2016/05/25 のログ
■綾瀬音音 > (男の言葉に一つ頷く。
とは言え同じ血統のもの全てが異能を持っているわけでも無いとも付け加えて。
続けられる話を真剣な眼差しで見つめながら、聞く)
ええと、イエス・キリストとか卑弥呼とか、そこら辺の人ですね。
言ってしまえば“神話の時代”の人的な。
それは歴史の知識、とは違う気がしますが知っています。
大変容前は異能とか魔術とかって秘匿されてきた“能力”ですからね。
増えたのか表に出てきたのか、はちょっと悩むところですが、両方かなぁ、って気は個人的にはします。
普通の人とは“異なる能力”、かぁ……。
(大変容――と呼ばれる出来事は勿論歴史の事実として知っている。
その前の世界のことも勿論知ってる。
だが、だからこそ、その前の次代に秘匿されていたことが多数あることも――知っている。
自分が――“家族内で1人異能を持ったこと”は別として、血統に疑問を持ったことはない。
綾瀬音音と言う異能筋の少女にとって、異能を持って生まれたことは単なる遺伝とさして変わらないのだ)
……何となくですが、分かります。
時代が流れる中で、忘れられたもの――と言うか、廃れてしまったもの、と言うか。
だけれど、使えた、と言う事実は身体というか遺伝子? の何処かに残ってる、みたいな。
(自分には考えたこともない話なので、噛み砕き考えながら言葉を紡ぐ。
異能、と言う考えは様々だが――結局結論が出ていないが現状なのだろう。
神から、神話の時代から受け継いだ力なのか。
それとも突然変異なのか。
答えは見つからないが、異能持ち、と言う人種は今ではそこまで珍しいものではない)
――――――。
…………………、そう、でしたか。
(男の告白を聞いて。
“普通の人間だった”と言う言葉。
12歳といえば小学生か、それこそ極々普通の幸せを甘受してしかるべきな歳頃だろう。
色々という言葉に隠された事実や思いは理解するとは程遠いものだが、その理由であった異能すら失ってしまったと言う言葉に、一抹の寂しさを覚えたのは何故だろうか。
視界に黒猫がよぎるのを見て首を傾げたが、男が咎めないのなら何も言わない。
それから、猫から視線を男へと戻して。
最初の話と、繋がった)
人々が当たり前に、まだ少なくとも“身近だった”時代の力、って言うこと、ですかね。
――混沌の塔、って、
(バベルの塔。天まで届く塔を建設しようとし――神によって最後には言葉を乱され、人々を全地に散らしたという旧約聖書の記述。
真っ先に浮かぶのはそれだ。
勿論、その塔がなんであったかなど少女は知る由もない。
然し――神話の時代には何があってもおかしくないのだ。
力を与える塔があったとして。
大変容、異能がそれこそ異端であった時代にも、“力”を受け継いできた家系があったのと同様に。
だから、頷いて、男の言葉を聞いて、それからその男の持つ“異能”を聞く。
それは――それは、とてもとても、辛い能力なのではないだろうか。
眉が寄ったのは、訝しいと思ったからでもなく、それを知った人間が善良でない時にどういう行動に出るか、を考えたから、である。
おいそれと聞いていい話ではないし、話してもいい話ではないのは流石に理解できる。)
…………ええと、ソレは輸血とか、吸血、と言った意味で良いんですか、ね……?
