2017/11/10 のログ
■美澄 蘭 > 頼が雑談に徹してくれているのは、有難かった。
意識を、出来るだけ逸らすことが出来る。…そのうちに、「標的」を変えてくれるかもしれないと、思える。
「ホラーは…そのものが怖いっていうより、演出がね…。
音が生々しいともう駄目」
夏休みが終わった頃に一緒に見た映画を思い出し、眉をひそめて瞳を閉じる。
そして、首をゆるく横に振った。よっぽど駄目だったらしい。
「オバケっていう存在自体よりは…相手が何をしてくるかの方が問題かしら。
ホラーなんかでも…オバケとかモンスターそのものよりは、どんな背景があって、何をしてくるのか…の方が怖さの源だったりするし」
相変わらず眉は怯えるように下がっているが、足取り自体は最初の頃と変わらない。
休憩所に指定されている場所のうち、近いところならばほどなく辿り着くだろう。
■八百万 頼 >
あー、ホラー映画は怖いっちゅーよりビビらせて来るからなぁ。
アレはボクも好きやないわ。
(くるりとパンプキンヘッドを軽く回す。
いくら裏に慣れているといっても、いきなり大きな音がしたりしたら驚く。
ましてや映画は驚かせる前に緊張させてくるのだから。)
たしかに何してくるかわからん言うのは怖いよなぁ。
人相手にすんのも似たようなトコあるわ。
(何をしてくるかわかっているのなら、対策の立てようがある。
だからこそ何をしてくるのかわからないのは恐怖感があるし、厄介だ。
そんなことを話しているうちに公園に着いた。)
――ん、おらんなったな。
(気が付くと「彼」はいなくなっていた。
他になにかに気を取られたのか、それとも興味をなくしたか。
いつの間にかいなくなっていたので、そこまではわからない。)
■美澄 蘭 > 「…だからって、私と一緒に見たって頼もしいわけじゃなかったでしょう?」
「もう…」と困ったように笑う。
それでも、笑顔は徐々に自然さを取り戻しつつあった。
「そう…一言で「人」って言っても、育った環境も…考えてることも、全然違ったりするしね」
「いっそ違うのが認められれば、すり合わせのしようもあるんだけど」と言って苦笑い。
「………あ、そう?
あんまり意識向けないようにしてたから、気付かなかったわ」
安堵の息を吐くが、その後すぐに申しわけなさそうな顔をして。
「…ごめんなさいね、変なことになっちゃって」
「少し休みましょ」と、公園の空いているベンチに向かう。
■八百万 頼 >
いやいやいや、ボク一人やったら見に行く勇気は出んかったから。
一緒に行ってくれるだけでじゅーぶん頼もしかったわ。
(笑っている風に見える用に、パンプキンヘッドを前後にゆらゆら。
とても怪しい。)
でもせやからおもろいとも思うで。
みんながみんな同じやとなんも面白ないやろ。
(そんな世界であればきっと会話もなくなるだろう。
言葉を交わさずとも同じことを考えているのだから。
口から先に生まれたと公言している自分は、そんなの面白くもなんともない。)
何がしたかったんやろか。
何ぞ聞いて欲しいことでもあったんかなぁ。
(彼女が座ればその隣に腰掛け、手に持っていたチュロスを渡す。
そうしてどうしようかしばらく迷い、結局パンプキンヘッドをがぽっと外した。
寒くなったとは言え流石に暑く、汗がじんわり浮かんでいた。)
■美澄 蘭 > 「………なら、良かった。」
言葉とは裏腹に、口調は呆れたような、不満をためるような。
疲れたようにつく溜息は、当時を思い出してのことだろう。
「まあね…世界の全部が自分の枠内だなんて、つまらないわ。勉強する甲斐もなくなっちゃうし」
そう言って、口元を自然に綻ばせた。
化粧が顔に馴染んできたのもあってか、表情の作り方から、歪さは徐々に取れてきている。
「どうかしらね…聞いて、私に出来ることなんてそんなになかったはずだけど」
「ありがとう」と言ってチュロスを受け取る。
それから、パンプキンヘッドを外した頼の、表情をまっすぐに見た。
