2016/08/30 のログ
ご案内:「落第街 セレモニーホール」にレイチェルさんが現れました。
ご案内:「落第街 セレモニーホール」に五代 基一郎さんが現れました。
■レイチェル > 異邦人達の会合に潜入したレイチェル。
会合に集まっていた面々は、村雨の名を有する刀を振るう男によって皆殺しにされてしまう。
異邦人を「奪わなければ生きていけない化物」である、と。
強固な意志で以て刀を振るう男。
対して、レイチェルもまた彼女なりの想いと言葉を抱き、
銃を抜くのであった――。
「へっ、素敵な褒め言葉をありがとよ」
吐き捨てる言葉に対し、ふっと微笑を浮かべるレイチェル。
ひゅるりと吹く風のような軽い声色であった。
「そいつは魔物に限らねぇ。生きる者は全て他から奪うもんだろ。
奪わなきゃ生きていけねぇんだ。
人も、魔もそこは変わらねぇだろうが。
だけどよ、奪うだけでなく与えることも出来る存在になったなら……
そいつは、ただの盗人じゃねぇ、略奪者でもねぇ。
きっと、良い共生者にだってなれる。その筈なんだ・
てめぇは相手が奪えば、奪い返すのが当然だと思ってるようだ。
てめぇの気持ちなんざ一生頭捻っても分からねぇが、
奪われた者の気持ちは分かるぜ。
オレだって色んなものを奪われた。
かつてはオレだって奪い返せばそれでいいと思ってた。
奪われたなら! 奪い返す!
やられたら! やり返す!
殺されて! 殺して!
殺されて! 殺して!
殺されて! 殺して!
でも違うんだ、それじゃ終わらねぇ。いつまで経っても!
てめぇは『そんなこと』をいつまで繰り返すつもりだ!」
トリガーは引かない。
相手が仕掛けてくれば、動く。
レイチェルは、そのつもりで構えている。
「オレは魔物だ化け物だ、多くのものを奪ってきた魔性だ!
全てを受け入れた上で、それでもオレは今のてめぇを
真正面から否定してやるぜ!
そして止めてやる! 止めてみせらぁ!」
叫びながら、目の前の男が持つ太刀の名を聞く。
同時に、レイチェルはトリガーに指をかける。
確かに拳銃だ。一丁の拳銃だ。
放たれるのはただの鉄の塊で、目の前の凄まじい力の凝縮された
刃を前には切り捨てられる。当然の結果だ。
今はまだ。
しかし、レイチェルはトリガーを引かない。
トリガーを引く前に、こう叫んだ。
「なめんな――付与《エンチャント》!
焔唱《ブレイズ》!」
1年生だった時に、学園の講義で学んだ付与魔術。
独自に研鑽を重ねて来たその技を、今ここで初めて放つ。
魔の存在でありながら、レイチェルの魔術の才能はゼロに等しい。
故に、1年かけてようやく覚えることが出来たのが、このエンチャント。
唯一付与可能な属性は、炎。
レイチェルの手から拳銃、そして弾丸へと魔力は伝わり――放たれる
と同時に、発火。火球となる。
水の刃に立ち向かうように、燃え盛る焔の弾丸が疾駆する――!
■五代 基一郎 > 黒衣の男が応える。黒い瞳に、憎悪の炎を宿らせながら
■黒衣の男>「それはこの世界の人間も既に得ていた答え。」
歪であり人と人との確執もあろうがそれは確実に育まれていたものだと
何か、遠い昔の話を語るような口調で語り……
■黒衣の男>「大層な言葉を吐くお前は何を与えた?
与えるのはなんだ!この世界から奪い、お前らが産みだしたものはなんだ!
犬として刃を振るうことが共生か!
奪い返せるものなど存在はしない!全て失われたもの!
ならば二度と奪われぬように貴様らを斬るだけだ!
貴様らが滅ぶまでな!貴様らが滅べばそれで終わる話だ!」
吐き捨てるように叩き付け、水の刃がこのホール内部の水気から
飲料物の冷却用の氷から出現しホールで踊るように切り裂くために飛び出して行く。
■黒衣の男>「全てを受け入れると言ったな!
どの口で言う!現にお前は今ここで!奪う力を持ち!乗り込んできただろうが!
