2017/12/11 のログ
ご案内:「静かな喫茶店」に美澄 蘭さんが現れました。
美澄 蘭 > 「ごめんなさいね、相談が平日になっちゃって」

平日の放課後、薄暗い喫茶店の奥。
テーブル席に腰掛けた少女が、自分の目の前の紅茶に手を伸ばさず、片方の手を口元に思案がちに添え、もう片方の手は握り拳にしてテーブルの下、膝の上に置いている。

「ずっと、一人でモヤモヤしてるよりは…早めに話しておいた方が、いいかなって思ったら…あんまり、待てなくて」

重い、途切れがちの声でそう語って…やっと、ちゃんとした呼吸を1回。

ご案内:「静かな喫茶店」に八百万 頼さんが現れました。
八百万 頼 >  
ええて、平日でも休日でもいつでも。

(笑いながらひら、と片手を振る。
 そうしてコーヒーを一口すすり、彼女の言葉を待って。
 流石にこんな様子の彼女をからかうことは出来ない。)

うん。

(深呼吸する彼女からの言葉を待つように姿勢を正して。)

美澄 蘭 > 「………ありがとう」

そう言ってから、視線を落とす。
まだ、話す順番について、迷いがあるのか、テーブルの上を這うように視線が泳ぎ…

「………家族に勘づかれる前に自分から話すべきか、ギリギリまで黙っているべきかで悩んでるの」

そう語って視線を落とす蘭の眉間には、若さに相応しくない苦悩の皺の兆候が伺える。
ただの思春期、自立の芽生えと考えるには、暗すぎるように思えなくもない。

八百万 頼 >  
(彼女からの言葉を聞いて、コーヒーをもう一口。
 ただ単に彼氏が出来たと報告すべきかどうか――と言う話ではないだろう。)

――蘭ちゃんは、どうしたい?

(どちらがいいか、ではなく、どうしたいかと。
 どうすべきかどうかはこの際置いておいて、ただ彼女が家族へ隠し事をしたくないかどうかを尋ねる。)

美澄 蘭 > 「…お母さんが勘のいい人なの。いつも一緒にいるわけじゃないけど、いつまでも隠せるとは思えなくて…」

「隠したくない」ではなく「隠せない」。
少女の眉間の皺が深まり…少女は、苦悩を瞼を通じて遮ることを望むかのように、一度目をぎゅっと瞑ってから、頼の方を見た。

「…ただ、頼さんの人となりを聞かれたときに…私が好きな部分だけを話して、納得してもらえるかな、って…。

………私は、まだ「子ども」だから…それに相応しくない扱いを受けることなんかも、家族は絶対にいい顔をしないから…」

経済力に見合わない贈り物を受け取ることを良しとしない家族。
「闇」に居所を見出す人間に家の娘が接近することを、当然良しとはしないだろう。

「…全力で娘を支配するほど、暇でも反動的でもない人達だとは思うんだけど…初めてのことだし、その割には色々あるから…ちょっと、怖くて」

最悪の事態…この場合、頼との関係はもちろん、他の色んなものまで捨てさせられ本土に連れ戻されることだが…の可能性は低いと、踏んでいるけれど。
頼が家族に悪感情を抱かれたときに、自分が何を思い…結果、何が起こるのか。

読めないことが、怖かった。そして、それを一人で抱えているのが、辛かったのだ。

八百万 頼 >  
まぁ、そらなぁ。

(ただでさえ母親と言うものは子供の変化に敏感だ。
 それが娘であれば、特に。)

正直ボクも蘭ちゃんに話してないことはたくさんあるよ。
単純に知られたくないだけのことから、どうしたって知られたらあかんことまでたくさんな。
ほうしたら、いっぺんボク会ってみよか?

