2018/11/25 のログ
■??? > 歩むだけで山河を抉り、拳を振るえば地は瞬く間に焦土となりうる巨大な鬼。
ダイダラボッチと仮に呼ばれた怪異との、孤立無援の特攻(ばんゆう)。
故に、段々とその動きは精彩を欠く。それでも槍を振るう腕が止まることがないのは━━━━。
「っ、この…………いい加減、膝ァ着けよ!!」
地面を蹴り割って、今までの足のみに集中させていた攻撃の方向を、斜め上へと向ける。食い込ませた穂先を軸にして、そのまま身体が水平になるように相手の腱に足をつけ。
「うぉぉおおおォォォオオッ!!」
力のままに、食い込ませるままに足を駆け上がっていく。重力を振り払って、垂直に駆け上っていく。
建物の壁より踏みしめる感触は凹凸が無いのを、食い込ませるほどに足が力むことで離れない。
足首を縦に掻き、鬼の腿までを抉り、腹部まで駆け上がっていくと、後方へとバク転。
上へと切り払う縦の一閃から、
「出雲槍術━━━━活八(かつはち)ッ!!」
穂先が霞むほどの速さで、上から、下から、斜めに切り払う所作。
×字に傷を与える一撃が、轟音を立てて崩れ始める巨躯に、一撃二撃と刻まれる。
空中で重鎗を振り回す。制動に関節が悲鳴を上げる。それでも攻撃の手は止まらない。
落下しながら傷を与え続け、着地と同時に倒れ込んでくる巨躯を避けて距離をとる。
━━━━その刹那。
■??? > ━━━━大きく凪ぐように、巨躯の腕が払われて。
着地から身を翻すように再びの跳躍が僅かに遅れる。
掠めるだけで、蟻の如く矮小な比の躰は弾き飛ばされる。
…………世界の半分が赤く染まり、ぐるぐると回る世界に眩んだ。
脳裏に、幾つかの光景が浮かび。
「━━━━っぁ、が」
━━━━誰かの笑顔が、薄れる意識を覚醒させよと頭に滲んだ。
何時も呑気にしてそうで、しっかり者だった誰か。居るのが当たり前の存在が、今戦う存在に脅かされることなんて、許せなかった。
……此処で終わるのだとしても、それでも、自分は。
■??? > 「━━せめて、お前を……っ、ここ、で…………っう”ぇ」
頭の半分が熱い。
もう両の眼で見てもやれない。
ひしゃげた腕が、手の中の相棒を手放そうとするのを抑え込む。
叩きつけられて、何度も跳ねる躰を、槍を地面に突き立てて止める。
全身が麻痺したように感覚を遠くに手放す。それでも意識は手繰る。
口の中が少しだけ広くなった。吐き出したら、白いものが幾つか足元に落ちる。
……たった一撃掠めただけでこうなってしまっては。
「━━は、はっ、はははは」
もうなんだか、いっその事笑えてくる。
自分が刻んだ傷は大した事もなかろうと、地面に這いつくばった形から、四つん這いに、その鬼は顎を開いて、
「━━━━」
土をかいて、立ち上がり。
穂先を折った槍を構える。もう、先などは無いと、重みを失った己の心の中。
「━━━━ごめんな、最期までお前のこと、ちゃんと呼んでやれなかった。
…………でも、悪ぃ。ここに、お前が居なくて、良かったよ……」
━━━━地面を蹴る。向かうは顎の中。内より、最期の全身全霊を以ての一撃を与えようという、”諸共砕命”の疾駆。
「━━━━……元気でな。
”× × ×”」
■??? > ━━━━━━━━バグンッ。
■??? > ━━━━━━━━━━━━。
……………………夜が明けていく。
雲間から顔を覗かせた陽の、紅い、朱い光条。
抉れた地面、凪がれた木々。新たにそこも恐らくは、命が芽吹きやがては消えていくだろう、傷跡。
……突き立った槍が一本、破れた上衣の家紋を縫いとめるように、佇むのみ。
ご案内:「青垣山【回想】(ソロ)」から???さんが去りました。