2017/04/20 のログ
ご案内:「魔術学部棟情報処理室」にクローデットさんが現れました。
■クローデット > 「あの男」を切り離したことで、クローデットの日常は大分平穏を取り戻していた。…カウンセリングの前後以外は、だが。
(「あの男」の追跡は今実務に当たっている者達の仕事ですし…そもそも、優先順位も高くはないのでしょうね。自力で何かをしでかすタイプでもありませんもの)
そんなわけで、良くも悪くも実務から解き放たれたクローデットの研究は、再び滑らかに動き始めていた。
今日も今日とて、情報処理室の高性能なコンピュータを利用して、設計図を引き直したりしているのである。
ご案内:「魔術学部棟情報処理室」に八百万 頼さんが現れました。
■八百万 頼 >
(ドアの音はしなかった。
廊下を靴が叩く音もなく、誰かがこの部屋に近付いてくる気配すらもない。
少なくとも、彼女にはそのような音や気配は感じられなかったはずだ。
だと言うのに、彼女の後ろに立っている。
狐のような笑みを浮かべ、ポケットに手を突っ込んで、何をするでもなく作業をする彼女の姿を眺めている。
気配や音は無いが、その視線だけはわかるはずだ。)
■クローデット > 魔術に心得があれば、クローデットの引く図面が「電力を魔力に変換する機構」の一種であることが分かるかも知れない。
クローデットは、しばらくは頼の視線を意に介さずに作業を続けていたが…区切りの良いところらしく、保存をかけた後。
「………既に発表された論文を元に起こしているだけです。情報としての価値は、そこまで高くないと思いますけれど」
公安委員として、情報屋としての噂くらいは知っているのだろう。
そんな風に、平静な口調で告げると、頼の方に身体ごと向き直った。
「…それとも、あたくし個人にご用事ですか?」
■八百万 頼 >
――いやぁ、魔術の事はようわからんから。
魔力発電機かなんかやとは思うんやけど。
(言葉通り、魔術に関してはさっぱりだ。
それが魔術理論を使った図面だと言う事はわかるのだが、それ以上の事はわからない。
ただ出力されるものが電力だと言う事はわかるので、そこからアタリをつけただけである。)
んー、前々からちょーと聞きたい思てたことあったからな。
クローデットちゃんも表出れん様なって暇しとるやろから、話相手居ると楽しいやろ。
(彼女の隣の机まで歩いていき、その椅子ではなく机そのものに腰掛ける。
右手をヒラヒラさせながら軽薄そうな笑顔を浮かべて。)
■クローデット > 「その割には、全く的外れでもありませんけれど。
正確には、電力を魔力に変換する機構ですわね。
…魔術的装置を、科学技術と同じ要領で扱えるようになれば普及もするだろうと思いまして。
………本題は、こちらではないのですが」
図面の説明をさらっとしてしまうクローデット。
別人の研究の応用ともむれば、むやみに隠す気にはならないのだろう。少し楽しげですらあった。
「………。」
…だが、次の頼の言葉には、少し思慮がちに視線を落とす。口元を隠す羽根扇子。
「………個人的な会話であれば、ハウスキーパーとカウンセラーで概ね足りておりますけれど。
いつの間に、そこまで情報が広がっておりましたの?」
相手の素性はまだ見えない。感情を読ませない平静な声と怜悧な瞳で、改めて頼の方を見やった。
■八百万 頼 >
魔力使ったもんはよう分からんけど、それがこっちの分野と繋がっとるもんなら、その繋がりから逆算すればええだけの話や。
モーターやったら発電機にもなるけど、それはその辺どうなっとるん?
(自身は魔術に縁が無いが、興味が無いわけではない。
話題だけ聞けば他愛も無い世間話。
ただ、その細い目の奥の瞳は一切笑っていなかった。)
そんな言うほど広がっとらん。
ま、公安の中と上の方、あとは一部の情報通、言うとこやろ。
(身内の処分情報など表に出したがるものでも無いだろう。
ましてや高々謹慎のような程度のこと、大々的に発表するような事でもないのだから。)
■クローデット > 「…ええ、その通りですわね。
この図面自体は、本体の魔術機械を電力供給により稼働させるためのものですので…改良しているのは「おまけ」のようなものです。ただ、既存のもので確度の高いものは、どうしても効率が良くなかったものですから」
たおやかな微笑を口元に湛えながら受け答えをするクローデットだが、瞳が笑っていないのはこちらも同じだ。
「…そうですか…あたくし一人が抜けた程度で、「裏」の者達の増長を許す委員会とも思えませんけれど、処分情報がやたら広まると、研究もしづらくなってしまいますし」
「身から出た錆ではございますが」と、伏し目がちにぽつりと言ってから。
「………それで、公安の中か、上の方か。一部の情報通かは図りかねますけれど。
聞きたいこととおっしゃいますのは?」
頼に視線を戻して、話を促した。
■八百万 頼 >
無いなら作る、てか。
そう言うの嫌いやないわ。
(へら、と笑う。
完璧なまでに人懐っこい笑顔だが、瞳だけが一切笑っていない。
それだけで話し相手に来た、と言う言葉は嘘だとわかるはずだ。)
公安も組織やからなぁ。
有能なもんは重宝しても、使えへんなら代わりのもんはいくらでもおるし。
――そうは言うても有能なんは使うさかい、広める事も無いやろし、ボクにそんなつもりも無いから安心してや。
(そんな情報を広めたところで、何か利することもない。
公安委員が一人動けないからといって何か情勢が変わるわけでも無いし、そんな情報は金にはならないのだから。)
――前々からクローデットちゃんの事は知っとってん。
正義感強うて、悪人には厳しゅうて、魔術に長けとる優秀な公安や言うてな。
(遊ばせていた右手をポケットに突っ込み、代わりに左手を外へ出す。
その手には小さな発動機のようなものが握られている。
ガワだけのハリボテだが、それが先ほどまで彼女が作っていた図面通りの精巧な模型だと、彼女ならわかるだろう。)
それがなぁ、どうにも引っかかんねん。
ボクと同じにおいしよるんよ。
――レコンキスタ、って知っとる?
