2016/05/22 のログ
■五代 基一郎 > 「実際には、その伝説上とされた武器を使える人間なんてそうはいないんだが……」
そう。伝説上の武器は、使えるものの血を受け継ぐ者であったり
そもそも人間でもないような存在が使っていたものがいくら大変容があったとしても
兵器として使えるはずがない。
だがそれを可能にしたのは、科学や異邦人により進めることとなった遺伝子工学と機械工学の成果である。
それらにより、ソフトウェアである聖遺物は構造模倣或いは分解結合され先鋭的な機械兵器に
ハードである人間は、その本来の使い手に近い近似値になるように遺伝子治療を受けさせることで
模倣品であるが、かつて伝承上の存在に近い戦士にすることができるようになった。
最もそれらは一部の公的機関はさておき、ごく少数に進められていたはずなんだがと
この世界の住人ではないレイチェルに伝える。
それらは、いわば異能を持たない人間であったり協力な異邦人と戦う有力な武器となるからだ。
公的機関の一部では実装を準備している所もある。
在る種の奥の手、切り札となるものだったのだが……
スキャンを行ったレイチェルには開先されたデータを知ることができるだろう。
異形の異邦人は、それなり以上に……ある種戦うために体を作っていたようなものであったこと。
またその体から体液はごく少数しか見られない。
いやこのような死体となっても体液の流出が見られなかったことがわかる。
残された死体に血の一滴の流出もなかった。
その代りに……表面からはわからないが、その体の隅々まで植物の根が張っていたことが
解析したものから読み取れるだろう。
「もちろんその対策のために本来俺がいる部署は設立されたんだが
まぁいかんせん人の手も足りないしかといって大規模にどうこ呼ぶわけにもいかないわけでさ。
そういった島の外から介入してくる組織はいくつかあるが、前から追ってる聖遺物を
兵器実験している組織は一つしかない。
名を”ブラックゴースト” 死の商人……武器商人の組織だ。
大変容以前からこういった”通常の兵器とは異なるモノ”を研究していたらしいが、勢いづいたのは大変容以後からと言われてるな。
聖遺物の兵器実験、そして量産化し各地で起こっている異邦人や異能者との戦い……
或いは異邦人コミュニティとの紛争に売り出すのではと見られている。
何にせよ、これらが量産化されブラックマーケットに流れるようになれば……おもしろくはないことに、なるな」
だからこそレイチェル個人に頼んだのだ。
もちろんレイチェル自身には問題がないわけではない。
元々隠密的な行動や、組織的なことや社会的な配慮で動くタイプではない。
だが五代の思う、行っている戦いから……正義の、正義の味方という在り方には一番適正がある。
時代と共に移り変わる社会的な正義の味方でもなく、誰かからの賞讃でもなく。
英雄のような称号でもなく……
ただ一人の人間として戦える存在を。
ただそれらは口に出すことはない。単純な存在でありながら、複雑な立ち位置を要求されるそれの、にはまだ遠い。
いつかは理解できるだろうとは思いながらも……
「そういわけだけど、引き受けてくれるかな。
残念ながら風紀と違ってお給金は出せないけどさ。」
■レイチェル > 「成程な、そんなとんでもねぇ代物が、誰にでも使えるようにされちまったら……
起きるのはそりゃ大惨事だろうよ。
伝承の中で暴れたような奴らが、どんどん出てきちまったら……想像するだけで
溜息が出るってもんだぜ」
軽い口調ではあるが、事態の重さはレイチェルにしっかり伝わっている。
真剣な表情で、走査《スキャニング》を続ける様からも、窺えるであろうか。
「こういう時に便利なんだよな、サイボーグってのはよ」
【――分析《アナライズ》】
レイチェルの右目に迸っていた光が弱まる。
「身体の隅々にまで植物の根が張られてやがる……
こいつを使われたらと思うと、ぞっとするぜ流石に」
レイチェルは分析結果を静かな口調で五代に伝え、
再び眼帯の位置を戻せば、ふぅ、と深く息をつく。
「表立って動く訳にはいかない、ただ結構な戦力が必要。
となりゃ少数精鋭で行くしかねぇ、って訳だな」
眼前のこの男がどれだけの戦闘能力を保有しているのか。
知る術はないが、レイチェルはたまにそんな疑問を頭に浮かべることがある。
かなりの腕なのは、間違いないだろうが……。
「大変容の混乱に乗じたって訳かね。ブラックゴースト……か。
島だけの問題じゃねぇ、この世界の問題だな、そりゃあ」
レイチェルはすっと目を閉じた。
「給金はねぇ、見返りはねぇ……か」
肩を竦めて見せるレイチェル。
「答えなんて聞かなくても知ってるだろ?
