2016/10/08 のログ
綾瀬音音 > (自身に取ってこの異能の行使とは、
少しコツのいる手足を動かす程度のものだ。
ここに来る前から使う為の訓練は血縁から受けていたし、
ここに来てからはそれこそ当たり前に使えるように授業で訓練をしてきた。

勿論、それらは人を傷つけるためでも自分の身を守るためでもなく、
ただひたすらに自分の異能の精度を高めるためのモノ。
それが、この場で幸いした。
少なくとも、普段とそこまで変わりない精度で異能は行使できる。

緊張。
不安。
恐怖。
―――――――――ほんの僅かな高揚感。

それらが身体を支配して、身体を冷やしていく。
意識が覚醒したとは言え身体は未だ自由には動かない。
耳を引き裂くような警戒音を聞きながら、異能の行使の精度とは真逆にのろのろと身体を起こし、そこで投げつけられた注射器の本体部分が頬に当たり、溶けながら滴り落ちていく。
一旦温度を下げない状態で、異能を切る。

閉じ込められたのは判別できた。
が、それらは外からの影響も少ない、ということだ。
少なくても、今は―――――)


―――――――――ー、ッ―――。

(化け物、との言葉は突き刺さる。
しかし、それらに心を動かされている余裕はなかった。
視界が戻ったのなら――もう一つ、異能が使えるということだ。

今は愛しい人から受け取った、もう一つの異能――。

使うのは初めてだったけれども、使い方は、“知っている”)


(銃を抜く研究員を見据える。
行動としてはただそれだけである。
だが――異能としてはそれだけで行使が可能だ。

歪む。
視界が、距離感が、時間感覚が、歪み、認識を危うくさせ、狂わせる。
視界に入っている感覚器を持つ者全員にそれらは適応される。
勿論、強く弱くはあるだろう。
中には効かない者もいるだろう。
それでも、それは確かに行使された。

当然それは銃を構える研究員にも―――――。
そして、目を合わせる。
たかだか17歳とは思えない度量で、その男の目を見据える。
自らを化け物と評したその、男を)








(ここから出して。
出来ないのなら―――――)





(そうして、研究員の思考を“歪曲”させようとする。
その先は言葉にならなかったけれど。





ああ、そっか。
確かに自分は化け物と変わらないのかもしれない。
だって、なぜなら。


こんなにも、平然と――――――




恐ろしいことを、しているのだから)





(手が、震えたが、それだけだ)

五代 基一郎 > ほんの、ただ少しの時間であったが。

ただただ、その一つの異能を行使されれば男はそうするように思考が全て導かれていく。
こういうことも想定されているためだ。一度その壁が展開されれば事態が収集されたと思われるまで解除されることはない。

即ち、出すことが出来ないのだから。
男のすること一つだった。

喧騒。その”本当”の始まりを告げるように研究員は虚ろな瞳のまま
自らの頭へ拳銃を向けて引き金を引いた。綾瀬音音の目の前で。

それらが引き金になり……その異能の行使がこれからを始めるように
駆けつけた警備の武装集団らもまたその歪められた世界に沈められていく。

無論強弱もあり、それに沈むものもいれば、逸らせるものもいる。
だが……たった一人でも。少しでもその歪められた世界に沈み
”狂乱”へと陥れば止められるものなどいない。

■警備兵>「化け物めぇぇぇぇ!!!」

■警備兵>「やめろ!俺は人間だ!下ろせ!!」

歪められたものは自らの隣にいるものを、周囲のものを人にあらざる怪物……
人であり人の姿をした化け物を罵り、自動小銃を向けて引き金を引く。

その放たれた銃弾が、周囲にある円柱状の培養曹にヒビをいれて
”檻”を破壊すれば、また中からもその母体とされていた存在や
またそれにより生み出されたものの封じられ検体として陳列されていた
”それら”が解き放たれる。

誰が味方で、誰が敵で、誰が人間で、誰が化け物かわからないような
狂乱の世界が……綾瀬音音という透明な壁に囲われた一人を中心に伝播して行った。

五代 基一郎 > この島で五代基一郎と呼ばれる、呼ぶようにとされた男はその狂乱の中にいた。

そう。その先の培養曹らからの覚醒や、警備の武装集団らの攻防が
何によって引き起こされたか。
その原因は知る由もなく。ただそれらをそれらが暴れるままに任せ
影から影へと行くが……確証はない。