(彼女が間接的に話すよりも、自分が直接会った方が親御さんも正確に判断出来るだろう。)

――あとな。
ボクは蘭ちゃんのことそれ相応の扱いしとるつもりやで。

(それだけは伝えておきたい。
 自身が好きな人の扱いは決して過剰でも過少でもないと。)

美澄 蘭 > 「………バレンタインの時のこと、ざっくりだけど喋っちゃったし」

そう切り出す声はとても気まずそうだ。背の高さの割には華奢な肩が、ますます縮こまって見える。

成績に一部支障が出たので、母にだけはざっくりとだが事情を話したのだ。
事情が事情だけに父や祖父に知られたらまずいと思って、内緒にしてもらってはいるが。

「………。」

まさかの、相手から「会ってみようか」の提案に、蘭は目を丸くして頼の方を見る。

「…そうね…もしかしたら、お願いする…かも。」

ぎこちなく頷いた。それでも、眉間の憂いはだいぶ晴れており…頼が向き合うことを厭わない姿勢を示してくれて、肩の荷が降りる感じがあったのだろう。
…だが、次の言葉には、しっかり眉を寄せ。

「…うん、気持ちの問題じゃないし、秘密のことも…色々あるのは分かってて好きって言ってるから、私は良いの。

………ただ、お金の事がね…あんまり品の良い話じゃないんだけど、うちの家族、未成年が身の丈に合わないものを着たり持ったりするのに厳しくて。
この、ホワイトデーのお返し…あの小さなチョコでバランス取れるほど、安いものじゃないでしょう?」

コートから懐中時計を取り出して、難しい顔。

「家族がこの島に来てる時は、怖くて持ち歩けないのよね…普段は鍵付きのケースにしまってるの」

八百万 頼 >  
あ、あー。
――あんときは、ごめんな。

(バレンタイン。
 流石に、言葉に詰まる。
 わずかな間の後、頭を下げた。)

多分それが一番早いし、親御さんも判断しやすいしな。

(少し肩の荷が下りたような彼女の様子にへら、と笑う。
 コーヒーを一口。)

――まぁ、間違っちゃないわな。
分相応なかっこするのは大事なことや。

(そういう意見もわからなくはない。
 わからなくはないが。)

でもそれはボクが蘭ちゃんに似合うやろ思て買うたモンや。
実際似合うとると思うし、大事にしてくれてるみたいで嬉しい。
つり合い取れてへん思うなら沢山返してくれればええ。
つーか隠し事たっくさんあるボクのこと、それ含めて好きや言うてくれるだけでボクは充分もらっとる思うで?

美澄 蘭 > 「………ううん、いいの。頼さんも迷ってたのよね」

頭を下げられれば、そう言って首をゆるく横に振る。
流石に、講義1つ落として今再履修中だとかは言わないけれど。

「一緒に矢面に立ってくれるって言ってもらえて…申し訳ないけど、すごくほっとしちゃった」

「ありがとう」と言って表情を緩め…やっと、ティーカップに手を伸ばし、少しすすることが出来た。
口と喉の湿り気と温もりに、柔らかく息をつく。

「………せっかくもらったものだし、丁寧に…出来るだけ頼さんに伝わるように、使いたいと思って」

懐中時計の縁を、軽く指で撫でる。

「似合う格好に見合うだけの「力」をつけるのも大事で…今はその下積みみたいなもの、って感覚は、私にもあるから…だからこそ、色々怖くて。

…気持ちのことは、「お互い」のことだから…これの金銭的価値に見合うくらいだ、って言われると変な感じ。気持ちそのものは、お金で直接は買えないものだしね」

そう言って、くすぐったげな息を吐いた。

八百万 頼 >  
ボクもなぁ、ああいう風に人から思われるん慣れてなかってん。

(ああやって突き放してしまって、本当に申し訳なかったと思う。
 成績が落ちたと知れば、床に頭をこすりつけそうな勢いである。)

ええて。
それが彼氏の役割やしな。

(彼女のために矢面に立つなど、彼氏、いや男として当然のことだ。
 ひらりと手を振る。)

