2016/08/19 のログ
ご案内:「異邦人街安アパートの一室」に五代 基一郎さんが現れました。
ご案内:「異邦人街安アパートの一室」に綾瀬音音さんが現れました。
五代 基一郎 > 真夏。夏の祭りから数日。
ちょうど夕方あたり。昼と夜の間から少し夜にかかるかと言う所か。
自宅へ綾瀬音音を誘う連絡が一通あった。
今後のことを話したい、との短い文章で綾瀬音音は呼び出された。

呼び出しに応じればまだセミの鳴き声と早めの鈴虫の鳴き声が混ざる異邦人街の片隅の安アパート……
玄関の鍵は既に開いている、というより合いカギが渡されている。
特に問題なく入れるだろうし、開ければ冷房の風荷運ばれて紅茶と焼き菓子の匂いが送られてくるだろう……

綾瀬音音 > (ああ、黄昏時だ。
一度来たことのある道をぼんやりと歩きながら空を見上げて、ふとそんなことを思う。
短い文章であっても呼び出されるには十分な理由であったし、
手早く身支度を整えて、先輩の――恋人の家へと向かう。

うだるような夏の虫の声を聞きながら、渡されていた合鍵でドアを開けた。
頬を撫でる涼しい風に、甘い香り。
それに顔をほころばせながら足を踏み入れた)

こんにちは、お邪魔します
(そう声を掛けて、玄関のドアを締め鍵を掛けて、靴を揃えて脱いで上がり込む。
そのまま居間なのか事務所なのか自分からは判別つかない部屋へと向かった)

五代 基一郎 > 部屋に入れば、それこそ玄関のドアを閉めたところから
夏の虫の音がどんどん遠ざかる。
その変わりに涼しい風と甘い香りが漂う。
まるで世界が知らないうちに……節目など無かったかのように移りゆくように。

事務所とも、今ともつかない……時折少年のような雑多さが目に映る
その部屋に入れば応接用のテーブルに金塊型の焼き菓子と、冷たい紅茶が用意されており
そして、そのちょうど部屋に入って来て最初に見る人物がいた。

装飾された黒いベールをかぶり、黒いローブに身を包んだ女がいた。
顔は伺えない。そしてこの部屋に”ただ一人”いる女はその手をゆっくりと動かし、席を薦めた。

こんにちは、と。

綾瀬音音 > (外の空気の代わりに室内に満ちる、季節感のない空気。
意識することもなく、そもそれが意識に上ることもなく――。

当然ながら、出迎えてくれるであろうと思っていたのはこのアパートの部屋の主であり、
視線は自然とその姿を探していたが、

目に入ったのは、“女性”だけであった。
応接用のテーブルに用意された美味しそうな焼き菓子も、アイスティも目に入らず、きょとんと茶色の瞳がその女性を見つめた)

――ええと……どちら様、ですか?

(黒い、女性だということ以外に判別の出来無いその女性を前にして、問いかけたのは訝しげな声音である。
流石に男に女性の同居人がいれば知らせてくれただろうから、そうではないだろう。
他にこの部屋に人はいない。

自分と彼女だけだ。

訝しげな表情のままで、
薦められるまま――取り敢えずは浅く席に腰掛けた)

五代 基一郎 > 他に人の気配などない。
いつもはいるだろう、また在る時はある程度読んで席を外しているだろう
黒猫や大鳥等の護衛らもいない。
いるのはただ一人、その黒衣の女だけ。

■黒い女>「私が誰かとするのであれば……貴方に通じ合う双子の姉がいるように、彼にもまた相対する存在がいて
      それが私であるというだけの話よ。それと彼を騙って貴女を呼び出した非礼はお詫びするわ。」

ごめんなさい、とも。どうぞ、食べ物に何かを入れる趣味はないの、と薦めながら
女も紅茶に口を付ける。自分で淹れたのだから当然というように、何も不安になることなどない
と口にしていく。

■黒い女>「切っ掛けというのは大切なことよ。勿論それが尊いものであれば良く残り続ける。
      悪ければそれは大きく後を引くわ。最初の印象というものを人は拭いきれない。
      それでもこうして貴女に会おうと思ったのはこれが転機であることは間違いなかったから。
      貴女にとっての転機。それは未来の話が出来るようになったから……違うかしら」

