2016/10/12 のログ
ご案内:「落第街の路地の奥」にブロンドの女さんが現れました。
■ブロンドの女 > 「ふふふ、うふふふふふ」
落第街の路地の奥。一組の男女が身体を寄せ合っている。
落第街には不釣り合いなほど華やかな格好の女と、女ほどではないもののそれなりに育ちの良さそうな身なりの、黒髪に赤い目の男。
2人とも、楽しげな笑みを浮かべている。
女が、男の顔の横に唇を寄せ…
「見 つ け た」
そう囁きながら…いつの間にかバッグから取り出したらしい白い何かを、地面に落とす。
強く白い光が、路地の奥に溢れた。
■ブロンドの女 > 光が消えた後…そこにいるのは、勝ち誇ったように立つ女と、地面に転がっている男。
男の服の袖やズボンの裾が、不自然に萎んでいる。…まるで、その中に、「なにもない」かのように。
「…随分手こずらせてくれたわねぇ?
「妖怪もどき」と一緒に騒いでくれたら早かったのに…」
甘ったるい発声でそう言いながら、男の方に手を差し伸べる。そして…
「『浮遊(フロッテゾン)』」
と唱えた。手足のない…浮かされるとはっきり分かった…男の身体が、女の上体とほぼ同じ高さまで浮いた。
男の顔は、恐怖に歪んでいる。
強く白い光にも…その呪文にも、覚えがあったのだ。
「…さあ、お話の続きをしましょう?」
女の、紫めいた唇が三日月の形に笑んだ。
ご案内:「落第街の路地の奥」に獅南蒼二さんが現れました。
■獅南蒼二 > ふわりと,漂う空気にわずかに混じる煙草の香り。
その気配を一切隠すことなく,足音さえ響かせて,男は2人に近づいた。
足音が近づくにつれて,煙草の香りもより強くなっていく。
「……取り込み中か?
こちらのことは気にせず,続けてくれ。」
紫煙を燻らせながら,男は無責任に笑った。
眼前の悲惨とさえいえる光景を見ても,眉一つ動かしはしない。
2人が見えるように立って,壁にもたれかかる。
………男はそれがさも当然であるかのように,白い煙を,静かに静かに吐き出した。
■ブロンドの女 > 男の寿命は、闖入者のおかげで束の間延びたと言えるだろう。
女は、闖入者の方にゆったりと向き直る。紫色の瞳が、はっきりとした猜疑の色を宿す。
「………邪魔をしないなら…
今から私が彼から聞くことを、ぜーんぶなかったことにして…行動を起こさないでくれるなら、そこで見ていて」
喉の低音を無理に使うようなかすれ具合の、甘ったるい声。
口元は勝ち誇った笑みを刻んだままだが…その紫色の瞳は、不自然なほど笑っていなかった。
■獅南蒼二 > その声を聞いた獅南は,僅かに,ほんの僅かにだが,目を細めた。
それから,煙草を携帯灰皿へと入れて…
「…残念だがアンタもソイツも知らん私としては,アンタにだけ有利になるような約束はできん。
私がアンタに肩入れするに足る理由があるのなら,話は別だがな?」
…静かに壁から離れ,貴方の方へと歩み寄る。
■ブロンドの女 > 闖入者…獅南の言葉を聞いた女が、わずかに片眉を動かす。
「そう…それじゃあ、仕方がないわね」
紫の唇を艶めかせた笑みとは食い違うほどの無感情な声で、バッグから何かを取り出すと地面に落とす。
地面に落とされる何かが、空間を遮断する…結界を生成する類の魔具だと、獅南には分かるだろうか。
もし結界が張られれば、それは物理的な要素を遮断するもので…魔術を阻害はしないが、獅南と他2人の間で、音は途切れてしまうだろう。
「………これで、少しの間2人きりね?」
男の顎に美しい指を伸ばして、微笑む女。
それは誘惑ではなく…「お前の生殺与奪は私が握っている」という、誇示。
赤い目の男にもそれは分かってしまうらしい。女の手が伸びてきて、男の顔はますます恐怖に引きつる。
…もっとも、「女」には分かっていた。
たとえ結界を張ったとて、それが魔術的なものであるなら、「彼」相手に長持ちする道理はないことを。
空いた方の手でバッグを持ち…次の算段を練る。
■獅南蒼二 > 眼前で展開される結界を見れば,苦笑を浮かべて肩をすくめた。
「……なるほど,しかし,ずいぶんとムードの無い個室だな。」
別段,男がどうなろうと知ったことではない。
それ故に獅南は,結界を敢えて破ろうとはしなかった。
右手をかざして,ただその術式に,ほんの僅かな細工をするのみ。
自動展開の魔具であれば術式はある程度の水準でしかないだろう…書き換えるのは,容易だった。
「…………。」
獅南は,何も語らず,結界の指向性を180度反転させた。
つまり,この男女を結界の中に閉じ込めたということだ。
貴方がその変化に気づけるかどうかは分からないが…
…これで,貴方が外へ出るためには己の用意した結界をどうこうしなければならないだろう。
「………この程度ではないだろう?」
結界に阻まれて聞こえはしないだろうが,男は小さくつぶやいた。