2016/05/21 のログ
ご案内:「放課後の保健室」に伊都波 凛霞さんが現れました。
伊都波 凛霞 > ───まとわりつく

腕をとられ、足をつかまれ
引き倒される

自分の身体の上を這いまわる蛇のように、
よく知った3つの顔が、今日も───

「───ひ、ぁ」

びくっと身体を大きく震わせて、意識が覚醒する

……赤く染まった天井
見覚えがあまりない

「………あ、れ…?」

薄い黄色のカーテン、寝かされているのは、真っ白なベッドだ

ぼんやりする頭を軽く振って、記憶を辿る

伊都波 凛霞 > 「………あ」

少しずつ、記憶がクリアになってゆく
下半身のこの気だるさは、いつもの……

そうだ
今日の"彼ら"は、少しおかしかった

いつもなら、自分たちが満足さえすれば、それで終わるだけの時間
今日は、それが…尋常では無いほどに───

「っウ」

こみ上げてくるものを感じて、慌てて口を抑える

伊都波 凛霞 > そうだ
ただひたすら、まるで飢えた獣のように貪られた
抱く、という形容がぬるいほどに、苛烈に
何度交代しただろう、かわるがわる交代し、そして……

『伊都波さん?大丈夫?』

ぐるぐると、記憶が巡る中、今へと呼び戻す保険医の言葉にハッとする

「あっ…は、はい…」

『そう、急に倒れたって。××くん達が連れてきたのよ。
 軽い貧血みたいな感じだったからとりあえず寝ててもらったけど…、
 どこかおかしかったら、病院に行きなさいね。もう少し、休んでいてもいいから』

……そうか、記憶が途中で途切れていたんじゃない

完全に、その最中に……気を失ったんだ

伊都波 凛霞 > ちゃんとした受け答えに先生も安心したのか、少し席を外すと保健室から出て行く

「………はぁっ」

胸元を抑えて、息を吐く
よりにもよって、保険課の生徒が保健室に運ばれるなんて

「…なんで。今日はあんなに───」

鮮明になっていく記憶
何か気に障ることでもあったのだろうか
鬱憤を叩きつけるように、ただただ乱暴に扱われた
最後には、もう───

「っ…!!」

クリアになった記憶、同時に血の気が失せる
されたコト、を思い出すと同時に…どろり、としたものを自分の太腿に感じたからだ

伊都波 凛霞 > 「嘘っ…、な、なんで…っ」

にわかに慌てはじめる
全身に嫌な汗、心臓の鼓動が警鐘を鳴らす

ハヤク
ハヤクソトニダサナイト

惑うような視線が、ベッドの脇に据えられたティッシュの箱を見つけ、慌ててそれを手繰り寄せた

───必死に、拭う
奥にあるそれも、なにも、掻きだすように

はやく、ハヤク
はやくしないと───

伊都波 凛霞 > 「……はぁ、はぁ」

かさ、と最後のそれをゴミ箱に投げ捨て、どさりとベッドに倒れこむ
全身じっとりと汗ばんでいるのに、身体がとても冷たく感じる

言いようのない不安と、未だ続く不快感・虚脱感が入り混じり、ベッドから起きる気すらしない

うつ伏せに枕に顔を押し付けて、少しだけ嗚咽する

どうせ、部屋には先生も誰もいない

伊都波 凛霞 > 「……」

手元の、汚れた下着を見る
こんなもの、もう履く気も起こらない
制服のスカート丈を考えるとこのまま帰るわけにもいかないが

「はぁ…っ」

何度目家の、溜息
ベッドの脇のカーテンを念入りに隙間があかないよう閉めなおして。
制服のリボンを解く

……よく見れば制服の着せ方がなんとも雑である
リボンの結び方も左右逆、男子生徒じゃわからないのも無理もないのだろうけど
…‥保健の先生に疑いを持たれてしまったりしていないだろうか、と不安になる

伊都波 凛霞 > 幸い、バッグもちゃんと持ってきてくれたらしく、体操着に着替えることが出来る
するりと制服を脱ぐと否応なく感じる、その"匂い"
病院に寄って帰る予定だったのに、先に訓練施設でシャワーを浴びなければならなくなった
身体の痕跡だけはどうしても消せないものもあるし
特に今日は…痛々しいような跡まで残されている