「…やっぱり、顔をすっぽり覆う仮装って大変ね。何とかする手段自体は、この島ならありそうだけど」
■八百万 頼 >
また見に行こうなー。
(へらんとした口調。
次はもうちょっと大人しいものにしておこう。)
嘘も吐けんしな。
みんな違ってみんなええ。
(そんな言葉をどこかで聴いたことがある。
どこかどころか、そこら中に転がってるようなセリフだが。
チュロスをかじる。
美味しい。)
聞いて欲しかっただけってこともあるけどな。
今となってはもうわからん。
(下手に突いて蛇を出すのも面倒だ。
出てくるのが蛇だけならまだ良いが、もっと厄介なものが出てくる可能性だってあるのだ。)
結構暑いし、食べもんも飲みもんも苦労するからなぁ。
――ところで何でチュロスってなんなんやろ。
こう言うときの出店の定番やけど。
■美澄 蘭 > 「………評判を見て、判断してからならね」
溜息をついてから、チュロスをかじる。
棒状なので、口紅が崩れることをあまり気にしなくて良いのは都合が良い。
「違うことで敵対さえしなければ…ね」
幼い頃からこの島にいた頼とは違って、蘭は「異物」としての視線をそれなりに浴びて育ってきている。
少しだけ、視線を落とした。
「責任背負えるほどの強さはないから…仕方ないわね。
お互い不幸になるのが、一番良くないもの」
溜息をまた吐いて、もう一回チュロスを齧る。
「露店を楽しみたいなら不便よね…。
………チュロスって、スペインの方のドーナツみたいなものでしょ?
持ち運びやすい形だから、出店の定番になったんじゃないかしら」
「お化粧してると、飲み食いして崩れるのも気になるしね」と言いながら、チュロスを食べている「魔女のお姫様」。
何だかんだで、すっかり素の、「10代の女の子」だ。
■八百万 頼 >
違う映画でもええよー。
(にっこーと笑う。
ホラー映画に怯える姿は可愛かったが、あまり怖い目に合わせるのも可哀想だ。)
その辺はしゃーないなぁ。
生き物っちゅうのはそう言うモンや。
(だから自分を認めてくれる人と一緒にいれば良い、と続ける。
ついでに彼女の頭をぽんぽん、と撫でておこう。)
ああ言うのよう会うん?
ようわからんかったけど、良くないもんてのはわかったけど。
(慣れている、と言う訳ではないが、それに似た雰囲気を彼女から感じた。
いつかの美術館でのことも思い出し、そう言う感応性が高いのだろうか、と。)
すぺいん。
ドーナツを縦長に挙げたやつやとアカンのかな……。
(何故チュロスなのか。
似たようなものは他にもあるのではないだろうか。
変なところで考え込みつつ、もう一口。)
■美澄 蘭 > 「………何か、面白そうなの探しておくわ。八百万さんでも楽しめそうなの」
「アクション系が好きなんだったかしら?」と呟いて、チュロスもぐもぐ。
棒状のものを齧っているの、ちょっとげっ歯類かなんかっぽい。「魔女のお姫様」なのに。
「………まあ、そこは、ね。
「あっち」をメインフィールドにするんだって考えたら、ある程度開き直るしか無いんだけど」
「この島でだいぶ心細さ自体はなくなったし!」と無駄に決意の瞳で頷く。
…が、頭を撫でられれば微妙な顔になった。チュロスを頬張っているのとは別の意味で口がもごもごと動いている。
「積極的に会いに行ってるわけじゃないから、そうでもないけど…「視る」と、たまに「分かる」ことがあるから。
…ああいう存在に触れやすい、感じやすい体質なんですって、私。理屈で考えて切断出来るから、悪影響はある程度防げるらしいけど…たまに、研究区で制御の訓練は受けてるわ」
そんなことを言って、チュロスを食べきる。
この体質を磨き上げて、「触れないもの」を扱うプロフェッショナルになる道もないではないのだろうが…今のところ、その予定は特になかった。
「…ドーナツを縦長に揚げたのなら、チュロスって呼ぶのでいい…くらいの認識なんじゃない?
