2015/06/09 のログ
ご案内:「◆特殊Free(過激描写注意)1」に秋尾 鬨堂さんが現れました。
■秋尾 鬨堂 > ―あの日。
これまでの預金をはたいて、その後の給料を全て注ぎ込んで作り上げたマシン。
いい気になっていた。
俺のLD22が、このベイエリアで一番速いのだと。
―あの日のことを思い出す。
海風、西よりやや強し。
午前三時前、自ずからセッティングを出し、調子を見るために軽く流していた時のことだ。
■秋尾 鬨堂 > いつもどーりに、チーム常工のRをチギる。
連中、この前随分アオッてきてた。
落とし前をつけるつもりで来たんだろうが、今日のLDは一味違う。
チューニングは日進月歩だ。試行錯誤だ。
クルマとの一体感は、天気一つで容易に変わるし、
ネジ一つのトルクがハズれればもうシケてしまう。
その上で、今日は絶好調。雨にヨタついてるようじゃ俺の前は走れない。
■秋尾 鬨堂 > 産業道路のクリアストレートでメーターは見た目キッチリ280km/h。誤差5%で実質265ってとこ。
調子が良い。恐ろしいくらいに。
物流のトラックも、今日は少ない。気味が悪いくらいに―?
いや。なんだ今の嫌悪感は。
マイナス要員なんて無い。なんで、俺は気味が悪いなんて思った―?
■秋尾 鬨堂 > 雨脚が強まる。
雷鳴が轟く。
落ち着け。なんてことない、島特有の急な崩れ方。
だが。
だがアイツは、まるでアイツは。
それらを従え、引き連れて来たかのように。現れた―
『悪魔のL』!
■秋尾 鬨堂 > バックミラーに写った影は、ミッドナイトブルーを切り裂く光を置き去りに。
追い付いてくる。さっきからアクセルは踏みっぱなし。
メーターは見なくてもわかる。フルスロットル、踏み切っている。
伝説のはずだ!
島のドライバーたちに伝わるただの伝説!
二年ほど前にもそんな噂が立った。
そしてある日、学生街バイパス出口を半日止める大事故と共に消えた噂。
そんな思考をしている隙に、もう奴はテールランプしか見せていない。
■秋尾 鬨堂 > あっという間に攻守逆転。
いや、奴は未だ攻めている。誘っている。
着いて来れるか?と挑発している。
行くしかねえ。
LDのエンジンは、バランスを崩せばそくブローと知っている。カリカリに絞った出力は、もうなりふり構った運転で優しく労る余裕なんて無い。
追いすがる。追いすがる。まだチギられちゃいない。
追いつける。追いつける!悪魔を、俺がオトす!
唸るエンジン。断末魔の力を絞り出し、その悪魔の尻尾に噛み付こうとして―
接触。
■秋尾 鬨堂 > そしてブロー。俺のハンドルが取られたのが先か?
それとも、悪魔のLが、身悶えたのか。
ブレーキ痕はどれだけの長さになったのだろう、などとゆっくり考えていたような気がする。
ガラス塗れで、半ば以上に潰れた車体。生きているのが奇跡的な怪我。腕は繋がっているか?
指先には力が入らない。夢遊病者のように車体から這い出して、立ち竦む。
時速300km/hでのクラッシュは、かくも惨状を産むもの。
■秋尾 鬨堂 > LD22。俺の命を拾って、半身を潰されて息絶えた。
悪魔のL。そして悪魔のLは―
炎の向こうに、立ち上がる人影は、幻視だったのだろうか。
あれだけのクラッシュで、しかし原型を保ち。
スピンの途中で投げ出されたのだろう、顔の無いドライバーを路上に置き去りにして、炎に包まれている。
致命傷のはずだ。そうでなければ、本当に―
俺が意識を失う瞬間、誰のものでもない叫び声が聞こえた。
恐ろしい叫び声だ。しかし、俺にはわかる。
そいつは、「まだ終わっていない」と―言っていた。
■秋尾 鬨堂 > あの日。こいつに出会ったあの日。
俺の心は、もう奪われていたのだ。
ご案内:「◆特殊Free(過激描写注意)1」から秋尾 鬨堂さんが去りました。
ご案内:「落第街 退廃通り」にロウゲートさんが現れました。
ご案内:「落第街 退廃通り」にヴィクトリアさんが現れました。
■ロウゲート > 「一枚、二枚……すこし少なくありませんか?この間連れてきたコーカソイドはもう少し色ありましたよね?
ええ…胸のサイズですか…ちょっと規定に無いですね、今回は良いですが、次は殺しますよ」
落第街の通り、退廃的パブの跡地、今となっては所有者はいない…筈の物件
しかし蛍光色の強いライトに照らされ、人影が複数見て取れる
自分、ロウゲートはその奥の一人、レザーマスクで顔を隠した2級学生に
今夜の獲物を引き渡し、封筒の中の紙幣の枚数を数えていた
『まあまずは具合を試してからだな、良けりゃ追加料金だから、まあ神にでも祈れよ』
神様も今は寝てる時間ですよ、等と折の悪い会話の後
ヴィクトリアは乱雑に荷物が詰まれた廊下を渡り、ソファのみが設えられた一室に連れて行かれるだろう
ドアの前にはロウゲート、そして室内には男が一人、そしてヴィクトリアだ
■ヴィクトリア > ……。
【今は少し落ち着いたのか寝息を立てているようだ。
もっとも、起きたら強烈な二日酔いに見舞われるのだろうが。
気がつく様子はない】
■ロウゲート > ドアの外からはいまだに紙幣を数える音がする
室内に響くのは、ほとんどがこの退廃パブのスカウトと思われる男の声
少し太り気味で、クルーカットに整えられた黒髪には脂汗が浮かんでいる
「こんなガキ一匹でアレ以上ふんだくろうっつーんだから、あの旦那も肝が太いぜ…どれどれ…」
品定めするように見下ろすと、徐にヴィクトリアのパーカーの胸元を開こうとするだろう
パーカーにチャックなどがついていなければ、ナイフが当てられ服を切り裂かれる事になるかもしれない
「まあ、その筋にゃウケるかもしれねえなあ……」
男の腕が伸ばされたのは、ヴィクトリアのその胸だ、ごつごつとした掌が
その胸に当たれば、さするような手つきで、揉みしだき始めようとするだろう
■ヴィクトリア > 【端的に言って胸は、ない。せいぜい膨らみかけかその程度だ。
パーカーの下は素肌であり下にブラも何もしていないくらいには。
その筋でなければ、どう見ても華奢な乳臭い小娘でしかない。】
■ロウゲート > 「反応はない、か…まあ当然だな、つまらねえが…
なんだまだブラもしてねえのか?ヘヘ…………」
嗜虐性の浮かんだ笑みで伸ばされる掌は、そのなだらかな胸をふにふにと寄せては揉むだろう
「次は…こっちもだな…」
無機質なナイフが、次はホットパンツに向けられた
脱がすのも面倒だとばかりに、鎖骨の辺りを覆う部分を縦に引き裂き、下着を露にしようとするだろう
■ヴィクトリア > 【なんだよ気分悪ぃ……ウザい。
まだボクは寝てたいんだよ……別に二度寝まではいーだろ……?】
ん……ぅ?
