2017/04/12 のログ
ご案内:「露天温泉」に東雲七生さんが現れました。
■東雲七生 > 桜の花びらが一面に浮かぶ露天温泉。
そのほぼ中央で、生傷だらけの七生が浮かんでいた。
今日も今日とて転移荒野での戦闘訓練を行った後である。
以前は致命傷にも等しい傷を負っていたが、日に日にその程度は軽くなっていき、
今ではちょっと酷い擦過傷、くらいにまで一度の戦闘での負傷は抑えられていた。
「……あ~」
ゆらゆらと水面で揺れながら、暢気な声を上げる。
持ち前の治癒力からか、それとも温泉の効能か、体の傷は段々小さくなっていく。
■東雲七生 > 「はー……綺麗だよなあ。」
いつの間にか桜がこんなに咲いてた。
そして気付けば相当散っていた。
常世島で見る、少なくとも覚えてる限りでは、三度目の桜。
「あと何度見れるのかなぁ……」
順当に行けば、あと1度か2度。
この島で桜を見れるのは、確実なのはそれくらい。
学園を卒業し、島を出れば、少なくとも数年はこの島の桜は見られなくなるだろう。
ご案内:「露天温泉」にステーシーさんが現れました。
■ステーシー >
生き物の気配がした。
だがここは転移荒野の近く。
敵対的怪異の可能性は捨てきれない。
もちろん異邦人かも知れない。
だが異邦人が牙を剥かないとも限らない。
温かく湿った靄の中を掻き分けるように前に進む。
これで桜の魔性か何かだったら手に余る。
桜の花びらが散る中、腰の刀に手を掛けたまま静かに歩を進めた。
「誰かいるのかし――――」
ギョ。いたのは裸の男子。
「えっ」
硬直した。なんで? あ、そうかこの靄、湯気だ。
■東雲七生 > のんびりと体の傷が癒えるのを待ちながら、花見と洒落込もうかなと虚ろな頭で考えていたのだが。
不意に気配がして我に返った。まあ、場所が場所だけれど誰も訪れない様な場所でもない。
最低限、見られたくない所は隠せるようにと体勢を立て直すと、気配の下へと目を向ける。
「……あ、えっと……どーも……?」
はらはらと降り注ぐ花弁が濡れた紅い髪に桃色の文様を作る。
此方を見て面喰った様子の人影へと挨拶をした。
■ステーシー >
「ぎゃあ!!」
ぎゃあて。我ながら年頃の乙女が出す悲鳴としては100点満点で15点くらいだ。
真っ赤になって慌てて物陰に隠れて旋空を両手で包み込んだ。
こうすると落ち着く。
「な、な、なー! なんでこんなところで入浴……!!」
喋りがカタコトになるくらい衝撃的であった。
でも彼は先客で、言ってみれば私は覗き魔だ。
「すすす、すいません、取り乱しました……あなたはここでなぜ、入浴を?」
「生活委員会です、敵対的怪異とか、この世界のルールをわかっていない異邦人とか…」
「結構危ないですよ、ここ」
両目を硬く瞑り、刀を離して尻尾を撫で付けた。落ち着け、落ち着け。
■東雲七生 > 「ぎゃあ、って……」
当初同様のリアクションを返すべきかと悩んだのだが、
そも湯気の向こうの相手が男なのか女なのかの判断が遅れてしまった。
結果、ややオーバーとも思える反応をして隠れる相手を見送って、困った様に頬を掻く。
「えっと……うん、大丈夫。知ってる知ってる。
これは、何て言おうか……そう、湯治みたいなもんでさ。」
答えながら自分の姿を確認する。
幸い下半身は桜の花びらが敷き詰められた水面下だ。多分見える事は無い。
上半身は……まあ、元々そこまで肌の露出を嫌う訳でもないし、と。
■ステーシー >
「知ってるって………危険を承知でここに訓練に来ている人…?」
「あ、失礼しました。生活委員会、そしてその下部組織の怪異対策室三課のステーシー・バントラインです」
「この前、三年に進級しました。異邦人です」
「あなたは……?」
腰に刀を差しなおして、溜息をつく。
ここでロクに会話もせずに逃げ出すと本当にただ覗いた人だ。
謝るタイミングを探しながらコツコツと柄頭を指先で叩く。
「ぎゃあって言いますよ、それはもう」
自称、乙女だからだ。
■東雲七生 > 「そうでーす……一応、許可は下りてる筈。
ええと、俺は東雲七生。この春から三年生。」
怪異対策室、と名前には聞き覚えがある様な気がした。
しかしそれが生活委員の下部組織であるということまでは知らなかったので、素直に感嘆する。
そもそも委員会などには疎い。ほへぇ、と気の抜ける様な声を上げて肩まで湯の中に浸かり。
「それは……じゃあ、委員会の仕事でこの辺に?