おじいちゃんが物心ついた時にも定番だったらしいし」
「ヨーロッパ圏以外の露店も結構昔からあるみたいだし、グローバルよね」なんてあっけらかんと言って。
島の外の社会のことは、それこそこちらの少女の方が、知識に分があるのかもしれなかった。
■八百万 頼 >
楽しみにしとるよ。
(アクション系は好きだ。
わかりやすくて良い。)
相談ぐらいならいつでも乗るし、暇なとき遊びに行ったりするから。
つってもまだ二年先のことやけどな。
(彼女の頭から手を離す。
来年の話で鬼が笑うのだから、再来年の話をするとどんな大変なものが笑うのだろうか。
なんとなくおかしくなって笑いが漏れた。)
ボクとは正反対やなぁ。
ああ言うの初めて言うわけやないけど、触れるもん特化なとこあるし。
理屈としては虚数空間とか高次元立体物?言うんも理解できるらしいで。
(自身のチュロスを持っていない方の手を眺めながら。
らしい、と言うのは当然ながら触ったことが無いからだ。)
でもチュロス言うたらこの形やん。
普通のドーナツの、輪っかなってないようなヤツやと何があかんのかなーと。
(ドーナツはやはり穴があってこそ、ということだろうか。
わからん。)
■美澄 蘭 > 「………。」
黙りこくって頷く。
手や顔に触れるなどすれば…あるいはしなくても、ファンデーションの下の肌の色は、想像がつくかもしれない。
「………ありがとう…そこまで、言ってくれて」
蘭は、頼は「みんなに」優しいのだと思っていた。
その頼が、自分のために、そこまですると…時間と労力を割いてくれると言ってくれるのは、嬉しかった。流石の彼でも、万人にそこまでの手間は割けないだろうと。
笑うというより…少しだけ、熱を帯びた溜息が零れる。
「…虚数…高次元立体物………ああ、確率物理………」
進路選択上、大分切り捨てた領域である。少し悩ましげな溜息が漏れた。
理科系科目が苦手、というほど出来ないわけではないが、基本的には文系の蘭である。
「………何だろう、硬さも大分違うから…
ドーナツってもっと柔らかいわよね?」
「持ち運びに気を遣うかも」と、頼の疑問に同調するように首を傾げながら。
■八百万 頼 >
(ここで力を使うほど野暮ではない。
に、と笑ってチュロスをかじる。)
ボクにココまで踏み込んできたの、蘭ちゃんが初めてやからな。
そら応えてやらな男が廃るちゅうもんやろ。
(あえて冷たく突き放しても、裏の顔を見せても、それでもしつこく食い下がってきたのは彼女だ。
それに負けたのは自身なのだから、そのぐらいは当然だと。)
あるんかどうか知らんけど、理屈の上ではある物体ってやつやな。
おかげさんでそっち方面の成績はええんやで?
