2017/02/11 のログ
八百万 頼 >  
せやな、チョコはチョコでもダンボールぎっしりのチョコやったらちょっと持って帰れへんかったわ。
いやいや、こう言うのはそう言うつもりやなくてもちゃんと返さなあかんやろ。

(そんな冗談を飛ばす。
 紙を紙バッグに戻し、机の端に置いておこう。)

勉強としての魔術は面白そうなんやけどなぁ。
ボク魔力測定したとき素養無して結果出てん。
いずれは趣味で勉強するかも知れんけど、学校の勉強としては優先度低いからなぁ。

(数学や科学なんかは割りと面白いと思うタイプなので、きっと勉強したら楽しいのだろう。
 しかしそういう意味でも優先度は低いし、そもそも自身は素養が無くても魔術が使える。
 そう言うもののストックが大量にあるからだが、それは勿論口には出さず。)

美澄 蘭 > 「段ボールぎっしりって…私が運べないわ」

くすくすと、冗談に対して無邪気な笑いを零す。
重力操作で浮かせて運ぶくらいなら何とかなるかもしれないが、そもそもかさばりすぎる。

「………そう…そうね、そういうものよね………」

「そういうつもりじゃなくても返さなくちゃいけない」という言葉には、何か、自分に言い聞かせるように、硬い表情で頷いた。
…と、頼の魔力の話について聞けば、ことりと首を傾げて。

「適正にあったものを勉強出来れば、きちんと覚えられるのが魔術と異能の違いとは聞くけど…魔力容量が厳しい人って結構多いのかしら。
…でも、かえって割り切れるかもしれないわね。何もかもを勉強するのには…4年って、短過ぎるし」

割り切れなくて、年末年始に随分思い悩んだからこそ、後半の言葉には妙に実感がこもっていた。

なお、蘭の冷却術式は魔力を循環させる方式なので、魔術文字と魔力の併用である。
魔力が供給出来ないと、頼が扱うのは厳しいかもしれない。

八百万 頼 >  
(自身の冗談に笑ってくれたなら、こちらもへらりとした笑顔を返して。)

――なんか悩み事でもあるん?

(どこか思いつめたような表情を見せる彼女に首を傾げながら。
 何か悩んでいる事でもあるのだろうか、と少し気になった。)

魔力の量つーか、魔術を使う才能言うか。
魔力は普通らしいんやけど、それを外に出すのが下手らしいわ。
異能はそこそこ便利やねんけど、そう言う異能って大抵伸びにくいらしいしなー。

(テーブルに肘を付いて掌に顔を載せる。
 当然本来の異能の事ではなく、表向きの異能の事だ。
 それでも魔力の扱いが下手だと言うのは本当の事。
 全く不便ではないのだけれど、ちょっと使ってみたいと言う気もしないでもない。)

まー学校で全部勉強する必要もないやろ。
本土の大学入るんもありやし、そのまま普通にサラリーマンやるんもありやしな。

美澄 蘭 > 「悩み事」。そう聞かれて、びくっと、少し背をのけぞらせた。

「………えぇっと、その、ね………大した、ことじゃないの」

明るい声を作ってはみせるが、いかにも焦った口調だし、視線の方向が定まっていない。

「…魔術を使う才能、魔力を扱う才能か…」

頼の魔術関連事情について聞けば、相手の発言の要旨を反芻するかのように呟いて、首を傾げ。
自分がそちらの素養に恵まれたらしいことは良い加減自覚が出来てきたが、それでも、自分以外の者がどういう体感をしているのか、主観でいるのかは、よく分からない。

「異能ね………あんまり強力だと、「背負う」のも大変かもしれないし…
どこまで伸びるかは、良し悪しかもね。魔術ほど体系だってないし」

蘭の思考の基本にあるのは、魔術ほどの手間を要しないが制御が難しい、自分の異能である。
…それでも、頼の表向きの異能だけでも十分に思える便利さと、それが伸びた場合にどう向き合うべきかは、難しそうだな、と感じて、素直に口に出した。

「………そうね…私も、この学園を卒業したら、本土の大学に入学か…単位の都合が付けば編入したいな、って今のところは思ってるし。
ただ、魔術とか異能とかの勉強、研究って、本土ではそこまで充実してないでしょう?」

「正直、もったいない気分にはなるのよね」と、苦笑いを零した。

八百万 頼 >  
大した事無いならええ――とは言わんよ。
言いたくないなら言わんでも、とも言わん。
けど無理にも聞かん。

(猫のような笑顔だけ向けて。
 大したことが無い、などとは思わない。
 それでも、言いたくない言うことを無理矢理聞き出す事もしたく無いから。)

