2020/07/30 のログ
■ジェルヴェーズ・ジスレーヌ・アルヴィエ > 「うん、まあ実際は気付いている子もいるのかもしれないけれど」
細かい話だからね、と言って自分の右手の甲……に刻まれている錬成陣を見せる。
「錬金術は、主に手に刻んだ錬成陣を通して行われるということさ。この錬成陣は個々人の魔力的資質に合わせて自分自身で創り上げていくオーダーメイドでね。錬成陣にこそ、錬金術師の全てが詰まっていると言っても過言ではない」
言いながら、レイピアとマンゴーシュを右手で掴んで再度錬成。鉄の塊にする。
「だが、錬成陣を見ればその術師の知りうる錬成レシピや魔力の使い方のコツなんかもわかるから、位階の高い術師は、その錬成陣を狙われることもある。私がレイピアなんてもののレシピを持って、使っているのもまあそういうことさ」
これは余談雑談の類だがね、と苦笑しながら。
実際、位階の高い術師は命を狙われることもままある。そのため、各人戦う術を何かしらで持っていることが多いのだ。
流石に、この学園都市で同じことになるとはあまり思わないけれど。
「さて、次に移ろうか。最初、私は『錬金術は二種類ある』と言ったね。今私が見せたのは、俗に『接触錬成』と呼ばれるものだ」
そう言って、また黒板に『接触錬成』と書く。
加えてもう一つ。『調合錬成』と。
「もう一つは『調合錬成』。そうだな、こちらに来るにあたってこちらの書物もいろいろ読んだけれど、あれだ。魔女の巨釜ってあるだろう?アレに近いものだよ」
わかるかな?というか合っているかな?と首を傾げつつ。
■希 > 「おぼえたらふえる」
手の甲を見る
「ひーっひっひてまじょのおばーさんがかき回すやつ?」
幼女がイメージを引き出しから
■鞘師華奈 > 「――つまり、その錬成陣?こそが個々の錬金術師の”秘奥”みたいなものですか」
その錬金術師の特性、資質、傾向、信念、美学。あらゆるものが全て詰まっているのだろう。
狙われるのもそれは当然だ――そして、だからこそ自衛手段を持つのもこれまた当然。
正直、錬成陣を例えバッチリじっくり見たとしても自分にはさっぱりなのだろう。
――さて、今までの説明が『接触錬成』。直接素材に触れて錬成陣を通して変換するやり方。
もう一つは『調合錬成』というらしい。魔女の大釜――と、なると。
「――異なる素材を調合して全く別の何かを作り出す、みたいなものでしょうか?」
■セレネ > 己の知っている魔法陣はその場で必要な術式を組み上げていく
組み立て式だったり元より完成されている陣を使用するテンプレ式なんてものもあるけれど。
教師の持つ錬成陣は自分だけが扱える自分だけの錬成陣らしい。
見せられる陣を解読しようとするのは魔法使いとしての癖である。
秘匿を美とする己としては、堂々とそれを見せる教師の行動に
やや驚愕してはいるものの。
錬金と魔術は異なるものだから当たり前か。
先程見せたものが文字通り接触して錬成する接触錬成。
だとすると調合錬成は素材を複数混合して錬成するのだろう。
己の知る錬金術の技術を持つ教師も似たような事をしていたし…。
■ジェルヴェーズ・ジスレーヌ・アルヴィエ > 「そうそう、私が見たやつだとしわくちゃのおばあちゃんがひっひっひって言いながらやってたね」
アレが魔女に対するイメージなんだろうかね?とからから笑って。
「調合錬成とは、そこのええと……サヤシさん、かな。の言う通りのものさ。複数の素材を用いて、別のものを生み出す錬成方法だね」
そう言って、小瓶と小さな釜をカバンから取り出す。
「実際はもう少し大きな釜が欲しいところだし、何分調合錬成は時間がかかるから実演は次回以降の講義に回すが……調合錬成の基礎となるのは、この特殊な溶剤と釜と、後素材だね」
そう言って小瓶を振って見せる。
錬成術専用の溶剤。製法はカルヴァーレでは広く公開されているものだが、必要そうならこちらも今後紹介すべきかななどと考えつつ。
「アプローチが違うだけで、実際に錬金術としてやることは接触錬成と変わらない。適切な素材を沸騰させた溶剤に入れて分解、その後冷却して再構成、だね。どのような素材が適切かを理解し、釜に入れて分解。冷やし固めて再構成。調合錬成と接触錬成はアプローチが大きく違うから結構特性にも違いがあるんだけれど……」