(力のお陰で計算しなくてもシミュレート出来てしまう。
しかも詳細な数値付きで。
便利なものだ。)
まぁ、棒状のドーナツがチョコ系の生地やったら、見た目的にちょっとマズイのはわかるけども。
(かりんとう的な。)
■美澄 蘭 > 「………そう、なの。
………。」
「みんなに優しいんだと思ってた」という言葉を出すのを流石に躊躇って、口を噤んだ。
まだチュロスが残っていたら、齧って誤魔化したかもしれないけれど。
ただ、化粧を施してそれなりの時間は経つし、高いものではないので…そろそろ、ファンデーションの下が、うっすら伺え始めてしまうかもしれない。
「異能が学業の成績にプラス、かぁ………まあ、私も魔術関連でそれなりに得してると思うし、羨ましがっちゃいけないわね」
くすくすと笑った。適材適所とは、よく言ったものである。
「………?」
チョコ生地のチュロスとか普通にあるし、あんまり気にしていないらしい蘭はきょとんと首を傾げた。
きっと、感づかない方がいいヤツである。
■八百万 頼 >
――つーかね、蘭ちゃん。
そろそろ、気付いてもえーんとちゃうのかな蘭ちゃん。
八百万クンちょっと寂しいで蘭ちゃん。
(チュロスを全部口の中に突っ込み、ずぼりとパンプキンヘッドを被る。
自身の膝に両腕を乗せ前かがみになりながら、名前を連呼。)
――あ、一応な、内緒やで。
ボクのチカラ、ただコピーするだけってことなっとるから。
(パンプキンヘッドの口の部分に人差し指を立ててみせる。
彼女が言いふらすような人間ではないとはわかっているが、念のため。)
いや、なんでもない。
気にせんといて。
(気付いていないならその方が良い。)
■美澄 蘭 > 「………あ」
やっと気付いた。気付いてしまった。
「………あ、あ、あああ………!」
顔の傍に手を持ってきて、わきわきと動かす。
口がぱくぱくと動くが、調子っ外れな声が出るだけで言葉にはならない。
…正直、相手がパンプキンヘッドを被り直してくれて感謝した。今の相手の表情を見られる気がしない。
少女の顔色?たとえ見えようが見えないが、言うだけ野暮というものであろう。
「………。」
平静さなどすっかり彼方に吹っ飛んだ。
秘密を守る誓いを頷きで示すために、パンプキンヘッドの向こうの瞳を意識して、顔を向けたのが精一杯である。
■八百万 頼 >
変なとこで鈍いな、蘭ちゃんは。
(呆れたような、それでいてなんだか嬉しいような、そんな声。
変な鳴き声みたいな言葉を発してあわあわしている彼女が可愛くて、わしわしっとやや乱暴に彼女の頭を撫でた。)
さーて。
ボクはこないだからそうしてるわけですけども?
こうするのはボクだけなのかなぁー?
蘭ちゃんはチラッいつまでチラッそんな他人行儀チラチラッなのかなぁーチラッチラッ?
(わざとらしい声を出す。
言葉の間にわざわざ声に出してチラッチラッと口で言いながら、パンプキンヘッドをゆらゆら揺らす。
とても。
たのしそうに。)
■美澄 蘭 > 「………だ、だって、その………」
離れるのが分かっていて、そういう気持ちにあまり期待をかけたら、お互いに辛いか…最悪、頼に迷惑をかけるだけの気がして。
期待し過ぎないように言い聞かせていたのだ。だからといって、そういうサインを見逃していい道理にはならないけれど。
「………ううん、ごめんなさい、その………。
………頼、さん………」
相手は、離れているなりに、手を伸ばせば応えてくれると言ってくれたのだ。そんな抑制は、もういらないのだろう。
蘭は、身を縮こまらせて俯きながらも…相手を、姓でない方で呼んだ。
■八百万 頼 >
――。
(固まった。
ゆらゆら揺れていたパンプキンヘッドが、彼女の方を向いたままぴたりと止まる。)
――アカン。
アカンわ蘭ちゃん。
(かろうじてそれだけ呟く。
もうちょっと恥ずかしがっていると思ったのに。
煽ったのは自分だが。)
――――かわいすぎか。
(長い沈黙の後、ようやくひねり出したのはその言葉であった。)
■美澄 蘭 > 「………え、え、ええええええ!?」
何で固まるんだ。何で出てくる言葉が「かわいすぎか」なんだ。
恥ずかしさを驚きが上回って、思わずパンプキンヘッドの方を見る。まっすぐに。
蘭の方からは、その瞳や表情が、直に見えるわけではないのだけれど。
■八百万 頼 >
いや可愛すぎやろ!
なんやその「流石に呼ばんかなー」って反応からのそんな消えそうな声ではっきりとした自己主張を醸し出しつつ深いコクが舌の上でシャッキリポンと!
