2016/10/07 のログ
ご案内:「落第街 地下施設」に五代 基一郎さんが現れました。
ご案内:「落第街 地下施設」に綾瀬音音さんが現れました。
■五代 基一郎 > 綾瀬音音が再び意識を覚醒させようとすると、若干おぼろげながらそれは君の手元に戻ってくる。
最後の記憶はいつだろうかと辿ればゆっくりと映像を逆再生するかのように思い出されるのではないだろうか。
昼間。週末といえるその日に、夕食の買出しに出た時……君は唐突に立ちくらみに陥った。
お腹に子供を宿した、まだ安定期とはいえないその体のこともあり
倒れかけた君は周囲の人によりまず母子共に安全のために救急車を呼ばれ
搬送されたところで安心してか意識を失った……というはずであるが。
今再び意識を取り戻した君は、視界に映るものがないことで
自身の両の眼は何かしらにふさがれ……また、その体も
両手は手首のあたりで固定され、足もなにかしら開かれ自由の利かない身であることが
うっすらと感じ取れるかもしれない。
体に感じる重さから、自分が仰向けのような姿勢にあることもまたわかるだろうが……
とても病院の施設とは思えないことは、察せられるだろう。
最も産気付いて今すぐ子供が産まれそうというのであれば、違うかもしれないが。
■声>「心拍、脈拍共に正常です。対象に投与した薬品の調整は成功でした。」
■声>「入手した医療施設のデータ通り、母体は健康体。腹腔内部も影響は見られません。」
また耳はふさがれていないためか、何がしかの声は聞こえてくるが
それとそれに加えて聞こえてくる周囲の音は時計のような機械音と心電図の音だけしか聞こえてこないようだ。
■綾瀬音音 > (ぼんやりと、意識が覚醒する。
まず真っ先に思い浮かんだのは、病院だろうかと言うことだった。
学校帰り、夕飯を何にしようかと思いながらスーパーへと向かったことは覚えている。
その時、立ちくらみをして――そう思えば戻すまでは行かなかったが、吐き気が酷くて朝も昼もろくに食べられなかったのだ――までは覚えているが、そこからの記憶はない。
外で倒れれば、当然ながら医療機関に運ばれる、それがこの少女の認識している一般社会の常識だ。
まして自分はは妊娠初期であり、この間発行されたばかり母子手帳も持っている。
そうあれば安全のため、病院に運ばれるはず――。
故に、開いたはずの目が何も見えずに塞がれており、
更には不思議に思って手で目を擦ろうとした所で両手が固定されていることに気づき、
何ごとだろうかと全身がこわばれば足を開かれた――それこそ分娩台に載せられているような――姿勢で有ることに気がついた)
(声も出ない。
ここは病院ではない。
何があった?
ここは何処?
あれからどれくらいの時間が経っている?
先輩は?
それより何より―――
赤ちゃんは?
聞こえてきた声から、自分の体調はそれなりに“正常”で有ることは解る。
だが、お腹の中の子に付いては何もわからない。
それに、投与した薬品?
