2019/02/05 のログ
ご案内:「屋上」に暁 名無さんが現れました。
暁 名無 > 「ふう、これにてペット脱走捕り物帳一件落着、っと。」

日没直後の屋上で、俺は溜息と共に紫煙を吐き出しながら眺めていたスマホを胸ポケットへ仕舞い込んだ。

──先日の禁書庫で行われた大捕り物。
保護したサラマンダーは昨日飼い主の下へと戻され、そして今日、罰則として課した反省文が送られてきた。
飼い主は俺の受け持つ教室の生徒ではなかったから、1600字以上を最低ラインとして指定したが、
どうやら当人も大分真剣に事態を重く考えていた様でその倍以上の反省文が返って来た。

「正直、読むのしんどかったけど……ま、真面目な飼い主の下で幸せになって貰いたいもんだ。」

小さく肩を竦めながら、俺は眼下に広がる学園の敷地を眺めて呟く。

暁 名無 > 「……ま、人間に関わった以上、永劫幸せになんてなれねーのかもしれんけどね。」

紫煙と共に吐き捨てた呟きが、風邪に散らされていく。
幸せって一体何なんだろう等と傷心ぶるつもりは微塵もないし、かと言って人間を侮蔑するつもりも無い。
ただ、必ずしも相容れるものばかりじゃないというのは自戒も込めて頭の隅に置いておく。
その為に言葉にして口から発しただけ。

「ま、俺は俺なりに、俺にとっての幸せを謳歌するだけだし?
 例えば……ほら……試験監督とかパスして試験期間中家出でごろごろするとか……そういう……」

言ってて虚しくなったので一度転落防止用のフェンスに頭を打ち付ける。
ガッシャガッシャと少し大げさな音をフェンスが立てるが、周りに人なんて居やしないし。……居ないよね?

暁 名無 > 「あ~……もうちょっと楽して稼げる何か、無いもんかね。
 立ってるだけでお金貰えるとか、座ってるだけでお金貰えるとか……嫌な未来しか見えないけど。」

我ながら大人としてどうかと思う発言だけど、半ば本気だったりする。
いや、研究だけで食っていけるなら日がな一日引き籠るか外に出てるかして研究してますよ。食ってけねーもん。


「かくなる上は……ヒモになるしか……」

いやいやいや、それは。それは流石に。
実際問題養ってくれる彼女が出来るかどうかを考えると、かなり怪しいというか、現状俺が養ってる側だからもう扶養のマトリョーシカになりかねんわ。

ご案内:「屋上」に北条 御影さんが現れました。
北条 御影 > 「おや、こんな時間にどうしたんです先生。もうとっくに就業時刻は終わったのでは?」

日が沈み、いよいよ辺りが暗くなり始めた頃、
一人の少女が声を掛けてきた。
大抵の生徒はもう下校し始めている時間である。

「何やらヒモになるやら不穏な言葉が聞こえましたが…先生、そういうのがお好みなんです?
 いや、まぁ。何というか、変に納得してしまうのが何とも…」

苦笑しつつ、親し気な言葉を投げかけて歩を進める少女。
偉く距離感が近いが、暁にとってこの少女に見覚えは―おそらく、無いだろう。

暁 名無 > 「こんな事考えててもしゃぁないか。
 冷えて来たし中に戻──」

流石に一服の為とは言え上着も羽織らず屋上に来たのは拙かった。
昼間はかなり暖かで、もう春も近いんだなあなんてぼんやり考えながら仕事してたんだけども。
日が沈んでみれば、あっという間に未だ冬を抜ける気は無い事を思い知らされる。

