2016/05/21 のログ
ご案内:「落第街 廃墟」に五代 基一郎さんが現れました。
ご案内:「落第街 廃墟」にレイチェルさんが現れました。
五代 基一郎 > 落第街にある一角。落第街がそも成立する前に作られていたのか。
落第街が出来てから作られたのか。
そも書類が残っているかも怪しいその場所に夜。

五代はレイチェルを呼び出していた。
涼しやかに流れる風に、肌でわかる程度の不気味さを漂わせた……
その公団跡地に。

レイチェルが到着すると、そこで適当な空き瓶ケースに腰かけた五代を見つけることができるだろう。
その五代がしていることとは、ここの雰囲気に似つかわしくなく
首輪のついた大型犬と戯れている……というものだが。

レイチェル > 夜の落第街。
吹き抜けていく涼しげな風。ぼんやりと辺りを照らす月の光。
穏やかでありながら、何処となく異様な雰囲気が漂っているようにも感じられる。
ここが廃墟であるからこそ、余計にそう感じるのであろうか。
レイチェルには少しばかりの懐かしさを思い起こさせる風景だ。
人が離れ、寂れた廃墟。
見回りですらこの場所に来たことなどないのであるが、
雰囲気が何処となく、かつて自分の駆け回っていた場所に似ていた為に、
何となく、そう感じていたのである。

「よ、先輩……こんな所に呼び出しだなんて、びっくりしたぜ……って、犬?
 犬の世話しろってんじゃねーだろうな?」
場の雰囲気にそぐわぬ軽い挨拶を、ひら、と手を振って見せながら五代に向けて。
戯れている犬を見れば、冗談っぽく笑って見せる。

五代 基一郎 > 「こんばんは。でいいのかな、こういう場所に呼び出した後というのは」

そう言えば懐からキャッシュカードを一枚だして……犬が咥えた。
カードを咥えた犬はそのまま振り返りもせずに去って行った。

「今のは人払いさせたヤツの使い魔みたいなもんでね。その礼を渡していたわけだよ。」

その処理も終わり、待ち人も来た。
よっこいせと立ち上がればその椅子代りにしていた空き瓶ケースから、いつもの黒猫が
付き従うように現れ、また空からは大鳥が現れ……崩れた遊具のジャングルジムに降り立った。
黒猫は男を守るように、大鳥はここらを警戒するように。

「それじゃ行こう。色々口や資料で説明するより実地で見た方がレイチェル君なら
 理解が速いだろう。正義の味方の仕事をさ」

その言葉を皮切りに黒猫は五代を先導するように歩き始め、それに続くように五代も歩いていく。
その歩みは公団の一棟へ向かっていく。向かっていくが……レイチェルにはわかるだろうか。
その先からは、まるで蛇口からゆっくりと漏れているように異様な雰囲気が流れ出ていた。
公団全体に広まるには薄いが、蛇口の元に辿るようであればその人を寄せ付けない”気”を感じ始めるかもしれない。

「この先、何がいると思う?」

レイチェル > 五代の問いかけに対しては、ふっと微笑で返し。

「成程、合点がいった……やっぱ人脈広いんだな、さっすが先輩」
去っていく犬の姿を見送りながら、レイチェルは肩を竦めた。
黒猫と大鳥にちらちらと目をやりながら、五代の後ろについて歩き始める。
レイチェルの両手は自然と、クロークの内に滑り込む。
必要であればすぐにでも、『両腕を前に突き出せる』姿勢だ。
何となく感じる異様な雰囲気を前に、レイチェルは一つ小さな息をついた。

「さてな。鬼? 悪魔? 何だかしらねーが、碌でもないものに変わりはねーだろ?
 さっきからどうにも、嫌な気配がしてるしな」
風紀委員になる前、この世界に来る前のレイチェルは魔狩人である。
故に、この手の危険そうな気配には敏感だった。

五代 基一郎 > 「まぁこういうことしてるとどうしても必要になるもんでさ。」

こういう出費と、ほぼ無償のような活動であるからして
あまり懐の状況はよろしくないのだが……それはさておき。

公団の一棟の中に入ればその気配はより一層強くなっていく。
階段を一つ上がっていけば……それだけ濃厚な”魔”ともつかぬ気配はより強くなり
4階。そこに到着すればほぼ温泉の源泉から湧き出るガスの如く。
息を詰まらせるような気が漂っていた。