落ち着けェ!!
(立ち上がって意味のわからないことを力説しつつ、最終的にパンプキンヘッドを地面へとブン投げてセルフツッコミ。
ハァーハァーと肩で息をしている自身の顔がほんのり赤いのと汗だくなのは、今叫んだからではない。)
――よいしょ。
蘭ちゃん、ちょっとこれ被って。
(コロコロと転がっていくパンプキンヘッドを追いかけ、拾って戻る。
そうしてそのまま彼女の前に立ち、彼女の帽子を外してパンプキンヘッドを被せる。
半ば無理矢理に。)
■美澄 蘭 > 「………え、えーと………?」
今までずっと蘭を導くようなスタイルだったのが、突然意味不明なことを並べられて、立ち上がる頼をきょとんと見上げる。
挙げ句の果てに、何かパンプキンヘッドぶん投げてるし。
相手があんまりにカオスなので、相手の顔の赤さも、何故か(あ、赤い)くらいの感じで受け止めてしまった。
…が、相手が無理矢理パンプキンヘッドを被せてこようとすれば、
「ま、待って待って!メイク崩れる!崩れるから…!」
と、結構激しい抵抗を示す。何だったら、立ち上がろうとしてさえ。
「どういうことなのー!?」
そんな悲鳴が、公園に響き渡る。
■八百万 頼 >
あ、あぁ、そっか。
ごめん。
(そうか、化粧をしているのだ。
それに気付いて被せるのは止めた。
変わりに自分が被る。)
はー……。
(ベンチに腰掛け、背もたれに身体を預ける。
それはもはや腰掛けるというより殆ど寝ている体勢。)
――あぁ。
ボク蘭ちゃんのことが好きなんか。
(あまりに自然に言葉が出た。)
■美澄 蘭 > 「………だ、大丈夫?」
何か、「気付かれた」時の自分とは別な意味で大変な様子の頼を見て、恐る恐る。
「何か、飲み物買ってくる?」なんて言うが、わざわざカボチャヘッドを被り直した彼が、顔を見せるリスクを冒してまで飲み物を欲するかは怪しい。
「………!」
相手が、自然に言葉を零せば目を丸くする。
この流れで、流石に察しないほどではないけれど。それでも、こんなにストレートに言葉が出てくるとは思わなかった。
「………わ、私も………頼さんのこと、好き。」
肝心のところで、恥ずかしさよりも「応えなければ」というある種の正義感が勝るのは、この少女の強いところだろう。
「…だから、ね。傍にいたいと、思ったの。
傍にいるのに、相応しい人間になりたいって、思ったの…」
追加でぽろぽろと零れてくる言葉。頼が止めなければ、どこまで出てくることか。
表情は一杯一杯の真顔なのに、語る言葉は、ゆっくりながらも案外淀まない。
■八百万 頼 >
ん、だいじょぶだいじょぶ。
(ひらひらと手を振って。
パンプキンヘッドはすぐに外してしまった。
暑い。)
――え、あ、ちょ、ちょい待ち。
待った待った待った!!