そうしてティーカップを、普段……というよりこの事務所とも居間ともつかぬ部屋にそぐわない
それなりの雰囲気があるものをテーブルに置いてひと息。綾瀬の言葉を待つ。
それは目の前の少女からの拒絶や何かを一切考えていない……話がそのまま進むような口ぶりで
初対面というには近すぎるが、信頼というのは遠いような……何か自然な、そこに自分があるような語り口で話始めた。
未来に対して漠然としていた少女が、何か未来を確かに思い描き始められるようになった転機にそれは現れて話し始めた。

綾瀬音音 > (本当に――“何もいない”。
この部屋には彼女と自分の二人だけだ。
何故、と言う疑問が浮かぶがそのまま席を立って、
ここから立ち去る――と言う選択肢を取るのは何故か危ぶまれた。
なので、女と対面する形になるのだろうか、座ったまま彼女をまっすぐに見る)

―――――相対、ですか。
いえ、それはまあ……貴女だと知っていたらここにはこないので取り敢えずは……
(相対。
敵対か、対極か。
その言葉からは男とは相容れない、そんな風に言っているような気がした。
しかし、この女は――何故自分に片割れが居ることを知っている?
勿論、学園に提出している書類等を見れば、知ることはそこまで難しいことではないだろうが。

丁寧な謝罪には戸惑いを隠し切れないまま、そう返して。
何も入れていない、と言われても薦められた食物を口にする気にはなれなかった)

(そもそも、この女は何故自分と彼の関係を知っているのだろうか。
隠しているわけではないが、誰かに言った覚えはない。
更に言うならば――その、語られた言葉から、何を彼と話したか内容を詳細に知っているような気配すらある。
何故なのか。

自分と姉の様に、いやそれ以上の――何か、お互いを感じるようなものがあるのだろうか。
頭は疑問符で一杯であったし、警戒が無いわけではなかったが、
やはり、ここで席を立つ訳にはいかない――その思いの方が大きかった)

――不信がられるのを承知で、でも、出来れば貴女は私に好印象を与えたかった、みたいに聞こえるんですけれど……。
……私の、でもありますし、多分先輩の、でもあります。
あんな風に言われて、何も考えないでいられるほど無感情じゃないですから。

(女がすべてを知っている、と言う前提で話しているが、通じるだろうと言う確信があった。
この女が用意したような雰囲気の茶器とその指先を視線の端で追いながら。
未来、将来のことは曖昧にぼんやりとしていたが、不安を感じるとは言え
確かに形を持ち始めてきたのは事実である。
彼が語ったような詳細な未来は無理であっても――共に生きていきたい、と言うような
そんな漠然で確かな願い。


こちらは知らないが、向こうは知っている。
そんな奇妙な距離のとり方が難しい状況だが、取り敢えずは素直に答えることにした。
答えなくていいことは、答えなければいいだけだ。


――尤も。
こちらにある手札は何であるのかすらわからない状況なのではあったけれども)

五代 基一郎 > その危機感は、今命を取られるものだろうか。
それともここで”選択肢を誤れば危ういまま歩いてしまう”かもしれない予知だろうか。
語り口からは、どちらとも言わないような……ただそういった敵意はない。
敵意も、支配をともするような雰囲気はなくただ何もない空気の世界に
穏やかな時間だけが異様に流れていた。

■黒い女>「正確には敵対になるわ。3年ほど前に戦ったのも私だし、勝利して主導権を握り彼の異能を封じたのも私。
      最も今は彼は敵対する意志を完全に無くしているから”だった”というだけになるの。
      だから相対。」

全ては過ぎたことであるし、今はさほど問題ないしあなたが気にするようなことではないのよ
とでも言いたげに語るその口は、本当に平然としていた。
恐らく男女の関係にあるうちの片割れと敵対していたなんて正直に言えば心象がどうなるかなどわかりきっていることであっても
それは素直か、偽りのないことか、だがただ自然に語っていく。

