2015/06/30 のログ
石蒜 > うずくまるように自らの腹に刀を突き立てるサヤの泣き声が、止む。

顔を上げたサヤは、もうサヤではなかった。
「どいつもこいつも、余計なことばかり!」怒りをにじませた声、全てを嘲笑う石蒜といえど、今回の事態は許せなかったようだ。
刀から手を離し、畝傍が抜くに任せる。直後、両手で土を掴み、二人の顔に向かって投げつけた。
「無駄な努力ですよ、サヤにはもう、二度と変な気を起こさないように罰を受けてもらってます。ああ、おとなしく眠っていればこんな目に遭うこともなかったというのに!」
立ち上がり、刀を手元に引き寄せようとする。

畝傍・クリスタ・ステンデル > 「……っ」
土を投げつけられ、一瞬目がくらむ。
気付くと、畝傍が傷を負った場所の血が止まっていた。
「ありがと、ソースケ」
畝傍は、蒼介のほうを向き礼を述べた後。
「……ねえ、シーシュアン」
ショットガンを取り捨てたまま、石蒜に向け語り始める。その声に敵意はない。
「どうして……そんなに、サヤのことをきらってるの?ボクにはわからないんだ。どうして、シーシュアンがサヤのことをきらいで、サヤにひどいことするのか」
問いかける。

風間蒼介 > 自由を、意思を貫くには何かを支払わずに済むはずがない
貫くというからには必ずそこには抜けるべき壁が立ちはだかる
悪意で向かえばそこには反発が重なり続ける…
石蒜、本当にお主が自由気ままに振舞いたいのならば…
好かれれば良かったのでござるよ、他人に、周囲に
(顔面に土を食らい目の中に土が入り込もうとも、痛みに涙を流し、真っ赤に染めながらも、逸らさない
 ために、畝傍の肩に置いた手は揺るがず、補助の結界も途切れはしない)

たとえ周囲がどれだけ敵に回ろうとも…そこに繋がりがあるのならば、共に居てくれる人は…
居たでござるな、ここに
(意識を集中、異能の感覚を細分化、細かく、どこまでも細かく
 目を閉じ世界を認識する鍛錬の時の感覚を思い出し、風と雷の異能を畝傍の物であるかのように動かし、風に混じり漂う土の残りを吹き散らし)

石蒜 > 二人の視線に、たじろいだように一歩下がる。
「……!」一歩下がった自分の足を、信じられないという風に見つめる。

「サヤは……サヤには……!」畝傍の問いに答えようとして、口をつぐむ。それを認めるわけにはいかない。
「黙れ、黙れ。私には、石蒜にはご主人様がいる。ご主人様は全てを赦してくださる、だから私にはご主人様さえ居ればいい。他の誰も、必要ない。」刀を振るい、切っ先を二人に向ける。

「さぁ、私を否定しなさい。サヤのためにはそれしかない、私を否定して、殺してみなさい。」冷え切った目で殺意を放つ。

畝傍・クリスタ・ステンデル > 「……いやだ」
畝傍の表情が険しくなる。自分を殺せという石蒜の言葉を、畝傍ははっきりと拒む。
「言ったでしょ。ボクの目的は、シーシュアンを殺すことじゃない」
故に。畝傍はショットガンを手に取ろうとせず、ただ石蒜に向かっていく。
「それに……ボクは否定なんかしないよ。ボクはただ……助けたいんだ!シーシュアンを、サヤを!」
その左目と手脚から燃え盛る炎を滾らせながら、一直線に。

風間蒼介 > なるほど…サヤ殿とは別の存在なのは確かでござろうな
てっきり他人に植え付けられた人格だと思い込んでござったが…そこに確かな個が存在するならば
認めよう、お主はサヤ殿ではない…石蒜だ
(顔を振るい涙を散らし、入り込んだ土を流し落とす
 目が開けた、道が見えた、ならばそう)

畝傍殿…!動きのサポートはこちらで…舵切りは左右の傾き、加減速は上体の前後で…!
(体が離れた以上は保ってあと十数秒
 しかし高速域での戦闘では数手は打てる
 風の結界を後ろに放出させ、吹き上がる炎に螺旋に絡みながら加速を産み)

石蒜 > 畝傍の視線に大きく後ろへと飛ぶ。それがまた、自分で信じられない。
「(違う、私は、攻撃を警戒して下がっているだけだ、恐れてなど、居ない……!)」

「そう、私はサヤではない。そして私はサヤを許さない、サヤも恐らくそうでしょう。だからサヤを助けたいなら、私を滅ぼすしか無い!!」近寄ってくる畝傍を待ち構える。居合のように、抜身の刃を腰に構え、左手で握る。
そして、畝傍が間合いに入ると同時に、斥力を使った神速の抜刀で、足元を刈る!