「正確には……いやまだ見ていないから言うのもあれだけど。
 碌でもないもののでは……間違いないのんだが」

歩いていけば、公団の一部屋……ではなく。
部屋を三つをぶち抜いた場所が目指していたところらしく。
五代は腰に割けていた大型の懐中電灯……マグライトを取り出して、その中に向けた。
中のものを探すように揺らされ、そして目的のものが見つかれば……そのままそれに向けて
そのものに向けて歩いていく。

「こういう形は初めてみるな。新手のようだな。」

こっち。とレイチェルへ中へ入るよう促し呼びかければ。
そのぶち抜かれた壁の先に見えるだろうか。
大型の異形と言うべき外見の異邦人が、巨木の中に埋め込まれるが如く
挟まれ同化し、息絶えている姿が……

「異邦人だから死体の経過状況がわからないのがいつもの難点だな……」

レイチェル > 「随分と濃い気配だな……」
異様な気配は、レイチェルにとって既に肌で感じることが出来る段階にまで来ていた。
階段に一歩一歩、足をかけるその度に、身体が重くなっていくような錯覚を覚える。
久しく感じていなかった感覚だ。その気配を前にしても、レイチェルは戸惑うことなく
五代の後をついていく。
ややあって、4階へ到着。
「やれやれ、これまた厄介そうだな」
凄まじい勢いで押し寄せる気に、一つ溜息。

「……新手?」
促されるままに、壁の先へ目をやるレイチェル。
そうしてそこに広がっている光景を目にし、柳眉を顰める。

「こいつは……一体、何なんだこれ?」
彼女は顰めた眉をそのままに、五代の方を見やって首を傾げるのだった。

五代 基一郎 > 「あれが使われた場所は大体そうだな、数日もすれば霧散するのが常。」

大体証拠らしい証拠は残らないし、そも見つけ出せるような場所では使われないのだと
説明しながらレイチェルの質問への答えを自分の言葉で自ら導いていく。
順序を些か考慮しつつ、であるが。

「使われたのさ。特殊な武器を。こんな異形の異邦人を……こんな風に殺せる者をさ。
 これはその痕跡だ。恐らく切断面か何かしらから植物を……なんだろうけど
 こんな植物が生えてきて殺されたみたいなのを初見で解説するのは難しいな。
まぁそんな風に知らなければ異能によるただの変死。異能者同士の戦闘からので特に触れられることもなくってところか。
 いや原因知ってもどうしようもないんだろうけどさ。」

異能とはまた違うそれ。それによってこの島の一部で秘密裏に行われていること。
それらを説明するために、しばし言葉を選び。
選んでまた、話を始めた。

「結果だけから簡単に言うと、そういった特殊な武器をこの島に持ち込んで
 異能者ではなく、異邦人相手に運用実験している連中がいるのさ。
 組織だってね。目的はここでの実験結果の反映をしてのさらなる開発なんだろうけど
 裏の世界の組織がここまで出来るようになっている、とは聞いてなかったな……」

マグライトで照らし探って行けばわかるが、樹齢としてほぼしっかりとした年季を携えた
樹木の中にあり、樹木が生えているようにも見えている異形の死骸。
ただの異能による殺人には見えもするが、些かそう片づけるには難しくも思える。

レイチェル > 「特殊な武器、ね……そんなもんが、この島に持ち込まれているとはな。
 いや、武器が持ち込まれてるくらい今更不思議な話でもねぇ……
 が、こいつは異常だぜ」
異能がありふれている世界である。不可解なことがあれば、まず異能の可能性が疑わ
れることだろう。レイチェル自身、この惨状を一目見た瞬間、異能の可能性を疑って
かかったのだ。

「裏の世界の組織、ね……。まぁ、一個人がどうこう出来るような代物じゃなさそう
 だしな、こりゃあ……」
そう言って、ふむ、と。顎に手をやって死体を見やる。
見れば見るほど、奇怪な死体だ。