それらが何によって引き起こされているかも想像はまだできない。
答えもない。だが何か漠然とした嫌な感覚を拭い切れないまま……
隙あらば、駆けて……ただ駆けて綾瀬音音へと急ぐ。






そして、綾瀬音音の姿が見えた時。
音としてあるのは誰かが止めるわけでもなく、なり続ける警報の音しかない世界で。

その綾瀬音音だけがいる場所を見つけた時には
ようやくその姿が見えたというのに、言葉もなく……
何を言えばいいのかわからないというような、また……
おそらく。
今まで綾瀬音音という女がみたことのないような顔で、君を見た。

音音しかいない……男と女”しか”いない場所で。
言葉もなく。

むせ返るような血肉の臭と薬物の臭いが混ざり合う場所で……
綾瀬音音を見つけた。
何やら赤黒い飛沫が描かれた透明な壁で囲われた綾瀬音音を見つけた。

綾瀬音音 > (ぱん、と言う大きな銃声は、自害させた音とするにはあまりに軽いように響いた。

言葉にならなかったとは言え、そうさせたのは自分だ。
だから、予期できなかったわけでもない。
だから、解りきった一つの“始まり”でもあった)


(自分の異能が行使され、そこから伝播していく。
視界に入る者に等しく適応させようとするその異能は、人々を狂わせ、殺し合わせ、混乱と流血を誘い。
そこで漸く、自分が何処に――否、どういった場所にいるのか理解できた。
円柱状の培養槽から這い出た妊婦だったもの、赤子だったもの。
それらも蹂躙され、誰も彼も混乱し、銃撃へと沈み沈ませていく中で――。

少女は、その一人安全な透明な壁へと向かい、そこをこの状況を生み出したとは思えないか弱い力で。
その壁を叩きながら)


せんぱい。
せんぱい。
せんぱい。
せんぱい。
せんぱい。
せんぱい。
せんぱい。
せんぱい。
せんぱい。
せんぱい。
せんぱい。
せんぱい。
せんぱい。
せんぱい。
せんぱい。
せんぱい。
せんぱい。
せんぱい。
せんぱい。
せんぱい。

(愛しい人を、呼び求めて。
涙が溢れてくる。
何で泣いているかも自分でも良く解らないのだ。
恐ろしいのか悲しいのか辛いのか嬉しいのか。
ただ、彼を切々と呼び求める。
銃声の飛び交う中では誰も彼も聞き取れないであろう、そのか細い声。


だけど、いつしか銃声もなくなった。


その中で一つ、足音が――――――――――)

(振り向く。
見たことのない、その顔を見て。
たった一枚の血みどろの透明な壁を隔てた中で、彼が望んだとおりであろう傷一つもないその少女は。

その顔にいかなる感情が浮かんでいようとも――。
どういう顔をしていいのか解らなくて。




数瞬後に、
へらっと、
いつものようにちょっとだけ眉を下げて。

笑った)

五代 基一郎 > その透明な壁に触れて、男は泣いた。

いつもの通り、そんな、ちょっと困った顔で迎えた彼女に触れるために
血と薬品が混ざり合った水溜まりを歩いて歩いて隔たれた透明な壁に触れて
叩くことなどなく、力なく壁に触れながら非力な音を一度二度立てて
そのまま寄りかかるも、崩れるように滑りながら哭(な)いた。

今まで一度も、泣きそうな顔は見せたかもしれないが……見せたことのない
崩れきった顔で懺悔とも後悔とも何ともいえぬ顔のまま泣いた。

ここではない、制御室に向かえばこの壁など取り払えるのだろう。
もう今ここにいた……自分達以外生きているものなどいないのだからすぐにでも取り外せにいけるだろう。
だがそんなことなど些事であるかのように頭になどなく。

