2017/03/16 のログ
ご案内:「廃墟」に百鬼さんが現れました。
■百鬼 > 落第街の郊外…打ち捨てられた廃墟群が広がる一角に紛れ込むようにその廃墟はあった。
ゆらり、と音も無く廃墟の前に現れる黒装束に白い面の人影。
その姿は曖昧で、まるで幽霊か死神のように気配が希薄で…そこに存在しているかも危ういような。
「………。」
ここが廃墟になってから、少なくとも数年単位が経過している。
海に近いのが建物の劣化を促進したのだろうか…既に大部分が崩落して瓦礫の山に等しい。
暫し、無言で佇めばゆっくりと靴音一つ立てずに歩みを始める…向かう先は瓦礫の山の一角だ。
「………ここか。」
仮面の奥で、男も女ともつかぬくぐもった声音で淡々とした呟きを零し。
不意に瓦礫の山が一瞬で弾け飛んだ…四方八方に散らばるそれらは意にも介さず。
瓦礫の山の下、現れたの両開きの重厚な造りの扉だ。ただの扉ではなく、魔術、異能、機械技術と3段構えの認証式なのが見て取れる。
これならば、例え見つけた者が居たとしてもそう直ぐには解錠は出来ないだろう。
…だが、仮面にそんなのは”関係無い”。外套の下から、黒い革手袋に包まれた右手が現れ…クイッと手首を上に捻る。
それだけで、まるで爆発したかのように扉がひしゃげて真上に弾けとんだ。
だが、何故か音はほとんど周囲に響かない。その不可思議な現象は当然という感じで、現れた階段を無造作に降り始める。
ご案内:「廃墟」に百鬼さんが現れました。
■百鬼 > 程なくして、階段の終点…地下施設へと到達する。照明…そもそも、電気系統は既に麻痺していると見るが。
「………いや…。」
打ち捨てられ、忘れ去られ、封印されようがまだ”ここは生きている”。
…そもそも、仕事関係無しにここに訪れた目的は単純にして明快…ここを”終わらせる”為だ。
軽く、右手の指をパチンと鳴らせば魔術なのか異能なのか、不意に照明が復活する。
ここを訪れるのは”自分は”初めてだが、体の方は矢張り覚えがあるようだ。
「……――の施設…と、なれば」
そのまま、奥へ奥へと歩みを進めていく。何らかの研究施設だったのか、埃を被ったデスク、椅子、デスクトップのPC…には目もくれない。
どうせ、既に全ての『研究データ』は破棄か移送された後だろう…分かり切った事だ。
やがて、最奥にある重厚な扉の前に到達し足を止める。魔術、異能、機械式の鍵にアナログ錠…生体認証の端末まである。
…が、今回の目的はこの奥のモノだ。右手をその重厚な扉へとそっと伸ばし…”捻る”。
それだけで、まるで捻じ切れるように重厚な扉がグシャグシャの鉄屑へと変貌する。
その残骸を踏み越えて中に入れば…矢張り、ここは電源が生きている。
「………電気系統が独立している…だけではないな。幾つか細工がされていると見るべきか」
ザッと内部を見渡す…用途不明の巨大な機械が立ち並び、奥の方には巨大な培養槽…数は全部で10程。その内、3つが空で4つが何故か粉々に割れている。
――そして、残る3つには…元は人…だったのだろうか。歪な形状の”肉塊”が蠢いている。
ご案内:「廃墟」に百鬼さんが現れました。
■百鬼 > 「……”初めまして”と言うべきか、”久しぶり”と言うべきか…」
仮面の奥、僅かに赤い瞳を細めて蠢く醜悪な3つの肉塊を順番に見遣る。
忘れ去られた失敗作、廃棄物…化け物の”成り損ない”。
見れば、培養槽にはそれぞれナンバーらしきものが振られている。
10のそれは全てがバラバラのナンバーで連続していない。
「………38号……51号……66号…残っているのはこの3つか」
ある意味で”同類”と言えなくも無いそれらを改めて眺める…哀れみも憤りも喜びも無い。
……矢張り”本人でなければ”こういう時に感情が湧き上がってこないのだろうか、と。
他愛も無い思考に耽りながら、淡々と右手を伸ばし――…
「………そうだな、そろそろ終わるといい」
グッと右手を握ると同時に、『38号』の肉塊が培養槽ごと弾け飛んだ。
フと醜悪で耳障りなノイズじみた音が響き渡る…この肉塊の悲鳴だろうか?