この世界。力でしか生きられない魔性の者よ……
お前はどこぞの世界でそう呼ばれたのかは知らんし知る気もないが」
冷気、そして水の刃と炎の弾丸が撃ちあい炸裂することで
急速な熱反応が起き、爆発的な水蒸気がその接点を中心に広がる。
視界が熱水蒸気”スチーム”により塞がれる中、声と刃がまた放たれる。
■黒衣の男>「俺はこの世界の魔を祓う者。魔性の者。貴様を討つ……!」
「レイチェル!」
そして、その言葉と共に。視界がふさがれた仲でも聞き覚えがある声と共に
ホールに……レイチェルの側に放り込まれたのはアタッシュケース。
どうやったかはさておき、ホールの天井からレイチェルの側にまで放られたそれは
黒衣の男が察知してか、水の刃にて両断されるか、と思いきや
蓋だけが見事に切断されて……中からは、降り注ぐ。
レイチェルが潜入するにあたって持ちこまなかった装備。
拳銃刃物類もだが、他にも色々余計に詰めたのか。それらもあるが……
そう……常に装備していた、クロークがそこに、舞い降りた。
■レイチェル > 金の少女が返す。紫の瞳に、確かな想いを宿らせながら
「なら、その答えに向かって突き進んでみればいい。
問題も障害もあるだろうが、進まなきゃ何も始まらねぇ」
遠い過去を語るような彼の口調に対して、
レイチェルはただ前へと顔を向けて声を投げかける。
「犬じゃねぇよ。オレは今、オレの意志でここに居て、お前の前に立ってる。
他の誰それの意志なんざ、もう微塵も関係ねぇ。
あるのはオレが大切に思ってる この世界の奴らを守りたい、ただそれだけ。
たったそれだけの、オレの意志一つだ!」
水の刃が全てを切り裂かんと迫る、迫る、迫る。
肩口、腕、つま先、頬――。その他、全身数十箇所に及ぶ切創。
数多の刃によって、レイチェルの身体が斬り刻まれていく
致命傷を避けているのは、彼女が積んできた戦闘経験によるものだ。
血を迸らせながら、それでも金の少女は立ち続ける。
彼が放つ憎悪を、全身で以て受け入れながら、彼女は立ち続ける。
苦痛に顔が幾度も歪む。それでも。
「そうだ、オレは奪う力を持ってここへやって来た……。
昔から! 物心ついた時から! オレは奪って、奪い返して生きてきた!
生き続けてきた! 色々奪ったさ、他者の命すらも!
オレの手は血塗れた魔性の化け物の手だ! 人殺しの手だ! 奪い続けるだけ
の手だ!
それでも、この手を取ってくれる人間が居るのなら、オレは。
この世界を守る者で居られる――」
思い起こすのは、多くの人間達の顔。
数多くの同僚、そして友人。奇妙な人間関係も多々。
しかし、その多くが彼女の手を握ってくれた。隣に居てくれた。
笑いかけてくれた。共に泣いてくれた。一緒に、過ごしてくれた。
「――やってみな。オレはお前をここで止めてみせる!
お前が言う、奪う為の力でな!」
爆裂した焔と水。嵐のように巻き起こる水蒸気の中。
傷だらけの少女はそう口にしてみせた。
降り注ぐ銃器。その中に舞う、ディメンジョンクローク。
すかさずそれを掴めば、いつもの如く、背中に羽織る。
同時にクロークの内から構えて出すのは、魔剣切り札《イレギュラー》。
「あいよ」
魔剣を正眼の形で構えて、男を迎え撃つ――。
「オレはこの世の平穏を守る者。平穏を乱す者。貴様を討つ!
ってな」
魔剣を手にして、いつもの軽口が戻ってきたようだ。
口調とは裏腹に、身体からは血液が滴って、止まらない。
それでも彼女は魔剣を構えて立ち続ける。
奪い奪われる、その連鎖の一つをここで止める為に。
■五代 基一郎 > 一閃。刃のそれが、セレモニーホールの床に亀裂という線を引く。
割れる床。それが境界線のように。
■黒衣の男>「それを0に戻したのは貴様らだ。かつてあった諍いは、異邦人、異能者。
お前達が増えたことで時計の針は止まってしまった。」
それでも進めというのは魔性の者らしい傲慢さだと
相容れぬのは定めであると”村雨”を構え直す。
避けてはいるが、その憎悪を受け止めんがためというような立ち振る舞いを
忌々しく思い、何様だと怒りと共に闘志を溢れさせながら。
どの口でいうのか。どの手を持ってその力を振るうのか。
どのような切っ掛けかはもう知らない。既に世界は変わってしまった。
であり……この世界を乱しているのはこの世界に非ざる者。
かつて過去から続く争いは大小如何様な原因でも起きていた。
人種、思想、国家、貧困。そしてその争いの本質は変わらずとも
それらに新たな火種が加わったのは間違いない。
それでも目の前の異邦人は、魔性の者は世界を守るという。
魔物の牙によって。
■黒衣の男>「ならば覚えて置け。この世界はお前の手を取る者だけではないことを。
お前の手を斬り落とす者がいることを!」
貴様の思い起こす事柄など、受けた事柄など一つの側面でしかなく
お前を憎むものもまた等しく存在はすると。
その魔剣を構えた姿に向かう。
■黒衣の男>「世に既に平穏はなし。ならば剣にて魔性を祓い、世の平穏を取り戻すまで。
文字の如く。この剣にて平らげ穏やかな世を取り戻す!」
名を呼ぶ。魔を祓う太刀の名前を。力を満たす、言霊による力の意志による覚醒。
薄く水気を纏うそれを手に、金の魔性へと駆ける。
振るが水の刃はなし。ただ鋼とはしがたい鋭さの刃がレイチェルを襲う。
■黒衣の男>「断て村雨!金の魔性を!」
■レイチェル > 「一度止まっちまった時計でも、また針を進めればいい。
諦めてちゃ何も始まらねぇ。
オレも皆と一緒に時計の針を進めてやるさ……!」
傲慢で結構、と言わんばかりに。
言外に、透き通った瞳と真っ直ぐな視線で返す。
切れた額から、血が滴っては顎を伝い、落ちていく。
怒りと闘志に燃える男の瞳を、動じることなく見つめ返しながら。
「そんなことくらい、百も承知だ。この世界に来る前から、この歳で
色々経験しちまったんでな。
この世界でも、オレを怖がる奴だって居るだろう。
疎む奴だって居るだろう。
殺したいと思う奴だって居るだろうし、
見たくもない奴だって居るだろう。
はっきり言うが、怖ぇよ。そりゃオレだって、怖ぇよ。
当たり前だ。拒絶されて、怖れられて。
そんなもの、誰だって怖いに決まってる!