なるべく見ないように、思い出さないようにしてジャージに着替え終わる

ぼふん、とベッドに座り込む

「…良かった、ベッド汚さなくって……」

完全に言い訳不能になるところだった

ご案内:「放課後の保健室」に烏丸秀さんが現れました。
烏丸秀 > 悠薇とは病室。
彼女とは保健室。
なんとも運命的なものを感じるが、さて。

「やぁ、随分な有様だねぇ」

ゆったりとした口調で言いながら、ベッドへと。
カーテンをくぐると周りから見えないようにして。
そして、あの病室のように、ゆっくり傍らの椅子へと腰掛ける。

伊都波 凛霞 > 「…えっ、あっ!」

突然の来訪者に大きく慌てる
人の気配の察知すら出来ないほど、余裕がなかったのか

「…な、なんのこと…」

とぼけるにしても、他にありそうなものだったが
そんな余裕すらも、今の凛霞にはないのだろう

「っあ…」

そして、ベッドの上にはまだバッグへと片付けていない、汚れた下着やスカートがある
慌ててそれをバッグに詰め込もうとするも、もう遅い
どのみち、この少年は全部知っているのかもしれないけど

烏丸秀 > 「ふぅん……」

また手ひどくやられているものだ。
確かに綺麗なモノを思う様汚したいという願望は分かるが、もう少し品性というものを見せればいいのに。
それに、外だけ汚して中は――というのでは片手落ちだ。
もっとも、学生に求める事でもないのかもしれないが。

「まだこんな事してるんだねぇ。案外、今の境遇、気に入ってきた?
そういう願望があったのかな」

けらけらと笑いながらひどい言葉を浴びせ

伊都波 凛霞 > 「そんなわけ…っ!!」

少し大きな声
烏丸の言葉に対する反応も、余裕のなさが現れる

「…何か、用?」

ベッドに腰掛けながらも、間にまるで見えない壁をつくるように距離を取る
見え透いた警戒である

烏丸秀 > 「お見舞いに来たんだよ」

さて、彼女にも言った言葉。
反応は対照的、なわけだが。

「あ、食べる? 残り物だけど」

鞄から取り出したのはシュークリーム。
彼女に渡した物の残り物。

でも、別に構わないだろう。
だって――

(悠薇も、彼女の残り物を与えられてきたのかもしれないし)

故意にではないだろう、が。

伊都波 凛霞 > 「…そんな気分じゃない」

シュークリームから視線を外す
今だって、"飲まされたもの"が吐き気と共に込み上げているのだ

「私に用がないなら、もう」

惨めだ
烏丸からかけられる、何気ないような言葉すら刺さる
惨めだと、つくづくそう感じて、俯いてしまう

「もう帰って……」

ぱたぱた、と大粒の涙が溢れ、自らのジャージを濡らしてゆく

烏丸秀 > 「あぁ、そう? 甘い物は精神を落ち着けるけど」

もぐもぐとひとつ、食べてみる。
うん、まだ美味しい。皮の食感はやはり、出来てから長くはもたない。

「うん――これ、美味しいよ。なにせ」

随分憔悴しているようだ。
これはもう少し、押してみるとしようか。

「悠薇ちゃんも絶賛だったし、ね♪」

絶賛、とまではいかなかったっけ?

伊都波 凛霞 > ざわり
隣から聞こえてきた言葉、その単語に言いようのない悪寒を感じて、
泣き顔のままに、目を見開いてそちらを向いてしまう

今、なんて?

