに拘るっつーことはわかんだけど。

水月エニィ >  
「後ろ二つは、肯定も出来ないけど否定も出来ないわ。
 ……だけど、そうね。」

 それらを完全に否とは言えない。
 虐げられられるのが厭だから、尚且つ驕った強者を蹂躙したいから噛み付く。
 そのような後ろ昏い感情が無いとは言えない。綺麗なものとなど言えやしない。

 思案した上で分からないと応えた事を認める。
 エニィ自身も、暫く思案してみせる。
 気持ちいい話でもなく、無力なものが吠えても空しい話だ。
 そもそも分かりにくい話となる。とは言え嘘は付きたくない。

「ざっくり言うのなら勝ちたいからになるわね。
 負ける……負けやすくなる異能を持っている。
 だから勝ちたい。」

 端的に目的を告げる。
 手段と目的が逆転した様な言葉ではあるが、口ぶりは真剣そのものだ。

「もっと言うなら、こんな世界への復讐ね。
 もうちょっとだけ世界が優しくなるように、復讐するの。」
 
 ……短すぎたと思ったのか、少しだけ言葉を加える。
 それでもやはり言葉を省いてしまっている。
 負け続けてきた水月エニィにとって、勝つ事が重くなりすぎている。

 認めさせるには相手の土俵に立たなければ相手にされない。
 自分を棚に上げ、勝つことが否応が無しに認めさせる手段であると思ってしまっている。
 
「私からすれば、貴方が羨ましいわよ。
 勝てない相手にあんなに楽しそうに出来るなんて。
 他で勝てているからかしらね。羨ましいわ。」
  

龍宮 鋼 >  
(その答えを聞いて、どこか納得できないような表情をする。
 右腕でぼりぼりと頭を掻き、口を開いた。)

――まぁ勝ちてェっつのーは分かるんだけどよ。
オマエ勝とうって言う気ねーだろ。

(勝ちたい、と言うのは立派な理由だ。
 誰かに勝ちたい、守るために勝ちたい、負けず嫌いだから勝ちたい。
 だが、彼女は何か勝ちたいと言う理由を作り続けるために負けを選んでいるような気がするのだ。)

そりゃ俺だって負けることぐらいいくらでもある。
昔は――負けっぱなしだったしな。
昨日だってアイツに負けた。

(負ける異能。
 様々な異能のあるこの島だ、そう言う異能もあるだろう。
 彼女はそれを理由にしているような。
 負けやすいのだから負けても仕方ない、そういう風に思えるのだ。)

俺ァケンカすんのが好きだからケンカするんだ。
ケンカすんのが楽しいからケンカするんだ。
――オマエ、楽しいのか?