(薄い目を僅かに開く。
緑色の瞳が真っ直ぐに彼女を見ている。)
■クローデット > 「全くの「無」でもありませんわね…この島であれば珍しくもないでしょう。
ただ、外に持ち出して使えるものとなると、話は変わって参りますので」
卒業研究の計画書の作成も進めている。
研究の話ならば、恐らくそれなりに楽しめるのだろうが…それが本題ではないこと、分からないクローデットではなかった。
「………度々勇み足もございますけれど…そう評価して頂けているのでしたら、有難いですわね。
実際のところ、現場に出られる時間など、あっても残りわずかでしょうけれど」
「卒業研究もございますし」と、控えめそうなそぶりで目を伏せる。
頼が取り出してきた小さな模型は…少し目を見張ったが、それだけだった。
それに「力」がないのは、見て取れたからである。
そして…相手の口から「レコンキスタ」という言葉が出てきたとなれば、精巧とはいえ、ハリボテでしかない模型など些事でしかない。
「………わざわざこうして個人的に話されるのでしたら、イベリア半島のお話ではございませんわね。
「過去」の世界にしがみつく「亡者」の集団…もはや歴史に埋もれつつある極右系軍事組織、のことで間違いありませんか?」
そう聞き返すクローデットの表情は、未だに平静で、青く大きな瞳は、感情の色を伺わせない。
■八百万 頼 >
――異能を持たん「純粋な人間」こそが世界の支配者であり、異能持ちの人間を排することで世界秩序を回復する――やったか。
科学では解明出来ん力を振るう人間はは英雄ではなく倒すべき魔王や、と。
そんな一方からのものの見方でわかるようなもんとちゃうんになぁ。
(机から腰を下ろし、室内を歩き出す。
手にしていたハリボテはいつの間にかその存在を消しており、代わりに無地の真っ白な扇子が納まっていた。)
――クローデットちゃんのウチ、レコンキスタのフランス支部の立ち上げに関わっとったらしいな。
親父さんの代で関わり絶って、クローデットちゃん自身は何の関係も無い――
それが公安に伝えとった内容やったか。
(手の扇子を開いたり閉じたり。
その度に無地だった扇子に様々な模様が現れては消える。)
スジは通っとる。
自分の代ならともかく、親父さんの代言うなら可能性は充分あるやろ。
詳しくは調べられんかったけど、どうもそれもホントらしいしな?
――おんなじにおいや。
(入り口の扉の前に立ち、パチンと扇子を閉じる。
ガチャンと。
扉のカギが掛かる音。)
■クローデット > 「………本当に…偏狭なことです」
頼の呟きに同意するかのように、俯いて視線を落としてみせる。
声も、心なしか沈んで聞こえるだろう。
「………ええ…あたくしの身上としては仰る通りですわ。
公安への所属が通ったのは、紹介状も大きかったとは思いますけれど」
クローデットがこちらに来た頃、関わりを深く持っていた魔術学教師。
彼が当時所属していた公安委員と伝手があって、それでクローデットの今の立場があった。
「ええ…父は何度か、研究資料の閲覧のため、この学園都市に許可を得て滞在しておりますから。
こちらでの交友もありますし………何か、気になることでも?」
鍵のかかる音を聞くクローデットの瞳の色は、少し重さを増しただろうか。
それでも、クローデットはまだ取り乱す様子を見せない。
■八百万 頼 >
くっく。
(その声を聞いて、視線を下に落として肩を震わせる。
面白くて仕方ない、と言うように。)
獅南センセイ、やったっけ。
あの人もオモロイ人やとは思うけどな。
(彼女の真似をするように、口元で扇子を開く。
そこには墨で大きく「嘘八百」と書かれていた。)
そんな生い立ちやのに、殆どのもんに疑問も抱かせん立ち回りとか。
言う事がいちいち裏取れて、どう調べてもホンマの事やとしか思えんとか。
――完璧過ぎんねん、自分。
(自分と似たにおいがする。
それはつまり、ウソツキのにおい。)
――まだ自己紹介しとらんかったな。
公安委員会直轄第二特別教室所属、八百万頼や。
■クローデット > 「………そう、ですか」
「完璧過ぎる」からこそ疑いがかかるという言葉に、思案がちに視線を落とすクローデット。
「八百万様の仰る通り、あたくしは疑われやすい生い立ちです。
だからこそ、溶け込むためには…「普通の人」に許される隙が、許されないと思って生きて参りました。
…その結果、あなたのような方にはかえって疑われてしまうのですから…ままなりませんわね」
ふっと零れた微笑が宿す感慨は複雑で、見ようによっては、切なさ、寂しさのようなものすら感じさせるかも知れない。
人形めいて整った容姿。あまりにも完璧な、「複雑な微笑」。
疑わずにいようと思えば疑わずにすむだろうが、疑おうと思えばどこまでも疑えてしまうだろう。