【さすがに、そこまで揺すられれば意識が覚醒し始めるが……気持ち悪いのも手伝ってまだ、覚醒したがらない。】
■ロウゲート > 「やっぱつまらねえな…旦那に言って少し起こしてもらうか…」
ふと考えるも、意識がハッキリして抵抗されてはたまらない
まあいい、と切り捨てると、ごそごそと切り裂いたホットパンツをズラし
下着越しに秘所を中指で愛撫しようとするだろう
「さて…膜は…どうだ?ヘヘ…」
そうしてさするような手つきを続ければ
徐々に下着をズラしていき…現れた縦筋を、人差し指と中指で開くように、手を伸ばす
抵抗が無ければ、その秘所をくぱ…と開き、膣内を確認しようとするだろうが
■ヴィクトリア > ぁふ……んぅ……?
【なんだよまだボクは起きたくないんだよウザいな
今日は休み休み! なんだか気持ち悪ぃしかったるい……?
そこまで思って違和感に気づく。
<<誰だ、ボクを起こそうとする奴ってのは。
…………そんなのは、いない>>
ありえない。
ボクの周りには人なんかいない。起こしに来るやつなんかいない。
ボクが好きなだけ寝てボクが好きなときに目覚めてボクが好きなときに起きればいい。
一瞬で血の気が引く。
そして同時に二日酔いを自覚する。
気持ち悪い、あたまいたい。
そして何より……ボクの体に触れる感触は何だ!?!!!!】
わああああああああっ!?
【絶叫とともにまず、蹴る。
全力だが、向こうにしてみれば素人の女子のケリなど大した力じゃないかも知れない。】
■ロウゲート > 「うおっ…危ねッ!」
ヒュッ…と風を切るように、男の顔の横を蹴りが突き抜けていく
「へへへ…やっぱ生身の反応が見られなくちゃな、つまらねえ…」
舌なめずり、空を切ったその足首を掴めば
乱暴に、男一人の力で、肩までがギリギリソファに付く程度に、逆さまに持ち上げようとする
「目覚めは、どうだ?旦那の実は食らえば一晩はロクに酔いが抜け…」
余計な事を言うな、とばかりにコツコツと扉が叩かれる
言葉を飲み込むように口を噤んだ
「っと……ともかく…お前もこの街に住んでンだ、こういう事もあるって事だきゃ、頭にあったよな?」
持ち上げたまま、乱暴に顔を下ろせば、無造作に切り裂いたホットパンツを素通りし
もっと下へ…秘部へと顔を下ろそうとするだろう、改めて舌を、その割れ目に当てるつもりだ
■ヴィクトリア > ……なッ!???
【ここは、ドコだ。
その前にコイツは……何だ?
頭がうまく回らない、がんがんする。
起き抜けにあんな派手に動けば、当然、痛い。
……その点で彼女は良く出来過ぎていた。】
く……ぅ、何、を……!?
【逆さに持ち上げられ、回らない頭で……濁った頭で考える。
……裸!?
いまさら気づく。
ちょっと待て……なんで裸? ……正確にはパンツ一枚にニーソだが……理解できない、後回し。
……ヤバイ。ゾッとする。
頭のなかがヤバイってことでうめつくされる】
やめろ!やめろテメェっ!
ボクに何する気だよこの野郎!
ボクはテメェなんかが触れていいからだじゃねーんだよ!
【蹴る、蹴ってとりあえずその顔を背けさせようとする。
……当然その足も掴まれる】
■ロウゲート > 両足を掴む、いよいよ進退窮まったような状態だ
下卑たような笑い顔が見下ろしていた、調子はどうだ?と声をかける
「おーおー…起きたは良いがちょっとばかり元気が過ぎるな…
お前の高貴な体を二束三文で買って…使わせて貰ってるぜ…へへ」
まあ良い。とでも言うかのように、男はそれきり無言だった
無言で、顔をうずめ、そして、パンツの上から舌を当て続けるだろう
掴んだ足を肩に乗せ、足の付け根をガッチリとホールドすれば
ピチャ…ピチャ…と、ほの暗い密室に水音を響かせ、反応があるまで、そこを舐め取り続けるつもりだ
ご案内:「落第街 退廃通り」に「」さんが現れました。
■ヴィクトリア > くっそ、てめなんだこの……っあ……!?
【ゾクッとする感触。
……ヤバい。
少女はこの感触は知らなかったが、今までさんざんこの手のことに接してる以上、理屈はわかる。
イザとなったら、問題のない範囲でどこまでもやるってことだ。
逆に言えば……すぐどうこうは、ならない。
ならないが、時間の問題とも言える……ここは、そう言う宿かなんかだ。】
ふざけんなこの野郎……っ、く……ぅ……!?
っ……テメェ後悔するぞ、あぁ!?
【今はこの回転の鈍った痛む頭で考える時間がほしい。何でもいい。
気持ち悪い、気持ち悪い上にヤバい感覚が奔る。
そういう意味でも彼女の体は良く出来ていた。
気持ち悪いだけの感覚だけではない】
待ちやがれ……止めなくていい、今はてめぇの好きに進めてていいから……
とにかくボクの話を聞きやがれこの糞野郎ッ!!
【絶叫。とにかく話を聞かせないことにはどうにもならない。
まだ、手札が残ってるうちは。】
■ロウゲート > 「それは、お前が知らなくていい事だろう?
ヘヘ…小便臭え体だぜ……」
ほの暗い部屋に目が慣れてくれば、ここが廃カラオケボックスを利用した一室であるというのがわかるだろう
男は、ヴィクトリアの言葉をBGMでも聴いているかのように、その体を舌でねぶり続け
「何だ?命乞いとかなら安心しろよ、そういう場所じゃねえからな…へへ
話は、それだけか?」
カチャカチャ…と金属音が鳴り響く、ベルトを外し、下の着衣を緩めた音だ
手を離して乱暴にヴィクトリアをソファに叩きつければ、その小さな体に覆いかぶさろうとするだろう
男にとっての準備は、これぐらいで十分だという事だ
ここまでで視界がハッキリしていれば、その視界には醜悪なモノが写るかもしれないが
■ヴィクトリア > 【くそくそくそくそ、ボクはこっち側じゃない、こっち側じゃないのに!!!
違うだろ、ボクはむしろあそこでふんぞり返ってるアル中野郎のほうだろ!?
ふざけんなマジふざけんな、殺す殺す殺すコイツラ絶対泣かして殺す。300回は殺す……!
だいたいなんだよこんなクズみたいなちみっちゃくて男みたいなボクの体にそんな需要がアンのかよ!?
なんだよなんだよなんだよ穴がついてりゃなんだっていいのかよ!
そんなところだけ女扱いされんのかよ!?
頭ン中がぐるぐる回る。
気持ち悪い、最高に気持ち悪い。こみ上げてくるが吐けない。
当然だ、吐き気はあっても、食べてすぐでもなければ吐く機能なんてない。
それでも……まだ、まだやれることがあんだろボクのバカ!!】
ぐ、は……っぷ。
【叩きつければ一瞬むせ返る。気持ち悪ぃ、……気持ち悪ぃ気持ち悪ぃ……!
どれもだ。
コイツも、今のボクも、アイツも、この状況も! 何も出来ないことも!
あああああああもう死ねよ! 全部壊れろよ!
だが頭に怒りが回った時は……気持ち悪くてまわらない頭を回す助けになった。
ちくしょう、あんなんで濡れてやがる。】
さっき言ったじゃんか……テメェなんかが触れていい体じゃないっつったろ……!
取引だっつってんだよ。テメェには何のうま味もないけどな!。
命乞いとかしたらテメェ喜ばすだけだろが、そんなサービスしてどーすんだよ。
お前は死ねよ!