「……なん、で」

どうして

「悠薇の、こと…」

今、悠薇は入院している
この少年は、すでに妹…悠薇に接触している

その事実に、不安に揺れ動いていた心を更に揺さぶられる

それはやがて。堰を切ったように

「どうして悠薇に近づいたの?!なんで、どういうつもりでっ!!」

まるで食いかかるように、烏丸に掴みかかってしまう

烏丸秀 > 「――いやだってねぇ。学校の仲間が入院したって聞いたら、お見舞いぐらいするだろう?」

学校の仲間。我ながら似合わない言葉である。
へらへらと笑い、真剣に取り合わない様を見せながら。

「うん、カワイイよね、悠薇ちゃん。くくっ」

笑うと、顔を近づける。
あの凛々しく美しかった顔が、見るも無残に歪んでいる。それだけでも絶品ではあるが――

「――ひと目惚れ、なんだよねぇ」

伊都波 凛霞 > 自分に余裕がないことが、自分自身でよくわかる
それでも制動ができない
止められない
烏丸の両肩を掴んで、食いかかってしまう

「…何、言ってるの…?」

一目惚れ?
ふざけているとしか思えない
自分にあんな言葉をもちかけてきた男が
嫌な汗が頬を伝う

「悠薇に何するつもり…?
 ううん、もう、何かしたの…!?」

濡れた瞳が不安げに揺れ動く

烏丸秀 > 「だってそうだろう?」

くすくすと笑いながら、彼女を見下ろす。
普段の凛々しさなど欠片もない。
ただの『女の子』に成り下がった彼女を。

「ん? 何にもしてないよ。
だってそうだろう――ボクは愛するだけ。いつも愛する人を壊しちゃうんだけどね」

ふぅ、と肩を竦める。
こればかりはやめられない。この男の業だ。

伊都波 凛霞 > 「………」

掴んでいた肩を、力を込めて押し込めるようにしてそのままベッドへと引き倒してしまう
…傍から見ると非常にアレな構図かもしれないが

壊す?
壊すってどういう意味?
悠薇を、大事な妹を…私の最愛の家族を壊すって?

「悠薇に何かしたら…タダじゃ済まさないから…!!」

文字通り、鬼気迫る
確かな泣き顔と濡れた瞳、それをそのままに
殺意すら感じるような視線を、覆いかぶさるようにして少年へとまっすぐに向ける

それは違わぬ決意の証
妹のためを思えばこそ、自分自身はどんな凌辱にでも耐えられるという、歪んだ決意
その果てにある、絶対的かつ妄信的な姉としての立場にしがみつく…哀れな少女にも見えたかもしれない

烏丸秀 > 「では、この場でボクを殺すかい?」

押し倒される、というのはなかなか新鮮だ。
押し倒した事は結構あるのだけれど。
だけど、なかなか出来る経験ではない。

「うんうん、良いんじゃないかな。それが悠薇ちゃんにとって、最善の選択、なのかもね」

あぁ、殺意が、むき出しの感情が見える。
そう、凛霞の本質はこれだったのかと思えるほど。

その顔は、美しい

だから

「さ、やるならどうぞ。
そうやって今までしてきたように、『彼女の為に、彼女の心を壊す』といい」

伊都波 凛霞 > 妹に危害が及ぶくらいなら、この少年をそれができないような身体にする
それができる力も技も、自分にはある

危険を感じる、言いようのない危険を
このへらへらとした少年の表情には……

でも、続いた言葉に、すべてが止まる
時間も止まる
呼吸も止まる
ただ耳鳴りのように、自分の鼓動だけが
今、なんて?

「……どう、いう…意味…」

彼女のために、彼女の心を壊す
確かに、そう聞こえた

烏丸秀 > 「だってそうだろう?」

悠薇の歪み。
その心の歪さを見てきた。
それがこの男に、確信を与えてしまった。

「小さい頃からずっと、悠薇ちゃんを守ってきた。
自分はお姉ちゃんだから。悠薇ちゃんは妹だから」

そして、この男は。
言の葉という剣を振るわせれば、如何な残虐も辞さない。


『私は悠薇より優れたお姉ちゃんだから』

『私は悠薇のものを奪って生まれてきてしまったから』


容赦はしない。
一突きで深奥を抉る。

「『私は、悠薇の分まであの子を守らなくちゃいけない』」

烏丸はにっこりと笑い、凛霞を見つめる。

「ずっとそう思って、悠薇ちゃんを守ってきたんだろう?
――彼女の歪を、見て見ぬフリをして。
それが悠薇ちゃんをどれ程傷つけているかも知らずに」

伊都波 凛霞 > 「………」
烏丸を抑えこんでいた姿勢から、手が離れ、ふらふらと後退するように…そのまま、ぺたりと座り込む

違う、違うよ
お姉ちゃんはそんなつもりで悠薇を守ってたんじゃない

心のなかで何度も何度も、反論する
ただしそれは

「ち…ちが…っ」

震える唇を通じて、言葉として外には出ない
小さく小刻みに震える肩、力なく座り込んだ様子
何かに怯えるような、"ただの臆病な少女"の表情は、皮肉にも彼女の妹と瓜二つで