背負う、っちゅー意識はないなぁ。
使えて当たり前言うか、走るとか跳ぶとか、そう言うことと一緒の感覚言うかな。
魔術も使えへんなら使わんでもいいかって感覚やしな。

(異能に関しては使えている人は大抵そんな感覚なんじゃないかな、と思う。
 物心付いたあたりから使えているなら、尚更。
 使えて当たり前、の感覚なのだ。)

んー、せやったら島の研究機関に入ったらどうやろ。
こっちなら魔術の研究盛んやろうし。

(本土では出来ない研究などがされているだろう、島の研究機関。
 魔術や異能と言う点であれば、そこに入るのも一つの選択肢だと思う。)

美澄 蘭 > 「…そうね、魔術の勉強をするんだとか、異能の研究をするんだとか、決めきってたらそれも選択肢だと思うんだけど。
…普通の勉強も楽しくて、まだ決めれてないし………出来れば、「モデル都市」の外で生きていきたいと思ってるから」

「難しいの」と、眉を寄せる蘭。
よりによって「ピアニスト」の選択肢すら、つい最近まで諦める踏ん切りがつかなかった蘭である。
「情報屋」としての頼が蘭の学業への評価を知っていれば、本土の大学への選択肢を切れない・切らないのも当然と思えるだろうが。

「…えーっと、そのね?
身体の感覚を超えるような力を使うのは、結構怖いかな、って。
…でも、「使えて当たり前」くらいになると、それも自分のうち、って割り切れたりするのかしら…」

異能の発現で苦労した母、こちらに来てから「力」を手に入れ、それとの向き合い方を考え続けている自分。
頼は、その先にいる、ということなのだろうか。

「………。」

猫のような、人懐っこい笑顔を向けられて。
「力」との向き合い方で、自分はおろか、親の先をいっていることを感じ取って。

蘭は、悲しげに眉を寄せてから、一度、ゆっくりと大きな瞬きをしてから。

「………敵わないなぁ、って思って」

ぽつりと、寂しげな声を漏らした。

八百万 頼 >  
その辺はしゃーないな。
やりたいこと決めとるんなら、それ以外は諦めるしかあらへん。
あれもやりたいこれもやりたいは、通らへん。

(シビアなことだが、きっと彼女も分かっていることだろうと思う。
 だからこそあえて口にした。
 情報屋とは言え、その辺の個人の事情に踏み込むような情報は常備していない。
 求められれば「入荷」するが。)

あー、それはあるかも知らんな。
ここ来る直前に出てきたやつもおるやろうし。
せやけど、使えてしまうんやからある程度割り切る言うか、深く考えすぎるんもどうかと思うで。

(急に背が伸びて視線が高くなったことに戸惑う感覚、だろうか。
 しかし異能が出てしまったものは仕方が無い。
 それと上手く折り合いをつけて付き合っていくしかないのだ、と。)

んなこた無いよ。
ボクはたまたま気が付いたら使えてただけや。
昨日や今日使えるようなっとったら、もっと慌てとるやろうしな。

(この考えは異能を制御出来ている者だからこその感覚だろう。
 先ほどの考えだって、なかなか割り切れるものでは無いものだろうし。)

美澄 蘭 > 「…そう、よね。
色んなことが楽しいのは幸せなことだと思うし…贅沢な悩みだとは、思うんだけど。
今年度中はもう無理にしても、来年度中には決めないとね」

前に進むことを、望んでいる。
自分の足で立つことを、望んでいる。
頼の思惑通り、認識はあった。だから、意思を宿した瞳で、口元は笑んですらみせて、頷いた。

「…でも、その、ほら…
便利過ぎる力だと、力を使うことの結果とか、責任とか、考えないといけないと、思って。
…割り切っちゃえれば、少なくとも力に「振り回される」ことはないのかもしれないけど」

人を傷つけうる力が先立ってしまい…実際に、小規模とはいえやらかしてしまったこともあるからだろうか。
思案がちに、視線を落とす。

…しかし、頼が謙遜すれば(少なくとも蘭はそう取った)、ゆるく、首を横に振って。

「…力のことだけじゃ、なくてね。
人ときちんと向き合えることとか、簡単に、色々請け負ってみせちゃうとことか…
…そういうところに付随するあれこれを、ほとんど見せないとことか………」

そうして並べ上げる蘭の表情は、どこか思い詰めたようですらあって。

「………私ね、八百万さんのこと、尊敬してるの。
少しでも、そういう風になれたらって、思うの………」

そして、ついに、吐き出してしまった。
「義理」にしておくつもりで、押し込めるつもりでいた、自分の気持ちを。

八百万 頼 >  
なんにしても、後悔せんようにはせなあかん。
多分どれ選んでも後悔することはあるやろけど、出来るだけ後悔せんように準備は出来るからな。

(に、と笑って。
 覚悟が出来ているのなら、問題は無いだろう。)

力を使う事の責任は、力のあるなしやないと思うで。
どんな小さい力でもそれを使う責任はあるし、大きい力使って誰にも干渉せえへんなら責任はないやろ。
手に負えんなら使わんとけばええし、手に負えるなら使えばええんやないか?