おいそこのアル中!……30やる。ボクの値段の倍はするだろ。
ボクが自分を買うんだよ!
テメエにはチップを渡す、別にな。
そうでなきゃ……テメエはこの仕事どころか地獄に逆戻りだ。
今この場で……ボクを放置して死ぬか、ピザ屋で宴会か、選べ!
【目の前のコイツは屑だ。
だがあのドア横のアル中は……金で雇われるって筈だったな?
あとは……なるようになれだ。
最悪、ここを買うしかない】
■ロウゲート > 『うるせえ!テメェちょっと静かに…』
静かにさせる、という意味で振り上げられる掌
容赦の無い張り手が、その顔に飛んでいく、その顔をすっぽりと覆う程度の
無骨な男の手が、ヴィクトリアの頬へと叩きつけようと振り抜かれた
キィ……と僅かにボックスの扉が開かれる、声が通る程度の、かろうじて小さな隙間だ
「珍しい命乞いだな…良い話だ、それで…その金が一体どこにあるんだろうな…
お前の言葉を裏付ける金はどこにある、電子マネーか?クレジット素子か?
ビジネスってのは即断即決だ、それが枠組みと取り決めた信用をフイにする前提なら尚更だ
お前をお前たらしめているその価値を、今この場でどうやって用意する?
一度売ったものを、やっぱり気が乗らないから返せとするには、相応の理由が要る
お前は、無力なんだよ。」
帰ってきたのは今すぐこの場で用意すれば乗ってやる、という言葉だった
無機質でそっけない言葉、当然だろう、説得力が感じられない
テレポート等で、今すぐに満額が用意されれば、あるいは…かもしれないが…
『へへへ…そういう事だ…残念だったなぁ………』
そして、嘲笑うかのように、下卑た笑みを浮かべるクルーカットの男は
組み伏せたまま、ヴィクトリアに押し付けるように取り出した
巨大な肉の棒を、ヴィクトリアの下肢を守る下着を突き破って、秘所を貫こうと
ぐい…と力をこめた
■ヴィクトリア > 【ぱぁん……乾いた音が綺麗に響き渡る。
頬が綺麗に赤く腫れる】
ぐっ……ぅ、死ね、クズ野郎!
てめえ……今死んだぞ!
忘れねえからな。
【この野郎! アル中のくせにしっかりしてやがる……!
くっそ、まあ当然だよボクだってそーするよ!
……なァ、ここはそういう場所だもんなァ!?
わかってるよどーせボクがこっち側だってのはよ。ふざけんなよバカ。
テメエ金貸しを一番もったいない売り方しやがってふざけんなよ。
それとも頭足りてねえのか最初から計算づくだったのかしらねーけどなあ!
くっそ、ふざけんなこの野郎、一度死ね!】
それじゃアル中……テメエのIDチェックしてみやがれ! バァカ!
コレは判断遅れたテメェのツケだからな! いい証明になんだろ!!
値吊り上げりゃ、応じてやったのによ!
それの停止解除と、30で手打ちだ……ロウゲートさんよォ!!!
チップ欲しけりゃあとは頑張るんだな!
【ロウゲートは幸い……彼にとっては残念なことに半分素顔だ。
つまり、検索が、利く。
目の前のガスマスクは、顔が割れてない以上、どうしようもない。
なら、いい証明になっただろ、ナァ!
……ガスマスクに抵抗しつつ、弄ばれながらどうにか叫んだ。
コレで駄目なら……女にさせられた後に此処を買うしかない。】
■ロウゲート > 名乗った記憶が無いままにロウゲートと呼ばれた男は、自身の持つ端末に目を通していた
アクセス権は非アクティブのままだ
短縮から電話をかける後ろ姿が、辛うじてわかるだろう
「ああ……俺だ。番号は00820611……照会してくれ……
ハッキングか?元の情報は紙媒体だろう…ああ、そうか…
じゃあ1日2日で復旧するんだな………
圧力はあるのか?それはこれから判る、と…そうか……」
話し声が聞こえる、さても大した事ではないとでも言うように
その声はなだらかで、平坦だった。
やりようはある、これまでも、これからもやるべき事は変わらない
それにしても…あの娘、何をしたか判らないが、意外と強かさを持っていたようだ、部屋の中をチラリと覗き見る
もしかしたら、これ以上はリスクが大きいかもしれない…割に合わない仕事はしない
それが己のルールだ
一方。
『俺が死ぬ?ヘヘヘ…面白え…
その前に俺の顔を一生忘れられないようにしてやるぜ…へへへへ……』
ペロリ…と舌をなめずる動作
クルーカットの男が見下ろすその少女の姿は、とても無力に見える
ゆっくりと…力をこめて…
剛直が粘膜を極限まで押し広げていき
そのまま挿入する事に成功すれば、子宮口に衝撃を与えるように
激しく刺激を与えてゆこうとするだろうが…
■ヴィクトリア > ……っ、く、あ……ちくしょう、……くそっ……ああああこのやろう!
【無理だ、押しとどめる方法なんか、ない。
ああああああちくしょうちくしょうしくちょうしくしょうなんだよなんなんだよ!
どーせお前なんかアル中と違ってと交渉したって意味なんかないんだろわかってるよ!
バカだもんな! ボクみたいな男だか女だかわからない奴に女の機能を求めるバカだもんな!!
そして。
徐々に、徐々に。
押し広げられていく。
必死に抵抗するが、少しずつ先が触れ、押し切られていく
ばかやろう入るかよ、そんなのあるかよ。
……うそだ、入る、入るってわかってるからやってるに決まってる。
なんだよ、やっぱボクは何も出来ないんじゃないかよ。
エラソーに振る舞って、他人蹴飛ばして、ID操っていい気になって、このザマかよ。
……結局、奪われる側ってのかよ。
暴力は買えるんじゃなかったのかよ。
権力でどーにかなるんじゃなかったのかよ。
涙が溢れてくる。
こうされてることじゃない。
自分の不甲斐なさとその立場にだ。
……ちくしょう。
せめて顔なんかそむけたりしねーぞ……せめて……】
■ロウゲート > 『まあ、そんな顔すんなよ…ちょっと使わせてもらうだけだろ?ヘヘヘヘ…』
ヴィクトリアの体内に埋ずまったクルーカットの男の肉の棒は
最奥まで貫いて下腹部を盛り上がらせてゆき
粘っこい先走りを膣内で循環させるように、強引に押し広げていく
クチ…クチュ……という抽送の音が、狭いカラオケボックスに響いた
――――――――――――――――――――
「不穏な空気だな…はした金で面倒に巻き込まれるのは割に合わない…
そろそろ残りのペイは諦めて帰るべきか…いや…
しかしここで回収できなければ…根回しの金が……」
本能的に、何か危険を察知した、よくない風が流れている
女の思わぬ能力、電子改竄された己のID、この退廃クラブの提示する金額
こういう時に引くクジは、決まって大凶と相場は決まっている
どうしたものかと、巡らせるのは一瞬の躊躇
ここは引いて後日とすれば、クルーカットの男は間違いなく知らないと言い張り
残りの金を払わないだろう
まばたきのような、一瞬の逡巡、リスクヘッジの天秤を、脳内で傾ける
ご案内:「落第街 退廃通り」から「」さんが去りました。
ご案内:「落第街 退廃通り」に『室長補佐代理』さんが現れました。
■『室長補佐代理』 >
「その心配はもうねぇよ」
扉が、吹き飛ぶ。
刹那。そう表現する他ない僅かな間。
豪音と共に吹き飛んだ扉と、ロウゲートの目前に転がる見張りの男。
完全に伸びた見張りの男を後目に、黒のざんばら髪を揺らした長身の男は……じわりと、嗤う。
右腕の公安員の腕章をつけ直しながら。
「タイムアップだ。そこを通して貰おうか」
■ヴィクトリア > うああああああっ……うぐ……あ、あああああっ、ふざけんなふざけんなテメエ!