(今のは彼女に言ったわけではない。
ただ思ったことを口に出しただけと言うか、出てしまっただけなのだ。
彼女の言葉を遮る様に手を出して。)
――えー、と。
ちゃうねん。
今のは言おうと思ったわけやなくて、いや嘘やないけど、そう言うことやなくて。
あーもう泣かんといて泣き止んで。
(このままでは彼女から先に言わせてしまうというか完全に言わせてしまっているし、しかも泣いているし。
慌てて彼女の頭に手を置いて撫でる。)
せやから、その、蘭ちゃんが好きって言ってくれるのは嬉しいけど、あぁ別に振るとかやなくて、あぁええと。
(自称口から生まれた男はどこへやら。
何を言えば良いかわからず、深呼吸。)
――もっかい。
もっかいチャンスくれください。
ちゃんとするので。
(人差し指を立てる。)
■美澄 蘭 > 「………そ、そう………?」
結局パンプキンヘッドをすぐに外してしまう青年。
相手の方が慌ただしいので、相対的に顔の熱さが引く感じすらする。そしてそのことに戸惑う。
「………え?あ………」
告白をしながら、涙を流していることに気付かなかったらしい。貴重品等を入れていたポシェットからハンカチを取り出し、そっと押さえる。メイクが崩れないように。
でも、相手が自分をなだめるように撫でると、逆に涙が溢れ…落ち着くのには、ちょっと時間がかかった。
「………。」
自称「口から生まれた男」はどこへやら。
やっぱり、呆けた感じで頼の方を見上げ。
それでも、青年が人差し指を立てながら懇願してくれば、こくりと頷いた。
「………前に、ミュージカル映画を一緒に見た後…自分の気持ちを、どう表現したら分からないって…言ったこと、あったでしょ?
あれから、私なりに、色々考えて…それっぽい、言葉が見つかったの。
頼さんが、「ちゃんとして」くれるその時に………それも、聞いてくれると、嬉しいかな、って………」
「迷惑じゃない、わよね…?」と、頼の表情を伺うように見た。
■八百万 頼 >
もー……。
強いわ。
蘭ちゃんめっちゃ強い。
何をどうしても逆立ちしても敵わんわ。
(はぁーと盛大にため息を吐いて。
最初はただの普通の女の子だと思っていたのに。
「ただの普通の女の子」だと思っていた女の子が、こんなラスボス後の隠しボス並の強敵だなんて思いもしなかった。)
うん。
じゃあ、先にボクから言うな。
(そして一度深呼吸。)
――えー、と。
その。
美澄、蘭ちゃ、蘭さん。
(これだから。
自身の考えをまっすぐに声にすることは嫌いだ。)
――好き、です。
(だって、こんなにも恐ろしいのだから。)
ので、――付き合って、くだひゃい。
(しかも噛むし。)
■美澄 蘭 > 「………???」
自覚が無いのは本人ばかりなり。我が強い、じゃじゃ馬だという自己認識はあるけれど、それが恋愛沙汰でプラスになるなんて、思ったことが無かった。
ちょっとアイメイクが周囲に滲んだ目を丸くして、大きく何度か瞬かせる。
「………。」
相手が噛んでも、蘭は噴き出しはしなかった。柔らかく視線を落とし、ほう、と柔らかい息を吐く。
「………私も、傍に、いられたら、いいと思ってた…。
社会に認められるとか、そういう建前はおいといて…気持ちが、通じ合えるなら幸せだって、思ってた。
………私も、好き。だから………そう言ってもらえて、嬉しい」
もう一度、柔らかい、温かみのある息を吐いて。
まっすぐに、頼の顔を見て、微笑んだ。
■八百万 頼 >
――ぶっはー!
死ぬ!
息してへんかった!
死ぬとこやった!!
(彼女の返事を聞いて盛大に息を吐き出した。
胸に手を当て、ぜーはーと荒い深呼吸を繰り返す。
半分は照れ隠しだ。
こうでもしないとこの空気に押しつぶされる。)
ありがとな。
ボクも嬉しい。
――嬉しいけど。
(若干表情が曇る。
細い目の目じりを下げ、困ったような顔。)
ボクのオシゴト、アレやで。
そんなんが、彼――氏で、蘭ちゃんはええのん?
