2017/06/10 のログ
ご案内:「学生街路地裏」に和元月香さんが現れました。
和元月香 > 人が死んだのを初めて見た。
...この人生では。


『う、うわぁ...』

目の前の惨劇を見て、月香は思わず顔を顰めた。
濃い血の臭いが、充満していた。
狭い路地いっぱいに血が広がり、アスファルトを赤黒く染めている。

その血の海の中には、人だった肉の塊が転がっていて。

____その前に、得体の知れない黒い異形が蹲っていた。
血に塗れた触手を生やし、うねらせるその姿。

(うん、グロい☆)

どういうことなん。
意味わからんわ。


月香は満面の笑顔で現実逃避を開始した。
ただ近道してただけなのに、どうしてこうなった...。

和元月香 > 人通りは無いに等しいが、近道としてそこそこ有名なこの路地裏。
ただ、迷路のように入り組んでいるせいでほぼ自分以外の人間には遭遇しないだけだ。

すぐそこは高級住宅街。
そんな場所に怪異が出る話など聞いたことも無い。

「(にしてもなんだありゃ...)」

黒い異形。
端的に言えばそうだが、赤いクレヨンの線で落書きされたような目と口。何故か笑顔だ。
おまけに、カラフルなクレヨンの線で縦横無尽に身体中落書きされている。

はっきり言って、不気味極まりない。
...しかも。


『あ、あぎ、ああ"あああああ"、いぃぃぃぃぃぃ』


「...あれ、もう死んでるよな...?」

死んでいる、はずだ。
なのに鼓膜が破れそうな悲鳴を上げ続ける肉の塊。

血の海の上、跳ねるように痙攣しながら。
ビシャビシャと、血を撒き散らしながら。

「(...どうしよう、意味分かんないし逃げられないし)」

目の前の異形は、気づいているのか分からないが。
生憎ここは一本道だ。

和元月香 > 暫く黒い異形は、肉の塊を落書きのような笑顔の目で見つめていた。
だが、不意に体を激しく揺らしながらけたたましい笑い声を上げた。

『ヒッ、あヒヒヒヒヒヒ!!!ヒヒヒヒヒヒぃっっ!!!!』

「っ!?なんぞ!?」

突然の事に刮目する月香だったが、
黒い異形は構わず、

ぱかり、と口を開けた。

涎が糸を引き、黄ばんだ鋭く長い牙がズラりと生えた、
落書きのような造形には似合わない生々しい口。

それは、そのまま。


『あひヒヒヒ、ヒヒヒひひぃぃッッッッ!!!』

『いぎぃぃぃぃぃ、あぎっ.......ぎぃッ!?』

肉の塊に、かぶりついた。
ぶちぶちぶちっと、肉が千切れる音がして。

『アヒャ、ひャひャひャひャひャひャひャひャひャ!!!』
『ッッッッ.......ぎぃ、.....ああ"あぎゃぁぁぁぁぁぁぁ!!!!』

さらに酷くなった笑い声と悲鳴。
色んなものを撒き散らしながら、さぞ嬉しそうに貪り食うバケモノを見つつ、月香は小さく呟いた。


「一呑みにしてよ...。グロイやん...」

本土あたりの一般人が見れば失神間違い無しの光景。
常世の島民でも半分は怯えるほどの、惨劇。

月香はげんなりするだけ。
それだけだ。

良く言えば冷静、悪く言えば異常。
しかし、取り乱さない事ではその場でひとまず九死に一生を得ただろう。


「...さて、どうやって逃げるかね...!」

ご案内:「学生街路地裏」に楊柳一見さんが現れました。
和元月香 > ぐちゃ、ぶちゃ、ごり、がりっ...。

咀嚼する音。
笑い声と、悲鳴。

どれほど鳴り続けていたのか。


ごくん、と音がして全ての音が消えた。


「.......、ご愁傷さま」

とりあえず軽く手を合わせる、とうとう逃げられなかった月香。
焦りは少なからず感じているようで、うなじに僅かに冷や汗が滲む。

黒い異形は暫く天を仰ぎ、無言で荒い息を吐いていた。
...一体、何をしているのだろうか。

「(行けるか...?よし行こう!)」

即時に判断。
速やかに、血の海を足音を消して走る。

「(ついてない...。
携帯の電池は切れてるし、あとで風紀呼ばなきゃ)」

うぅ〜...と目を閉じて苦々しい表情。
誤算誤算、と反省しつつ目を開ける。



『イヒ』

「.....、わぉ」



不意に、足元が暗くなった。
黒い異形は、

目の前にいた。


赤い目は、すぐ鼻の先だ。
月香はその目を見て、蜂蜜色の目を見開いた。



『あヒャ、ヒャ』

「.....____?」


月香が、小さく笑って何かを呟く。
黒い異形は、幼い仕草で、少し首を傾げる。


そのまま、黒い異形は触手を広げた。
月香は、その触手に包まれるように呑み込まれた。

楊柳一見 > 逃げる算段を踏んでいたそちらとは真逆に、うねる夏の大気を裂いて、

「……クセーわうるせーわとまあ、やんなるね」

それは悪態の尾を曳きながらかっ飛んで来た。空から。
血みどろの異景も嗤う異形も、そこそこに見慣れたものではある。
まあ、ここまで異質なモノはそうぽこじゃか沸いては来ないが。

「って――」

眼下で少女――月香が黒に呑まれる。
宙をもう一蹴りして風を生み、速力をブースト。
噴進弾とも見紛う勢いに身を撓らせ、

「吐かんかいゴラァアッ――!!」

裂帛。
同時にブン薙いだ両腕から、風力の鉄槌が異形の胴体――だと思われる場所目掛けて猛襲する!