なにがあった。
何をされた。
ぶわっと嫌な汗が吹き出すのを感じる。
唇が動くが、様々な恐怖から声はやはり出ない)
■五代 基一郎 > はやる気持ちを抑えながら、一人。
落第街の闇を駆けていく。
その日の夜、家に帰れば音音はいなかった。
まず女は男より早く家にいて帰りを待つものだなどとは思わないが
いつもいなかった試しはなかったし、何も連絡がなかった。
なかったから、一瞬……そう、今思えば長かったような一瞬の後にすぐに思い至った。
何かが起きていると。
一人、まだ事件かどうかもわからないがその職権を使い
綾瀬音音の足跡を辿り聞き込めば救急車に運ばれたことはわかった。
わかったが、そもこの島の公的な病院のどこにも綾瀬音音は搬送されていなかった。
つまり、綾瀬音音は何者かの手により連れ去られたのだ。
それがわかってから……公的には籍を入れていないため
法執行機関の関係者が、という優先的な条件が適用できなかったものの
何とかツテやら頭を下げて情報を提供してもらい探せば
件の救急車は落第街へ向かったことがわかり、その場所まで今駆けて行ったが
そこには打ち捨てられて廃棄、炎上している車両だけが残されていた。
■五代 基一郎 > 綾瀬音音の意識は次第にはっきりと戻り、今完全にその掌中にあった。
しかしその意識とは別に体の自由はなく、ただ動けないということもはっきりとその頭に染み渡ってきたのだろう。
■声>「落第街の方で母体を確保するには限界がありましたが、これからはこのような形のほうが効率はよいですね。
次回以降はまた別の方法を考えなければいけませんが。」
■声>「前の母体は既に限界が出来ていた。母体が異能者であっても場所が場所だ。やはり程度は落ちる。
だが今回は母体の健康状態も良く、既に形成されている素体の種も異能者だ。
今までにない質での母体となることは確かだ。
これから産まれ続ける素体の質も約束されたようなものだ。」
時計の音のような機械音が続いていく。時折何かの呼吸音と、水と空気が混ざり合う音も聞こえてくるだろう。
何かの呼吸音のように。
■声>「異能者を生み出す異能の母体。これで異能の研究もまたひとつ進むだろう。」
■声>「生まれてくる素体は出資者への提供となりますが、次の素体は気に入るものが出来るでしょう。
我々の研究も安定期に入るかもしれません。」
■声>「そうだな。では準備を始めてくれ。母体のデータから関係者は些か面倒だ。
施術後にはすぐこの島を離れよう。母体があれば研究はいくらでもできる。ここにあるサンプルは全て廃棄してかまわない。」
■綾瀬音音 > (真っ白になりかける思考――だが、そういう場合ではないと告げるのは人としての本能か、母親としての本能か。
それでも状況は何も解らず、更に言うならば自分が動けないという事実も変わらない。
だから、耳に入る声が、音声が――
残酷なまでに、耳へと入り、脳内へと響き渡っていく)
(母体、形成されている素体、異能者。
今までにない質。
これから“生まれ続ける素体”の質。
異能者を生み出す異能の母体。
“生まれてくる素体は出資者への提供”)
(耳に入ってくる言葉は、どれもが異質でいながら、不吉な――自分にとっては今までの何者より不吉な色合いを含み、なのに彼らにとっては一種の幸運を孕んでいた。
何が何だか分からない――――――――
そう思考を放棄するには、些か黄昏時へと一時的にでも身を寄せすぎ、
更にはこの少女は、順応能力が高かった。
――否。
既に“母親”であった。
ここまで聞かされれば自分の置かれている状況がどういうものであるのか、手がかりを掴むのはそこまで難しいことではない。
異能の研究の一環として自分は捕まったのだ。
それも、反吐が出るような、最低な研究に。
呼吸が上がる。
施術――が何であるかは考えたくもないが、兎に角それが終わるまでにどうにかしなければならない。
自分だけならまだしも、守るべき命が有るのだ。
先輩は、探してくれているだろう。
そう、自然とそう思った。
そうすれば、見つけてくれるはずだ。
そう信じた。
そうしなければ、それこそ今ここで泣きわめいてしまいそうだったから。
カチカチと情けない音を立てそうになる奥歯に力を入れる。
正気を保ってられるのが不思議なくらいで、だけど。
この子とこの子の父親のためなら、何だってすると、そう決めていたから。
呼吸が早る。
心拍数が上がる。
それらは“声”に意識が戻ったことを伝えるのは充分なことだろう。
指先程度のほんの僅かに異能を行使する。
使えればいい。
そんな祈りにも似た思いを込めて。
但し――それも彼らが自分に“何か”をしてこなければ、の話である。
触れるか何かすれば、熱傷を負わせる覚悟はあった。
勿論――使えれば、の話にはなるが)
■五代 基一郎 > 意識の完全な覚醒。故に。その呼吸、心拍数は残酷なほどに
心電図の電子音としてこの場にいる者たちへ報せた。