(血を受ける、と聞かされて真っ先に浮かんだのはその二択である。
頷きながら確認するように口にしてから首を傾げる。
何かあった時、と言われれば可能性は幾らでも思いつく。
それならば泊りの準備も合点がいったとほんの少し安堵と、大きな緊張が心を占める。
然しながら。
引き返すという選択肢は、浮かんではこなかった。
何処にも行けずに、居場所も探せないのならば――そちらのほうが、これから先待ち受ける非日常よりも、ずっと恐ろしい。
正しい選択なのかと訊かれれば、多分一生、答えは出せないだろう。
猫の鳴き声は、少しだけ、耳に痛い)
■五代 基一郎 > 「そういうことだね。俺のはまだ……所謂言葉が別れていなかった時代の力というのかな。」
最も一部地域の伝承のようなものだし、大層な話じゃないかもしれないが。
神が言葉で世界を産んだ時に用いていた言葉がまだ残っていた時代のものだと。
人と人らざるものが近かった、何かを介して近かったかそれとも
同じ場所にいたのか。
どの地方にも、やはりそのようなそのような時代は存在しており
またそれはそれらが失われて行く中で忘れ去られたものだ。
大変容は起きるまでは……
■黒猫>「私は、何も言いませんが」
「わかっている。十分にさ。」
黒猫が口を開く。人の言葉を。何も言わないと言いつつも、口を出してきたのはそういうことなのだが。
そう……綾瀬音音が思う様に。善良な人間でない場合、如何なる手段にでるか…
そして何をするかは重々身を持ってしっていた。
自らの血を異能を持つ戦士を増やすために用いた者達。
そしてその……異能の戦士達と戦い、どうしてきたかをも。
この護衛の黒猫も知っていた。
だからこそ、その血を与えることをよくは思わなかった。
「まぁ、なんというか傷口に俺の血を入れることになるかな。
今回はこの黒猫……俺の護衛なんだが、こいつに引っ掻いてもらって……さ」
不服なことの手段に使われるため、あからさまに不機嫌に鳴いて黒猫は応える。
尻尾が若干立ってるのも見てわかるだろうか。
抱え上げようとする男の手を引っ掻いた。
左手の親指に、血が滲む。
黒猫は、綾瀬を見た。
「……それと、これで得た力にリスクはない。体が弱くなったり
使う事で死に近づいたり……ということはない。だがこれは覚えて置いてほしい。
普通ではない力を手に入れるということは……力には、力を持つリスクというものが存在することを。」
綾瀬音音という少女でいえば。
そう……もう、普通の人間には戻れない……ということだ。
それは何を失うよりも、恐らく何よりも大きなリスクだろう。
その、失ったものは二度と戻らない。やり直すことは出来ない。
やるか、やらないか……そう未練がましく最終確認のように出しかけた言葉は
先程食べていたものらよりも重く……飲みこむのに苦しみがあった。
この責任は選択した彼女にではなく自分にあるべきだと。
■綾瀬音音 > (時代は流れる。
神代の時代から人間の時代に移り、更には大変容が訪れ世界はまた新たな扉を開いた。
それだけのことかもしれない。
それだけだが、そこに生きている人間は――確かにいて、悩んだり笑ったり苦しんだり喜んだりしながらその時代を生きている。
そして、今を生きている自分たちは。
忘れ去られた時代を背負うものもいれば、昔秘匿された能力を受け継いだものもいる。
もしかすれば、それだけのことかもしれない。
それだけじゃないかもしれない。
答えは幾らでも、ある。
人の数だけ)
………ん、
(喋った猫にびっくりして瞬きを数度。
それから困ったように、曖昧に笑う。
男と猫の関係は知らないが、親しい間柄なのだろう。
――これは、自分のエゴだ。
ソレが解っているから、謝罪も何も口にせずに、吐息のような声が一つ、落ちただけ。
勿論、男がどれ程の経験を、苦悩をしてきたなど察することは出来ないが、想像くらいは出来る。
やはりそれは辛いことだと思うけれど、それでも。
それでも――自分は黄昏を、行く)
……はい、解りました。
うぅ、猫ちゃん大丈夫……?
(あからさまに嫌そうにしている黒猫に不安そうに尋ねてから、引っかかれて血を流す男の親指を見て、それから黒猫の視線を受けて、頷いて、自分の腕を差し出した。
歳相応に細く、傷跡のない腕を。
リスクを告げる男の言葉に目を一瞬伏せてから、それからまっすぐ前を見て頷いた。
普通ではない力は、元から持っていた。
勿論そういう意味ではないと解っている。
力を持つリスク――それは、例えば拙い想像で男が体験した内容を自分もたどる可能性があることであり、その他にも困難や苦しみがあるということであり――それは多分、自分が恋して愛した少年が、一番望まなかったものだろう。
そして、また自分の普通でありたかった願いを捨てるということだ。
もしかすれば、一番残酷に。
解っていても――いや本当は理解などしていなかったのかもしれないが――この少女は頷いた)
……………大丈夫ですよ。
恨んだりはしませんから。
(へらっと。
いつものように場違いに笑って。
何かを飲み込んだ男に向けて。
それで軽くなるとは思えなかったけれど――差し出したのは彼でも、それを手にすると選んだのは自分でもある)
■五代 基一郎 > 居場所はないかもしれない。
先日の綾瀬の言葉をうけて……自分も考えた。
自分に居場所はあっただろうか。
