2017/03/12 のログ
ご案内:「路地裏の一角」に赤い髪の少女さんが現れました。
■赤い髪の少女 > 気がつけば、辺りは血の海だった。
そこに浮かび上がるいくつかの物体。ほとんどはただの血塗れの「塊」としか認識出来ないが、手や足など、分かりやすい形をしたものが、それらがかつて何であったのかを知らしめる。
「………」
赤い髪の少女は、周囲の様子に、もはや驚くことすらしなかった。
これが、初めてではないのだ。
…無論、その際には、この姿はしていなかったが。
ご案内:「路地裏の一角」に獅南蒼二さんが現れました。
■獅南蒼二 > むせ返るほど充満した血の匂い。
そこに僅か,混ざり合う煙草の香りに貴女は気づくだろうか。
「酷い有様だな。」
これほどの惨状を目の当たりにしても,白衣の男は眉一つ動かさない。
呆れたように肩をすくめて,血だまりに臆することなく足を踏み入れる。
貴女からもその姿はよく見えるだろう,同様に,獅南からも貴女をよく見ることができた。
■赤い髪の少女 > 「………。」
感情のない緑色の瞳が、声のした方に向けられる。
血溜まりの中に立ちながら、この「少女」は少したりとも汚れていなかった。
「…そうね。馬鹿な奴ら」
あどけなさの強い少女の声が、無感情に答えた。
■獅南蒼二 > 貴女の声に,獅南は僅かに目を細めた。
これほどの状況を引き起こしておきながら,あまりにも平然としていたからだ。
外見もさることながら,その在り方は獅南の目にさえ異様に映った。
「…一体,何があった?」
足を止めて周囲を軽く見回し,貴女に問いかける。
その姿は普段通りの魔術学教師でしかなく,叱責するような口調ではない。
■赤い髪の少女 > 「少女」が、人形的すぎると感じられる所作で、首を傾げる。
「………別に。
チンピラが、手を出す相手を間違えただけじゃないの?」
「何があった」。そう尋ねられても、「少女」は感情を動かさない…ように見えた。
しかし、次の瞬間、「少女」の目が剣呑に細められ、口元がにぃっと歪んだ。
「…それ以上のことが知りたいなら…「調べてみたら」?」
もしも、獅南がこの場で振るわれた「力」について調べるべく探査をかけようものなら。
振るわれた暴威に絡み付いた「呪詛」の残滓が、精神を蝕もうと忍び寄るだろう。
術式そのものの形が失われてもなお残る…術式に、当たり前のように絡み付く「呪詛」。
「自分を置いてきぼりにした」者達への「怨念」。
その強さが、「少女」に似つかわしくないと…獅南には思われるかもしれない。
■獅南蒼二 > 獅南は手にしていた煙草を携帯灰皿へと入れ,ポケットにしまい込む。
まるで誘うようでもある貴女の言葉は,罠とも取れるだろうが…
「その様子では,隠す気も無いのだな。」
静かに手を翳し,指輪の1つをわずかに輝かせつつ魔力の痕跡を探る。
…が,
「………なるほど。」
防護魔術も何も身にまとってはいなかった。
だからこそ獅南は僅かに眉を顰め,静かにその手を下げる。
何の防壁も無しにそれを受けたからこそ,獅南は瞬時に確信めいた結論を導き出すに至った。
呪詛の根源はこの少女ではない何者かであるか,もしくはその何者かが少女の姿に転じているかのいずれかだろう。
「醜い己の形を変えたか,それとも不幸な少女に乗り移ったか…
…いずれにせよ厄介なものだ。」
獅南は貴女をまっすぐに見る。
■赤い髪の少女 > 「あはは、引っかかった!」
眉を顰める獅南の様子に、からからと無邪気な笑い声をあげる。
少なくともこの「少女」は、「呪詛」の存在とその効用を認識していたらしい。
…が、続く獅南の言葉には、不愉快そうに片眉を上げて。
「…ふぅん、見たこともないのに「醜い」とか言っちゃう?
ま、好きに思ってれば良いけど。「どうせオジサンには関係ないし」」
それでも、あどけない声も崩れず、「少女」の瞳は冷淡な緑色のままだ。
「…で、「オジサン」どうするの?あたしのこと、風紀なり公安なりに突き出す?」
「少女」は、気負う風でもなく、獅南の目を見返した。
■獅南蒼二 > 無邪気に笑う貴女を見て,小さくため息を吐く。
無論,呪詛の侵食による影響は皆無では無いが,獅南の判断の速さと精神力がそれを限定的なものにしていた。
「…推測に過ぎないが,内面は外見にも現れるものだろう?
ともあれ,不幸なのは乗り移られた少女ばかりではないかもしれんな。
置いていかれるのは悲しいものだ…それは私にも分かる。」
再び,男は静かにその手を翳した。
「“存在しない街”で“存在しない人間”が消えましたと報告するのか?
誰も相手になどしないだろうさ……そんなつまらんことより…」
この男もまた,両親に,そして時代にも置き去りにされた者に他ならない。
「…アンタの正体を暴くほうが面白そうだ。」
獅南は最低限度の防護魔術とともに,再び痕跡を探るために魔力を解放した。
それは貴女の纏う呪詛を己に呼び込むための呼び水に他ならない。
■赤い髪の少女 > 「置いていかれるのが悲しいのは分かる」と言った獅南の言葉に、すっと、まるで心が消し去られたかのように、「少女」の表情が無になる。
緑色の瞳が、一瞬紅く染まった。
「「………分かる?本当に?」」
あどけない声と重なるように、枯れた声がした。
瞳の赤は、すぐなりをひそめたように見えたが…獅南の試みに何かを感じ取ったのか、「少女」の緑色の瞳の中に、赤が渦巻き始めた。
「怨念」は、「怨念」にまで至らない情念まで飲み込んで大きなうねりとなっていた。
様々な年代の女の声がする。枯れきった老女の声、幼い娘の舌足らずな声、やや渋みを増した中年女性の声…若い女性の声は、獅南のよく知る人物に似ているようだった。
《どうしてわたしたちはうけいれられないの》
《どうしてあいつらはうけいられているの》
《さびしい》
《ひとりにしないで》
《おいていかないで》
「情念」そのものが力を持ち、死を拒絶しない方向へ精神を誘導していくようだった。
抵抗する力、精神力を持ち合わせない者ならば、どのようなことになるか…獅南には想像出来るだろう。
術式の本体は風の刃の元素魔術らしく、この「肉塊」を作った主要因はそれで間違いなさそうなのだが…獅南の能力を持ってすら書き換えや解析には骨が折れそうなほど、そのあり方は変質していた。
そして…平和に分析出来たのはそこまでだろう。
「クローデットに、手を出さないで…!」
瞳を紅く輝かせた「少女」が、枯れた老婆の声でしわがれた叫びを上げると…「少女」の周辺で、「怨念」を絡み付かせた魔力が展開し始めた。