(胸を張って人様に言える仕事ではない。
まだまだ隠している事だってあるのだ。
それでも、良いのだろうか。)
■美澄 蘭 > 「………ふふっ」
大げさに深呼吸を繰り返す頼の様子に、改めて笑みを零した。
空気が少し緩んだ感じがする。
…しかし、相手の表情のわずかな曇りは…続く言葉も合わせて、十分察することが出来た。出来てしまった。
「………それは、気になってないわけじゃない、けど」
視線を落として…しかし、それでも再度頼の方を見上げた。
「話していいと思える範囲で、少しずつ、話せない理由は理由で話してくれるかなって信じてるし…
それを聞いてどうするかは、私が決めることだから」
「「対等」だと思ってくれるなら…そこでの私の「判断」を、信じて欲しいかなって」
「我儘かしら?」と言って、花が綻ぶように、笑った。
■八百万 頼 >
やっぱ敵わんな。
(こちらも笑う。
いつもの嘘くさい笑顔ではなく、自然な笑い顔。)
ほんなら、ほい。
よろしくお願いしますの握手、しよか。
(右手を差し出す。)
■美澄 蘭 > 「自分に正直なだけ…だと思うけど」
相手が自然に笑うのは…くすぐったいけれど、心地よかった。
「ええ…こちらこそ、よろしく」
はにかみがちの笑みを浮かべ…左手を少し遅れて添わせるようにしながら、右手を出して、頼の右手を柔らかく握る。
…とはいっても、ピアノで鍛えられた指は、掌は、少女らしい柔らかさにいまいち乏しいのだけれど。
■八百万 頼 >
ん。
よろしゅう。
(そうして握られた右手を軽く振って。
直後、不意打ち気味にこちらへ軽く引く。
強いわけではない。
彼女がバランスを崩す程度に、軽く。)
■美澄 蘭 > 「あ」
ベンチの上で、さほど力を入れて姿勢を整えていたわけでもないので、不意を突かれればあっさり頼の方へ倒れる。
「………。」
そして訪れる結果に、蘭の顔は、身体は、一気に熱を帯びる。
■八百万 頼 >
(バランスを崩した彼女の顔を左手で支えて。
彼女の頬に僅かに唇で触れる。)
ウェヒヒ。
隙あり。
(悪戯が成功した子供のような顔で笑った。)
■美澄 蘭 > 「………あ、あ、あ………。」
数秒遅れて、状況が脳に届いたらしい。また変な声を漏らす。
………が。
「………。」
慌てて飛び退くことはせず、寧ろ頼の身体に顔を、身体を積極的に寄せにいく。
そうすることを、望んでいた…そのことを知っていたと、言わんばかりに、自然に。
■八百万 頼 >
わ、と。
(慌てて抱きとめる。
無様に後ろにて折れ込むことはしない。
大事なものを抱え込むように、大事に。)
――蘭ちゃんは。
甘えんぼさんやなぁ。
(そのまま後頭部をよしよしと。)
■美澄 蘭 > 「………甘えたい、っていうのと、ちょっと、違って………。
近くにいたいから、こう、するの」
ちょっと強がる子どもみたいな語調だが、言ってることを冷静に分析するとちょっとすごいかもしれない。
…そして、本人も数秒後にそのことを自覚したようだ。
そして…今は公園。屋外で、公衆スペースだということも。
「………あ、あ、あー………
…ごめんなさい、外で言うようなことじゃ、なかった、かも………」
口調がまたしどろもどろになる。盛大な自爆であるが、自爆で済むか、自爆テロになるか。
■八百万 頼 >
つまりワガママなんやな。
(一言でまとめた。
自分の感情を表に出さなさそうな彼女がそう言ってくれるのがなんだか嬉しい。)
ええやんええやん、見せつけたれー。
うりうりうりー。
(彼女の恥ずかしさが顔を出したのを察して、むしろ抱きしめる力をを少し強くした。
更に彼女の髪と頭に頬を擦り付ける。
当然ながら公園は人影がゼロなんてことは無い。
休憩スペースと言うこともあって、何人かの人がいる。
彼らに向かって手を振りつつ、)
ボクらさっき恋人んなったんで祝ってくださーい。
(なんて声まで掛ける始末。
いつの間にかパンプキンヘッド被ってるし、彼女の頭にも大きな三角帽子が戻っている。)