(人を傷付けるのが嫌であれば使わなければ良い。
 そもそも異能がなくたって生活は出来るのだ。
 人に危害を加えてしまったなら謝れば良いだけの話で、そんなことは異能があろうが無かろうが起きるときは起きる。)

……そらぁ、――。

(尊敬している、と告げられて。
 先ほどとは違う理由で言葉を詰まらせた。
 悲しそうな、バツの悪そうな、複雑な表情。)

美澄 蘭 > 「…まあ、そうよね。
そもそも…力とか関係なく、他の人に働きかけることに、大なり小なり責任があるんだものね。
…今元素魔術とか頑張ってるけど、よっぽどのことがない限り、本土では用事ないでしょうし」

「その方が幸せだし」と。
納得したように頷く。そうなれば、後は技術の問題だろう。

「ええ…何をどう選ぶにしたって、どう進むにしたって…
言い訳は、しないつもりでいるわ」

そう、どこか誇らしげに言いきる。
力との向き合い方については、目の前の相手から、とても大事な示唆を与えてもらった。
異能の有無関係ない、一般的な学生の悩みには、とても前向きに向き合えている。

だけど、目の前の相手について思っていることについて、吐き出してしまったこと。
目の前の相手の反応。
それらについては、蘭は、どうしたらいいのか分からなかった。
口に出してしまった言葉は、なかったことにはならない。

「………ごめんなさい…迷惑になるだろうから、言わない、つもりでいたのに………」

頼が、たくさんの人と関わって、女の子に優しくして。
付随して、色々背負っているのだと思っていたから。
これ以上、増やしたくないと思っていたのに。

頼がどこか悲しそうな、複雑な表情を浮かべているのが、浮かべるような思いをさせてしまったのが何より申し訳なくて、辛くて。
すっかり顔を伏せてしまった蘭の声は、少し震えていた。

八百万 頼 >  
(彼女の前向きな言葉には、無言で頷いておく。
 先ほどの言葉にどう返そうかと考えて、それだけしか出来なかった。)

――そう思ってくれとることは、ありがとうと思う。
迷惑やなんてとんでもない。

(しばらく考えた末に、そう口にして。
 先ほど見せた表情はもう消えている。)

――せやけど、あかん。
美澄ちゃんはボクみたいなのを尊敬したらあかん。
ボクみたいになろうとしたらあかんわ。

(そう言って立ち上がる。
 机の上に置かれた紙バッグを右手にぶら下げて。)

チョコ、ありがとな。
大事に食べさしてもらうし、お返しもちゃんとする。
せやけど――

(彼女の肩に手を置いて、)

――ボクみたいなウソツキの事、そんなほいほい信用したらあかんで?

(狐のような笑顔を残し、消えた。
 文字通り、気配も痕跡も残さず、綺麗さっぱりと。)

ご案内:「バレンタインデー・放課後の教室棟ロビー」から八百万 頼さんが去りました。
美澄 蘭 > 「自分みたいなのを尊敬してはいけない」。
その言葉にはっと顔を上げて、頼の方を見る。
先ほどの悲しげな表情は、すっかり消え失せてしまっていた。

礼を尽くすことを宣言して、蘭のプレゼントを受け取り…それでいて、「信用するな」と、やや剣呑な笑みで告げる頼。

「………え?」

蘭が茫然としている間に…どういうわけか、彼の姿は消えてしまった。

美澄 蘭 > 「………。」

すごく、奇妙な距離の突き放され方をした、と思った。
茫然として、涙も出て来ない。

「………「ウソツキ」って、何が?」

やっと出てきたのは、その疑問だけだった。

美澄 蘭 > ロビーには、他にもバレンタインデーのやりとりをする学生達がいる。
そんな中で、硬直した雰囲気を漂わせる蘭の状況は、はっきりと浮いていて…。

少ししてから、自分が浮いていることに気付いて、蘭は慌ててロビーを立ち去った。

突き放された悲しさと…何故か、頼に対する憤りが湧いてきて、入り交じって。
涙は、部屋に帰るまでは遅刻してくれた。

ご案内:「バレンタインデー・放課後の教室棟ロビー」から美澄 蘭さんが去りました。