ボクなんか……そんなことするよーな相手じゃねーだろ!
【みちみち……独特の例の抵抗。
赤い血。
つまり……初めてだ。
止まらない、どうやったって抵抗できずに押し切られる。
そして少女は悲しいくらいに男に都合のいい機械だった。
初めてだというのに、痛みやそういうものより……快楽を伝えてくる。
体が男を喜ばせるように反応する。
少女は自身の素性を知らない。
自身の体が意志に反して極上の、人間を模した……それ以上の愛玩人形としての機能を備えていることも知らない。
だから、意に反して快楽を感じてしまうし、男にとっては……予想外のいい結果だと認識させてしまうだろう。
彼女にとって最悪なことに、数多くの性器を比較してきた男だから分かってしまう、それを。】
……っふ……ん、ぅ……やめろ、やめろってば……!
【快楽に感じてない意志を必死に言葉にするが……身体機能はそれを許さなかった
気持ち悪い、二日酔いも相まってぐるぐるする。
それが気持ちよく感じる気持ち悪さを感じながら、必死に抵抗するも、それこそ男にとっては嬉しいサービスだろう】
■ロウゲート > 「オヤ、オヤオヤ…これは剣呑……」
バタン…と奥の部屋から、数人のヨタモノが飛び出した
ここのクラブを経営する無軌道違反学生だろう
彼らは目を血走らせ、手に手に鉄パイプ、異能の電撃、スタンガン、ナイフ
それらで武装していた
何だテメェ!どこの部の回しモンだ!
ロウゲートが口を開く前に、ヨタモノ共は口々に、入ってきた室長補佐代理を罵倒した
その瞳は違法薬物のオーバードーズで、あたかも公安の腕章が目に入っていないかのようだ
「どうぞ通ってください?僕には止める理由がありません
アナタならこの程度の人の壁…大海を割って進むモーゼのように、造作の無い事でしょう
俺は無駄な争いはしない、それがリスクヘッジです」
ヨタモノ達の罵声にかき消され、聞こえているかどうか怪しいような声量で返す
やはり面倒が起きた、VIPの到着だ、さて…どうする?
色々な考えが頭を過ぎる。目の前の優男は、ありがとう君は良い奴だ
それチップをやろう、帰って上等なヌーベルをやるがいいと返してくれるか?
わからない…また決断が迫られる、いつだって時間が無い
人垣の中で、非常口へと繋がる扉の前に貼り付けたルーンから
芳醇な香りの大樽が生成される、これを…どうするか…敵に回すべきか
回して無事で済む相手か…人垣の壁の向こうに存在するであろう相手を見据え、唾を飲む
――――――――――――――
『だァから…それを決めンのは俺じゃねーって、言ってんだろ?
世の中の需要は広いぜ…せいぜい女に生まれてきちまった事を恨むんだな…』
ブチ……と子気味良い感触で裂ける音がした
覆いかぶさるようにして男は夢中で腰を振るう
まるで子供が、貰ったばかりの玩具を可愛がる様に
その動きは乱雑で、ぐいぐいとその抵抗する四肢を押さえ
奥へ奥へと何度も激しく前後する
『チッ…盛り上がってきたってのに…外がうるせえな…
へへ…お前、見た目に反して結構良いモン持ってるじゃねえか………』
毒づきながら、男は徐々にペースを上げ、その唇を下ろした
抵抗弱弱しければ、そのまま唇を奪い、舌を絡めるだろう
■ヴィクトリア > っ……んぅ……ざけんなよ、テメーはもー終わりだってんだろ!
だから言ったじゃねえか……ボクはテメエなんかが触れていいカラダじゃないってな!
【だが、言葉と裏腹に物事はどんどん進んでいく。
抵抗が弱まっているわけではないのに、だ。
なんだよ、なんでこんな時だけ都合よく女なんだよボクはさァ!
おかしいだろ、絶対こんなの!
胸もないし、背もないし、こんな男みたいなガサツで中途半端でさァ!!!
なのに……入れられただけでコレかよ! ありえねーだろこんなの!
……それじゃマジでコイツの言うとおりの肉便器で最悪じゃねえか!
なのになんで抵抗出来ねーんだよ嫌なんだよボクはさァ!
そんな思惑を他所に、男はどんどん無遠慮に、快楽を与えてくる。
最初は仕事だと思って適当にやってるのかもしれないが、違う、と分かれば乗り気になるというのが人の常。
乗っれくれば当然乱暴なだけでなく、調教に適した手練手管を使ってくる。
そして……ヴィクトリアは悲しいほどに機械だった。
性行為の最中に、どんなに抵抗しても、悦ばせることはあっても……人間を傷つけるようなことは出来ないからだ。
自身で求めてない。
もちろん求めていないが、彼女の抵抗はすべて……受け入れるための抵抗になっている。
抗っているのに絡んでしまう。要求に答えてしまうのだった。
男にとって見ればこんな極上の玩具はないだろう】
■ロウゲート > 『へへっ…へへへへへ…この期に及んで強気な女だぜ…
それも嫌いじゃねえが……少し耳障りになってきやがった……』
男が取り出したのは、一本の無針アンプルだった
中の液体は、粉末状の違法薬物をスプーンの上で加熱して溶かしたもので
所謂アッパー系の薬。その効能は多幸感を前借し快感を10倍に高めるが
いずれ感情が枯れ果てる類の物
これをヴィクトリアの首筋に当て、引き金を引く事ができれば
プシ…と無機質な音がして体内に入って行くことになるだろう
『ほらどうした…俺なんかが触れちゃダメな体が
俺の精をほしいっておねだりしてやがるぜ!』
足を絡めてくるその姿に、嫌な笑みが浮かんだ。
あまりにも精巧なそれは人のものと区別が付かず
いや、人のモノより数倍よく設計されたものであっても、そんな事は知る由も無い
ぐちゅり…と水音を迸らせ、やがて子宮を叩くだろう
どんどんとペースが上がっていく
■『室長補佐代理』 > 男は、ただ笑っていた。
たった一人。ならず者の群れの渦中で、笑っていた。
笑いながら、目を細めて、歩く。
無数のならず者など、まるでいないかのように。
「俺は最初にいったはずだよな?」
右手をポケットに入れたまま。
左手は銀の指輪をつけて揺らしたまま。
「遅い――タイムアップだ」
「提案しよう――喚くな」
その、黒の瞳孔が、ロウゲートを捉えた時。
既に男は……ロウゲートの目前にいた。
まるで、コマ落としのように。
人垣など本当になかったかのように。
実際、そんなものはもうない。
あるのはただの、肉の山。
地面に伏して、呻くだけの……肉の山。
「大丈夫だ。殺してない――殺してないだけだけどな」
影が、笑う。嗤う。哂う。
男が覗き込む。男が目を見る。
覆い被さるその長身。
逆光浴びて、その相貌すらも伺えず。
嘲笑漏らし、その輪郭すらも歪み果て。
「さぁ、懺悔の時間だ。黄泉の魔導師よ。六道が辻……臨む覚悟はおありかな?」
一度も、ただの一度も、ロウゲートから目を逸らさず。
男は、嗤う。
■ロウゲート > 「ああ、俺としたことがうっかりしていた…