畝傍・クリスタ・ステンデル > 足元に襲い来る石蒜の刀を、畝傍は跳躍し回避!
蒼介の異能によるサポートのおかげで、普段は不得手な接近戦も多少はこなせるようになっている。
「それは、ちがうよ……!もっとちがう方法が、あるはずなんだ!」
畝傍が腰の裏側からナイフを抜くと、その刃もまた炎を纏った。
素早く回り込み、炎を纏ったナイフで石蒜の刀の刃を押さえんとする!
石蒜が持つ刀は、彼女がどこに居ようと手元に戻ってくる。
だが、いくら手元に戻る刀といえど、その刃を無力化してしまえば?畝傍はそう考えた。
しかし、石蒜の刀を破壊するという行為には大きなリスクが伴う。
事実、過去のサヤも刀を折られた結果として精神に分裂をきたしてしまったのだ。
今の石蒜が刀を折られたことでどうなるかはわからないとはいえ、危険な賭けであった。

風間蒼介 > 一つのものであれば反発もしよう
異物であれば排除しようと奪い合おう…
しかし二つであるならば、別個であるならば、選べる道はそれだけではござらぬ!

助けを求め手を伸ばすならばその手を取ろう
突き飛ばそうとするのならばその手を掴んで引っ張り倒す!
望む望まぬの話ではない、お主が自分の好きなようにすると言うのならば…
こちらの好きなようにされる覚悟を決めるでござるよ!
(印を複雑に組み替え畝傍を補助する風の、雷の力を制御し続ける
 他人の体を覆う以上は自身の感覚に頼った運用は出来ない
 筋肉の動きの起こり、視線、それらを総合的に判断し加速した思考の中で畝傍の邪魔をせぬよう、助けになるよう操作する)

風雷共に天に属し天は木を揺らす 
雷火は走りて火を起こし 風は渦巻き火を煽る
(即興で詠唱を組み立て。詠唱によりイメージを操作、先鋭化
 先日炎の神性の神威を受け流すのに用いた手法を逆転させ、畝傍の纏う風の結界を右手に、ナイフを持つ手に収束させて)

石蒜 > 「黙れ!私はサヤを認めない、認めるわけには行かない!残るのはどちらかだけだ!!」空を切った刃を、予測以上の速度でかわされ、心中で舌打ち。
切り返そうとしたところで「ぐっ…!」刃を抑えられた。
「(どうする、一度手を離すか、引き抜くか)」一瞬、迷う。
その間に、畝傍のナイフに何らかの力が集まってくるのを感じ取る。
「(抗えば破壊される…!)」即座に刀から手を離し、斥力をまとった左手でナイフを弾こうとする。同時に右手の手刀で畝傍の右手を狙う。
とにかくナイフを落とさせようとする狙いだ。

畝傍・クリスタ・ステンデル > 左手に持っていたナイフは、斥力によって容易に弾かれた。
畝傍は右手にナイフを持ったまま、その腕で石蒜の手刀を受け止める!
ほとばしる痛み。畝傍は耐えきれず、ナイフを取り落としてしまう。しかしこれも畝傍の狙いのうちであった。
至近距離。空いた両腕。ならば、すべきことは――考えるまでもない。
畝傍は両腕を広げ、石蒜の小さな体を、先程まで互いに命を奪いあっていたその相手を……思いきり、抱きしめんとした。
無関係な者からすれば狂気の沙汰と映るだろう。事実、彼女は狂っていた。その狂気があるからこそ――このような行動に出られたのだ!

風間蒼介 > 兵は拙速を聞くも未だ巧久なるを睹ず
故に疾きは風の如く思考は雷霆の如く
(ナイフに収束させたことで一気に余力を使い切った風の結界を放棄
 火に絡みつき渦巻く風は畝傍が炎の操作を上手くすればあと一手程度は持続するだろう
 その間に、高速詠唱が口から漏れ…術が完成
 全身を流れる力の流れが可視化されたかのように風雷の力が流れにそって荒れ狂う)

煉精化気・小周天 神速三手
(そうして加速が始まる
 思考が、動きが圧縮された時間の中で動き始める
 まずは一手…そしてもう一手、地を蹴り前傾姿勢で雷速の踏み込みを行い一足の間合い拡大化
 続く一手で掌底を作り…矢のように引き絞り…加速された時間が開放されると共に打ち放たれる
 石蒜が手放した刀の…切っ先へと