■黒い女>「それはそうよ。そもそも私は本来彼と違って貴方”達”の側にいる存在なのだから。
      貴女と彼ではなく異能でも、異邦人でもという意味かしらねこの場合。
      人と異なる者とされた者達の味方……と言えば誇大な表現になるけど。
      そうね。そこは貴方達二人の、になるわね。でも貴女はそこに不安を感じている。それは成人前に家庭を持つことの不安かしら。
      それとも彼の無邪気な未来への希望への不安かしらね。それとも……」

そのまま手を膝の上に置いて話し続ける語り口は占い師か何かそういったものを思わせるような
探りではなく、何かしらの”解”に対して道筋を置いていくような口ぶりで

■黒い女>「貴女と彼が求める”普通”の生活が本当にあるか。
      あったとしてもそれは容易く崩れ去ってしまうものではないのかという貴女自身の経験からくる不安では?」

これだけは嘘を付けない、というような解を出して語る口は確信していた。
ただ純粋に、自分がかつて触れていたものを見失って幾年。そして手に入るとしってただ無邪気に望む者と
それが何かを知っていて、その中にいてかつその中でさえそれを求めた者との違いがそれだろうと。
どうしてそこまで知っているのか、というような根源的にも近い要素を
触れなければそのまま見過ごしてただ通り過ぎてしまうようなものをも連れて語り続けた。

綾瀬音音 > (命の危険は感じていない。
それならこんな手の込んだ酔狂なことをする必要はないだろうし、少なくとも悪意も敵意も感じていない。
どちらかと言えば――“大切なモノを見落としてしまう”ような危機感と言えばいいのだろうか。
知っておかなければいけないこと、を、彼女は知っているように思えたから。
そう思えばもう、ここから動けるはずなど無い。
だから、異様なほどに穏やかな空気の中で、女と対面する)

――――――。
(敵対して、勝利して、主導権を握り、異能を封じた。
サラリと告げられた言葉は、到底軽い気持ちで流せるものではないが、
一瞬色めき立つようにぎり、と視線と奥歯に力が篭っただけでそれ以上は無かった。
平然としていた口調はどちらかと言えば“自己紹介”にも聞こえたからだ。
自分がどういう立場の人間――そもそも人間なのかもわからないが――を明らかにする様な。
それに、敵対する意思を完全に無くしている、と言われればそれには頷かざる得なかったのもある。
先日の彼は――本当に、幸せな未来だけを見ていた。
不安になるほどに。

だから理解した、の意味だけ込めて頷いた)

人と異なるものとされた者達の、味方……。
(異能。異邦人。
それらは確かに人と異なる力だ。
だが、この世界において何処まで意味があるのかは解らない。
勿論それらが差別といったものや拒絶、嫉妬、怒り、痛みを生み出すものなのは理解している。
だが――その境界線は一体何処だ?
異なりながらもそれらは矢張り、“ヒト”なのではないか――?

そこまで考えてふと、理解した。
この女が――もしくはこの女も――彼が戦ってきた“悪いやつ”なのだろうと。
だが、取り分け自分の描く“悪いやつ”の印象と、彼女の印象は、違う――)

―――――、――――――…………
(声すら、出なかった。
自分の成人前に、それこそ順序というものをすっ飛ばして居るような彼に不安を覚えないわけではない。
無邪気な、子供の描いたような綺麗な未来の絵図が余りにも綺麗で不安を覚えるのは本当だ。

だが、そこの根源にあるのは――――)

何、で―――……
(そうだ。
女が語る通り、それが一番の不安の理由。
望むのは当たり前で、ささやかで、でも、それは――。

容易く手に入るものでもなく、そして簡単に崩れ去ってしまうものだと、知っているからだ。

与えられるなら、与えてもらえるなら、どれ程素晴らしいものなのか――。
それを理解して、それを理解しているからこそ――。
喪失の恐怖に怯える。

失うことを知ってしまったら、恐怖から逃れることは困難だ。

それに)

そこまで知っているんですか…………?
(彼のことを知っているのは、解らないでもない。
主導権を握った、と言う事はそういうことなのだろう。

だが、自分に関しては?
いや、彼とて知っている事実でもあるからそこまで不思議なことではない……?
しかし、それをどうして言い当てることが出来るのだろう?

流してしまうには疑問はあまりに大きく。
震える唇で問いかけた)