そうだな…貴方の申し出は大変紳士的で断りがたいものなのだが………」
交わす視線、ジリジリと火花が散る感覚
勿論本当に火花など散る筈も無い、錯覚だ、だが、まるでこの場においては
本当に火花が散っているかのようだった
至近距離で、見えないマナがぶつかり合う感触
強いな……しかも俺を逃がすつもりはないと着ている。
「六道輪廻の渡し賃を、今日は持ち忘れてしまったよ。」
だが、まだ大した事ではない、人生とは道だ
易しい道もあれば、このように転げ落ちる為に作られたような道だってある
いつだって足を取られず上り続けてきた、未だ変わらない…
「だから…代わりに伝えてくれないか…今日は自分が代わりだと………」
傍らの大樽が弾ける、狭いカラオケボックスの通路内を
アルコールの津波が押し寄せ、室長補佐代理という男を飲み込もうと押し寄せる
だが、浅い、所詮は小細工に過ぎない、出し惜しみは死ぬかもしれないと
本能が語る
「――――――目覚めよと高き鐘楼より物見らの声は響く……」
じゃら…と取り出したのは鉄鎖に撒かれた羊皮紙の魔術書
よく通る声で唱えるのは、この街に来て二度目となる己の絶魔だ
骨髄にストローを差し込まれ、全力で血を吸い上げられるような痛みに耐えながら
背後にアストラル体が高まり、輪郭がぼやけ、何かが現れようとしていた
■ヴィクトリア > この……っ、く、う……。
【もがく。必死に抵抗する。だというのに。
もがけばもがくほど……自身ではもがいているつもりなのに「偶然にも」都合よく男の快楽を高めるような行動になってしまう。
当然、ヴィクトリアにも快楽が流れ込み、上気してしまう。
こんな男のこんな行為で感じたくなんかないのに、どんどん高め合ってしまう。
男の感覚で言えば、十二分に快楽を感じて、悶えている時の感じだ、悪くない。
事実抵抗しているくせにすっかり女の顔になっている様子からも明らかだ。嗜虐癖を誘う、そういう。
そして……男の欲望をもどんどん高めていく。
ヴィクトリアのほうも同様だったが……幸か不幸かまだ、二日酔いのエミュレートが残っているせいで頭がズキズキといたんでいた。】
ちょ……っ、てめ……ナンだ、それ……
ふぁ……んぅ、薬漬けにしちまったら商品価値なくなんだろが……ふざけてんのか?
ボクのこと……何だと思ってんだよ……!
やめ、やめろよ……やめろってば! それだけはやめろよおおおおおっ!?
【薬を見せつけられればさすがに焦る。あれは……ヤバい。
というかここは売春宿じゃなかったのか?
薬漬けにするにゃ早いだろ、それとも初期段階で打っておとなしくさせるってのか?
くっそ……なンだよ、なンなんだよ。なんでボクは搾取されてんだよ!?
ボロボロ涙が止まらない
情けなくてく安くて無力でいいようにされるただのチビで偏屈で空威張りの。
しかもいいように都合のいい時だけ女としての機能をここぞとばかりに発揮する。
そして彼女は知らない。
成分はともかく、「そういうものを打たれた」と認識すれば、そう機能することを。
もし助けが間に合わなければ。
男が望むように抵抗し男が望むように抵抗を防がれ男が望むように注射が打たれ……男が望むように反応を見せるだろう。
当然、薬など効かない、だが、要求やプレイには可能な限り応えるようになっている。
そういう機械だ。きちっと似た効果を出す
……もちろん、本人の意図は、関係なく】
■『室長補佐代理』 > 通路を洗い流すアルコールの濁流の中、男は笑う。ただ笑う。
黒いシルエットを浮かび上がらせ、輪郭を揺らめかせ、そして光るは左の指輪。
純銀の指輪。その装飾が、僅かに掘られた瞳の装飾が。
ギョロリと、ロウゲートを見る。
「食前酒とは都合がいい。なら、遠慮なく――頂こうじゃないか」
男が、引き抜く。
その得物を。
その引き金を。
その右手を。
「食事の時間だ」
右手を、伸ばす。
「キャストの交代を申し出るのなら、それ相応の競演の果て、物言わぬ俺に告げるがいい」
手の甲に、悪魔の紋章が刻まれた、その右手を。
■『室長補佐代理』 >
右手を、伸ばす。
■『室長補佐代理』 > 銀の指輪が輝く。銀の魔が煌めく。銀の光が闇を引き寄せる。
男の輪郭から光が奪われ、その身がただの『黒』へと変ずる。
その長身はただ闇に混じり、影と化し、ただそのシルエットを虚空に浮かび上がらせる。
そこにいるのは、最早人ではない。
人の形をしただけの影。
人の形をしているだけの黒。
輪郭の中、沈んだままの黒瞳が、じわりと滲む。
茫洋の中、浮かんだままの口角が、じわりと滲む。
■ロウゲート > みし…みしり…ボックスから外へと繋がる防音処理の施された壁が
まるで欠陥住宅の崩壊さなかのような不吉な音を立てる
ドラッグとセックス、そして暴力に夢中になっていた男も
そらで続けている事はあたわず、内に顔を上げた
『ンだァ?クソ…朝っぱらから…ファックは静かにやれってんだよ…』
みしり……また不吉な音が鳴った。
だがそれは、他の客が派手に騒いでいるものだろう
そう認識し、取り合わなかった
今は自分も、目の前の思わぬ収穫に獣欲をぶつけるのに精一杯だったからだ
この女は、凄い、このまま自分が買い取っても良い位だ
胸は小さいが、それを補う淫売さと手練手管を備えている
未だに続く抵抗も、スパイスとしては十分に過ぎる
その瞳の色は、己の欲を満たす事だけに染まっていた
『その商品がアドバイスしてんじゃねぇよ…へへへへ!
安心しなァ…ブッ壊れても元に戻せる能力者知ってっからよぉ…
ソイツ女を殴りながらじゃないと興奮できねえ変態だけど、きっとお前と気が合うぜ…』
ボロボロと涙を流しても、そこに情を差し挟む事は無い
むしろそれこそが情動を煽り、その手は動いた
プシ……と、無常にも何かが打たれる音が響く
透明な液体が、ヴィクトリアの細い首筋に注入される音と
再び、グリグリと最奥に肉棒をうねらせる音が…
■ヴィクトリア > ぅ……あ……………………くうッ!!
この……ッ、こ…………………………………………………………?
【視界が、揺れる。
正確にはそういう薬を打たれた時へのエミュレートへと移行する。
この高性能な機械は効いてもいない薬を演出する。
頭がいたい……回っていた頭がどんどん回らなくなる。
正確には……リソースがどんどん快楽に振り分けられていく。
息が荒くなる、動悸が早くなる。汗が止まらない。
男に抱きつき、許しを請うように、自身の動悸を抑えるように必死にしがみつく。
何か不安なものを抑えるように。不安を預けるように。
そして……………………薬に寄って呼び起こされた快楽で包み込むように。
少女はどうしようもなく、人間を悦ばせるための都合のいい道具だった。】
ふぁ……………………あ?
