2016/08/23 のログ
ご案内:「落第街 セレモニーホール」に五代 基一郎さんが現れました。
ご案内:「落第街 セレモニーホール」にレイチェルさんが現れました。
五代 基一郎 > 薄暗い世界に落ちる雨の中を素早く横切り、歩いていく。
外部から伝い、雨がそれら痕跡を殺すことを幸いに内部へと潜むように進む。
今回のもだがもはやレイチェルに対して指示は不要とばかりに好きにやらせることにして
自分はいつもの通りのように、なるべく安全なところで見守ってるといえばそのままに歩いていく。

落第街にて異邦人のみを狙った惨殺事件がいくつかあり。
散発的な事件かと思われたそれは前回その捜査の先のカジノ場にて
まとまった数の集団が襲撃される一件に遭遇する。

そこで拾った異邦人達がつけていたバッジを調べれた結果。
公的に所属が明らかにされていない異邦人らが集まって作った寄合のような組織であり
実態はその成り立ちからもして所謂違反部活、非合法組織のようなものが構成されていることがわかった。

そしてその組織の会合がいくつか開かれていたらしいが、これまでの例からして
雨の日に襲撃者が出現することを見て会合の日程と雨の日を探り本日となった。

内部に侵入できれば、そこは外部とはうってかわって華やかな世界。
何事に対しての会合かはわからないが作られた異邦のカーペットから垂れ幕
ホールの檀上にあってその下にある特等席にある天蓋、出されている料理までこの世界由来のものとは言い難い雰囲気を放っていた。

たった一つ。
誰もが気に留めずただそこに……ホール中央のテーブルにて何をするわけでもなく
ただ座って佇んでいる……長い武器、太刀を肩に寄りかけた男が一人座っているその場所の雰囲気以外は
何一つこのこの世界の出らしい雰囲気ではなかった。

レイチェル > 落第街のセレモニーホール。
そこへ足を向けるレイチェルと、五代。

バッジに関して調べた結果は、成程頷けるものであった。
違反部活、非合法組織。
如何にも落第街で活動していそうな人々である。

雨の日、そして異邦人の会合。
調査が正しければ、今日この場で襲撃がある筈である。


好きにやれ、と任せられれば。
思い切って内部に潜入する、というのがレイチェルが出した案であった。

さて、侵入とあらば一応、レイチェルも事前にそれなりの準備をして挑む。
周囲に溶けこむ術は習得したとは言え、念のため、である。
どれ程効果があるかは分からなかったが、しないよりはした方がいい、と。
レイチェルはそう判断した。

金の長髪をサイドに三つ編みの形で纏めて、眼帯は外して右眼は完全に
シャットダウンしている。外から見れば、ごく普通の目に見えることであろう。
クロークは持ってきておらず、服装はごく普通のカジュアルな私服だ。
その胸元にはバッジがつけられている。

いつぞやに公安と共に潜入捜査した時のことを思い出しながら、レイチェルは
壁に背を預けて、群衆の隅で周囲の様子をそれとなく窺っていた。
周囲の会話には適当に合わせながら受け答えをする。
幾らかこの会合についての情報も得られれば、と。

さて、レイチェルの視線はホール中央の男へと向けられる。
この会合の中で、その場は何とも異様であった。

五代 基一郎 > レイチェルの潜入は何も滞りなく進んでいた。

元々異邦人だからであるためバッジの着用も加われば疑うものはいない。
会話があれば、言葉を交わせば組織や会合の輪郭線が少しずつ明らかになっていく。

公的に、というが実際はこの世界にやってきたものの学園側に受け入れられなかった異邦人の集まりであり
またそのそれらに対する異邦人の支援者との顔合わせや今後の支援のための会合。
大まかに言えば今後も学園側に受けいれられない、そうでなかった異邦人を受け入れて行こうという
関係の話、決意、意志を語り合うような会合だった。
最もそれらのための運営資金は正規の方法で得られるものではないがための、非合法組織。
いくつかの異邦の世界の旗が並ぶホールはそれこそマフィアの会合のようだった。