 湿った布を引き絞るような音を立てて切っ先が掌の肉を裂いて行き…握り締める
 中手骨と手根骨が刀身を挟み込み、捉える
 柄を握り締めるのは「刀を使う」という行為となり何が起こるか予想できない
 ゆえに自分の体を差し出すことで、その刀身を捕まえ)

石蒜 > 「……!!(ナイフは弾いた、次はどう来る、素手か?)」
しかし、来たのは予想の埒外、抱擁!想定していなかった行動に反応が遅れ、抱きしめられる。「何を……!」

そして、補助に回っていたはずの風間が、刀に向かっている!
慌てて刀を手に戻そうとするが、その腕に埋め込まれるように刀を封じられ、目が驚愕に見開かれる。
「……っ、放せぇ!!」攻撃の手を封じられ、拘束を逃れようと暴れるが、その筋力は少女にしては強い程度のものでしかない。

畝傍・クリスタ・ステンデル > 石蒜を抱きしめた畝傍は、暴れる石蒜が腕の中から出ていかないよう、
しかし痛みも与えないようにほんのわずかに抱く力を強め、やがてゆっくりと瞼を閉じ。
「……シーシュアン」
聖母のような優しい声で、その名を呼ぶ。
抱きしめた石蒜の身をまた焼いてしまわないよう、肉体の炎化は解かれはじめていた。
「ボク……言ったよ。ボクはシーシュアンを殺さないし、否定もしない」
そう――何故なら。
「シーシュアンは……ボクのさいしょのトモダチで……ボクのいちばんだから。そう、やくそくしたから」
たとえ、一度は敵対することとなった身であるとしても。いかに石蒜が邪悪な存在に歪められ、変質してしまおうとも。
畝傍にとって、その事実は変わらなかった。だからこそ、畝傍は今日まで行動を続けてきたのだ。

風間蒼介 > (痛みに逃げそうになる本能を意志の力でねじ伏せ筋肉を引き絞り刀身をがっちりと押さえ込む
 冷たい異物感が掌を貫通し、嘔吐しそうになるもそれを飲み下し、耐える
 もう一方の手を峰に添え、しっかりとつかみ)

友情を深めるのに刃は必要ござらんからなあ…
これは預かっておくでござるよ…!
(呼び戻そうとする力に抗うたびに刃が肉を抉り、あふれこぼれる血が地を濡らす
 今自分が力を振るうべき時ではない、言葉を掲げる時でもない
 ただ、じりじりと磨り減っていく体力と気力を支え、時を稼ぐ)

石蒜 > 必死の形相で刀を呼び戻そうと、拘束を逃れようと抵抗を続けていたが。
「ともだち……友達……?」畝傍の言葉に、暴れるのを止め、体の力を抜く。
「私で、いいの……?もう、歪んじゃって……人間じゃないのに…もう、戻れないのに……いい、の……?」泣きそうな顔で、問いかける。

畝傍・クリスタ・ステンデル > 「うん……いいよ。いいんだ」
畝傍は瞼を開き、石蒜に心の底から微笑む。もはや炎化は完全に解かれている。
「どんなにゆがんでたって……もどれなくたって。シーシュアンは、シーシュアンだよ。それは、かわらないから。ボクはずっと、シーシュアンのトモダチでいるよ」
そう告げると、より一層強く、石蒜を抱きしめんとした。
畝傍の瞳からは涙が零れていた。だが、それは先程までのような悲しみの涙ではなかった。

風間蒼介 > ……
(風の結界を右腕に集中させ、畝傍にして見せたように血管を圧迫、止血する
 他人の体と違い自身の体は詳細まで把握できている
 風の圧力で血を止め、神経電流を操作し痛覚をやわらげ…
 しかし魔の物が直接血に触れる事で風間の血が拒絶反応を起こし、強烈な忌避感に苦い物が口の中に広がる
 もう少し、あと少しだけ…二人の時間を邪魔しないよう、呻き声すら殺し)

石蒜 > 受け入れてくれる相手を見つけ、石蒜もその体を抱きしめようとした時。
石蒜の中の、這い寄る混沌が囁く『また揺れてるのかい?悪い子だな君は。人を殺し、悪事を積み重ねた君を本当に受け入れてくれる人間なんか居ない。君を受け入れられるのは、僕だけだ。』