お疲れ様、っす?」
こてん、と小首をかしげると、頭に乗っていた花びらがはらはらと落ちて水面に浮いた。
■ステーシー >
「許可を取っているなら、別にこちらが言うことは何も」
「同級生かー……よろしく、七生」
同級生と知っていきなりタメ口に移行。
それにしても、何がよろしくだろう。まず謝れ私。
しかし機会を逸した感がある。
「うん、生活委員会は異邦人の保護も仕事のうちだから」
「ゲート予報が出た日はこうして迷い子を探しに来ているの」
「近くまでバギーで来てる仲間がいるから、完全に歩いて作業しているわけじゃないけど」
ぽりぽりと頬を掻く。
「お互いお疲れ様です」
風で舞ってきた桜の花びらを指先でそっと摘む。
東雲。夜明けと共に来る光明のこと。
茜色の空のこと。
桜の花びらは風が吹くと指先から逃げていってしまった。
■東雲七生 > 「うん、よろしくー。」
突然のタメ口へのシフトへも特に気にせず笑みを向ける。
今年もまた、新入生に同い年だと思われて声を掛けられた実績を解除したばかりだ。
此処まで来ると同級生のタメ口なんて最早何とも思わないほどになる。
……なりたくはなかったけれど。
「ゲート予報。異邦人の保護……?
……ああ、他所の世界からこっちに来た人の保護って事か。
なるほどね。でも言葉とか通じなかったりで大変じゃない?」
異邦人街に住んでいる身としては言葉の壁にぶつかる事もままある。
既に居住権を得た異邦人でそうなのだから、この世界に来たばかりであれば尚更だろう。
彼女らの苦労を推し量りながら、七生は笑顔を返した。
■ステーシー >
「言葉が通じなかったら、四割くらいは翻訳機で何とかなるよ」
「残りの六割はボディランゲージね、こればっかりは慣れと経験」
「……ゲートがまだ開いていたら、追い返したりもするけれど」
「それを拒否する人もいて、結構大変な仕事」
自分の世界に帰りたくない気持ち。
それは、生まれた世界を拒んだ証左。
そういう存在と出会うたびに、心が鈍く痛み赤く染まる。
「私はこの世界に来た時に何らかの力が働いてニホンゴを浅く理解したけど」
「そうじゃない人が圧倒的に多いから…」
猫耳の上に乗った桜の花びらをピッピッと耳を動かして散らし。
「ねえ、七生は桜が好きなの?」
「確かに風情がある温泉だなって……思って」
■東雲七生 > 「翻訳機かあ、バウリンガルみたいなもんだね。
ボディランゲージは俺も試した事あるけどさ、そもそも体のつくりが違うとうまく伝わらないんだよね。
……まあ、色んな人が居るから。」
帰還拒否。そこに至るまで様々な生い立ちがあったのだろうと七生は思う。
それは一概に他人が如何こう言えることでもないだろうし、七生自身は如何こう言うつもりもない。
ただ、仕事として携わる身としてはそうもいかない場合もあるのだろう。
「ある程度の常識とかは自動でインプットされたりするらしいね。
生憎俺は生まれも育ちもこっちだから、体験したことは無いけどさ。」
笑いながら頭上に展開された桜の花を見上げる。
「うん、好きな方だよ。
まあこの温泉に来たのは一番近かったから、っていうか……風景とかは入ってから気付いたからさあ。」
■ステーシー >
「精度は低いし、誤作動も多いよ。カタログスペックを真に受けると痛い目見る感じ」
「ただ、ないよりはいいよ。言葉が伝わらないのは、悲しいから」
「そうそう、この前の異邦人は腕が六本あったなー、こっちで着る服大変そう」
「……私も猫の尻尾があって大変だから人のこと言えないけど」
空を見上げる。
「そう、色んな人がいるから」
鸚鵡返しに呟きながら、出会った異邦人たちを思い出す。
こっちの世界で何とか生きてる人もいれば、苦悶の果てに死を選んだ人もいた。
でも、彼らの命にまで責任は負いきれない。
「そうなんだ、お父さんやお母さんは元気にしてる?」
「常世には進学のために来たの?」
「あ、なんか質問ばっかり……ごめんね」
相手は裸で入浴中だというのも忘れてトークに夢中になってしまった。
「近かったから……それでここの温泉に入るのは勇気あるなぁ…」