職員室か研究室に戻ってコーヒーでも啜ろうかと意識が向いたところで、不意に声を掛けられて身を竦める。
うお、誰か居たのか。ビビった。

「……あー、ちょっとタバコをな。
 それより、お前さんこそそろそろ下校時刻だぞ。」

黄昏るにはまだまだ若い年頃だろうに。
でもまあ、少年老い易く学成り難しとも言うしな……。


「──って、ちょっと待て。
 何で納得すんだよ。別にヒモじゃなくても不労所得が得られるならそれでいいんだ。」

北条 御影 > 「下校前の寄り道ぐらい、青春の一ページとして見逃してくださいよ
 特に悪いことしようとしてるわけではないですから。優等生なんですよ、私」

えへん、と無い胸を張って得意げに語る。
赤い髪が冬風に靡き、くしゅん、と小さくくしゃみ。
両肩を小さく震わせれば、寒さを誤魔化すように体を強張らせ、また一歩。

「働きたくない、って意味では同じじゃないですか…。
 そんなことばっかり言ってるから納得されてしまうんだということを自覚しましょ?」

くすくす、と楽しそうに小さく笑う少女はかしゃん、と音を立ててフェンスに寄りかかり、顔をのぞかせ始めた月を見上げている。
特に目的も無く屋上へ立ち寄ったようだ。

暁 名無 > 「ったく、下駄箱前の鍵掛けられても開けてやんねーからな。」

職員玄関なら割と遅くまで開いてるけれど、そちらを通るともれなく職員室前を通り抜けることになる。
気まずいぞー、めっちゃ気まずいぞー。

「そんなことばっかりは言ってねえよぉ。
 もっと他にも建設的な事言ってますー……ほら風邪ひくぞ、ってジャケット辺り羽織らせれば株も上がるかね。」

生憎!そんな!上着は!無いし俺も寒い。
フェンスに寄りかかる女生徒を見、随分気さくに話しかけて来るなとは思うものの。
よく考えてみると俺に話しかけてくるような生徒は大体気さくだったと思い至る。
これぞ日頃の行いとか、人徳とか呼ばれるものだろうね!多分ね。

北条 御影 > 「やだなぁ、先生なら助けを求める女生徒の声を無視したりはしないでしょう?
 何てったって先生ですから。私、知ってるんですから」

謎の信頼である。
まるで以前にもあったかのように得意げに語る少女。
ね?と念を押すように悪戯っぽい微笑みを浮かべてみせる。

「残念、此処でかっこいいとこ見せられるようなカッコよさがあればワンチャンあったかもしれませんよー?
 と、いうわけで此れからは上着を持って屋上に来てくださいよ。ほら、私がいつ来てもいいように」

約束です、何て軽口を叩いて両手をすり合わせて息を吐きかける。
本格的に冷えるまでもう少し時間はありそうだ。

「というかですよ、先生は未来から来たーっていっつも言ってるじゃないですか。
 その辺の未来の知識で一儲けとかしたりしないんですか?宝くじとかー…競馬とか!」

恐らく暁にとっては聞き飽きたであろうセリフ。
だが、少女はさも良いこと思いついたとでも言いたげである

暁 名無 > 「そいつは随分と勉強熱心だな。
 ただし巨乳に限る、って頭のノートに書き足しといて。
 というのは冗談でも、流石に自業自得を救ってやるほど弱者の味方じゃねーのよ、俺。」

まったく、教師を何だと思っているのか。
流石に俺が許した場合に俺が怒られる様な物は看過するわけにはいかねえんだ。

「はいはい、龍と虎が描かれたスカジャンを今年買った福袋に入ってたからそれ持ってきとくわ。
 裏起毛だぞーあったかいぞー。」

へいへい約束約束、と返事をしつつ、それはそれとして上着を持って来ておくのは俺も賛成したい。
だって寒いもん。思ってた以上に、日没後は寒いもん。

「簡単に言ってくれるよな……
 例えば、5年前の宝くじの当選番号、覚えてたりするか?」

北条 御影 > 「むっ!誰が貧乳ですか!
 いや確かにそんな大きくはないですけど!女性を胸で判断するのは良くないですよ!!人権侵害?とか?そういうのですよ多分!」

ぶーぶー、と抗議の声をあげるが、暁の言い分は至極真っ当である。
それを分かった上でわざとらしく抗議してみせるのが、楽しくて。
最後はくすり、と笑顔が漏れた。

「はい、約束しましたからね。うんうん、これも一応約束です」

よし、と小さく一人頷いて。

「あー…確かに、全然覚えてないですね。そもそも買っても居ない宝くじの番号なんて確認してもないです。
 そっか、そういわれれば確かに…未来人、ってだけで何でも知ってるなんてことは無いのか、そうか」

ふむ、と暁の言葉に眉根に皺を寄せて考える。
むー、と暫く唸ってから。

「それじゃ、先生は「北条御影」なんて名前は知りませんよね。
 歴史に残ってるとか、そういうの、無いですよね…?」

ある筈も無い。
この名前が誰の名前かもわからない暁に対し、行き成り問いかけたところで、望む答えが返ってくる筈もない。
そもそも、彼が何年後の未来から来たのかすら分からないのだ。
ただの一生徒の名前が未来まで残っているワケが無い。
分かってはいるが、それでも―