敢えて左手だけで、こんな感じだね、とポーズだけ演じて見せつつ。
「最大の特徴は『魔力を持たなくても可能』ということかな。実際に錬成の精度を高めるには別軸のセンスと気の遠くなる努力が必要だけれど、とりあえず『魔力という特別』を持たなくても可能ではある。これが魅力的に見える子もいるんじゃないかな」
どうだろうかね?と教室を見渡す。
■希 > 「んー」
魔力はあるけど使いかたがわからない幼女は
「ようざいさえあればできる?」
くきりとくびをかしげ
■鞘師華奈 > 「あ、はい2年の鞘師華奈(さやし・かな)です」
と、自分の苗字を言われれば一応学年とフルネームをジェルヴェーズ女史に伝えつつ頷いて。
ともあれ、自分のイメージというか大まかな推測は合っていたらしい。
彼女が取り出した小瓶と小さな釜。その溶剤と釜、素材が調合錬成に必須な物らしい。
彼女の説明をふむ、と頷きながら聞いていたが――それがある意味で最大の利点だろう。
(魔力が無くても、努力とセンスがあれば”誰でも出来る”類の分野という事かな)
この女は魔力もあるし魔術も使えるが、素養が偏っているのか、まともな魔術は一つしか使えない。
(――つまり、錬成のやり方を学べば魔術が使えなくても素養が無くても関係なく使える、のが強みか)
成る程、と相槌を打つ。確かにこれは――
「そうですね、魔術の素養が無い生徒でもセンスと努力次第ではどうにかなる。魅力は高いと思います」
■セレネ > 溶剤は無機溶剤だろうか。有機溶剤だろうか。
非常に気になる。これも機会があれば聞いてみよう。
魔力が無くても扱える、との言葉に
魔力を一切持たないとある男性の先輩を思い出した。
彼は今大丈夫だろうか…なんて少し思いを馳せ、後で連絡してみようと考えて。
魔術の素質はなくとも錬成や錬金の素質はもしかしたらあるかもしれないし。
…というか魔道具を見つけるという約束、反故にしてしまっているのでは。
口元を片手で覆い少し冷や汗をかいた。
怒ってないと良いけど…。
教師からの名指しに、黒髪の女性の名と学年が明らかとなった。
二年という事は先輩になる。
先程会釈をしてくれた顔と名を覚えつつ、機会があれば
お話してみようかななんて思ったり。
わざわざ会釈をしてくれた事が、
彼女からして見れば何の気なしかもしれないが己から見れば好印象だったので。
■ジェルヴェーズ・ジスレーヌ・アルヴィエ > 「だろう?とはいえ、そうそう簡単ではなくてね」
少し苦笑を浮かべて。
「調合錬成は、実際難しい。適切な素材を適切な量の溶剤で適切な温度にして適切にかき混ぜながら溶かして、適切な時間で追加や温度調整をし、適切なタイミングで火を止めて適切に温度を下げていく。適切、という言葉の雨霰さ。調合錬成は、そこまでのシビアな技術が求められる。
歴史書を見る限りでも、調合錬成で『黄金』の位階に至った者は一人しかいない。それほどまでに、高度な錬成の難易度がけた違いに上がる錬成方法でもあるのさ」
実際、ジェルヴェーズが調合錬成を専門にしないのも、その高度さ、そして面倒くささを好まないからだ。
面倒くさがりなのであるこいつ。
「その調合錬成で黄金に至ったのは私の友人なわけだが、彼女が用いた黄金錬成のレシピは、なんと10時間以上もひたすらシビアな錬成作業を継続する。だから、レシピが公開されたところで誰も真似出来ずに二人目が表れていないというありさまなわけさ」
自分も、その場には立ち会ったが、正直こちらが心が折れそうだった。アレを笑顔のままやりおおせた彼女はある種の化け物だと思ったものだ。
「さて、とりあえず基礎の基礎……錬金術の基礎理論と、その種類について大雑把に説明させてもらったわけだが、何か今の段階で質問はあるかな?それが終われば、今日の講義は終わりにするけれど」
■希 > 「手で触るほーは魔力を込めて使う、まぜまぜするのは魔力なくても使えるけど、面倒って事ですか?、あ、希です」
■鞘師華奈 > 「――あー…。」
何だろう。少しずつ改善されてきているとはいえ、面倒臭がりな所がある自分としては、今この女史に凄いシンパシーを感じてしまった気がする。