烏丸秀 > 彼女を彼女たらしめていたもの。
それは『姉』という誇りと、絆。
だが、それは――

「君がそうやって男達に陵辱され、穢され、傷つけられた理由」

彼女はただ、妹を守りたかった。
本当にそれだけなのだろう。
だが――

「本当は、悠薇ちゃんを守る為じゃあない」

ゆっくり起き上がると、凛霞の近くへ行き、顔を覗き込む。
あぁ、こうして見ると、悠薇ちゃんそっくりだ。

「君はさ――」

さぁ、最後の扉を開けよう。
この先に、凛霞の本性が待っている。

「妹を守りたいから男たちに身を委ねたんじゃない。
『自分はこんなに傷つき、汚れてまで悠薇を守っている』
そういう赦しが欲しかっただけだ」

残酷なまでの言葉を、凛霞の耳に注ぎ込み

「君は、妹から多くを奪った罪から逃れたかっただけなんだよ」

伊都波 凛霞 > 「……私、は」

違う
そんなことない
そんな自分勝手な理由なんかじゃ、決して

でも
自分でも気づいていなかっただけで

モシカシタラ、ソウ───

何か、脆い陶器のようなものが、砕ける音が───した

そっか
そうだったんだ
自分でわかってなかっただけで、きっとそうなんだ
そんな思いがザクザクとカッターで抉るように、訪れる

「う────」

耐え切れなかった
その場に蹲るようにして、えづいて
自分を囲った少年達のモノも含めた胃の内容物を全て、吐き零してしまう

「ぁ…───ぁ、ぁ……」

もう、何もない
全てが空っぽになってしまった

烏丸秀 > 「――ふふ」

あぁ、最後まで気付かなかった。
あまりにも、簡単な事なのに。
彼女たちの間にあったのは、ほんの小さな、小さな溝。

(凛霞、悠薇ちゃんはね。ただ君に、一人の人間として見てもらい、傍に居たかっただけなんだよ)

それだけ言えば、今からでも器は繕えるだろう。
だが、勿論言わない。
このあまりにも美しい砕けた器を。
どうして無様に取り繕えようか。

「――凛霞」

烏丸は薄く笑い。
空っぽになった凛霞をベッドに押し倒す。

伊都波 凛霞 > 力なく、なんの抵抗もなく、押し倒される

「………なに」

名を呼ばれたことにただそう返す

最愛の妹の姉であるという自信は消え失せ、
完璧超人とすら揶揄された、才色兼備の神童の面影はもはや欠片も見えない

傷の入ったダイヤにどれほどの価値があるものか

今の自分に何の用があるのか

ただただ、空虚な感情だけが、身体の奥から湧いてくる

烏丸秀 > 生憎と、彼は傷物が大好きである。
そもそも骨董品には傷のあるものなどいくらでもある。

烏丸は凛霞の瞳を覗きこむ。
光を失い、濁っているであろうその目を。

「でもね、ボクは赦すよ」

あまりにも優しい声音で。
まるで甘い毒のように。
言葉を耳に流し込む。

「君がどんな罪をおかそうと、心がバラバラになろうと、ボクは君を赦す」

当然だろう。
この男にとっては、そんなもの罪でもなんでもないのだから。

「だから、もう傷つかなくていいよ、君はもう、苦しまなくていい」

まるで預言者が神の赦しを伝えるが如くの断定で。
烏丸は凛霞を見つめる。

「――代わりに、君の全てをボクに頂戴。
そうすれば、ボクは全霊をかけて君を赦すから、さ」

伊都波 凛霞 > 「………」

深く入ったヒビを、少年の…烏丸の言葉が埋めていくのを感じる
妹のこれまでの人生を、文字通り塞いでしまっていたのかもしれない自分を、赦すと言う
誰よりも、自分自身が赦せなかったのに、それをいとも簡単に赦すと言う
…この少年に許されたからと言ってどうというのだろう
そんな筈の言葉であるにもかかわらず
たくさんヒビが入った、そこには甘く染み渡る、文字通りの蜜

ただ何よりも…そんな自分を欲しがる意味が、わか、ら な   イ

「‥……いい、よ」

どうせ、もう誰に捧げる価値もないもの
じゃあ、自分を欲しがる相手がいるなら、捧げてみればわかるんじゃないか

烏丸秀 > 「――いい子だ、凛霞」

満足そうに頷く男。
あぁ、もちろん、全霊をかけて赦そう。
何せ――

(赦しなんて、タダみたいなものだからね)

くっと軽く笑い、脳裏にあの少女を思い浮かべる。

大好きな姉。
目標とする姉。
――いつもまぶしい、姉。

その姉のこの有様を知ったら。
彼女は一体、どう嘆くだろう。

(――ま、今は)

そして彼は、彼女の服にそっと手をかけ――

伊都波 凛霞 > 支えは、折れた
そしてそこに、新たな支えが生まれようとしている

今までの支えとは、また別の
でもやっぱり歪んでいるような、そんな支えが───

ご案内:「放課後の保健室」から伊都波 凛霞さんが去りました。
ご案内:「放課後の保健室」から烏丸秀さんが去りました。