2017/02/18 のログ
ご案内:「スラム」に柊 真白さんが現れました。
柊 真白 >  
(スラムというところは都合の良いところだ。
 犯罪者、逃亡者、その他人には出せない都合を抱えている者。
 存在しないとされており、めったに司法機関の手が届かない場所と言うのは本当に都合が良い。
 昼でも薄暗く、まして深夜ともなればそう言った者が潜むのに都合の良い闇に包まれる。
 そんなところを走る男が一人。
 必死の形相で脚を動かし、時折何かに怯えるように振り向きながらも脚は止めない。
 何かから逃げているのは明白で、しかし誰も彼に手を貸そうとはしない。
 誰だって厄介毎に巻き込まれるのは御免なのだ。
 秩序なんてものが存在しないこの闇の世界では尚更。)

――。

(パチン、と言う音。
 同時に男が倒れこむ。
 走っていた勢いそのままに、ホームベースに滑り込む野球選手のように、しかし無様に地面を滑る。
 男は起き上がろうとしたようだが、また倒れこんだ。
 自分の右脚に目を向けた男は、膝から下がなくなっていることに気が付いて、叫び声を上げた。)

無駄な努力ご苦労さま。

(そんな男を見下ろし、声を掛ける。
 鞘に収めた長刀を左手に、無機質な瞳を向けて。)

柊 真白 >  
普段ならこんな事はしないんだけど。
出来るだけ痛めつけて殺せって言うのが依頼人の頼みだから。
ごめんね?

(こてんと首を傾げて謝罪の言葉を掛けるが、男にとっては何の慰めにもならないだろう。
 不必要に痛めつけると言うのは自身の主義に反するのだが、仕事であれば仕方が無い。
 仕事は仕事、選り好みはしないのも自身の主義だ。
 男が恐怖の表情を浮かべ、不自由な身体で這って距離を離そうとしたのだが、)

逃げられたら困る。

(再びパチンという音。
 男がこちらを見ていれば、自身の身体が一瞬ぶれただけのように見えただろう。
 同時に男が倒れこみ、その左腕が音も無く地面に転がった。
 苦痛に満ちた叫びが響く。
 自身と男の距離は約五メートルほど。
 一体どんな魔術を使ったのかと思えるような光景だが、何のことは無い。
 ただ距離を詰め、鞘から抜き放った刀で男の左腕を切り飛ばし、刀を鞘に納めつつ元の位置に戻っただけだ。)

――流石に私も理不尽だと思うから、選ばせてあげる。
次は、どこがいい?

(せめて覚悟を決められるように、との本心からでた言葉。
 だが男にとっては絶望以外の何物でもない。
 ただガチガチと歯を鳴らしながら気を失いそうな激痛に耐えるだけだ。)

ご案内:「スラム」に三拍子天歩さんが現れました。
三拍子天歩 >  
ドロン。
忍者といえばそんな効果音。これはそもそも忍者が消える時の効果音というわけではない。
忍者がこんな音をたてて現れたり、あるいは消えていたりしたら、それは全く忍べていないと思わないだろうか。
わざわざ出入りに擬音がついてしまうようであれば、それはもう忍者失格でしかないだろう。
だから彼女の場合は――。

「やあ」

これはこれで忍ぶ気をさらさら感じさせないのだが。
彼女は、"震えている男をどかすようにして"、"地面から現れる"。

柊 真白 >  
(あまりにもファンタジーでコミカルな音と共に地面から生えるように現れた女性。
 ぱちくりと三度瞬きをして、驚いたように目を開く。)

――こんばんは。

(とりあえず挨拶を返す。
 わざわざ両手を前に揃え、ぺこりとお辞儀をしながら。
 あまりにもシュールなその光景。)

え、と。
仕事中なんだけど

(挨拶を済ませ、困ったような声色で告げる。
 目撃者は消す――などと言う「野蛮」な真似はしない。
 犠牲者は最小限に、目標だけを綺麗に殺すと言うのが自身の信条だ。
 とは言え仕事の邪魔であることには変わりなく、出来れば邪魔はして欲しくない。
 そんな感情を込めた問いかけ。)

