2017/04/30 のログ
東雲七生 > 「それにしても桜もすっかり散っちゃったし、来年が見納めかぁ……」

青々とした桜の木を見上げながら呟く。
とはいえ今は月の映える時間帯。昼間ほど新緑を感じられるわけではない。
以前来た時は花びらが無数に浮かんでいた水面も、湯気ばかりが変わらず立ち込めるだけだ。

「来年で見納め、か……」

もう一度呟く。
あと一年も経たずに最終学年に上がる事に、少しばかり不安を覚えたのか、七生の眉間に皺が寄る。

東雲七生 > 「出来る限り今年の内にやる事はやらないとな……」

まだまだやる事は山積みだ。
というか、やらなきゃいけないと思いつつ目を逸らし続けて来たものばかりだ。
いつかは、いつかは、と繰り返して遠ざけてきた結果。迂闊に手を出せないところまで来つつある。

「うぅ……気乗りしない……。」

気乗りだけでは無い。
向き合う為に必要なだけの強さが、自分にあるとは思えない。
そうして我武者羅な鍛錬を続けて来たわけなのだが。

東雲七生 > 「本当に強くなってんのかな……」

何度目か分からない程呟いた言葉をまた口にする。
そう思う度に理想の自分から遠ざかる気がして、七生は大きく頭を振った。

「いや、なってる。なってるはず。その為に毎日鍛えてんだし。」

無理矢理自分に言い聞かせつづけて来た。多分これからもずっとそうだろう。
それほどまでに道は長い。気が遠くなるほどに遠い。
身体の傷がもう殆ど癒えたのを確認すると、七生は立ち上がった。

一人で居るのが少しだけ不安になったから、早く帰ろう。
小さく溜息を溢すと、敢えて大きな水音を立てて七生はその場を後にしたのだった。

ご案内:「露天温泉」から東雲七生さんが去りました。