レイチェルが半ば壁の花のようにいれば、またはホール全体の気配を探っていれば
その中央にいる男がやはり目を引くだろう。だが他の異邦人はまったく目もくれず
ただただこの会合の中にいて、この会合を楽しんでいる……

そしてレイチェルが視線を向ければ、今まで寝ていたかのように閉じられていた目が開き
レイチェルを射抜くように見返してきた。
だが男は別段なにか焦るということもなく、その存在を感知すれば
させれば口を動かす。
声は聞こえないだろう。だが口の動きでわかるはずだ。
ただ一言、座れとレイチェルに音無き言葉を投げる。

レイチェル > 「……ええ、ええ。そう、貴方も辛かったんですね……?
 分かります、私もそうでしたから……。
 学園側は、断固として受け入れないという姿勢で……
 でも、これでもう安心、なんですよね……ええ……」

時に相手の身の上話を聞き。時に一緒になって学園に憤り。
しおらしい仕草で口元に手をやりながら、周りの者達と打ち解けていく。

「ええ、貴方も、そうですか……でも、一緒に頑張っていきましょうね。
 だって、私達は学園に弾かれたもの同士、仲間なんですから……」

(ちっ。こういう喋り方は昔を思い出して嫌な気分になるぜ……)

儚くも優しげな、愚痴や妬みの言葉を受け入れるような笑みを
向けながら彼らと話しているレイチェルであったが、
内心はといえば、全く穏やかではなかった。
しかしこれは潜入なのだ、と。
顔には出さずに『異邦人の会合に集った一人』として
話を続けていく。


話を続けながら、男に向けた視線。
射抜くような目を返されれば、レイチェルの内に緊張が一瞬走る。
そうして発される、『座れ』という音無き言葉。
読唇術など学んだのはずっと昔の話であるが、その程度であれば
問題なく読み取ることが出来た。

その言葉に思わず柳眉を顰めるレイチェル。
従うべきか、無視するべきか。
少しばかり悩んだ後に、彼女は前者を選択した。

「……少々気分が悪くなってしまって。……失礼しますね」

周りの者にそう言い放って、レイチェルは近場の椅子に座った。
そうして、彼の方へと改めて視線を向ける。
先の、白のドレスに穏やかな笑みを纏っていた少女からは想像もつかない、
座ってやったぞ、と言わんばかりの鋭い視線が男に突き刺さるだろう。

五代 基一郎 > 何をしに来た。

ただ一言が続く。先ほどと同じように音無き声。
ある種の喧噪、華やかな社交界ほどではないがそういった集まりの中で
ただその点と点を繋ぐ……男とレイチェルと繋ぐ線だけは
緊張感のある、研ぎ続けた刃のような冷たさがあった。

黒衣の、白髪の痩躯。ただその身長ほどにもある長刀……太刀に体を預けつつも
椅子に腰かけている男は問う。誰だとか何者かではなく、何をしに来たのかと。

そうしていると宴も酣、という所で檀上にある天蓋に下げられた幕が揚上げられていく。
司会曰く、その天蓋の下にいるのはここに集まっているうちでも有力者となった者達であり
これらの会合はそれらの者達の調停や協定を結ぶむのでという
より我々の基盤が盤石になりこれからもこの世界に来た同胞を迎えるために尽力したもので
今から紹介を……というものだった。

だったが、その紹介が始まる前に言葉は途切れる。
天蓋の幕が上がれば、そこで紹介されるはずの異邦の老人達は皆首を刎ねられ惨殺されていたからだ。
冷気が幕の上がりと共に会場に満ちていく。喧騒からざわめきと悲鳴へ。
方々より異変を感じとったか、護衛か武装した者達が会場に続々と現れ始める。

そしてもう一度、レイチェルに問う。
枯れた低い声で問う。何をしに来たと。