12歳の時に失った後……ただ歩き続けていた、戦い続けてきた時
今もそうだが……自分に居場所はあるのだろうか。
答えはでなかった。
希望的な言葉を口にするにはもう心は重かった。
だが……一度傾いたのなら、それを見てしまったのであれば
この世界では力が無ければ……居場所のない普通であっては
消えてしまうことが、残酷な真実であることは断言出来た。
消えないための、という消極的な回答かもしれない。
そうなのだろう。だが……消えるより、消えるのを知っていながら何もしないよりは
どんな未来が待っていようといいと思ったから……
■黒猫>「私は主の望むままに。」
そうして黒猫は、綾瀬音音という少女の腕を引っ掻いた。
爪痕が傷を作り……赤い線が滲む。
綾瀬の言葉は、おそらく。どんな恨み言よりも重いモノである。
きっと彼女が想像するよりずっと……見えないようにされてきた、見ないで済んだ世界を見ることになる。
だからきっとこれが戒めになる。
きっと自分を恨まないと言った少女に……彼女自身と、世界を恨ませないことを
誓うように。
「……すまない」
そして、男は血判を押すように……その親指の血を
綾瀬の腕についた爪痕に押し付けた。
押し付ければ、血が入り込み……瞬く間にその傷跡を塞いでいく。
生まれたままの肌へ時間を戻して行くように……熱と共にその血が
異能が、力が……綾瀬音音という少女に入り込んだ。
■綾瀬音音 > (力とは。
力がある、と言う事実=幸せだとは限らないことはそれは知っているし、理解している。
それでも、もし黄昏を、もしくはそのまま闇に傾いたとしても歩いて行くには力は必要で。
何処かにあるかもしれない居場所を探す、なんて言う青い鳥を探すような心もとない、もしかしなくてもちっぽけなそんな理由で、少女は力を、異能を欲した。
背負うことになるかもしれない苦しみや辛みを予感はすれど今は知らないまま、男の苦悩も深くは知りえぬままに、腕を差し出して――その手に黒猫の傷跡を刻んだ。
声は出ない。
この程度の痛みなら、無いと何ら変わらない)
―――――、
(謝罪の声に、いいえ、と言う言葉は上手く声にならなかった。
それがどれ程の苦悩であるのか、それをさせてまで自分にその価値はあるのか――それも解らないけれど。解らないけれど、それでも、そうして欲しい、と頷いたのは自分なのだ。
傷口に押し当てられる親指の血液。
血と血が混ざり、体の中に入り込む――)
―――ッ、は、あ……ッ、んっ……。
(傷が治る感覚というのは、覚えがある。
これよりももっと強い痛みを、痛みが消え癒えていくという感覚はもう数えきれない程に経験してきている。
だから、上がったうめき声は――傷を塞がれ男の異能が自身の体を書き換えていく様な、そんな、異様な熱を伴う感覚からだ。
視界が歪む。
汗が吹き出す。
呼吸が上手く出来なくて、喘ぐように胸を上下させ。
それでも、床に手を付いて、体を支える。
辛いというよりは――猛烈な違和感。
外部から入り込んだ力と元々自身が持っている力が親和しようと、それを行使できるようにしようと異能の回路を強制的に作り変えていく――)
あつ………ぃ、
(譫言のように呟けば、汗が滴り落ちた)
■五代 基一郎 > 「今日はもう休むといい」
そう言えば聞こえているかもどうかもわからないだろうが
ローテーブル越しだった体を動かし
呻き……畳に手を突く綾瀬の肩に手をやって倒し
そのまま適当に折った座布団を枕にするかのように仰向けの姿勢で寝かせた。
「今日一日、それは続くと思う。聞こえているかはわからないが……」
その後には料理を下げてもらう、だの
旅館にいる間は黒猫を護衛に付けさせるから、やら
何かあったら黒猫に言えばいいとか
閉まる時間まではいるだの……言ってはいたが、それも今の綾瀬には聞こえているかどうかわからないだろう。
ただ、額に冷たい感触が伝わることが幾度かあり
目が覚めるころには……温くなった手ぬぐいと
先程言っていただろうことのメモ、そして……近くに佇む黒猫を
見つけるだろう。
その、目覚めた時が一日のうちのいつかは綾瀬次第であったが。
男が帰ったのは旅館が閉まる……黄昏時であった。
■綾瀬音音 > (ぐわんぐわんと色が反響する。
なにがきこえているかわからないし、なにをされているのかもよくわからない。
気が付いたら天井が見えていて、そうしたら少し楽になったので、そのまま瞼を落とした。
何やら言われている気がするが、兎に角体が違和感で一杯で、それが現実の音なのか幻聴なのか、さっぱりわからない。
ただ不快な音ではなかった。
その後は意識は戻ったり失ったりと体力が消耗するような状態が続いたが、時折感じる冷たさには心地よさそうに呼気を落とすのみで、言葉を発することはない。
目が覚めたのは深夜0時を回る直前で、その頃には熱っぽさも大分収まっていたが、以前とは何かが――力が確実に変わっているのを感じ。
それに苦笑のような、困ったような、心もとないような――満足するような、自分でも良く解らない笑みを浮かべてから、黒猫に手を伸ばして撫でようとしつつ、名前などを尋ねてみよう。
体を起こせるようになるまではもう少し掛かりそうではあったが、今は夜。
黄昏の色も朝の色も闇の色も何も知らないまま、再び眠ろう)
ご案内:「旅館」から五代 基一郎さんが去りました。
ご案内:「旅館」から綾瀬音音さんが去りました。