いやぁ、愛されてるなぁ。
――人からどう思われとるかって、自分ではわからんもんや。
自分が考えてる以上に評価されてたり、その逆やったり。
二人でレベル上げてこ。

美澄 蘭 > 「恋人」の弁明に、目を丸くして…

「…頼さん、「みんな」に優しいんだと思ってたから…対応、慣れてるものだとばっかり」

と、今まで飲み込んでいた言葉をぽろりと漏らす。

「…まあ、お互いの気持ちありきってことは当然私の問題でもあるわけだし、立つのは基本「一緒に」だからね」

そう言ってふふ、と楽しげに笑い、紅茶をまた一口。

「だからこそ付き合うことにしたんでしょう?」

「愛されてるなぁ」としみじみ言う頼に、楽しげにそう言うが…その頰には、普段よりうっすらと紅が差しているようにも見える。

「…私だって。憧れてた人と、こういう立ち位置で、こんな感じで話せるなんて…ほんの少し前まで、まるで現実的な話じゃなかったわ。

…「レベル」。そうね。私なりのやり方で…上手くやっていかないと」

そう語る少女の顔からは、相談開始前の陰はすっかり払われてしまったようだった。

八百万 頼 >  
蘭ちゃんほどまっすぐに強い気持ちぶつけてきた子ぉは居らんかったからな。

(それまではのらりくらりとかわせばすぐ諦める程度の女の子ばかりだったから。)

ちゃうで。
ボクが蘭ちゃんを好きんなったから付き合うことにしたんや。

(ちっちっちと指を振って。
 彼女の押しに負けてではなく、自分が彼女を選んだのだと。)

ところがどっこい、現実です・・・!
人生なにが起こるかわからんもんやで。

(すっかり明るい表情になった彼女を見て一安心。
 やはり暗い顔をしているより笑っていた方が、いい。)

美澄 蘭 > 「…そうなの?」

きょとんと首を傾げる。色々と変なところで自覚が足りない。

「…私も頼さんのこと好きだから、「両方」の問題でしょう?
おまけに、今回は私の家族の話だし」

自分が影に隠れて頼を表に押し出すことはあり得ない…と、頼をまっすぐに見つめる瞳が主張しているようだった。

「ホントにね…別に恋愛するつもりがないとか決めてたわけじゃないけど、こうなってることが信じられなくて………幸せ」

はにかみがちに笑って、あえて顔を隠すような持ち方をしてティーカップを口元に運んだ。

八百万 頼 >  
せや。
蘭ちゃん、自分で思っとる以上に強いで。

(彼女は自身を過小評価している嫌いがあるが、芯の部分はかなり強いと思う。
 それはもっと誇っていいはずだ。)

せやな、二人の問題や。
せやから二人で解決しよ。

(二人に立ちはだかる障害なら、二人で協力して乗り越えるのだ。
 彼女の家族を障害とは言いたくないが。)

そうか、幸せかぁ。
蘭ちゃんがそう思ってくれるならボクも幸せやわ。

(へら、と笑う。)

美澄 蘭 > 「…気が強い自覚くらいはあるけど、それ以外はよく分かんないわ」

くすぐったそうに肩をすくめる。
まだまだ出来ないことも多いし、周囲を見渡せば限界を思い知らされることだらけだ。

それでも前を向くことをやめないことに意義があるのだけれど、その重みが特別なものだと、この少女は思っていない。

「…とりあえず、冬休みが始まる辺りで話してみようと思うわ。
あんまり深刻にならないなら、それが一番だけど…いざという時は、一緒に頑張ってくれるって、信じてるから」

頼の方に、普段よりずいぶん血色のいい顔で、柔らかな笑みを向けた。

「………。」

「幸せ」のタイミングが揃う。「幸せ」の意味が重なる。
これは、「一人」では味わえないこと。

胸がじんわり暖かくなるのを感じて、蘭はあたたかな息を吐いて、ティーカップに口をつけた。

八百万 頼 >  
人としての強さ言うかな。
心が強いと思う。

(前を向き続けられるのは十分強い証拠であると思う。
 そこは誇っていいだろう。)

ん、わかった。
勿論頑張らさせていただきまっせ。

(ぐ、と力こぶを作るようなポーズ。
 自分を信じてくれている彼女に応えずして何が恋人か。
 その後も引き続きのんびりとした放課後を過ごすだろう。
 認めてくれるといいなと、まだ見ぬ彼女の家族へと願いながら。)

ご案内:「静かな喫茶店」から八百万 頼さんが去りました。
美澄 蘭 > 「………そういうもの、かしら。」

ヒトは、往々にして自分を基準に考えがちである。
腑に落ちない顔で、紅茶を静かに啜る。

「………うん、信じてるから」

「頼りにしてる」という言葉は安易には使いたくなくて、蘭はそのように言い換えた。

初冬の午後、空の淀みを打ち払うかのような、暖かな時間が過ぎていった。

ご案内:「静かな喫茶店」から美澄 蘭さんが去りました。