【ろれつがまわらない。】
んぅ………………
【なにをやっているかわからない】
あッ………………は……。
【たすけて。
そう思いながら……………………目の前の男に抱きついて、男が味わったことのない極上の快楽を与えていた】
■ロウゲート > ざぱぁ……と音を立ててアルコールが通り過ぎる
像でも酔わせる天国行きの密造酒だ
当然当たればほろ酔いでは済まない、紫色のタイダルウェイブ
だが…まるでやったという気はしなかった
魔書に翳す手は、徐々に赤黒の光を点し
アストラル体が現世に影響を及ぼし始める超常の燐光を放っていた
「なるほど、人ではないものが人のフリをして学園ごっこか
これは滑稽だ……ではただの人である俺は震えて眠るしかないか?」
顕在するのは、赤黒いシンプルなゲート
ゴゴゴ……と石畳が地面を擦る音がし、徐々にそれが開いていく
「なあ教えてくれ、クリシュナの門よ…………」
相対するように開く
この世に長く留まってはいけない禁忌のゲート
その奥からは、現世に生きる者全てを連れ去ろうとするような
渇望に淀んだ半透明の手が無数に伸びていた
地面をのたうつ無法者の一人が、足首を掴まれ
ゲートの奥へと消えていく
「……………また、この状況か…」
心眼のアイマスクに隠れたダークグレーの瞳が
相対する室長補佐代理という男を見据えていた
それは、どちらかが動けば、どちらかが…
あるいはどちらも無事ではすまない激突が起こるだろう事が予測される光景だ
■ロウゲート > 『どうした?もう抵抗は終わってしまったか?へへへ…』
アンプルのカートリッジを排莢するツールを手にしながら
その様子を見下ろしていた
薬は当然回っている、そのようにしか見えず、また疑う余地も介在しなかった
目の前の女はただの無力で、何かをしくじったアーパー女だ
だから貪るのだ
『ほら…言えよ…始めて会った男に腰を振る淫乱でごめんなさいってなあ!
へへへそしたら……もう一本くれてやってもいいな?』
チャプ……と波打つ細いアンプルを見せる
末端価格で数万は飛ぶであろうその薬を、見せ付けるように目の前に翳し
そして
『オラッ…言えよ…私は淫乱です、ってな!へへ!
ほら…くっ…そろそろ出すからな…ちゃんと締めろよ!』
グズグズに蕩け切った膣内を暴力的な肉棒がかき混ぜる
先程まで乱暴に突き込んだとは思えないぐらい
そのスロートは滑らかだ
相手の快楽が高まっていく感覚に合わせて、自身も果てる
男の脳内は、最早その事しか考えられない
ぐっ…
ぐっ…
発言から5度目
子宮をペニスが最奥まで貫いて、ボコ…と下腹を盛り上がらせてゆきながら
粘っこい精液を大量に放っていくだろう
男はうわ言の様に孕めと呟いていたが、ヴィクトリアにそれが聞こえていたかどうかは定かではない
■『室長補佐代理』 > 「いいや、俺は人間さ。どこにでもいる人間さ」
アルコールの濁流の中、影は笑う。笑う。笑う。
その黒影は****のよう。
御伽噺のバケモノのように。森に浮かぶ邪霊のように。
「……なるほど、故に……ただの人である君に、人である俺では何もできないだろう」
イデアの影に、浮かび燐光。
開くは遥か地獄の門。
生者貪る亡者の腕。
しかして、それにも……。
「けれど、どうやら。指輪の“君”は人ではない」
右手を、伸ばす。
「Eloim, Essaim, frugativi et appelavi.」
「我は求め訴えたり」
嗤う、嗤う、口端を歪めて、ただ笑う。
「地獄の門なら都合がいい。ならば、こちらは地獄の君よ」
「『君の友人』 其の名に於いて」
「我、君主の権限を願う」
身が滲む。その背が滲む。
体が滲む。その目が滲む。
「鍵よりこぼれたかけらのひとつ」
「ソロモン王の名を以て」
「模倣式は導き出す」
「汝が姿と我が権能、失われたもの」
「暴く影」
「足掻くすべてを智とするもの」
「顕現せしは72柱 序列3位が地獄の君主 Vassago」
影が、男の身を包み。
その右手が、影が。
無数の爪を、顕現させる。
■ヴィクトリア > あ……あーーーっ、あ……、ふぁ………………んんっ、ふぁ………………!
【たすけて、たすけてたすけてたすけてたすけて
ボクは、ボク………………ぼく、は……?
あれ………………きもち、いい? どう、なってる、の?
ヴィクトリアの意識は何処か半分飛んでしまっているが、もちろん身体機能は極めて正常この上ない。
もちろん全部聞こえているし、男がどうしたいか何を望んでいるかどうしたら悦ぶかどこまで焦らすのがいいのか
全て把握している。
もはやヴィクトリアをむさぼるようでいて、都合のいいように感じさせられていると言っていい。
まさかこうした手練手管に慣れた調教人である自分が、こんなに夢中になり我を忘れるほど女に溺れるとは思わなかっただろう。
しかもこんな……その辺にいるようなナマイキで乳臭いだけの小娘が、だ。】
わら、し……はぁ……………………あは……?
【光を失った瞳で……その言葉を言い切らない。
言い切って屈服してしまえばそれで終わりだ。いいように焦らして、弄ぶ。男を誘い、嬲る。
故に、おかしなことに……既に主導権は、少女の方にあった。】
■ロウゲート > 「口で言うのは、簡単だな…
俺は…今まで平気な顔をして嘘を付く奴を何度も見てきた…
俺の心には正義なんてものはなく、何を聞いてもそうだな、としか思わず、感情が揺らされる事は無かった
だが、これほど愚かで空々しく、腹の煮え立つ嘘を聞いたのは初めてだ」
人である、など
どの口が言う事だろうか
目の前の生物が、自分と同じ人間であると主張する、おぞましい光景だ
ゆえに受領できない
こんな生き物がこの世にいて良い筈は無い
だから……口火を切る
相手を絶対に認めないという意思が、対価に血液を奪われる痛みを凌駕した
アドレナリンが静かに巡ってくるのが判る
見上げれば、狭かったカラオケボックスを所狭しと多い尽くす影、影、影
流石に無事では帰れない
あの時、異能を食らって命からがら逃げた時が、人生で一番ヤバい時だと思っていた
それがこんなすぐに塗り替えられるとも、また思っていなかった
吹っ切れた感情は己の表情を無にし、心を研ぎ澄ませる
瞳は狩猟獣めいて光り
そして掌がピアノ線を手繰るように走る
「―――汝の魂を此方へ……開け冥界の門」
トン、とタッチタイプでキーをノックするように、魔書を中指で叩く
それに応じるように、無数の爪と同数の半透明の手が、殺到するように伸びた
この世ならざる物達の死者行軍、その光景は正に百鬼夜行
お互いの異能がぶつかり合い、そして……どうなったか…
――――――――――――――――――――――――――――――
『ぐああ…っ!クソ!この小娘…止まんねえ…クソ!』
ドク…ドクッ……と、己の淫蓑の体積を超えるのではと思うぐらいに
精を膣内へと注ぎ込んでいく
っだが、止まらない
一体それがどういう理屈なのか、男には最早考える余裕もなかった
この女が…この女が…
呼吸も荒く、その女を貪るようにがっつく
今果てたばかりの己の肉棒を奮い立たせ、膣襞の感触を子供のようにほしがる
『はぁ……はぁ……イク…またイクぞぉ……』
ドクン…
跳ねるように背筋が強張り、膨大な量の精液がヴィクトリアという少女に注がれる
男の目は、徐々に白目になろうとしていた
■ヴィクトリア > くすくす………………まだ………………ぁ?