「で、先輩が前から言ってる正義の味方ってーのは、
 その裏組織ってやつをとっ捕まえる為に戦ってる、とか……?」
再び視線を五代へと戻し、レイチェルは率直にそう尋ねた。

五代 基一郎 > 「前例から参照しても、ほぼ間違いなくだがこれは”聖遺物”を使ったものだ。」

ライトを消して、これ以上ここで見ていても仕方がないから出ようと
伝えて外に出る。
実際司法的な仕事で、風紀の者として来ているわけではない。
調べる道具も調べる権限もないものだからモノは見たわけだし
ここにこれ以上いる必要はないのだ。
それにあまり長居しても体に悪いだろうと……

無論、まだ調べたいのならば調べることもできる。
その場合は五代は廊下に待機しつつ話すわけだが……と
廊下の窓を適当に開けて外の空気を流す。流してもあまりこの”気”の濃度が変わったとは思えなかったが。

「”聖遺物”というのは、ようはこの世界の伝説上の武器……とされていたものなんだ。
 それが大変容の時に再び現れた。それらは大体その伝承があった土地の人間が管理したり
 組織だって回収されたりしたんだけれども……一部は流出し、裏の世界にまぁ流れた。
 その流れたものを集め、兵器化して実用の段階まで引き上げようとしているのが……その組織なわけなんだが」

窓枠を背に、その死体を見ながら話を続ける。
ここがある種の肝であるように。

「俺は島の外にいた時は、特に気にすることもなく戦えていたが
 この島では勝手が違う。島の外のそういった勢力”アンノウン”に対してどうこうできるものが整えられていないんだ。」

風紀委員らが機能していない、ということではない。
本来学生自治であるのもあり学内や島内のに対して活動しているのが風紀だ。
だが島外の……学生ではなく”大人の”組織が相手ではまた勝手が違う。
加えて言えば、レイチェルの言うようにとっ捕まえてどうするのだという話もある。
とっつ構えて……反省文など書かせるのだろうか、等だと説明する。
故に風紀としてではなく、個人として頼むことになったと。
風紀として動けば表面化させることで望まぬ方向に面倒事になるという部分もあるのだが。

「連中の目的はここで運用できる兵器にし、外で売り出すことだ。
 俺は外では実験できる段階で潰すよう戦っていたし……この島でも実験しにくいように妨害してたんだが、って所か
 まぁ排除しなくても、壊したり邪魔するのが目的みたいなものでさ。」

レイチェル > 「聖遺物だぁ……? 大仰な名前が出てきたもんだな。……いや、だがこいつを
 見る限り、そう大袈裟って訳でもねぇか……待った。一応念のため、『見てみる』」
そう言って、眼帯をぱちりと指で弾き、その下にある機械眼を外に出す。
右眼に迸る機械光が一際輝き出し――。

【走査《スキャニング》――】
対象の外部、内部を、レイチェルの右眼が文字通りスキャンしていく。
怪しい点が無いかどうか、注意しながら。


スキャンを続けながら、レイチェルは語を継いでいく。

「しかし伝説上の武器、そんなやべーもんが、悪意ある人間の手に渡りゃあ……ま、
こういうことが起きちまう訳か、こんな運用実験してるとなりゃ、放ってはおけねー
よな……」
溜息を一つ。胸の内に燃える確かな怒りを感じながらも、口調は冷静に。
走査、分析を続ける。

「学園都市、だからな。結局は、学園内部から起き得る事態に対してどうこうする力
 しか備えられてないってのは、まぁ頷ける話だけどよ……」
五代の話に了解をする。
成程、確かにこれはとっ捕まえるだとか、そういうレベルの話ではないらしい。
風紀でなく、個人として頼まれたのはそういうことか、と。
理解したレイチェルは頷く。これは、学園の枠を超えた問題だ。

「その筈が、こうやって実際に事が起きちまってると……そりゃ、何とかしなきゃ
 ならねーわな。島の中でこんな事が起きてるとなりゃ、放っておけねーよ」
それは、風紀として、ではなく。レイチェル・ラムレイ個人として、である。