異邦人だって、この世界の――お前みたいな奴らが怖ぇんだよ!
自分達を拒んで、排除しようとする奴らが!
自分達の領域を奪われて、踏みにじられたと感じる奴らと同じように!
異邦人だって、きっと怖いんだ!」
男の手によって肉塊となった異邦人達の屍を背に、レイチェルは立つ。
拳を握りしめて。
「だが、怖がってばかり、憎んでばかりじゃどうしようもねぇ!
だから、嫌われようが何だろうが、オレは歩み寄る!
エゴだ傲慢だと、好き勝手言えばいい!
右の手を切り落とされたら、左の手で一発ぶん殴ってから、
握手してやる!
分かりあえなかったら、分かるまで何度だって握手してやる!
それがオレの決めた、この世界でのやり方だ!」
男が仕掛けてくる。肌でそれを、感じる。
漆黒の魔剣を構えて、迎え撃つ形でレイチェルも柄を持つ手に改めて力を込める。
「平穏が無いだとか決めつけやがって。そいつはお前が平穏の――
光の中に生きてねぇだけだ……自分から影の中に入っちまってる
んだからな!」
魔剣を素早く、そして大きく後方へと振りかぶる。
魔剣から放たれる魔力が、次第に強まっていく。
「止めるぜ切り札《イレギュラー》! 影の暴徒を!」
甲高い、鋼と鋼が打ち合う音が鳴り響く。
同時に、レイチェルの腕に重い衝撃が走る。
(速い、だけじゃねぇ、重い……!)
憎悪で以て振るわれる村雨を切り札と共に迎え撃つレイチェル。
何とか打ち払う形となるが、その一撃は人外と言えど
少女の身体には重すぎた。普段ならば、持ちこたえていたのかもしれない。
しかし今の彼女は、身体中傷だらけ、血も失っている。
姿勢を崩され、レイチェルは大きくよろめく。
■五代 基一郎 > その刀身に血糊はない。刀身に纏う水気が払っていく。
魔性のものを両断する鋭利さ、暴力と憎悪によって振るわれるものであろうに
そこには純粋なる刃が存在している。
レイチェルと、男とは絶対に相容れない者同士の剣劇。
レイチェルの訴えもまた被害者気取りかと……唾棄すべきものだと
魔性の者の訴えなど聞くものではないと村雨が振るわれる。
■黒衣の男>「貴様らはいつもそうだ。人の情けを誘い、人の情けを受ければ
涙一つ流さず臓腑に食らいつく。何を持たずとも、魔性のもの故
それが当然となれば、人と等しいなどと思い上がり素知らぬ顔で
情けなど忘れ奪っていく!怖れられるものが何が恐怖か!
体は異質であれ心は同じかと思ったか!冗談ではない!力なき者の心などわかるはずもなし!
人は皆人以上に力を持つ者を恐れる!お前達以上の力を持つものなど
この世にいるか!歩み寄るだと?寄るな化物が!」
怒り。憎悪。拒絶。それらが混じった刀の斬撃は村雨により確として
魔性の者に振るわれるものか。雑、蛮勇などというものではなく。
鋭く、ただ魔性のものを確実に殺すために精密に振るわれる。
腕、足、体であろう動く部分。そして首、頭部。
決して油断などしない。慢心などしない。絶対に殺すという鋭く冷たい殺意を以って振るわれていく。
■黒衣の男>「光も影も分かつものなどない!全て溶けてしまっただけのこと!
人により作られた光を平穏というのならば、その手で平穏を作ってから言え!」
重い斬撃、鋭い剣戟が重なり甲高い音を響かせる。
それが重なる音楽などとは言わない。調和などないことを示すように。
合されるのは、死の重さ。
レイチェルが姿勢を崩し、よろめけば。
その首を刎ねるために……魔性の者を絶やすために刀が振るわれる。
そらみたことかと。
その生ぬるい、傲慢な姿の報いを受けろと
■黒衣の男>「魔性を断て!村雨!」