今この場所が、たとえば何か見えない壁で区切られて、区切っていても

この世界は”本質的に”そうなのであるかのように見せ付けられた今この場所で
閉じていた目を開かされたが如く、目をそらしていたそれを見せ付けられ
己を呪い

涙し、ただただ……

咽び泣いて

崩れた。

綾瀬音音 > せんぱい。






―――――せんぱい……
(近づいてきてくれる彼を、待った。
血液と薬品の粘着く足音を聞きながら。
彼が壁に触れれば、その壁越しに慟哭する彼に触れる。

いつもの笑みのまま。
異常な世界で、何の異常もないかのように、まだ涙で濡れた頬で)

せんぱい、だいじょうぶですよ…………

(だいじょうぶです。
からだもこころもいたくないんです。
ちょっとからだが――ちょっとじゃないですけど、ひえてるけれどそれだけで。
さいしょはすごくこわかったけれど、いまはそうでもないですし。
だってみんなしんでしまったんです。
わたしゆびひとつふれてないんですよ。
ほんとうにばけものみたいですね。





――せんぱい。
ねえ、せんぱい。



ごめんなさい。
こんなこと、のぞんていなかったのはわかってるんですけれど。
きみがわるいこかもしれないけれど。


だけど――)

(彼の涙を零し、呪い、崩れる姿を見て。
これは取り返しの付かないことなのは解ったけれど。
全ては上手く言葉にも思考にもならずに、通り過ぎて口には出せず。

その涙を壁越しに拭うように手を伸ばし、
ナイトが助けにきたプリンセスとは程遠い、喜びはないその顔で。
やはりいつものように笑ったまま――)



はやく、だきしめて。

きすして、ください。




(ねえ、まだあいしてくれますか?)

ご案内:「落第街 地下施設」から五代 基一郎さんが去りました。
ご案内:「落第街 地下施設」から綾瀬音音さんが去りました。
ご案内:「ホテル」に綾瀬音音さんが現れました。
ご案内:「ホテル」に五代 基一郎さんが現れました。
綾瀬音音 > んっ、はぁ……んぅ……。
(もう幾度になるか解らない、くちづけをねだる。

あの後――お互いがある程度の落ち着きを取り戻し、
自分達以外が息絶えた落第街の地下施設から抜け出して。

お願いですから、と縋るような声で求めて、望んで。
彼が止めても止めなくても、
落第街から然程離れていない、“そういうことをするためだけ”の様なホテルへと
殆ど連れ込むに近い形で雪崩込んで。


そのまま愛し合った。


自分が何をされそうになったか、何をしたか忘れるように――。
否、そんな事はどうでもいい、ただただ彼が自分を愛しているか確かめたかっただなんて、
そんな浅ましすぎる理由。
何度も愛しています、と口にして、
何度もお願いですから、と口にして、
何度も――嫌いにならないで、と言う言葉を飲み込んだ。

溺れるような、もしくは壊れてしまうのを望むような、そんな激しさを希いながら、
彼を求めて――どれくらいの時間が過ぎたのか。
漸く落ち着きを取り戻したかのように、彼を抱きしめていた腕の力が、少しばかり、抜けた)

五代 基一郎 > 先の件の事は報告も必要だったが、それらを一時止め
別のものらに任せ自分は被害者のをとした。
本来ならば現場の検証について等必要であったが、半ば引いていたのもあり
無理を通したことを誤りつつ。

音音からの求めには止めたものの、しかしながら
あの光景が自身の脳裏から離れず……また、それが何がしかの幻であってほしいとの
かすかな祈りという名の虚な願望から一度止めた後は黙って
着いて行くのか押し込んだのかはあやふやなまま。

女を求めた。

先にあったことなど何もなく。
それこそ若い男と女、いつものように交わり合えば
何事もなかったということに意識を塗り替えていくように。
もう変えられない現実から逃れるように。

その何度も求めた口から言葉が出れば、名前をただ呼んで
いつものただ日常のように愛を囁き、まだ恋と愛の混ざった感情で結びついていたもの
若さと大人の混ざった情欲で結びついていた行為から

ただただ不安と、何か例えようもないような恐怖を紛らわすような
獣のような情交を繰り返した。獣といえども子を孕んだ雌と交わることはない。
即ちそのような人でしか行わない……ただ快楽を得て発するだけの行為を
その仮初の”巣穴”に入り込んでから繰り返している。
それこそ、その雌の胎に新たな子が宿っているというのに、それすらも忘れるような
雄と雌の交尾をただただ続けていた。