石蒜の表情が、残虐さを帯びた薄ら笑いに、戻る。
「ああ、なんてことを……忘れるところでしたご主人様。石蒜はまだまだ未熟ですね。」
全身に力場をまとい、斥力で畝傍の抱擁を弾こうとする。
それと同時に、風間の腕の中の刀が、これまでとは比べ物にならない力で、引っ張られる。
「惜しいですね、実に惜しかった!あとちょっとで私を騙し通せましたね!危ないところだった!!」笑う、笑う、全てを嘲り、全てを無価値と無意味と断ずる、混沌の笑み。

畝傍・クリスタ・ステンデル > 「…………っ!」
斥力によって弾かれた畝傍の体は大きく吹き飛び、臀部から地面へ叩きつけられる。だが、今度は屈しない。
再び立ち上がり、眼前の石蒜へ告げる。
「……ボクがシーシュアンのことだましてるって、シーシュアンがおもうなら、それでもいい。でも……わすれないで。ボクはシーシュアンのこと、トモダチだとおもってるから。ずっと」
サヤへの誓い通り、諦めずに言葉をかけつつ。
「(やっぱり……『ご主人さま』か)」
畝傍は確信した。やはり、石蒜自身に訴えかけるだけでは効果がないのだと。
背後にいる鳴鳴を――『混沌』を何とかできなければ、石蒜/サヤは邪悪な支配から脱することはできないのだろう、と。
だが逆に言えば、鳴鳴を何とかできれば石蒜/サヤが解放される可能性もあるということだ。今はまだ希望を捨てる時ではない!

風間蒼介 > っぐ…あっ……!
(突如強まった力に均衡を失いかけていた状況は即座に傾き、肉を引き裂き骨を削りながら刀が引き抜かれ、フリーな状態へ…
 否)

ここにその御刀の先につける血、ゆつ石村に走り尽きて成りし神の名は…!
(即興で血に関する故事を引きだし、こぼれた血より神の産まれるというイメージから血に力を乗せる
 古来より血というのは最も身近な呪物であった、それは赤く鮮やかな血が命の象徴として考えられていた証
 風間蒼介は純粋な術師ではない、術使いと言った方が正しいであろう
 しかし自身の…風間の血は手が加わっている
 霊的なエネルギーを全身に行き渡らせるために伝導率を高め、蓄えられる量を増やすために許容量を高め…高純度な霊的エネルギー体と化している
 ゆえにこれだけの条件が揃えば)

持って…行け!
この判らずや!
(刀に叩き込む、自分がどれほどサヤを救いたいと思っているか、石蒜の消えない結末があればどれほど幸いか、畝傍がどれほど必死に、自分を削る覚悟で想っていたかを
 それは漠然とした記憶だ。
 確かな像を結ぶ事のない、漠然とした印象と感情の塊
 混沌と呼ばれた術師の行う確固たる力には及ばぬであろう、細い細い、頼りなくも色鮮やかな楔を、打ち込む)

石蒜 > 引き寄せた刀をつかむ。と同時に、流れこんでくる感情と印象の奔流に「くっ……!」よろめく。「まやかし、まやかしだ。ありえない……!」言い聞かせるように、呟きながら、頭痛にさいなまれるように、左手でこめかみを押さえる。

「ぐっ、うぅ……今日は……十分楽しみました、もういいでしょう。」だがその表情は苦悶にゆがみ、明らかに消耗している。
「さようなら、さようなら、せいぜい無駄な努力を続けてくださいよ……ふ」ドロドロとその体が黒い液体へと溶けていき、地面に染みこんでいく。

畝傍・クリスタ・ステンデル > 地面に染み込んでゆく石蒜を見つめながら、畝傍は。
「……無駄なんかじゃないよ。こうしてまた会えて、サヤとも、シーシュアンともお話できたもん。……ボクはあきらめない。ぜったい、シーシュアンをたすけるから」
その言葉が石蒜に聞こえていたかどうかは定かでない。だが畝傍は力強く言い聞かせるように語った。――そして。
「……ううっ」
畝傍はその場で膝から崩れ落ちる。
どうやら銃を手放した状態で時間が経ちすぎ、限界が来たようだ。
「……ソースケ。銃を……ボクの、銃を」
畝傍は蒼介に告げた。

ご案内:「常世神社・鎮守の森」から石蒜さんが去りました。
風間蒼介 > ……行った…でござるか
(その姿が消えればかくりと膝から力が抜けて崩れ落ちる
 慣れない…知識としてだけ存在する感染呪法を媒介と状況の補正に任せてぶちかました結果、確かに効果を発揮した
 しかし代償として不足分を体内に残る血に蓄えられた霊力を持っていかれる破目になり…
 失血と力の欠損による虚血状態で…力が入らない)