【ああ。コイツが望んでいるならしかたがない。
そのようにするべきだろう。
……だってほら、この糞野郎はボクをこんな目に合わせてくれたんじゃないか。
じゃあ、この豚のいうように………………
ヴィクトリアの飛びかけた意識と、身体機能がようやく合わさってくる
………………つまり、このまま……………………快楽で。
本人が望んでいる快楽で本人が望んでいる通りに本人が望んでいるモノを……………………ボクが望む形でくれてやろう。
……………………ほら。
男はもう止まらないだろう。
この高性能極まりない快楽人形に、誘われるままに薬を複数本打つような真似までしてしまったんだから。
それはつまり機能の髄を尽くして、男をもてなしていいという彼の許可だ。
だから望むままに、人間には過ぎた快楽をあたえるべきだ……………………】
わたし………………?
ちがうよ………………ボクは、いんらん、だよ……?
【いつの間にか支配下においた男を見下すような、光を失った瞳で。
……男の生命としての限界を振り切るほどに、絞りとった。
そして最後の言葉……………………】
………………いったろ?
おまえは……………………しね。
■ロウゲート > 『はっ…ハァーッ…ハァーッ……い、今…今…出す、ぞぉ……くッ!』
弛みのかかった絞まりのない腹を揺らし
目の前の少女に腰を打ち付ける
そのさまは、糸の切れた序瑠璃人形のようで、まるで幽鬼のようだった
取り付かれたように、腰を振るう
『お前はぁー……はぁっ…はぁー……』
朦朧とした目は、ヴィクトリアしか移っていなかった
魔力や異能など、何も力が発動したわけではない
それでも、この蟲惑的な瞳から視線を逸らす事ができない
快楽の沼におぼれる様に、少女の声が、耳の中にスポンジのように浸透していく
『そう…おま………いん…らんで……』
コヒュー…コヒュー…と息使う音が聞こえる
最早過呼吸となっているのだろう、瞳孔は開いていた、己の意思の無い
それは、ダウナー系薬物で廃人になった者の目だ
生命の灯火と引き換えに、また精を放っていく
ドクン、ドクン…
『俺はァー……しぬ……ぅ……………』
ドクン……
最後の射精だ、男の人生で最後の……
数十秒に渡る射精の末
プツン……と最後の糸が切れ、演目を終えたマリオネットのように
少女の体に被さる様に意識を失った
魂は、そこには存在しなかった。
ヴィクトリアは、そこまで来てようやく、外へと繋ぐドアに
大きな亀裂が走る音が聞こえるだろう
ビキキキィ!とコンクリートの避ける音、明らかな崩壊音だ
■『室長補佐代理』 > 殺到する影。無数に突き刺さる爪と魔手。
冥界の門から染み出す殺意は形となり、悪意の群れは肉を切り裂く。
無数の害意が男を貫き、血を啜り、眼光すらも刃となって、男を射抜く。
嗚呼、だが、それでも。
男は、
「Vassagoそれは邪知の化身」
「秘奥の真意をただ暴き」
「隠された罪。その罰ですら、抜き身とす」
「悪魔の契約。それは絶対。即ちそれは」
「我は汝。汝は我。我思う故に……汝在り」
嗤う。
「『主観論』(コギト・エルゴ・スム)」
「The iMitation ∴high agent∴your best arc enemy」
男は、傷つかない。
男は、死なない。
男は、倒れない。
敵を知る。悪魔の契約により、それを知る。
知り得たのなら、定義する。
定義即ち。
「俺は『定義する』……俺は『お前に負けない俺』になる」
知り得たのなら、それは成される。
「人を騙る哀れな者よ」
「お前の声は届かない」
男の影が、膨れ上がる。
それはロウゲート自身。それはロウゲートの知るもの。それはロウゲートの敵。
汝を知るが故、汝を謀る。
「残 念 だ っ た な !」
我思う故、我在りて、我思う故、汝在り。
しかして、我思うわざるは……汝無し。
■ヴィクトリア > ……ごちそうさま。
【まるで淫魔のごとく魂を奪い取った人形は、慈愛とも憐憫とも嘲笑ともとれる笑顔で見送った。
なにか満足したようなまずいものを開けてしまったような顔で向こう側に踏み越えてしまった男を。
………………。
薬の効果時間と思しきじかんはまだ、ある。
だから、おわってもまだ、こうかは、きれない。
白濁にまみれた少女は、ふらふらと…………おとのするほうへ、むかった。】
ボクは………………
■ロウゲート > 魔書から生成された漆黒の一粒
それは紛れも無く
死者と生者の境目を断ち切る魔の果実だ
黄泉戸契。
死者が口にできる最高の甘味をその手に取った
コレを手にする事で、死者達は自身を王とする
だが、笑ってしまう、自分が最大限に使った力の流動、魔力の渦潮
銃のライフリングと一緒だ、同じ魔法を使える魔術師は一人しかいない
誰もが同じようで少し違う魔術しか使えないのだ、絵の具と同じように
だが……
それが『なぜ向こう側からも感じるのだろうか』
「大げさな術式だ
さて……俺も腹を決めるか……」
鼻で笑う、こんな<絶対に相手に勝つ為の魔術>じゃないか・
ナンセンスだ…
美学が無いと俺は思う。
だが、それはそれとして、では目の前の相手はどうする?
まともにぶつかっても勝ち目は無い
俺には勝つ力は無い
転げて崩れ落ち、死ぬも一興と笑うのか?
「ああ、それもまた、難だか癪だな……」
では…どうしたらいい?
目の前に確実に迫る死は、俺を絡め取ろうとしていた
退路もなく、所謂チェックメイトという奴だろう
「ハハ……」
乾いた笑いが浮かぶ
だがそれは、諦念からくる笑いではない
「どうやら、俺は他人の思うレールに乗るのが、<死ぬほど>嫌いらしい……」
手にした黄泉戸契、それを顔元まで掲げる
敵の攻撃は眼前
がぶり………
音を立て、果実を貪った
白目であった所が黒く、黒目は赤黒く変色していく
この瞬間、自身は生者ではなく、死者となったのだ
この世に留まり続ける死者に
「死ぬ…には……いい夜だな…………」
力の淀みに吹き飛ばされ、現れた明け空を眺めながら、そんな事を零す
敵の攻撃が押し寄せ、全てのエネルギーが枯れ果てたとき
自身の肉体はアストラルに分解され。空に解けて消えていく
全ての攻撃が止みそこには何も残らなかった。
<<咎咎咎咎咎咎咎咎咎咎咎笑って死ねると咎咎咎咎咎咎咎咎咎咎咎咎
咎咎咎咎咎咎咎咎咎思うなよ咎咎咎咎咎咎咎咎咎咎咎咎咎咎咎咎>>
全てが終わってからその後
室長代理補佐という男の耳には、風の吹く音と同時に、そんな言葉が聞こえただろう
■ヴィクトリア > 【そして。
もしかしたら。
いろいろなものが逆さになった男に……
男に一方的に陵辱されていた女の
光のない瞳で嗤う笑顔が………………逆さに写ったろうか。
……ありえないものを見た感じだったかもしれない】
■『室長補佐代理』 > 漆黒の影が男を食らいつくし。
世界を蹂躙し、塗りつぶし、全てが終息し……もとに戻った時。
果実を口にした男は消えていた。
不気味な呪いの言葉を残したまま。
しかし、男はそれでも笑う。
「わかってるさ」
そして、そのまま……奥の扉へと、足を向けて。
汚れきった少女をみてもまた、いつも通りに笑って。
当たり前のように、告げる。
「迎えに来ましたよ。局長」
■ロウゲート > 外はすっかり明るくなり
日差しが差し込んでいた
落第街にめったに訪れない満点の晴れ空だ
差し込む日は、陰の気を洗い流すように、崩壊しかけたカラオケボックスを照らすだろう
気付けば、他の生命はいなかった
そこに残る二人以外は、全てが冥界に連れ去られたか
あるいは逃げ延びた者もいたのか、それは定かではない
■ロウゲート > 【PL:では失礼します!ろーるごちゃごちゃしててごめんね!】
ご案内:「落第街 退廃通り」からロウゲートさんが去りました。
■ヴィクトリア > ……くす。
【どこかぼーっとした頭で考える。
こいつ……このやろう。補佐代理の………………なんで、いま、ここに?