綾瀬音音というその雌が獣ではなく女、人として落ち着きを取り戻した後も
弱まる抱擁の腕を感じても、その肌を放さず体を密にし続けていた。
女よりも、何かを抑えられないかのように。

綾瀬音音 > (それらの連絡をしているのは見ていたのだから、
ここは一度戻ってきちんとした何かしらの手続きをするべきなのは解っていたのだが、
それでも自分を押しとどめる事はできず。

止められたがダメですが、と自分でも驚くぐらいにか細い声が出て。
そしてそのままこんな場末と変わらないホテルでまぐわっている。

耳を擽る愛の言葉も、
心を蕩かすような名を呼ぶ声を聞きながら、
感じるのはどうしても消えない不安と恐怖。
チラチラと視界をよぎるような赤と、耳鳴りのように鳴っている銃声と悲鳴。
それを忘れるかのように、手足を絡ませて、触れて、受け入れて

―――違う。
受け入れられているのは、きっと自分の方なのだと思う。

そんな事を脳裏にちらつかせたのも恐らくは一瞬にも満たない時間で、
先程起こった――いや、起こしたことを忘れるようにその快楽と愛の行為に溺れきる)

(「妊娠してから、避妊するなんて不思議ですよね」
照れくささから笑いながら、少し前にそんな話をした。
初めての検診の後、医師から避妊具をつけるように言われて実行もしていたが、
今日はそれも口にすらしなかった。
ただ身体の最奥に彼を受け入れて、感じ取っていたい、なんて言うそんな理由。
だから、この交わりはまさしく自分達のためだけの行為であり、
本当に快楽を得るだけの、そんな情交。
それはまさしく交尾であったし、人でしか無く、人でなしの行為でもあった)

せんぱい…………
(離されないことに、酷く安堵を覚える。
ああ、自分はまだ愛されている、必要とされている。
それだけで、もう十分な気分になってしまった。

化け物、と叫ばれた声が耳に今更ながらに蘇るが――。
あの光景を見てもなお、彼はこうして抱きしめてくれている。

今死んでしまったらきっとそれはそれでとても幸せなんだろうなぁ。

そんなことさえ、思う。
こんな時に、強く強く愛情を感じてしまうなんて、
本当に浅ましくて、最低で、人でなしだ。

変わらない密着する肌に、自分のそれを寄せ直して。
お互いの胸が触れて、鼓動を感じる。
ぎゅうっと抱きしめ直して、その首筋に唇を寄せた。
吸い付いて残す、所有痕。
多分付けたのはこれが初めてだ)

五代 基一郎 > あのような凄惨な現場にいたせいか、いや……
そこで綾瀬音音が何をされようとしていたかではなく
そこで綾瀬音音が何をしたのか。

聞くまでもない。聞けばわかる。
だが聞くことは出来ない。

その、それは。
自分と綾瀬音音が……少なくとも、自分が思い描いていた
”普通”の世界とは程遠い世界の出来事が、今そこにあることを
あったことを……もうどうしようも覆せないものとしてあることを
認識してしまいそうであったから……開けない、パンドラの箱。
最後には希望が残った箱という何かの誤訳ではなく……
確実たる未来の世界を知る、それが残る箱。
開けてはいけない箱。

非日常的な不安に怯える綾瀬音音という”最愛の少女”を慰める体裁で
自分はその恐ろしい現実から目を逸らすため情交に耽っている。
そんな考えを自らに与える隙を生ませないために、快楽で能を侵している。

そも自分自身、己が性質のため血を残すことを考えていなかったが
一度その考えが頭を外れれば子を残す行為に抵抗などなく。
孕ませてから避妊具を使うなどおかしいことでもあるが、子供のためということや
またどこかにそれが子をなすためのだはなくただ快楽のための行為であることに高揚があったことは否定できない。
故に今ここで辞任具無しで交わっていることも、子には悪いというものもあれば
子がいるのに避妊具を使わず情欲のまま交わっていることにどこか理由をつけて封じつつも
昂ぶっていることも確かに感じていた。人でなしの、畜生の行為。

「音音……」

綾瀬音音という、今粘膜同士を繋げ合っていた獣は何を考えているだろうか。
愛しているとか、そういうことだろうか。今ただ獣の雄と雌として交わっている君が
そんな人のようなことを考え抱き合い安楽を得ているのだろうか。
快楽を求めている自分の姿に何が考えれれるだろうか。