歪な触手じみた”腕”、捩れた”足”、異様に細長い”胴体”…大量の眼球がビッシリ浮かんだ”頭”。
それらを一瞬でミンチへと変えてしまう。…あと2つ。
(……掛けるべき言葉など無いが……強いて言うなら……嗚呼、”お互いに”運が無かったな)
ご案内:「廃墟」に百鬼さんが現れました。
■百鬼 > 培養槽ごと潰され、赤黒くドロドロとしたミンチ状になった『38号』を尻目に、残る『51号』…最後に残った『66号』も同じ手順で全てミンチにしていく。
…が、これでも死に切れないのか耳障りなノイズが不協和音の如く響く。
怨嗟の声か、慟哭か…残念だが、それをこちらに向けられても何の感情も沸かない。
「……”次”があるなら、もう少しまともな人生を歩むといい…私が言えた事ではないが」
そして、右手を横に振れば、10の培養槽が上下からプレスされたように完全にひしゃげ、圧縮される。
…コロコロと、圧縮の際に中身が押し出されたのか目玉が一つ足元に転がってきた。ギョロリと動くそれを無造作にブーツで踏み潰す。
「………。」
さて、とりあえず目的は完了した。後は…そうだ、この跡地も纏めて潰しておこうか、と考える。
ご案内:「廃墟」に百鬼さんが現れました。
■百鬼 > 「………っ…!」
不意にフード越しにこめかみの辺りを押さえる。鋭い頭痛が一瞬だけ脳内を駆け巡った。
「……”まだ残っている”…と、いう事か」
アレから微弱な反応すら無かったというのに、”同類”を見たのが刺激となったのか。
それとも、誰かの記憶に触発されたのか…そこまでは把握しきれない。
「……私は私で、お前はお前だ■号……。」
静かにそう呟いて、こめかみを押さえていた手をそっと下ろす。そのまま、ゆっくりと踵を返して歩き出し――…
扉を出た瞬間、その研究室を完全に”潰した”。亡霊の亡骸ごとここで眠るといい。
ご案内:「廃墟」に百鬼さんが現れました。
■百鬼 > 「………ああ―…これが気持ち悪いという感覚か。成る程」
研究室を潰し、施設を出ようと歩きながら一人呟く。何もかもが消えて、それでもまだ残っているのか。
煩わしい、という感情はないが異物感のような不自然さを実感する。
こういう感覚も初めてと言っていいかもしれない。
「………やれやれ、本当に”面倒臭い”…。」
そっと吐息を仮面の奥で零しながら、緩やかな無音の足運びで来た時と逆に階段を上って外へ。
相変わらずの廃墟を見渡せば…右手を一振り。階段ごと地下を陥没させて瓦礫の山で埋めておく。
「………私のデータが残っていなかっただけマシと思うべきか」
ご案内:「廃墟」に百鬼さんが現れました。
■百鬼 > もっとも、この打ち捨てられた場所になかっただけで、何処かにまだ存在している可能性は大いにある。
虱潰しに探す、というのも骨が折れるし…”関係者”や風紀、公安の網に引っ掛かるのは勘弁願いたい。
「……データの流用……いや、それは無いか」
失敗作…廃棄物。”全員死んだのだから”流用も何も無い。
「……もっとも…」
今思えば、連中も己の”誕生”は想定すらしていなかっただろうが。
既に廃棄物とされたモノの行く末など連中が気に留めるはずも無い。
先の研究施設と同様、失敗作の再利用すら全て失敗している有様だ。
「……あぁ、まったく」
ゆらり、と闇に溶け込むように無音で歩みを進めながら思う。
…本当に面倒臭い…この体は。
ご案内:「廃墟」に百鬼さんが現れました。
ご案内:「廃墟」から百鬼さんが去りました。