オレがこんなの放っておける訳がねぇ。世話になってる奴らが危険に晒される
可能性があるんだ。金払ってでも動くぜ、オレは」
冗談でも何でもなく、その眼差しは、真剣そのものだった。
「――是非とも引き受けようじゃねぇか、風紀のオレでなく、狩人のオレとしてな」
■五代 基一郎 > 「逆に言えば、伝承の中で暴れていたようなのをとも思わせるのが今の世界だろうな」
その言葉だけ言葉のイントネーションを落とし
どこに話すわけでもなく……言葉として出した。
「ぞっとするが、それと戦うことになるだろうなのは君なんだ。
それなりの覚悟はしておいてくれ。何せ君も異邦人だしな。
しかし植物化か……そこから導きだせるとは思うが」
伝説上の植物、植物の名前を持つ武器か、それとも……
絞れそうなものだが今ここで何を言うのは難しい。
帰ってから精査になるだろうが……
そして
レイチェルから返事が返ってくれば……それは望んでいたものであり
また、来ると予感していた頼もしい答えだった。
「……ありがとう。魔狩人レイチェル・ラムレイ。
俺は君を歓迎しよう。よろしく頼むよ。」
ふっと……口元が少し歪む程度ではあったが。
滅多に。他人に笑顔を見せない、笑うことのないだろう男は
その答えに満足するように笑った。とても小さなものであったが。
「さてそれじゃ引き上げよう。長くいても体を悪くする。
君と違って俺はただの人間なんでね、まぁ防護はしているが……
あんまりここにはいたくはないもので。」
と、廊下から階段に向けて歩きはじめ……
「あぁそういえば言い忘れていたけど。
俺は今異能の類が使えないから、この類と戦う時は君に一任するよ。」
戦力としてアテにしないでくれ、と
先程レイチェルが浮かべていた”この男の戦闘能力”について
さらりと、水でも流すように……恐らくレイチェルにとって想像外のものを答えて歩きはじめた。
それがどういうことかをレイチェルに明かすのは、次回となるだろう
■レイチェル > 宙に投げかけられた言葉には、敢えて口を挟むことをせずに、
眼帯の下で先ほど分析した諸々のデータを眺め、それらをひとまず保存した。
「ああ、覚悟ならできてるぜ……この世界に来る前から、な」
かつては、いつだって死と隣合わせだったのだ。
今更、何を怯えることがあろうか。
怯えることがあるとしたら、それは大事な存在が目の前にあるこの死体と
同じような末路を辿ることだ。
目の前の男が見せた笑みに、きょとんと目を丸くするレイチェル。
この男もやはり人間、笑うことはあるのだな、と。
そんなことを思いながら、引き上げよう、と言われれば頷く。
「そりゃ初耳だが、どういう……いや、まぁ、いっか。またの機会に聞くことにするぜ」
そう言って、大きく伸びをする。
五代先輩は戦えない。となれば、その分自分が頑張るしか無い訳で。
不安はない。この男のサポートがあれば、実力を発揮出来る。
自分は最善を尽くすまでだ、と。
そんなことを思いながら、レイチェルは再び歩き出すのであった。
ご案内:「落第街 廃墟」から五代 基一郎さんが去りました。
ご案内:「落第街 廃墟」からレイチェルさんが去りました。