所有の証か、とても獣のような……原始的な、愛情的な詩のような名でいう口付けの跡。
唇により向かい合った人として人の行為として付けるその証に応えるように
向かい合っていた互いの体を、女を抱きしめながら返し
獣のように覆いかぶさる姿勢になれば
また密に寄せて抱えて後ろからその首筋に印を残すように唇を寄せて吸い証を残す。
残しながらも、またその正しく獣の行為を始めては続ける。

場末でなくてもこのような場所で行為を行ったことはある。
だが其れは人と人の、男と女の恋と愛が混ざる行為であったが
今はただ、今まで行ったことのないような……どこかのタガが外れた
獣畜生の行為に熱を上げて溺れていた……

綾瀬音音 > (一糸纏わぬ姿には、傷らしい傷は何一つない。
あれだけの人が死に、
あれだけの銃声が飛び交ったのにもかかわらず、
その身体には、その残滓はない。
身体の熱も異能から来るものではなく、快楽で高揚した熱が肌をくすぶっている。

聞けば、答えるのだろう。
いや、この場ではその口を少女は自分のそれで塞いでしまうだろうか。

自分とてそんな世界があることは知っていたが、既に何処か遠いものに感じていたし、
彼も“こちら側”に来ると言っていたのだから、それらはもう関わりのないものだと思っていた。
だけど、黄昏時は――否常夜の世界はすぐそこに有り、今まさに自分らを飲み込まんとして――
それを、異能と呼ばれる“普通ではない力”でねじ伏せた。
彼は目をそらしているが、自分は目をそこまでは逸らせなかった。
愛の篭った声と彼の呻くような声や自分の上げる甲高い声に、
その中で起こった音声が終わりが無いように流れている。
だから、
だからこそ、
のこ交わりに溺れ、
沈み、
のめり込んだ。

彼が何を思って自分と交わっているのかまでは――
幸か不幸か、察することはできなかったけれど、
胎内に感じる熱は本物で、焼けるように熱く脳を焼き切るような快楽を叩きつけてくる。

子供を、と望まれた時は驚きもした。
だけどそれらを受け入れて、孕むために身体を交わらせ、その行為で快楽を得て、
そうすればその行為に溺れるのは早かった。
そのまま溺れ続けて、子を宿しても、その行為は続けて、
愛情と快楽を交わし合いながら

そして、今はただただ子供がいることなど忘れているかのように、
けだものの様に、快楽を得るために、快楽に逃げるかのように。
愛している、という言葉に溺れながら。
そうして、抱かれている。
もしくは犯して犯されている。
思考も、身体も)

ん……せんぱい……
(そもそも、少女にとって身体を交わらせることは愛の行為そのものであり、
快楽を得ること以上に愛情を確認してそれを得るための行為である。
だからこのような交わりの中でも愛情を感じるのは当然のことでも有り、


――――――――否。


ここで、
この男――否雄に組み敷かれても愛情を感じられないのなら。
もう何処にも、何処に行っても、愛情をと言うのものを感じられないのだ。
快楽と愛情が直結しているのだ、
愚かしいほどに。
だから感じるのは快楽であり愛情であり安心感なのだ。

身体が返されれば、自然と腰が上がる。
誘うように揺れるのは誘惑以外の何物でもなく、
吸い付かれれば心地よさそうに吐息がこぼれ落ち、
獣の行為が再び始まれば甲高い、雌としての声が上がった。
シーツを握りしめる手指は白くなり、狂ったように頭を振るがそれでも彼を受け入れるのをやめようとはしない。

何度も愛し合った。
だけどこの、この今の交わりは――
どう考えても、マトモではなかった。
けだもののように、それこそ本能なんて言う笑ってしまうような、
そんな動物じみた何も考えていないかのような思考の下に理性を押し殺して、
何かしらの逃避行のように、
人でありがながら人ではなくなってしまったように、
ただただ快楽と“愛情”を少女は貪った。

一際甲高く声が上がり、身体が強張る。
それでも、身体を擦り寄せるのを止めることはなく――
唇が放つ言葉はたったの三文字。




もっと、



それだけだ)