ともあれ、調合錬成は自分には多分向いて無さそうだ――クソ面倒臭い料理のレシピ、と考えればまだやる気は少しは出るだろうが…。
(――と、なると先に見せて貰った接触錬成…学ぶとしたらこちらがメインになりそうだなぁ)
使える可能性があるならば、使えるに越した事は無い…仕事でもプライベートでも役に立つかもしれないし。
あと、10時間とかその女史の友人さんはどれだけツワモノなのだろうか、と思いつつ。
彼女の締めくくりの言葉に、取り敢えず最低限重要そうな所はノートにメモしていた。
現時点ではまだ質問が必要なほどに専門的な知識や単語がそれほど出てこないので問題ない。
なので、自分からは特に今回の講義ではこれ以上は質問などもなくて。
■セレネ > 調合ですからね。そりゃ根気も要りますよね。
ただ薬の調合とは違い、レシピによっては多大な時間をかけて錬成する必要があるようだ。
料理やお菓子作りも、一つの錬成であると文献で読んだ事がある。
家庭的な事が好きな者なら、そういった手間暇をかけるレシピも苦ではないのだろう。
小さな子は子どもなりに自分で上手く解釈をしているようで。
ついでながら名を知り、どこかで会えればお話してみようかとも思う次第。
己はノートに纏めてはいないが、後で講義の内容を己なりに纏めようとは思う。
質問については、己の場合は基礎より更に上の段階のものだから
今回は口を噤んでおこう。
職員室にでも行けば恐らくいると思うし…個人的な質問はその時にするとして。
■ジェルヴェーズ・ジスレーヌ・アルヴィエ > 「ああ、ノゾミ、でいいかな。そうだね、大雑把にはそれで構わない。接触錬成が簡単というわけではないがね」
アレもアレで難しい。手っ取り早くはあるのだが。
とはいえ、その速度も人によって違いがあるので、あくまで自分にとっては、である。
「さて、今日はここで仕舞いかな。これで興味を持ってくれた人は、次以降の講義も出てくれると私が助かる。次はそうだね、簡単な調合錬成の実演と、各錬成方法の特性についてもう少し掘り下げた話をしようか」
ぽん、と手を叩き。
「それでは解散!お疲れ様、個人的に質問があれば、職員室なり私の私室なりに来てくれれば答えれる範囲で答えよう。まあ、講義でやるからその時に、となる可能性もあるがね。それじゃあ、また次の講義で」
そう言ってその場を後にした。
――初めての講義としては、まあまあ上手くやれたほう、ではあろう。おそらく多分。
そんな風に考えつつ、次の講義について頭を回しているのであった。
ご案内:「第一教室棟 錬金術概論教室」からジェルヴェーズ・ジスレーヌ・アルヴィエさんが去りました。
■希 > 「今日はありがとうございました」
ぺっけりと頭を下げて
ご案内:「第一教室棟 錬金術概論教室」から希さんが去りました。
■鞘師華奈 > さて、取り敢えず初回の講義はこんな所だろう。ノートを閉じて筆記用具と共に簡素なリュックへと詰め込んで肩に引っ掛けるように背負いながら立ち上がり。
気になっていた二人―幼女と月白髪の少女の二人に赤い視線を向ければ。
再び軽く会釈をしてから、そのまま講義室を後にしようか。
(本当なら、多少親睦を深めてみるのもいいいんだけどね――仕事なのが恨めしい)
この後は公安の仕事が待っている。やれやれ、と思いつつもまぁ、またジェルヴェーズ女史の講義を受ける時に会うかもしれないし。
そう思い直せば、緩やかな足取りでそのまま学園を後にして仕事先に向かうのだろう。
ご案内:「第一教室棟 錬金術概論教室」から鞘師華奈さんが去りました。
■セレネ > 今回の講義は終い。
ザワザワとざわめきだす生徒達を尻目に、締めの言葉を述べた後
立ち去る教師を見送って。
有意義な時間だったと満足そうに息を吐いた。
希と名乗った子も鞘師という名の先輩も各々立ち去るようだ。
再びの会釈をしてくれる黒髪の女性に、己も挨拶を返して
時刻をスマホで確認しつつ
頭の中で先程の講義の内容を纏めながら椅子から立ち上がり
教室を後にしよう。
先に保健室に行こうか、それとも研究室に行こうか。
どうしようかな、なんて考えながら。
ご案内:「第一教室棟 錬金術概論教室」からセレネさんが去りました。