■美澄 蘭 > 「………私の我が強いの、今に始まったことじゃないもの」
一言でまとめられれば、ちょっとむっとしつつも開き直った。
「ちょっと待って、髪の毛乱れるし、あと自分だけ顔隠してそういうことしたり言ったりするのずるいってば…!?」
自分も、メイクと素顔ではある程度印象が変わると信じてはいるけれど、ちょっと、恥ずかし過ぎる。顔を上げて抗議の声。
…「ハレの日だから」と、周囲の人が「何か変なことやってる奴ら」で記憶から流してくれることを願うしか無い。
■八百万 頼 >
んや、ワガママ言ってくれてちょっと嬉しい。
(なんとなく、彼女は我慢をする方な気がするから。
そうしてしたいことを素直に言ってくれるのは嬉しい。)
だーいじょうぶだいじょうぶ。
ほら、こうやってマントの襟立てて帽子被れば見えへん見えへん。
(ちょいちょいと彼女のマントと帽子をいじる。
そうしてこうやって密着していれば、よほど目が良くなければ遠目で彼女だと誰もわからないだろう。
周りの人の反応は、おめでとー!と拍手をくれる人や、視線だけで爆破させようとしてくる人、何やってるんだと言う視線を送る人などさまざまであった。)
■美澄 蘭 > 「………そう?前にも言ったけど、色々叶えてもらってばっかりの気がしてるから…ずっと、気が引けてて」
自分が「頼られたい」と思うように、相手も「頼られたい」と思っているのか。
自分が「こっちばかり助けてもらって」と負い目を感じるように、彼も「こっちばかり助けてもらって」と感じてしまっているのか。
それなら…それが、「恋をしている」ということなのかもしれない。
「………寄り添うこと自体は、甘えるつもりじゃないけど…
………ちょっと甘えて、隠れさせてもらおうかしら」
襟を立てたり、帽子の角度を変えたりして外からの視線を切ってもらえれば、自分も、意識して視線のことを考えないようにする。
少し、頭を引っ込めて身を縮めるようにして…頼に寄り添える時が来た幸福を、まず第一に考えるようにする。
頼が状態なり場所の転換を望むまで…あるいは、帰った方が良い時間が近づくまで。
蘭は、きっとそうしているだろう。
周囲の声は聞こえない。聞こえないったら。
■八百万 頼 >
ボクかて蘭ちゃんにたくさん助けられたんやで。
それに男としてはやっぱり女の子には頼られたいやろ。
蘭ちゃんがどう思たかて、男ってそう言うもんやで。
(ぽんぽんと帽子の上から頭を撫でつつ。
合間にたまに通りがかるさっきの子供たちから声を掛けられ、手を振ったりして。)
甘えてええんやで。
蘭ちゃんが甘えてくれるってことは、ボクも女の子に頼られたいってのを叶えてくれる言うことやからな。
(そう言って、もう一度全身で彼女を抱きしめる。
良い匂いがするとか、細いように見えてやっぱり柔らかいとか、色々思うところはあるけれど。
そう言うことが幸せなのだろう。
乗り越えないといけないことはたくさんあるが、きっと何とかなるのだろう。
そうしてしばらくくっ付いた後、改めてハロウィンパーティを楽しんだ。
今日会ったときと同じように、跪いて彼女に手を伸ばしてから。)
■美澄 蘭 > 「………いつか…その辺の話も…少し、してもらってもいい?
自分じゃ、分からないから」
少女らしい細い声が、ほんのり甘さを帯びる。
自分がどうして頼に好感を抱いているかは、以前話したし理解されているはずだから。
「…男とか女とかは…受動能動が絡むところはほどほどにしておきたいんだけどね、個人的には」
「それが対等に近づくことだと思うし」と、彼の腕の中で恥ずかしそうに笑う。
しばらくして、離れる頃にはファンデーションの「仮面」が大分危機的だったとか、度々深呼吸をして、顔色を誤魔化すよう努めて少女が「恋人」と歩いていたとかは…また、別の話。
ご案内:「ハロウィンパーティ会場」から八百万 頼さんが去りました。
ご案内:「ハロウィンパーティ会場」から美澄 蘭さんが去りました。