2016/07/30 のログ
ご案内:「落第街 廃墟の宗教施設」に五代 基一郎さんが現れました。
ご案内:「落第街 廃墟の宗教施設」にレイチェルさんが現れました。
五代 基一郎 > レイチェルが落第街の廃墟郡で戦ってから数日。
五代から特筆するべき連絡事項は無かったが、ある日連絡があり
この場所に呼び出される。

何がしかの宗教施設……祈祷をささげるか、裁断か
何がしかの巡礼の場所であったことは確かだが
それをうかがい知れるような程度ではなくなってしまった場所……

「この前はお疲れ様。十分成果らしい成果になってたじゃないか」

草木が侵食し、もはや見る影もなく荒廃した場所。
そこにレイチェルを呼び出し、またその呼び出した人間は崩れた石段に
腰かけて瓶の炭酸飲料飲み物を飲んでいた。

「一度戦ってみた感想とかは、あるかな」

怪鳥のサマエルは崩れた礼拝対象の石造の首の上に降りていた。
太陽の光もない、夜の落第街の廃墟。
そこでは今も残る熱量ではない何かの淡い光が施設内を照らしている。

レイチェル > 宗教施設へと足を踏み入れるレイチェル。
今やその面影を失くしてしまった施設を前に、少しだけ息を漏らす。
何か思う所があるのだろうか、その表情から窺い知れるところではない。


「そーかな」
全く手入れのされていない荒れ放題の草を靴の下に置いて、同じように五代の隣、石段に座る。

「戦ってみた、感想ね……」
一度目を閉じて、戦いのことを思い出す。
さて、何を話したものかと数瞬思いを巡らせた後、
五代の顔を見やって口を開いた。

「まぁ、なんつーか……自分の立ち位置をよりはっきりと認識することが
 出来たっつーか……修行が無駄じゃなかったってこと、改めて感じる
 ことが出来た一戦だったな」
感じたままにそう口にして放った。

五代 基一郎 > 「人は一人では生きてはいけない……これは何も生活基盤のことだけじゃない。」

荒れて雨水のたまりになっていた”窪み”に入れられていた
未開封の瓶を取り、隣のレイチェルへよこす。

「生活基盤を誰かが支えているから生きている、それがわかりにくいだけだ……
 というものではなく。誰かと自分を比較することで自分が何者かを定められる。
 レイチェルで言えばこの世界にいる人間や、この世界に生きている人間と比べたことで
 自分が何者かを自覚できる。この島の土地柄や他の要因もあって
 迎え入れられる側だった……この世界の人間と同じと扱われたから自覚することが出来なかった。
 人は本来的に同等なものなどないのにな。多くの者がそれを知らず
 知ろうともせずに暮らしているわけだ……」

行政上で言えば本来異邦人街にありそうなこの場所が何故ここにあるのか。
何故ここにあり、荒れ果てているのか……
そして顔を上げるようにサマエルがいるだろう
その礼拝対象の像を見やり、言葉を続ける。

「昔より人が信じるものなんて人それぞれだ。
 人が信じるもの、人の考え、人が住みつく場所……その結果、諍いとして戦いが起きる。
 この世界なら大変容が起きる前からずっと続いていることだ。
 世界が一つになり、平和になりましたなんてことはなかった。
 この前の戦いもその一端だろうかな。色々事情はあろうが、犯罪とは別の面が強い。」

もちろん、経済的なものに根差したものはあるだろうが
それとは別にそれだけのことが行われる理由はあるし背景もあると

「抑止や治安維持とは違うイデオロギー、思想に根差したもの……犯罪といえば犯罪だけどさ。
 自分の立ち位置が、自分の居場所や自分の考えの拠り所の為に戦っている……
 大きな要因がそれさ。
 レイチェルが自分の立ち位置がどう、と認識したのならそこから……そうだな
 これから起きることや、これからのことで今までとはまた見えてくるものが違ってくるはずだ。
 自分が出来た、というのかな。それまでとはまた物の見方が違ってこないか?」

レイチェル > 「……生活基盤以上の、他人と一緒に居る意味っつーのを……まぁ、一つ
 学べたのは確かだ」

未開封の瓶をぱしり、と片手で軽く受け取ればしげしげと眺めなどして、
こくりと頷くレイチェル。


「この世界の特殊な環境の中で、麻痺しちまっていたのは確かだ。暗部で、
 自分という存在がどう見られていたか、どう感じられていたか。
 そういったところに目を向ける機会はそう多くなかった。いや、
『無かった』と言っても過言じゃねぇな。二年目にして、というか。
 近頃色々経験してようやく地に足がついてきたのを感じつつある……ってとこかな。
 こいつはお陰様だぜ、ほんと」

かつて、この地で礼拝の対象となっていた像をレイチェルもまた見つめる。
結局何処の国でも何処の世界でも、人間は救いを求めるものなのだな、と。
そして、すっかり寂れてしまっていて、誰も顧みることのないその像を
見て、この地に住まう人々の心の在り様について、レイチェルは思いを
巡らせずにはいられなかった。


「互いに信じるものがあるからこそ、ぶつかり合わなきゃならねぇことも
 ある。そいつは、生きてきた中でオレも学んできたことだ。誰が正しい
 とか、誰が悪いとか。善だとか悪だとか。そういう二元論的な話で何から
 何まで括れるもんじゃねぇだろうしさ」