あれ、ボク、ボクは何をしたいのかな……抱きたい、抱かれたいよ?
コイツはボクに何を望んで何をして欲しいんだっけ。
だってコイツは、ボクがしてほしいことを………………わかってるんだろう?
なのになのに、あれ、あれ……?
混乱する。
さっきの男なら単純だ。
だが目の前のこの男が何故ここにいるのかもわからなければ、ボクの望みを知っているはずのアイツが
……ぼくをたすけてくれなかったりゆうもわからない。
薬で飛んだ状態のAIはそれを判断できなかった。
できなかったから………………】
ばか。
ボクは……………………なんなのかな。
【こうどうせんたくが、できなかった】
【かわりに、ひかりをうしなっためから、なみだがたくさんこぼれおちた】
■『室長補佐代理』 > 茫洋と立ち尽くす少女をみても、男はただ見下ろすばかり。
ただ、見下ろして……黙ってコートを脱いで、被せる。
男物の、それも長身のこの男の来ているそれは少女が身に纏っても余るほど。
ただ、それを被せて、いつも通りにじわりと笑って、男は言う。
「アンタは俺の上司だ。それ以上でもそれ以下でもない」
そして、おもむろに左手を差し出して、つぶやくのだ。
「帰りましょう。遅れてすいませんでした、局長」
■ヴィクトリア > ……ばか。
【言葉がついて出た。とまらない。】
ばか、ばかばかばかばかばか。
……ボクが……ぼくがしてほしいことは……ぜんぶ、わかってるんだろ?
なのにボクは何も……なんだ、これは、なんだろう?
ぼくがうらぎってるのがわるいの?
ぼくがくずだからだめなの?
ぼくがおんならしくないから?
なんなの?
ぼくは、ぼくは……
なんでおまえにしてもらえないんだ?
いつもそうだ、きょうだってそうだ。
ぼくは……………………きらわれてるのかな?
【その場で膝をついて、焦点の合わない瞳で、まるで懺悔するかのように。
どろどろに汚れた姿で、抱きつくことも出来ないまま、なんとか制服の裾を掴むのが精一杯のまま
俯いて涙をこぼすしか出来なかった】
■『室長補佐代理』 > 涙をこぼす少女の手を掴む。
ただそれだけ。
彼女がそれを望まない。
彼女がそれを恐れる。
だからこそ、ただ手を掴んで、いつものように、笑みを浮かべる。
不気味な笑みを。
そして、吐き出す言葉は……いつもと全く同じ調子。
同じ調子で、首を振る。冗談めかして、ただ笑い、告げる。
「わかりませんよ」
「アナタのしてほしい事なんてわからない」
「アナタが悪いかどうかなんてわからない」
「アナタがクズかどうかなんてわからない」
「アナタが女らしくないなんて……わからない」
「しかし、一番今分からないのは……」
少し強引に、手を引く。
「アナタが、俺に嫌われているなんて思うことが、わからない」
事も無げに、そういう。
いつも通りに。何も変わらず。
何も変えず。
「帰りましょう。局長。夜の女性の独り歩きは、危険ですから」
■ヴィクトリア > ……だって。だって。だって。
【かんじょうが、ばくはつ、する】
じゃあどうして……なんでだよ!
どうしてボクから一定の距離を取るんだよ!
どうして用事がないと連絡もよこさないんだよ!
どうして徹底して他人行儀なんだよ!
なんでそこまでしてボクに合わせるだけ合わせておきながら、頭の一つさえなでてくれないんだよ!
このあいだのレストランだって、もういけないじゃないか!!
お前と一緒に行った思い出を……どんどんボクが壊しちゃうんだよ!
なのに……どうしてボクのともだちなんかでいてくれるんだよ!?
ぼくはおまえにひどいことしかしてないだろ!
きょうだって……まにあわなかったけど……いちばんきてほしいときにまにあわなかったけど…………………………
それでも、きてくれたおまえに………………
たすけに……きて、くれた……………………おまえに
【ぼくは、おまえにわがままをいって、こまらせるすることしか、できない。】
【その言葉は続けられなかった。
代わりに、手が、引かれた。
…………………………つよく、やさしい、て。】
■『室長補佐代理』 > 黙って。ずっと黙って聞いている。
いつも通りの笑みを浮かべて、静かに聞いている。
ただただ静かに、聞いている。
感情を爆発させ、ただ喚きちらし、声を張り上げる少女をみても、ただ聞くのみ。
全部聞いて。ただ聞いて。
最後に、代わりに、手を引いて。
「さっきいったじゃないですか」
ぎこちなく、右手を伸ばす。
「わかんないって言ったじゃないですか」
「いわれなきゃ、わかりませんよ」
ピクリとも動かない右手。
悪魔との契約の代償として、その機能を永久に失った、右手。
それでも、手を押し当てることくらいは、なんとかできた。
乱暴で、何の優しさもない。
それでも、言われたとおり、なんとか頭を撫でる。
「女はわからねぇな。ほんと」
そういって、困ったように、何とか笑った。
■ヴィクトリア > …………あ。
【だれも、さわってくれなかった、ぼくに。
ボクは。
なでられる手にただ、俯いて。】
………………ばか。
【いま、いわれたばかりなのに、うなずくことすらできずに。】
……………………。
【結局、こいつを困らせるために、てをにぎりかえすしかことしか出来なかった】
■『室長補佐代理』 > その結果に満足したように、殊更強く手を引いたが……足元をみてから溜息をつき。
手を離す。
そして、一歩強引に踏み込んで。
「局長。すいませんが、俺はもう早く帰りたいんで」
グイッと、抱き寄せる。
「こっちで勘弁してください」
そうのまま、左腕一本で抱きかかえる。
小柄なヴィクトリアの体はそれでも十分胸元に収まった。
「この方が、手っ取り早いですよ。日が昇りきる前に帰りましょう」
そのまま、歩いていく、
少しでも日から逃れるように、路地裏から路地裏へ。
無論、その間はただの一度も、男が少女から離れることはなかった。
■ヴィクトリア > ………………。
【腕の中に抱きかかえられる。
でも、それでもはい、とはいえなかった。
代わりにそっと…………身を寄せた。
つたわるだろうか。
あたまがぐるぐるする。
もしかしたらこの男がこんなことをするなんて嘘なのかもしれない。
でも、夢でもいいや。今はすごくねむい。
………………ゆめなら、いいよね?
室長補佐代理の腕の中でまどろむと、そのまま、すぐに寝息を立てる。
…………きょうはもう、
つかれ……た……】
【そのまま、少女は腕に抱かれていった……安心しきって。
……すくなくとも、目覚めるまでは。】
ご案内:「落第街 退廃通り」からヴィクトリアさんが去りました。
ご案内:「落第街 退廃通り」から『室長補佐代理』さんが去りました。