2017/02/19 のログ
■三拍子天歩 > 死んでいく男のことはもう気にしない。
殺し屋を派遣されるような人間なのだ。生きているほうが迷惑になる。
死んで欲しいと思われた人間は、死ぬにこしたことがない。
そう思って、彼女は恐らく『身内』と思われる者の死を、悼まずにいた。
「やあ、殺し屋さんくらい腐るほど居るよ。居すぎて腐っているのか、どっちかは分からないけど。
元が付いたり故が付いたり、その辺は様々だけどね
なんか可哀想になってきたし、差し支えなければそろそろトドメを刺してあげてもいいんじゃない?」
憐憫の情。活造りを見る菜食主義者の気持ち。
「残虐の限りを尽くさないと行けない理由があれば、私が太鼓判を押すよ」
■柊 真白 >
――そっか。
(腐るほど居る。
そりゃ居るだろう。
おそらく、自身よりも長くこの街で動いている殺し屋が。
改めて何かあった時の対応を考えながら、気絶してしまっている男の右肩口へ刀を突き刺す。
そのままぐり、と抉るように刀を回すと、激痛で意識を取り戻した男がもがきだした。)
まだ。
依頼人からはこれ以上はもう無理だと思うところから三段階ほど追い込んでくれと言われている。
(そのまま男の身体を刀で放り投げ、蹴りつける。
男が壁に叩き付けられる前に刀を鞘へ納め、スカートをたくし上げ、太腿に巻きつけたベルトに刺さった大振りのナイフを数本投擲。
壁へ叩き付けられた男の身体を貫通し、男を壁へ磔にする。
それあは一度瞬きするかしないかの間に起きた出来事であった。)
■三拍子天歩 >
回答を聞いて、腕組みしてはウゥンと唸る。
そうなっては本当に、声を奪ったのは失敗だったなと口を尖らせた。
風に捨てた声を探してみたが、そう簡単に見つかるものではなし。
「まあ街の平穏は守れたわけだから、帰ろっかな……。
そういえば君、見ない顔だね。人殺しなんかやってるからにはなかなか正規生徒じゃ居づらいだろう。
その割に落第街で見知った顔ではないし、アレだ、侵入者ってワケになるよね。
じゃあ一応、私も仕事するよ」
退屈を持て余すかのような、というか事実退屈を持て余しているだけなのだが。
吸気。人が長々と深呼吸をして吸い込む量の空気を、文字通り一瞬で肺に満たした。
パンと手のひらを合わせる。それは同時に、"五本の指先が合わさった"ということ。
六拍子。
ゴゥと、ロケットエンジンの爆破にも似た勢いで、彼女は口から白光する灼熱を吐き出した。
■柊 真白 >
本土の学生証は持ってる。
一応来年度から正式に入学しようと――
(言葉を遮るような乾いた音。
急所を外して――外されて男の体を貫いたナイフは、それ故にまだ男の命を奪っていない。
だから更に追い込むべく男の身体へ取り返しのつかない――もう既に充分取り返しがつかない身体になっているが――加工をしようと近付いたところで、その音を立てた彼女の方を向く。
視界が、白く染まっていた。
直後に自身が居たところと、男の腰から下を白い閃光がなぎ払う。)
――服が焦げた。
(彼女の後ろから声を掛ける。
言葉のとおり、スカートの裾が黒く焼け焦げている。
彼女がまともではない動体視力を持っていたのなら、地面と壁を一度ずつ蹴って彼女の後ろへ回り込んだ事が分かるだろう。)
■三拍子天歩 >
「『土遁・潜影独歩』」
遁法とはすなわち逃げの方策である。
薄明かりの影の中へ。吐き出した炎が消え切らないうちに、彼女は地へと沈んだ。
「……うん、聞こえてた聞こえてた。法外な低賃金で慎ましやかな生活を送る私の懐からきっちり洋服代は返すからね、心配しなくていいよ」
地面の影は、不完全燃焼した白い煙を吐きながら。彼女は片腕だけをにゅっと生やしてはサムズ・アップして見せるだろう。
すぐに引っ込めるだろう。
「でも来年度からちゃんと学校に行くような子が人殺しなんてするのはいけないからね、私は決して謝らないよ。
むしろ、殺人鬼が入学することは私を通して風紀委員に伝えるべきことだろうと思うし、取引として私は言わない、そのかわりに服のお金も払わない。
それが丁度いいよね、分かる分かる」
そうだろう? そう、影は言った。
■柊 真白 >
風紀委員に報告されるのは困る。
無益な殺傷は避けたい。
(前半だけ聞けば手配されたり捕まったりしたくない、と言う事に聞こえるだろう。
だが後半の言葉から、ただ単に仕事に支障が出る――どころか風紀委員は怖くないと言う意図が分かるであろうセリフ。
殺すのは簡単だ。
逃げ隠れしつつ隙を突いて少しずつ削りとっていけば良いのだから。
簡単では無いだろうが、無理と言い切る事も難しいだろう。
しかしそれは得策ではない。
だから彼女の提案に乗る事にする。
元より弁償して欲しいという気持ちも無いし。)
――あなたも、ごめんね。
辛かったでしょう。
今、楽にしてあげるから。
(男に向き直り、眉尻を下げてその頬に触れる。
その顔と仕草は、彼女から見れば――影の中から見えているかは分からないが――本当に悪いと思っていて、男に無意味な苦痛を与えた事を申し訳なく思っている表情に見えるだろう。
車に引かれて息を引き取る寸前の小動物を見ているような表情。
だが男から見ればそれは恐怖でしかない。
驚くことにまだ息のある男が、今まさに男が発狂する寸前。
パチン。
音共に、男の頭がごろりと地面に転がった。)
――それじゃ、帰るね。
それ、片付けないで。
仕事の証明になるから。
(そう影に告げ、歩き去る。
足音が異様に小さい歩き方で、闇へと消える。)
ご案内:「スラム」から柊 真白さんが去りました。
■三拍子天歩 >
「よし、それでいこう、悪いね」
努めて明るい声で言った。
――気配があるのかも、ないのかも分からない。既に影の中へ溶け切ってしまったか。
相手が『全てを終わらせて』から、その場を立ち去った後。
すっかり静寂が場を支配した頃。
「さて」
にゅるりと影から現れた彼女。
■三拍子天歩 >
鼻歌交じりに、壁に張り付いた男の身体を引き剥がす。
頭を拾う。すっかり切られて久しい腕を、足を、農作物を収穫するかのように拾っていく。
「血の跡も消したほうがいいよね」
拾った身体は、ぽいぽいと影の中へ沈めていく。
地面に流れた血も、壁を汚す血も。
指先で触れて瞬きを三つもすれば、じわりと地面へ、壁の中へと染み込んでいくだろう。
■三拍子天歩 >
手際よく、てきぱきと――まあ4~5分もすれば、虐殺どころか鼻血が垂れた程度の跡も残らない。
「やあ、不運だったね。不運ついでだ、私を君の神様にしてほしいな」
にこり、誰も居なくなった空間に呟いて、何度か首を振り、そのあまり長くない髪を暴れさせる。
■三拍子天歩 >
最後に、ぱんと手のひらを合わせて。
「『月の巻・此世忘草』」
そう唱える。
――何かが起こる様子もないし、何かが起こった様子もない。
しいて言えばそうだ。
彼女がその場から居なくなっていたことくらいなものだろう。
ご案内:「スラム」から三拍子天歩さんが去りました。