三拍子天歩 >  
プールサイドに上がるような動作で、彼女はずるりと身体を地に引きずり出す。
片足の裏を先に地面へ接着して、その脚に力を込めれば、もう一方の脚も現れる。
本当に、ここがプールで、彼女が水の中から現れたとすれば自然な動きで。

「仕事中か。それは申し訳ない。ほら、うるさかったもんだからさ」

彼女は、男を見下ろす。その時の男の気色はどうだっただろうか。
仮に、あっけにとられて、その間だけ痛みを忘れることが出来ていたならそれはとても幸運だったに違いない。

「えいっ」

やにわに――あまりに無駄のない、そして前触れのない動きで、彼女が屈んで男の喉を掴み、えいっ、と一声あげてから立ち上がる。

「仕事なら、仕方ないね。でもうるさかったから、ごめんごめん。さあ、続けて」

そういって彼女は数歩、二人から離れた。
"うるさかったから"――だから彼女は、男の声だけを奪い取っていた。

柊 真白 >  
(男は自分の惨状を含めた目の前の光景が信じられない、と言った様子で。
 ただこれは夢だ、と繰り返し呟いている。
 彼女に喉を掴まれて我に返り、後ろにのけぞろうとする。
 が、右脚と左腕が無い状態で喉を掴まれていては満足に動けない。
 彼女の手が喉から離れて後ろに倒れこんだ。)

――意思疎通が出来る程度に残しておいて欲しかった。

(ため息。
 男は自分の声が出ないことに混乱していたが、自身はそう言う類の異能か魔術かだろうと気にした様子も無い。
 ただ男がどこから切って欲しいか分からなくなってしまった事だけが残念だった。)

声、出ないみたいだから。
こっちで決めるね。

(彼女を無視してすたすたと男へ近付く。
 男は恐怖と混乱ですっかり金縛りにあってしまっているらしい。
 そうして自身の間合いに入った瞬間。
 パチン。
 彼女が妨害しなければ、今度は左腕が肩からぬるりと滑り落ちるだろう。)

三拍子天歩 >  
「ああ……気が利かなかった。ボリュームを下げればよかったのか」

反省の気持ちなのだろう、眉尻を少し下げて、ハの字に。
口も真一文字に結んで、それから、手に持っていた見えない『何か』を、ふぅと夜の風に解き放った。

適当な、薄明かりの影に立つ。
真白の姿を前に捉えて、男の後ろ頭が見える。

「――可愛くて、優しい殺し屋さんで良かったよね。無口な仮面の暗殺者なんて相手にしても楽しくないしさ。
 助けてあげようかなってちょっと思ったりもしたんだけど、その人はお仕事で君を殺すらしいから。
 お仕事っていうことは、その人の意志ではなく、君を殺したいと思った誰かの意思があるということだよ。
 きっと、君は誰かに殺したいほど恨まれ、その思いが形になるほどのことをしたって話さ。
 残念だったね。でも自らの過ちに気づいたら、次の人生はもっと上手くいくよ。
 ……もう聞こえてないかもしれないかな? ここからじゃよくわからないけど」

ダルマは最後に目をくりぬかれるのが華だろうか?
優しさのつもりで、最期の一瞬まで男と他愛もない会話をしてあげていたつもりだったが――。
そういえば男はもう喋れないんだと思い至り、一人で勝手に笑っている。

柊 真白 >  
――待って。
同業、いるの?

(彼女の言葉は聞き流していたが、気になる言葉が聞こえた。
 無口な仮面の暗殺者。
 この街に同業がいるのか。
 いやそれなりに広い島だ。
 同業者ぐらいは居ても不思議ではないが、活動の場は限られる。
 となるといつかかち合うこともあるだろう。
 そんなことを考えながら、も動きは止めない。
 先ほどよりもやや長い時間、自身の右腕がぶれる。
 まるで熟練の料理人が野菜を切り分けるように、男の左脚が足首から太腿半ばまで細かく輪切りにされた。)