畝傍殿……?
(蒼介は彼女の症状を始めてみる、戸惑いはあるが今は言うとおりにしたほうがいいだろう
 幸い、戦闘はとても出来ないというだけで動けないというほどではない
 よろついた、緩慢な動きでショットガンを拾い上げると、畝傍の隣に腰を落としつつ、手渡し)

やれる事…やったでござるよね
(ふと、疲労と不安の重なった弱気が、そんな事を口に出させた)

畝傍・クリスタ・ステンデル > 「ありがと。コレ、かりてるから……なくしたりしたら、たいへんなの」
蒼介から手渡されたショットガンを受け取り、畝傍は。
「うん……ソースケは、できること、したとおもうよ。ボクは……できたの、かな」
畝傍もまた、やれるだけのことはしたつもりだ。
しかし、あれだけ手を尽くしても、石蒜/サヤが戻ってくることはなかったと考えると、急に弱気になる。以前、石蒜本人の前でも垣間見せた弱さ。
もしかすると――鳴鳴をなんとか出来たとて、石蒜/サヤは戻らないかもしれない。
石蒜が去っていった途端に、その可能性が頭に浮かんでしまい。
「ねえ……ソースケ。ボクはほんとに、シーシュアンを……サヤを、たすけられるかな」

風間蒼介 > あれは…拙者では出来ぬ事でござったよ
きっと拙者では迷いながらもサヤ殿を優先したでござろう
それに拙者…サヤ殿とは本当に名も知らぬいきずりで浅い関係でござってな
深く絆を結んだ…畝傍殿にしか出来ぬことであった、拙者そう思うでござるよ
(手ぬぐいを取り出すと水筒の薬草茶を振りかけ、穴の開いた掌をしっかりと縛り付ける
 その上に紙製の呪符を取り出し貼り付けると青い炎を上げて燃え尽き、止血と、簡単な痛み止めを)

そうでござるなあ……サヤ殿は助けてくれと言っていた
石蒜も…迷ってござった、それはきっと、こちら側にありたいという形であると拙者信じてござる
ならば……拙者達が折れない限り、目はあると思うでござるよ
黒幕さえ何とかすれば……うむ、こういう時良い言葉がござった
なんとかなる、と
(自分より彼女の方がその不安は深い…そう気付けば、ふっと息を吐き
 笑顔を浮かべて見せた)

畝傍・クリスタ・ステンデル > 「……そうだね。なんとか、なる」
自分自身に言い聞かせるかのように、蒼介の言葉を反復する。
「それじゃ、ボクもかえるよ。きょうはありがと、ソースケ」
そう言って、背中のフライトパックを脳波操作する。今ならば乱れずに操作が可能だ。
円形の中心ユニットから二枚の翼が開き、両翼の先端に備わった卵型の推進装置に点火されると、畝傍の体は徐々に宙に浮き始める。
「またね」
蒼介に別れを告げると、畝傍は学生街の方向へと飛んでいった――

ご案内:「常世神社・鎮守の森」から畝傍・クリスタ・ステンデルさんが去りました。
風間蒼介 > ありがとう、はこちらのセリフでござるよ…
(ぽつり、とその背中に声をかける
 おそらくフライトパックの推進装置の音にかき消され届かないだろうが…
 
 ああ、未熟だ、自分は未熟だ…
 忍びとして育てられ、心理面は鍛えたつもりだった、しかしそれはあくまでも「敵」を前にした時だけ
 ああして敵対しながらも救いたいと思った相手に対しては自分は年相応の子供でしかない
 そのブレの横をまっすぐに駆け抜ける彼女は、とてもまぶしい
 救いたいという気持ちは間違いない、彼女をああも追い詰めた黒幕には怒りすら覚える
 しかし、その芯となる確固たる感情が無い分、間違いなく自分は彼女より弱い
 この島に来たばかりの自分ならば自分一人で何とか出来ると思っていただろう
 そして肝心な場所で脆さを露呈していただろう
 
 ここに自分を送り込んだ父親達の気持ちが、意図がようやく判った気がする
 自分は、弱い
 それは力でもなく、心でもなく、人間として
 しかしそれを嘆くでもなく、前を向くだけの強さくらいはあるはずだ
 顔を上げ、弱る体を二本の足で支え、帰路に着く)

さーて、ハッピーエンドにバチコンかまさんといかんでござるなあ

ご案内:「常世神社・鎮守の森」から風間蒼介さんが去りました。