この前の戦いがその一端だと言われて、レイチェルは二、三度頷く。
あの男と最後に言葉を交わした時も、少しばかりそういう話になった
のを覚えている。


「まぁ、少しはな。全容が見えた、って訳じゃねぇが……新しい風が
 吹き込んで来たのは確かだぜ。少々視界が広がったってとこか。
 自分でもそう感じるぜ」

五代 基一郎 > そこそこ、と場所を示すように……というよりも
これで開けるんだ、という具合で崩れた石の祭壇に置かれた燭台を渡す。
丁度枝分かれしている間にビンの蓋を引っ掛ければいいとか

「それが当然と思う様になれば誰も自分を省みたりしないさ。
 保護されるのが、迎えられるのが当然とされるのがそもそもおかしい話さ。
 他所から来た者はどうやっても余所者でしかないんだ。
 社会制度がどうしようと、人はそうは思わないさ。
 この世界に住む人間も、この世界に来た異邦人も誰かの言葉一つではいそうですかと変わるわけじゃない」

荒れ果てた信仰の場所。
異邦人街ではなく、落第街にあるここは誰かがここで
誰か”達”がここで作らざる負えなかったものであり、作らなければならなかった
救いを求める場所か、心の拠り所を置く場所か。
今やそれはわからない。ここを拠り所としていた者達はもういない。
ここに誰かが手を入れて別の場所にしようとするならば、明日にでも変わってしまいそうな場所。

「そしてそれは必ずしも平穏に行き着くための過程とはならない。
 争いは始まりではなく過程であり結論でもある。それが始まったのならば、もう止めることは根本的には出来ないだろう。
 ならば行き着く先はとなるが……それでも人は争うことをやめることができない。」

空になった瓶を適当に置きながら立ち上がり、礼拝対象の像を見送る。
これこそその行き着く先の結果ではないだろうかと。
詳細を知ることはできないが……人の寄らない信仰対象とは、そういうことだろう。

「そうだな。そうなる中で自分はどうすればいいか……どうしていくべきか。
 それは俺が導くものじゃないだろう。レイチェル自身で答えを出さなければいけないものだ。
 俺とレイチェルは同じではないわけだしさ。
 レイチェルにはレイチェルにしか見えない世界がある。
 それに沿って答えを出せばいい話かな。

 どう、続けられそう?」

レイチェル > 「誰かの言葉一つで簡単に変わっちまうような奴らばっかりだったら……
 そいつは恐怖でしかねぇしな」

そんなことを言いながら、像から目が離せない。
その像の姿は、今やレイチェルの心にしっかりと焼き付いて離れない。
それ程までに。彼女にとってその光景は印象的なものであった。
そうして、彼女の今後するべきことを考える上でも――。

「人が人としてこの世に現れて。そうして初めて誰かを拳で殴ってから
 今に到るまで、争いは続いてる訳だしな。
 今更誰かが連綿と続いてきたそいつを止めることなんて、そりゃ出来ねぇ
 だろうな。普通のやり方じゃ。……なら、争いってものと上手いこと
 付き合っていくしかねぇよな。そのやり方ってのは、具体的に頭に浮か
 んでる訳じゃねーが……」

渡された小瓶を開けるように促されれば。
燭台で以て蓋を引っ掛けて、こそりと開けてみるなどして。

「……まぁ、それでもやってみるさ。乗りかかった船、だしな。
 続けていくぜ。オレはオレなりの考えで、ここから先もこの世界で
 生きていくさ。いつまでかは……オレにも分からねぇがな」
そう言って、石段から尻を離してぐぐぐ、と大きく伸びをしてみせる。

五代 基一郎 > 滅び。

信仰していた異邦人が滅んだのか。
故に侵攻されていたものが滅んだのか。
はたまたその逆か……

本土では、この国では八百万の神と呼ばれるものや考え方がある。
九十九神というものもあるだろう。だが世界はそれだけの考え方で動いているものではない。
何を信じるか、何を尊ぶか、何を……そして……その先には

「そう。一度”真っ新”にするか”焼き尽くす”か……断つ方法なんてそうは出てこない。
 具体的に、なんてまだ出さなくていいよ。出せるものじゃない。
 世界から争いを無くす方法なんて、あるのかどうかも分からないんだからさ。」

それは一種の諦めにも近い達観のような、傍観のような
ただ受け入れがたい事実を受け入れるしかないような言葉で括った。
どうすればいいのか、答えなど出ていないのか……
もう出ているのか。それを明かさないままに

「この先どうするか、どう生きていくか自体決まっている人間の方が少ないよ。
 続けていくうちに考えていい。それもきっと必要なことだし今後の判断の材料になる。

 ……それじゃ次の話をしよう。最近観測されたことだが落第街で
 雨の日に限定された殺傷事件が起きている。狙われている対象が
 異邦人であることから今回もブラックゴーストの聖遺物のテストを行っている者達が絡んでいると見ている。
 具体的な手口だが……」

そうしてまた、次の案件についての説明が始まった。
この世界で異邦人を仇と、敵と見てまたそれらと戦うために兵器を作り出している者達
それらの者達が関係していると思われる事件のことを……

ご案内:「落第街 廃墟の宗教施設」からレイチェルさんが去りました。