■声>「母体候補の献体が目を覚ましたようですが」
■声>「予想より早いな。妊娠期の人体に対しての投薬量としては十分だったはずだが。」
■声>「なら追加で母体共に影響のない程度に投薬をしろ。ここで暴れられては困る。
規定量以上で構わない。意識が覚醒したというのなら許容量を確認している暇はないからな。」
綾瀬音音の”何かしてこなければ”という祈りか思いかはわからないが
それらがどこか楽観的なものであったことをその声らは告げる。
ここまでして、何もしないなどということはないのだ。
彼らの中ではそれはこれから行われることであり、することであり
そのために活動しているのだから。
仕事であり、研究であり、そして……
母体に影響があるためか、薬物用の点滴には繫がれていないことは
完全に意識が覚醒した綾瀬音音の知ることとになる。
故に、その近づいてくる声とも機械音とも違う足音が何をするためのものかは想像するに易いはずであろう。
■五代 基一郎 > どこにいるんだ、どこに。
今でもデジタルな情報を繋げ、捜査を続けた。
しかしここは法の……公的な管理の外。
それも届かぬものなどいくらでもあった。
自分についこの前までいた護衛らがいれば……話は別であり
また自分自身も異能を使えれば……今すぐにでも探し出せるのだろうが。
半ば狂いそうになりながら、痕跡を探そうと駆けずり回っていたが
普通の人間の身ではそれらは遠く、見つかるよしもなかったが。
ふと、視界に現れ目の前に現れたそれ……先に別れた黒い女が口を開く。
自らの血を別けて、またその遺伝子を別けたのならば
己の感覚と感性、全て己の片割れを探すかのように意識を傾ければ感じ取れるはずと。
なぜ、教えるのかと聞けば黒い女は答えた。
その目でもう一度。何が行われているか見ればよいと。
何をと確認するまでもなく瞬きの間に女は消えて
そして何も邪魔をするものがいなくなればいわれたように意識を全て傾けた。
意識を集中させれば、その存在がどこにいるかおおよそ察することができた。
未だ残る超能のかけらか。ともかくそこへ走った。
無事であってほしいと。走る。
そして、その遺棄された建造物の入り口に真新しい痕跡を見つければ
ゆっくりと音を立てぬように進入していく。
廃墟のような外見とは裏腹に、いつ作られたのかわからないが……
少なくともこの島だけの資本で作られたものではないな、という構造物がここには存在した。
地下へ、地下へと進んで以下b時計のような機械音らが響くエリアに出た。
その機械音は”何か”を駆動させるものであり、そのたびに呼吸させるように
空気と水が混ざり合う音。何かが排出される音が響いていた。
薄暗いそのエリアの中……それらエリアをある一定の間隔で照らす……
薄明かりを放つ巨大な円柱が、並んでいる。
人の気配はなかった。なかったし、監視する装置類も見えない。
持ち出した拳銃につけられたライトをつけて進路を確認する。
確認したときに、その銃口……と同軸のライトがその円柱を照らせば
中に”収納”されているものが薄暗い空間の中で明瞭に存在を示した。
言葉を失う、絶句した。そこで何が行われているかではなく。
いや何が行われていようと人の所業とできるだろう。
だがここに”綾瀬音音”がいるとなれば、また話は別であろう。
当事者になれば、それもまたちがう。
そこに”あった”のは女性だった。
女性が、いや女性のようなものが女性とわかる姿ではあるが
増殖された生態的な何かに繫がれ、また何か下腹部に大きな空洞があり
そこから”何か生物的なもの”が産み落とされているものがあった。
完全に産み落とされてはおらず、腐敗し始めているかのように
その女性らしき何かと、何か生物的なものは淀んでいた。
目が、ピン留めされるかのようにひきつけられたが。
急がなくてはならないと言葉にならない衝動が、足を動かした。
早く、見つけなければ。
綾瀬音音を早く……でないと、彼女は
もしかしたら……いや、確実に
手遅れになる前に……
■綾瀬音音 > (指先に熱が灯る感覚がある。
それは紛れもなく――少なくとも今の自分には希望の灯火の様に感じられた。
自分の異能は“皮膚表面及び触れているものの温度を変化させる”ものである。
勿論それらは彼らの知る所であるだろうし、警戒もされているだろう。
だが、彼らは自分の最高温度――1700度に耐えられる拘束具を、用意できただろうか。
出来ていれば、自分は正直“積んだ”に近い状態になるのは目に見えている。
それに、お腹の中の命のこともある。
自分の異能の対価は自身の体温――即ち、過度の行使は低体温に繋がり、それこそまだ何の抵抗力もない命に即座に関わってくる。
だから、長い間の行使は無理だ。
自分が覚醒したことを受けて慌ただしく動き出す“何か”に、意識を集中させる。
近づいてくれば――否、近づいてこなくても――!!)
