2020/07/11 のログ
ご案内:「第一教室棟 屋上」に幸道 千鳥さんが現れました。
幸道 千鳥 >  
七夕の夜、満天の空に少女一人。
世界は静寂に包まれている。

誰かと居る時間は終えた―――星々が語り合う空の時間。
この世界は既にかつての神代へと通じている。

ああ、聞こえるだろう『君の声』が響いても良いきれいな夜。

シアワセもカナシミも詰められた星の物語、私達の物語。
描かれたのは遥か昔だけれどこうして残光が見れた―――私達の神話は無駄ではなかったと識れた。
私の我らのかつての勝利/敗北/栄光/汚名/誉れ/屈辱/信頼/裏切りはこうして後世に語り継がれた。

「―――――――」

少女は感動を言葉にした。
世界から去り、封じられ、忘れ去られた私達をこの世界は忘れずに今まで語り続けてくれた。
これほどの信仰を得ていながら、これほどの『祈り』を持つ者がいながら姿を消した我々を許してくれ。

今日は星祭り。この身は仮初。偶然得た身。

我らはここに一つの視界を得て、同じ場所で同じ感動を得た。

少女に身を返そう。―――ありがとう。―――ありがとう。

その《力》は人には制御仕切れぬ異形なれど、
その《力》は心を保つ事を許さぬ恐怖だろうと。

今は、私達が僅かな時であろう地上にて再会出来た事に感謝を。
そして、君にもこの星の輝きを。



―――さあ、空をみよ。
 
 
 

幸道 千鳥 >  
気がつけば、寮ではなかった。
ここはどこだろう。

私は空を見上げていた。

誰かの声が聞こえた気がしたが、何時もと同じような《雑音》か。

「屋上……?校舎の……?」

どうしてこんな場所に。
星空は町中でも不思議と明るく見える。
確か、今日は七夕の日。

私は月や星が嫌いだ。
神話や伝説は星空に記憶を残したという。
美しい夜空にこそ、私の《異能》は制御が効かなくなるから。

今日という日は、最悪の夜になると思っていた。

しかして、私を何時も苛む頭痛はない。


―――さあ、空を見よ。


見上げた空は、美しく今日はどこか私を守ってくれている気がした。
満天の空の下でも『君たち』の声は聞こえない。

「少しだけ、今日は……あれ」

手に握られているのは、何も書かれていない短冊一枚。

幸道 千鳥 >  
この数年、一つのこと以外は考えたことのない事だった。

短冊に願い事を、織姫様のように上手になりたいなどと祈る―――
不思議と今は、ただのネガイゴトをしたいと思った。

「……」

屋上の置かれたベンチを下敷きに、ポケットの中にあったペンで書こう。
助けを願う以外のことなど久しぶりで上手く伝わる願いを書けただろうか。
私の願いは星の二人が聞き届けてくれるだろうか。

神様は願いを叶える為に聞くんじゃない。

けれども、彼らは今この世に再び姿を顕しているんだ。今も何処かで。
だから、彼らに祈るのは何も悪いことではないだろう。



―――神様、どうか夢を見させて。



聞き届けて貰えるかは分からない。
不器用な私の願いはそんなものだけど、今夜の夢を忘れないように
そう願った。

ご案内:「第一教室棟 屋上」から幸道 千鳥さんが去りました。