――――――は、ァ――ッ!!
(自分を奮い立たせるように呼気を吐き出しながら真っ先に異能を行使したのは、目元にある視界を塞ぐ“何か”である。
続いて、拘束されている手足のパーツ。
目元に触れている感触は布だ。
手首などを固定しているパーツは柔らかいかから金属ではない。
異能を受け付けない、もしくは過度に強化されていないものであれば、燃やし尽くしてしまうのは容易いはずだ――。
コントロールは上手く出来ない。
こんな状況下で、異能を行使するのは初めてなのだ。
それでも、即座に叩き出した温度は1000度前後。
身体に負担がかかるが、構ってはられない。
ここからは異能を行使し続ける限り自身の体内温度は下がる一方になるので、高温で胎児が焼け死ぬことはない。
拘束具が異能を受け付けなくても、生身の人の体では、近づいてくるのは容易では無いはずだ――。
その場合、タイムリミットがどうしても早くなるのは解りきったことではあったけれど――)
(ごめんなさい。
頑張って。
私も頑張るから)
(そう、祈るようにお腹の子に語りかける。
まだ、意識もないだろうその子。
だけど、頑張ってもらわなければならない。
未だ“彼”がここへと足を踏み入れ、
更にはそのおぞましい光景を見たことは未だ知らないまま。
彼がここに来てくれることを信じて、今は未だ一人、異能を行使する――)
■五代 基一郎 > 声が、ざわめきたつ。
そもそも薬物の投与により、未だ覚醒することはないと思われていた者に対しての拘束。
ある程度の抵抗と、調べられた異能についてのデータはあったがここまで行使することが出来るとは思っていなかった。
焼け落ちた目隠しが消え去れば、見えてくるのは薄暗い空間。
外套のように照らす円柱状の透明な何か。
そして、その異能を行使する綾瀬音音に恐怖する研究員らであった。
■研究員>「拘束が解かれたぞ!警備を出せ!警報!」
すぐさま、何かガラスが割れる音が響くと施設中に響くような警報の音が流れた。
そして、そこにあった分娩台のような拘束具を囲むように透明な壁が下りてきた。
強化ガラス製の壁か、見えにくいがその場所ごと封鎖するためのものか。
急なことでもあるため、その近辺にいた……今まさに綾瀬音音に薬物を投与しようとしていた
研究員もろとも閉じ込める。
■研究員>「寄るなァ化け物!!!!!!!」
薬物が入った注射器をがむしゃらになげつけ、腰に護身用にと備えて刺されていた拳銃が引き抜かれ
震える手で綾瀬音音へ向けてそれは狙われ、向けられた。
また他の研究員たちは、この部屋から一部始終を見ようなどとは思わず
一目散に逃げていく。それと同時にこの部屋にはなにか重たい音を響かせる足音が迫ってきていた……
■五代 基一郎 > 施設内部。
薄暗かったエリアを警報がかき乱し、警告灯が切り裂くように回っていく。
何か異常があったのは確かだが、何が起こっているのかは確たるものもなく。
だが何か異常があるかのように、方々から重々しい足音……
武装した人間が何人か、複数出てきてはどこかに向かっている。
ちらと見えた装備からして、ただ人と戦ったり獣とどうこうする程度のものではないことはわかった。
この騒動の中で音音を探すのは厳しいだろうが、この騒ぎに乗じてなんかをとなれば容易いだろうか。
彼らが向かった方向に行こうか、とさらに足を進めれば……
施設の方々から、というより円柱状のその培養設備か。
それらがひび割れ……内側から何かをこじ開けてきたかのように
半ば肉の塊のようなそれらがうめき声を上げながら這い出てきており、異常な現状としか言いようがない何かが発生し始めていく。
加えてそれらに引き寄せられるように、また鎮圧せんと出てきた警備の武装集団に包囲され
それら何かとの戦いに巻き込まれ動くに動けぬ状況に男は挟まれてしまっていた。
なんとか機会を盗み見てここから出て音音を探さなければとはやる気持ちだけが募って行く……